こっから、やっとオリジナルストーリーらしくなってきます
17 洞察、水色の悪魔
いつもの憂鬱な月曜の帰り道の、さらに7割増の憂鬱を抱えながら自転車を漕ぐ昼下がり。
昨日は親が帰る前にさっさと片付けをしてリサは雨の中帰っていった。俺とリサの関係は、前までの一方的な取り繕った状態から もっと歪んだものになっていた。
そして、それを俺は拒まなかった。
『葛飾の事が好き』だという気持ちと『リサを拒まない』という矛盾した気持ちは、未だに俺の中で燻っているままだ。でも、意思でそれを「間違い」と認める事ができても、状況がそれを「間違い」だと糾弾することを許さない。
事実として、俺はリサと関係を持ってしまった。そしてその償いを込めて、「リサの相談」に乗っている。そしてその「相談」は友希那の音楽にも関わっていて、友希那は自分の音楽を「俺への愛」として表現している。
だから、俺は拒めなかった。
この状況を招いたのは俺が2週間前にリサの家で、誘惑に負けたからだ。だから、せめて最後まで友希那の音楽と、リサの手助けをしたい。
それから、全部片付いてから
葛飾にもう一度、気持ちを伝える。
葛飾はもう既に俺の気持ちを偶然聞いてしまったけれど、でも。現状はまだ、葛飾とは友達同士のままだ。縁が切れたわけじゃない。
まだ、間に合うはずだ
「あれ、想じゃん」
考え事をしながら自転車を漕いでいたら 俺の名前を呼ぶ声が聞こえた。視線の先にはこちらに向かって手を振るリサがいた。そして、その横にはもう1人 知らない女の子が居た。
「リサ......」
思わず声がこぼれた
自転車を停め、手で押しながら2人の元へ向かう。
自転車を押す腕にかかる少しの負荷が辛い
「リサちー、この人だれ?」
もう1人の子が、リサに聞く。
まぁ そりゃそうなるよな、知らない奴が急に歩いてきたらそういう反応になるだろ。
「アタシの幼馴染なんだ〜」
葛飾の時と違って『幼馴染』と自分の事を評した、前は『昔からの友人』と言ったのだが リサの中で、どういう心境の変化があったのだろう。
曖昧に納得したもう1人の、水色の髪の女の子は少し煌めいた瞳で俺の目を見た。俺の中身を見透かしたような、そんな視線だった。
「あ、ごめん アタシそろそろバイトだ」
腕の内側につけた若者っぽいデザインの時計を見ながら慌てた様子でリサが言う。
おいおい、まさか俺とこの子の2人きりにするつもりじゃないだろうな。めっちゃ気まずいんだけど。
「想、ヒナ、ごめんね」
手を振りながら慌てて走っていくリサ、笑顔で手を振る『ヒナ』と呼ばれた女の子、その様子をただ眺めている俺。
不安が的中して、2人きりにされてしまった。友人の友人と2人きり、なんていう余りにも気まずい状況に置かれてしまった。
「えーっと」
このまま話し続けるのも気まずいし、黙ったまま居続けるのも気まずい、更には逃げるように別れたとしても結局は気まずいのだ。
あぁ、なんて事をしてくれたんだ
「想くん、だっけ」
『ヒナ』が少し言葉尻の上がった不安気な疑問形で、リサが発した俺の名前を呼んだ。
さっきの、見透かしたような瞳がまた俺の目を貫いた。思わず身震いをしてしまいそうになるその視線に射抜かれた俺は、まるで蛇に睨まれた蛙だ。
「『氷川紗夜』の事、聞きたい?」
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白いテーブルに肘を着いて周りを眺める
だいたいの学校が終わった学生達が1番動き出すこの時間帯にふさわしい、学生だらけのフードコートが視界に入ってくる。
ため息をつき、目の前でサイドメニューのフライドポテトを食べる『ヒナ』。つい、『氷川紗夜』の名前につられて一緒に来てしまったが、果たして本当にこの女の子が知っているのだろうか。
「なんで俺が氷川紗夜を探してること、知ってんだよ」
つい、語調が崩れてしまう。
この場所に着くまでにも何度か聞いたのだが、曖昧にはぐらかされてしまい 結局ここまで付いてきてしまった。本当に大丈夫なのだろうか。
「リサちーが探してるから、そうかなって」
ポテトを食べながら暇そうに言う『ヒナ』
その様子を100円の安いコーヒーを飲みながら眺める。ただ色がついただけのお湯みたいなコーヒーの入った紙コップを握る、結構熱い。
「で、その氷川紗夜の事教えてくれるのか」
言ったあと、もう一度喉に流し込む
俺の言葉を聞いた『ヒナ』は頬杖をつきながら一気に三本のポテトを口に入れた。さっきまではちまちまと1本づつ食べていたのだが、どうやら痺れを切らしたようだ。
「もう、もっと楽しい事話そうよ。例えば」
舌で口の周りについた塩を舐め取りながら、言う『ヒナ』。その表情はやけに挑発的で、俺の心を逆撫でた
でも、
「キミとリサちーの事とか、さ」
その言葉で、
沸き立った俺の感情は一気に冷え固まった。
なんで、その事知ってるんだ
「あ、その顔いいね」
ニヤニヤしながらそう言う『ヒナ』
まさか、リサがあの事を話したのか。でも、リサがそんな事するはずが無い。けれど、俺とリサ以外はその事を知らない。じゃあ、なんでコイツが知っているんだ。
「私さ」
俺の沈黙に飽きたらしい目の前の小悪魔みたいな少女が、つぶやく。さっきまで周りの声が煩いぐらいだったが、もう『ヒナ』の声しか聞こえなくなってしまった。
「人の考えてること、何となくわかるんだ〜」
本当か嘘か、定かではないが 嘘を言ってるようには思えなかった。事実、俺とリサの事を知っているようだし 本当なのだろう。
「......結局、お前は何がしたいんだよ」
わざわざ俺と2人でこんな所まで来たんだ、なにか理由があるはずだ。じゃないと、こんな面倒臭い事はしないだろう。道端で話せないような 理由があるんだろう。
「話が早いね、私のお願いは〜」
間延びした、人を舐めたようなそんな声で『ヒナ』が言う。右の人差し指を出しながら空中に何度も円を描きながら、俺の事を焦らす。
その瞬間、俺の右腕を誰かが掴んだ
ぎゅっと握られたその感覚に心臓が飛び跳ねる。
目の前の『ヒナ』が握ってきたわけじゃない。現に『ヒナ』は驚いた表情で俺の右側を凝視している。
誰だ、そう思いながら振り返る
「随分楽しそうね、想」
左手で俺の右腕を掴みながら
うっすら微笑んだ、友希那がそこにはいた
好きなのはこの中だと...
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湊友希那
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今井リサ
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葛飾麗奈
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氷川日菜