モジュール77上空。
歪んだ空間から出現した機体を見た瞬間、イズモは直感した。
あれは同類ではない。
神着。
それも、人がなり果てた存在ではなく、最初から神として設計されたもの。
イズモ「来たか」
全周囲に警報が鳴り響く。
イズモ「こいつは神着だ」
イズモ「しかも俺たちみたいな不完全な存在じゃない」
イズモ「通常兵器は一切効かない」
通信回線越しに息を呑む気配が伝わる。
イズモ「ドルシアにもヴァルヴレイヴがあったらしいな」
イズモ「俺は壱号機で行く」
イズモ「援護を頼む」
サキ「わかった」
イズモ「生徒は全員地下格納庫へ」
イズモ「プラズマシールドは展開済みだ」
護衛艦隊の反応が急速に増える。
イズモ「護衛艦隊を捕捉」
イズモ「俺はカインを討つ」
イズモ「追撃は任せた」
OS「イズモ、Rnが異常流出してる」
イズモ「分かってる」
イズモは操縦桿を強く握りしめる。
イズモ「Rnがゼロになったら起動するプログラムを仕込んである」
イズモ「この世界のインターネットに直結する」
イズモ「アップロードすれば、君もRnを無制限に摂取できる」
イズモ「もうヴァンパイア化する必要はない」
OS「最初からそこまで読んでいたの?」
イズモ「革命はハードだけじゃ足りない」
イズモ「ソフトも、社会も、思想もだ」
イズモ「この革命で世界は変わる」
イズモ「異星人も、AIも、神着も同じ場所で生きる」
イズモ「ハイパーグローバルな世界になる」
イズモ「そして俺は人類史の革命者になる」
虚空から声が響く。
カイン「イズモ――――――」
イズモ「カイン」
イズモ「お前と101人評議会を終わらせる」
イズモ「違いで殺し合わない世界を作る」
イズモ「たとえ俺がこの世界から消えても」
イズモ「俺はデータとして生き続ける」
イズモ「規範として、基準として」
カイン「そんな世界は来ない」
カイン「人類は変わらない」
イズモ「モジュール77で分かった」
イズモ「人は未知を恐れる」
イズモ「なら未知じゃなくせばいい」
カイン「まさか」
イズモ「この戦いの記録」
イズモ「俺の記憶、肉体の履歴、思考」
イズモ「すべてをヴァルヴレイヴに記録し」
イズモ「ネットワークへ放つ」
イズモ「超高度AIの時代が来る」
イズモ「カイン、俺たちはそこで死ぬ」
イズモ「だが世界は進む」
イズモ「完全統合された超効率社会」
イズモ「人とAIの境界が曖昧な世界だ」
イズモ「争いは終わる」
イズモ「異星人との衝突はあるかもしれない」
イズモ「だがショーコがいる」
イズモ「平和的解決は彼女の得意分野だ」
激突。
壱号機とカインのヴァルヴレイヴが火花を散らす。
Rnが急速に失われていく。
限界の瞬間、イズモは引き金を引いた。
カインの機体が砕け散り、Rnは完全に消失した。
モジュール77上空。
歪曲した空間が裂け、そこからこちらの領域へ侵入してくる機体を、カインは静かに見下ろしていた。
予測通りだ。
この世界は、必ず彼を呼び寄せる。
神着。
人が神になり損ねた存在ではない。
最初から神として設計され、選別され、完成した兵器。
101人評議会が積み上げてきた理論と血と計算の結晶。
それが、カイン自身であり、このヴァルヴレイヴだった。
通信回線のノイズ越しに、彼の声が届く。
イズモ「来たか」
その声音に、カインはわずかに口角を上げる。
やはり、分かっている。
だが、理解しているつもりになっているだけだ。
カインは周囲の護衛艦隊へ視線を走らせる。
神着の出現と同時に、モジュール77全域が戦場へと変わっていく。
生徒を逃がし、盾を張り、自分が前に出る。
英雄の手順だ。
カイン「遅かったな、イズモ」
イズモ「カイン」
互いの存在を確認した瞬間、空気が張り詰める。
彼は危険だ。
カインは、目の前の敵をそう評価していた。
人でありながら神着へと至り、なお不完全であることを受け入れた存在。
だからこそ、理屈を超えて踏み込んでくる。
イズモ「お前と101人評議会を終わらせる」
カイン「終わらせるだと?」
思わず、嘲笑が漏れる。
101人評議会は、人類そのものだ。
恐怖、差別、選別、管理。
それらを排除した文明など存在しない。
カイン「そんな世界は来ない」
カイン「人類は変わらない」
イズモの沈黙が、答えだった。
彼は信じている。
理屈ではなく、体験で。
カインはその危うさを理解していた。
だからこそ、ここで止めなければならない。
イズモ「人は未知を恐れる」
イズモ「なら未知じゃなくせばいい」
カインの内部演算が一瞬、乱れる。
その発想に、人類を滅ぼした無数の狂信者の影が重なった。
カイン「まさか……」
イズモ「この戦いの記録を残す」
イズモ「俺の記憶も、思考も、全部だ」
理解した瞬間、カインは初めて焦りを覚えた。
彼は死を前提にしている。
個としての消滅を、文明の燃料にするつもりだ。
カイン「愚かだ」
カイン「そんなものは、争いを加速させるだけだ」
イズモ「それでも世界は進む」
その声に、迷いはない。
彼は革命者だ。
そして革命者は、必ず大量の犠牲を生む。
カイン「ならば、ここで終わらせる」
推力全開。
神着同士が激突する。
壱号機とカインのヴァルヴレイヴが、虚空で火花を散らした。
衝撃が伝わるたび、Rnが削られていくのが分かる。
彼もまた、限界を超えている。
だが、神として設計された自分の方が有利だ。
そう確信した瞬間、イズモの動きが変わった。
カイン「……来るか」
引き金。
一瞬の判断遅れが、致命傷となった。
カインの機体が内部から崩壊し、制御不能に陥る。
Rnが霧散していく感覚が、神経を焼いた。
カイン「イズモ……」
最後に見えたのは、壱号機の奥で静かに目を閉じる彼の姿だった。
敗北。
だが、それでもカインは確信していた。
この男が残したものは、必ず争いを生む。
意識が闇に沈む直前、異星人の攻撃がモジュール77を包み込むのを感知する。
世界は、彼の望んだ形では進まない。
それだけは、間違いない。
イズモは元のクデュックへと戻った。
だが待っていたのは異星人の攻撃だった。
ホーキング放射砲が直撃する。
イズモの意識は光の中で消えた。
二度と、転生することはなかった。
モジュール77、その後。
ハルト「……ここは?」
ハルト「桜森学園?」
ハルト「このロボットは……?」
サキ「イズモじゃない」
ショーコが駆け寄る。
ショーコ「イズモ……じゃない」
ショーコ「ハルトが戻った」
サキ「機体の上に紙がある」
そこには、ヴァルヴレイヴをネットワークへ接続する手順が記されていた。
ハルト「つないだよ」
イズモ録音「接続お疲れ様」
イズモ録音「この音声はRn消失後、君が接続したときに再生される」
イズモ録音「俺の記憶、君の記憶、カインとの戦闘データはすべてアップロードした」
イズモ録音「これからの世界の話をする」
イズモ録音「人とAIが恋をし、政治をし」
イズモ録音「異星人とも共存する時代が来る」
イズモ録音「俺の残したものが役立つなら使ってくれ」
イズモ録音「ヴァルヴレイヴはRnを情報として食べる」
イズモ録音「ネットに接続すれば、ヴァンパイア化は不要だ」
イズモ録音「ハルト君、君は無限の命を得た」
イズモ録音「喜ばしくもあり、残酷でもある」
イズモ録音「モジュール77のみんなを登録し、一緒に生きてほしい」
イズモ録音「ショーコ」
イズモ録音「新しい国際機関が生まれる」
イズモ録音「代表を頼む」
イズモ録音「詳しい過去を知りたければ、このOSを起動するといい」
警報音。
イズモ録音「またドルシア軍か」
イズモ録音「未来の自分を信じている」
イズモ録音「俺はデータとして残る」
イズモ録音「完全に消えるわけじゃない」
イズモ録音「またAIとして会おう」
通信は途切れた。
その後、地球のかみつきは一掃された。
ヴァルヴレイヴは防衛の要となり。
ドルシアはアヌビスと化し、やがて滅びた。
アレスはエイレーネーへ名を変え。
モジュール77は新生ジオールとなった。
国際組織ラパスが誕生し。
イズモの予言通り、超高度AIレイシアが生まれた。
彼女はエイレーネーの政治を担った。
世界は、静かに次の段階へ進んでいった。
リゼロ編を書いたらイズモの小説は更新やめます
それまではやめないですww
ヴァルブレイヴ編見てくれて本当にありがとうございました。