0 帰巣、変わるはずの無いモノ
夕暮れを目前に控えた暗くなりかけの公園で、3人の子供が遊んでいる。遊具から少し離れたベンチには 3人の保護者らしき大人が、ベンチで談笑中だ。
どの遊び方が正しいのかイマイチ分からない ぐるぐる回る遊具や、ただ飛び越えるだけのタイヤ達、日に充てられてホットプレートみたいになっている滑り台、そして今3人の子供が遊んでいる砂場。
一通り公園でできる遊戯を終えた3人の子供たちは惰性で砂をいじって遊んでいる。1人は砂の上に絵を描き、その絵に脚色を加えるのにもう1人、そして最後の一人は少し離れて山を作っている。
「ソウも、おえかきしようよ」
山を作っていた男の子に向かって茶髪の女の子が声をかける。銀髪の女の子が描いた、猫の輪郭に顔のパーツを描いたり、リボンを付け加えたりをし終わった茶髪の女の子は、少し暇そうだ。
銀髪の方は自分と茶髪で描いた絵にご満悦の様子で、砂の上に掘られた溝に見蕩れている。
「やだよ、つまんないし」
生意気な猫目の少年がぶっきらぼうに言う。髪が長くて少しうざったいのか、女の子用のヘアゴムで前髪を上の方で括って額が丸出しの顔を2人から背けながら独りで山に砂をかけて積んでいく。
所々へこんでいる不格好な山に上から雨のようにキラキラと光る砂粒が降りかかる。着地点は山の頂上、勢いよく落ちた砂の粒たちは少しづつ山の頂点を抉っていき、雪崩の様に斜面をなぞっていく。そしてまた少年は流れた砂粒を両手にかき集めて頂点に目掛けて振りかける。
客観視すれば絵を描くよりは山にひたすら砂をかける方がよっぽどつまらない遊びに見えるのだが。少年にとっては構わないようで、どんな遊びであれ自分が決めた遊びをしたいのだ。
銀髪が始めた『おえかき』の遊びより、自分の始めた『山作り』の方が魅力的に思えるのだろう。
「じゃあ、アタシもする」
絵を描いていた2人のうち茶髪の女の子が、砂に付けていた手を離し男の子の方に走っていく。
「いいよべつに、こなくて」
嫌そうにそう返す男の子だが、本音とは思えない。さっきまで下に向いていた視線が、走ってくる女の子の方に向き直った。ゴムで縛られた前髪が先から苦しそうにバラけているその形はまるで植物のようで、どこか少し間抜けだった。
「ユキナも、あっちいこ」
茶髪が声をかけると、銀髪の子が顔を上げる。自分の描いた猫の輪郭を模した砂の溝をもう1巡。一通りなぞり終えた(撫で終えたともいえる)銀の少女は、
仕方ないとでも言いたげに息を吐いて、立ち上がる。
その吐いた息が。返事の代わりのようでそれ以上は了承の言葉も、否定の言葉も続けなかった。先に男の子のそばに着いた茶髪は 男の子の顔色を伺いながら山の周りをぐるぐる歩き回っている。
遅れて砂の山に着いた銀髪と、茶髪に一瞥をくれた男の子は仕方なさそうに。でも、かすかに嬉しそうな表情で、一緒に遊ぶ事を了承した。
「これ、オレんちだから」
山のてっぺんに掘られた窓、に見えなくもない小さい窪みを指しながら。嬉しさを孕んだつっけんどんな声で言う。どこからどう見ても家の形状ではないただの地形のようにしか見えない山が彼の家、らしい。
なだらかな坂には入口もないただの窪みが掘られていてその他には何も無い。
「じゃあ、ここアタシの へや」
山の麓に、同じような穴を掘る茶髪
「なら ワタシはここ」
その隣にまた一つ穴が増える
「なんでオレんちにつくるんだよ」
別の山を作ればいいのに、とは言わずにそう聞く
「だって、アタシたちとソウは」
茶髪の女の子が銀髪の手首を掴んだ。
小さい。血管の浮き出ていない子供らしい手の甲が凹凸のない白い手首を隠した。包み込んだ手と手は信頼の証。
手を繋いだ銀髪と茶髪がお互いの顔を見合う
それを、怪訝そうな目で見る少年
笑顔で、茶髪が更に続けた。
「ずっと、一緒でしょ?」
次回予告
「よっ!久しぶり」
もしかしたら明日、君と会えるかもしれない
「成長しないのね」
そんな浮かれたことばかり考えて生きてきた
「お前もな」
能天気だった日々が、変わっていく
「あのさ...」
次回『帰路、不幸と幸福は背中合わせ』
https://twitter.com/Tomiokasei4jyo?s=09
好きなのはこの中だと...
-
湊友希那
-
今井リサ
-
葛飾麗奈
-
氷川日菜