友希那が来るまでは、4人がけのテーブルにヒナと向かい合って座っていたのだが 俺が1個左にズレて、元々俺が座っていた席に友希那が座り。友希那とヒナが向かい合う形になった。
突然俺の腕を掴んで現れた友希那に大体のあらすじを話した所、氷川紗夜の事を聞けると知ったので俺たちと相席することにしたらしい。
「で、ヒナ」
視界の右側で、友希那が睨んでくる。
しょうがねぇだろ、下の名前しか知らないんだから
「お前のお願いって、結局なんなんだ」
友希那の事は一旦無視してヒナにさっきの続きを促す。友希那が来る前に話していた、俺の汚点をチラつかせてまで頼みたい『お願い』の事だ。
残り少ないポテトを啄みながらこっちを見るヒナ、今はあの時みたいな見透かす目じゃない。まるで俺の事なんて見てないかのような力の入って無い気だるげな視線で俺を見る。
「私のお願いは」
少し上を向きながら、ヒナが口を開く
「お姉ちゃんを今のバンドから抜けさせて欲しい」
ようやく聞けたヒナのお願い。でも、いまいち見えてこない。それと氷川紗夜がどう関係するんだ
「お姉ちゃん?」
とりあえず、いまいち不明瞭な『お姉ちゃん』について確認する。友希那も俺と同じ事を疑問に思っているようで、視界の端で無表情ながらも少し瞳を震わせていた。
「あー、そういえば私の名字言ってなかったっけ。私、『氷川日菜』っていうの」
左手は頬杖をついたまま、右手をぷらぷらさせながら言うヒナ。なるほど、だから氷川紗夜の事をコイツが知っているのか。
「氷川紗夜の妹の貴方が、なぜそんな事を頼むの?」
急いたように切り込んだ友希那。単純な疑問と、俺と日菜の見えない距離感についても少し苛立ちを感じているような友希那は少し語気が強い。
賑やかな楽しい雰囲気のフードコートの中心に似つかわしくない少しシリアスな話題に少し退屈げな日菜は、ポテトを食ってばっかだ。
「今のバンド、面白くないから」
ポテトを食べ終えてしまった日菜が漸く口を開く。少し、物欲しそうだった友希那の瞳がふっと揺れる。多分、目の前で食べられて自分も食べたくなったんだろうけど 言い出せなかったんだな。
「だったら、アナタとお姉ちゃんが組んだバンドの方が面白そうだなって思ったんだけど」
どうやら、人の考えがわかるっていうのも妄言じゃないらしい。現に日菜は、友希那がバンドを組もうとしている事を知っている。これはリサから聞いただけかもしれないけれど、俺の中ではひっそりと日菜の発言の信憑性を上げていた。
「たしかに、あのバンドはお遊びだもの」
日菜と同じように厳しい評価を下す友希那。でも、何となくこの2人の意見は 別の角度から下されたように感じる。この少ないやりとりでわかった日菜の性格上、友希那のような音楽への姿勢が『面白くない』という訳では無いことは何となくわかった。
単純にそのバンドのメンバーの事が、気に食わないのだろう
「具体的に、どうするんだ」
日菜だけじゃなく、友希那にも向けて言う。お互いに意思は伝えあっているのだが、具体的にどうするかはまだ不透明なままだ。
「とりあえず紗夜には実力を見てもらうために、この前のライブに来てもらったわ」
あの『vinyl』のステージか。他にも何曲か歌っていたのだが、正直『vinyl』の印象しか残っていない。それほどまでに、あの歌は強力で、俺の記憶を盲目にさせていた。
「その返事は、今日聞くことになってるわ」
あぁ、だからか。
1人納得する。偶然 友希那とショッピングモールのフードコートで会った事になんとなく違和感があったのだが、氷川紗夜との待ち合わせに使っていたらしい。
「え、お姉ちゃん来るの?」
さっきまでの余裕げな表情から一転して、少し慌てた様子の日菜。頬杖をついていた左手を机から離して少し背筋を伸ばす。
「えぇ、もうすぐ着くそうよ」
毅然とした態度でそう返す友希那。
その言葉を聞いて、日菜が身支度を始めた。
どうやら余程 姉と会いたくないみたいだ。
「私が居たこと、内緒にしといて」
急いで支度を済ませ、カバンを手に取りながら謝るような素振りを見せる日菜。聞きたいことは他にもあるのだが、有無を言わせないその態度が俺を無口にさせた。急いでこの場から離れる日菜、それを黙って見送る友希那。
姉妹って、こんなにギクシャクするもんなのか。一人っ子の俺には理解できない光景だった。もっと仲の良いものだと思っていたのだが、そうでは無いらしい。
「ごめんなさい、少し遅れました」
日菜と入れ違いに、日菜と同じ髪色の女の子がやって来た。きっと、氷川紗夜だ。さっきの明るい日菜を見たあとだからか なんとなく、暗い印象だ。
「俺、席外すわ」
話していた日菜も居なくなったし、友希那と氷川紗夜の話し合いを邪魔したくない。いくら友希那の手助けをしたいからと言って、2人の話し合いまでに首を突っ込むのも違うと思う。
支度をしながら席を立つ
引き止めないあたり、俺が居てもしょうがない事がわかっているのだろう。
「じゃあな」
友希那に手を振って背を向ける。そんな俺の様子を不思議そうに眺める氷川紗夜、手を挙げて答える友希那。
2人の視線を受けながら4人がけのテーブルから距離を取る。手に持った空の紙コップを捨てるためフードコート内のゴミ箱に向かう。
「あの...!」
その途中で、後ろから声が聞こえた。
自分への声じゃ無いかも知れないが、一応振り向く。そこには紫色のツインテールの女の子が居た。
「.あ、俺?」
いきなり見知らぬ女の子に話しかけられる事に戸惑いながら確認をとる。俺の声に激しくうなづきで応答する姿は、滑稽というか可愛げがあるというか、とにかく少しマヌケに見えた。
「あの、お兄さんって」
両手を握って、体の前に出しながら言う紫ツインテールの女の子。少し興奮した様子の女の子の迫力に、若干押されつつ聞く。
フードコートの端で、周りの人間も沢山いる中 少し大きめの声で続きを紡いだ。
「友希那さんと付き合ってるんですか!?」
好きなのはこの中だと...
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湊友希那
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今井リサ
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葛飾麗奈
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氷川日菜