イズモ「そのうえで、どうしても知ってもらいたいことがある」
集まった生徒たちの視線が一斉に集まる。
不安と疑念が混じった沈黙の中、イズモは一歩前に出た。
イズモ「俺の名は最上イズモ。創造神だ。パラレルワールドから来た使者でもある」
イズモ「そして、隣にいるのが最上カエデだ」
カエデ「よろしくお願いいたします」
ざわめきが広がる。
信じがたい話だ。
だが、ここまでの異常事態を経験した彼らに、完全な否定はできなかった。
イズモ「証拠を見せる」
その言葉と同時に、格納庫の扉が開く。
ヴァルヴレイヴが静かに後退し、その背後から戦車T77が出現した。
圧倒的な存在感に、息を呑む音が重なる。
イズモ「これで分かってくれたか」
誰も言葉を発せない。
沈黙が肯定となる。
イズモ「状況は切迫している。今すぐモジュール77を切り離す」
イズモ「ここにある戦艦はすべてAI兵器化している。人的被害は出ない」
イズモ「さらに、ヴァルヴレイヴを抑止力として使い、家族や生徒も守る」
視線をショーコに向ける。
イズモ「後は頼む」
ショーコは震えながらも、確かに頷いた。
イズモ「行くぞ。ヴァルヴレイヴ初号機」
ヴァルヴレイヴ起動。
OS「ワカッタヨ」
アサルトライフルを連射し、敵の接近を阻みながらモジュール77を切り離す。
巨大な構造物が宇宙へと放り出され、ゆっくりと軌道を変えていく。
イズモはその光景を見届けた後、機体を反転させた。
数日後。
学校には、奇妙な平穏が戻っていた。
イズモ「食料はオムシスシステムを作る。各班よろしく」
誰もが忙しく動く中、イズモは空を見上げる。
イズモ「……平和すぎるな」
違和感を拭えない。
彼は即座に行動に移す。
イズモ「今のうちに衛星を打ち上げておくか」
イズモ「撤去班が遅れてるな……撤去率100%はやりすぎたか」
思考はすでに次へ進んでいる。
イズモ「ヴァルヴレイヴの武装を強化する」
イズモ「ミサイル、ガトリング砲、高周波ブレード、核融合ブースター……予備は十」
イズモ「エヴァより小さい分、整備は楽だな」
突然、照明が落ちた。
イズモ「停電か。暗視起動」
イズモ「メインシステム……」
闇の中、人影が現れる。
イズモ「……誰だ」
イズモ「修理に来たのか」
キボカワ「そうだ」
イズモ「じゃあこれと発電機を繋いでくれ」
復旧。
明かりが戻る。
イズモ「ネルフより簡単で助かるな」
理科室。
イズモ「ルキノさん、歌ってくれ」
サキ「え……?」
戸惑いながらも、サキはマイクを握る。
配信が始まる。
イズモ「旧モジュール77、新生ジオールは健在だ。その証として歌います」
サキの歌声が、地球中に響いた。
恐怖の象徴だった場所が、生きていると伝えるために。
配信後、二人は探索を続ける。
イズモ「ヴァルヴレイヴ五機を確認」
イズモ「一旦ここを隔離する」
サキ「どうして?」
イズモ「適合者が限られる。今のところ一人しか登録できない」
イズモ「しかも、五機だけだ」
サキ「いいわよ。じゃあ二人ぼっちね」
サキがヴァルヴレイヴを起動させる。
その覚悟を、イズモは正面から受け止めた。
イズモ「分かった。君の意思だ」
周囲を封鎖し、レーザーグリッドと防衛AIを配置する。
最深部には、手足のない未完成機体が眠っていた。
イズモ「外部向け防衛か……」
その直後、砲撃。
イズモ「オート迎撃起動。内部防衛も稼働」
ヴァルヴレイヴ起動。
イズモ「行くぞ」
サキも続く。
イズモ「俺は五キロ後方で狙撃する。何かあれば言え」
サキ「分かった……」
大型戦闘機が迫る。
イズモ「出力最大。撃て!」
ミサイルとガトリングが火を吹く。
サキ「こわい……」
イズモ「了解。近距離モード」
弾幕が敵機を粉砕する。
サキ「……もう大丈夫?」
イズモ「ああ」
敵は撤退した。
イズモ「これで、こっちが遠距離特化だと分かればいい」
帰還後、生徒会に状況を共有する。
イズモ「研究が終わってから搭乗させる。危険すぎる」
その夜、バンカーへの侵入者が確認されるが、すぐに逃走した。
イズモ「レーザーグリッドを回避したか……」
翌日。
学校はエルエルフに占拠されていた。
イズモ「動くな」
エルエルフ「みんなは無事だ」
イズモ「ナイフで決着をつけるか」
エルエルフ「受けよう」
短く、激しい戦い。
結果は明白だった。
エルエルフ「……俺の負けだ」
イズモ「牢に入れ」
再び警報。
イズモ「侵入者だ。全生徒は避難」
RPG7が火を噴き、敵機を撃墜する。
ATFがバンカーを完全防衛する。
イズモ「ヴァルヴレイヴ起動」
イズモ「俺はモジュール77を守る」
だが、サキが前に出すぎ、捕獲される。
イズモ「液体窒素だ。冷却装置を使え」
サキ「……ありがとう」
救出、帰還。
イズモ「六時間後、第二波が来る」
静まり返った空気の中、その言葉だけが重く響いた。
モジュール77外縁宙域。
ドルシア軍統合監視艦レギオンの作戦室で、参謀将校たちは異様な沈黙に包まれていた。
スクリーンには、切り離されたモジュール77が静かに軌道を変える映像が映っている。
参謀「……切り離し、完了しました」
誰もすぐに返事をしなかった。
学生区画が自律的に独立するなど、作戦計画書のどこにも存在しない事態だった。
司令官「内部の反乱者は、やはり時縞ハルトか」
参謀「いえ。本人は最上イズモと名乗っています。自称、創造神」
失笑が漏れかけ、誰もがそれを飲み込んだ。
嘘や妄言で片づけるには、現実があまりにも重すぎる。
参謀「ヴァルヴレイヴ一号機を中核に、戦艦群をAI化。人的被害なしで独立を完遂しています」
司令官「……完璧すぎるな」
映像が切り替わる。
地球圏へ向けた配信。
少女の歌声が、廃墟となるはずだった学園から流れている。
参謀「士気対策です。恐怖の象徴を、生存の証に反転させています」
司令官は歯を噛み締めた。
戦場を知る者ほど、その残酷さが分かる。
あれは希望だ。
敵にとって、最も厄介な武器。
司令官「ヴァルヴレイヴの追加反応は」
参謀「五機確認。ただし、適合者は限定的。現在稼働は一機のみ」
司令官「ならば、そこを突く」
その瞬間、別回線が開いた。
エルエルフ「俺が行く」
作戦室の空気が変わる。
成功率九割九分。
敗北を知らない工作員。
司令官「捕縛が目的だ。殺すな」
エルエルフ「承知している」
潜入。
だが、想定より早く、警戒網が作動する。
レーザーグリッド。
自律迎撃AI。
エルエルフは歯噛みする。
相手は学生だ。
それなのに、軍事基地以上の防御を張っている。
エルエルフ「……化け物だな」
一時撤退。
だが、諦める理由はない。
数時間後。
第二次接触。
大型戦闘機部隊が突入する。
オペレーター「迎撃反応。ミサイル、ガトリング、弾幕密度異常」
スクリーンで、敵機が次々と消える。
司令官「遠距離特化……見せ札か」
その読みは正しかった。
前に出た一機。
少女が操縦している。
参謀「捕獲、成功」
司令官は静かに息を吐く。
初めて得た、確かな成果。
だが、次の瞬間。
オペレーター「冷却装置起動。液体窒素使用。捕獲対象、脱出」
司令官「何だと」
エルエルフの声が通信に割り込む。
エルエルフ「判断が早すぎる。こちらの戦術を完全に読んでいる」
司令官は拳を机に叩きつけた。
敵は防衛に徹しながら、次を見据えている。
参謀「敵指揮官、六時間後に第二波が来ると宣言しています」
司令官「……宣言だと?」
それは予告であり、挑発だった。
迎撃できると確信している者の態度。
司令官はスクリーンに映る学園を見つめる。
学生たちが避難し、兵器が静かに待機している。
司令官「最上イズモ……」
その名を、ゆっくりと噛み締める。
これは占領戦ではない。
革命だ。
司令官「全戦力を再編成する。次は遊びでは済まない」
だが胸の奥で、別の感情が芽生えていた。
恐怖と同時に、理解。
この戦争は、すでに主導権を失っている。