1話から15話までに次回予告をつけました。興味ある方は覗いて見てください。
評価まだの人はしてくれると嬉しいです
「じゃあね、中野くん」
自販機前の分かれ道、夕暮れが沈んでいく道の真ん中で 『葛飾』がそう言う。
1度、急速に縮められたお互いの距離。麗奈が詰めてくれたその距離を、あえて俺は手放した。突き放したと言っても、もしかしたら過言ではないのかもしれない。
でも、
それでも、俺はまだ。向き合えない。
そう感じたから。
こうする他に、俺は選ぶことはできなかった。
また、お互いを苗字で呼び合う1歩引いた距離感。でもきっと、あのまま事故みたいな形で縮めた距離感を保ち続けるような向心力も、遠心力もあいにく持ち合わせていなかった。
お互いが弧を描き続けるような、そんな近いようで遠い曖昧な関係をずっと続ける事は、きっと長くはできなかった。
だから、俺と葛飾はこれで良かったんだと思う。
俺が、また向き合えるようになるまで。それまではまだ、このまま居れれば。それが1番いい。
反芻する自己肯定と懐疑する不安が脳を周期的に徘徊する。沈む夕日が、俺の不出来な頭蓋骨を射抜いていた。
首の関節は自己陶酔へのパスポート、そういえば前も。この場所で悩んでいたっけ。あの時は確か、葛飾に告白するかどうかで悩んでいたはずだ。
それで、リサと会ったんだよな。
そこから、アイツんちに行って、そっから。
色々変わったんだ。
俺とリサ、友希那、それから葛飾
あの日の帰り道に3人組と会って、そのうち全員と近づいて離れての繰り返しだ。
ほんと、色々あったな。
なんて回想する俺の前に、影が立った。
でも、
「昨日ぶりですね! お兄さん!」
そこにはリサじゃなくて、宇田川が居た。
昨日、フードコートで会った時と同じ制服姿の宇田川が笑顔でこちらを見ている。確か、友希那とバンドを組めたんだっけ。
「友希那とバンド、組めたんだっけ」
脳内と同じ疑問を、口に出す。
友希那から一応聞いてはいるのだが、本人にも聞いてみる。確認というよりは、どちらかというと話題に困ってとりあえず出したような、そんな深い意味の無い疑問が外気に触れて 酸化した声の振動が宇田川に届く。
「はい! 組めました!」
嘘みたいに晴れやかな笑顔で、宇田川が言う。
初めて会った時から思っていたのだが、この子 元気すぎじゃない? 初対面の俺にもめっちゃデカい声で喋りかけてきたし。
なんて事を考えながら「よかったな」なんて適当な言葉を侍らせて間を繋ぐ。すると、
「......でも、紗夜さんは入ってくれなかったんですよね〜。一緒に出来たら、絶対かっこいいのに」
うかない顔で宇田川が言った。
しぼんだひまわりのような、そんな表情だった
夕暮れに合わせたようなタイムリーな表情を浮かべたままの宇田川、その横で自転車のハンドルを握って立ち尽くす俺の、2人きり。
「あれ、想くんじゃん」
そこに、3人目が加わった
水色の悪魔が、立っていた。
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「お姉ちゃん、やっぱダメだったか〜」
俺の自転車のサドルに腹を乗せ、洗濯物みたいにぶら下がったまま言う日菜。「落ちんなよ」と一応注意はしてみたのだが、帰ってきたのは「わかってる〜」っていう、『わかってない』返事だけだった。
日菜に宇田川の事を紹介し終え 友希那のバンドの内情を宇田川から聞いた日菜と俺の間には、多分共通の認識があった。
『きっと、このまま友希那に任せてたままじゃどうにもならない』
って事だ。
バンドメンバーと仲が悪いとか、音楽性の違いなんかがある状況なら 今の友希那でも氷川紗夜の獲得なんて、きっと容易いことだろう。
でも、実際は違う。
「その神田と江戸川って人を、何とかしないとだよな」
日菜と一緒に自転車が倒れてしまわないように、ハンドルを強く握りながら言う。まだサドルにぶら下がってじたばたしたままの日菜と、自販機横の割れたベンチの端に座る宇田川を交互に見る。
「まぁ、そうだね〜」
他人事のように日菜が言う。
サドルに乗せていた腹部をようやく離し、自分の足で地面に立つ。アスファルトと靴が鳴らした音が夕焼けの帰路に響く。その音は、何となく寂しかった。
「あの〜」
自販機で買った炭酸のゼリーみたいなジュースを手に持った宇田川が、控えめな声でそう切り出した。俺と2人だった時の遠慮の無い明るさでは無い 謙虚さが見えた。
まぁ、ほぼ初対面で今バンドに誘ってるけど入ってくれない人物の妹、となると そう無遠慮に明るくは居れないのだろう。
「ちょっと、疑問に思ったんですけど」
間延びした声で、結論を先伸ばすみたいに濁す宇田川。その伺うような、見計らうかのような視線と声音に、少し焦らされたような気分になった。
「どうした、何でも言ってみろ」
つい、先生みたいな口調になってしまった続きを促す言葉を口に出す。俺の発言を後押しするように、後ろに立った日菜がスカートを手で払いながら首だけで相槌をうつ。
その様子を一通り見終えた宇田川が、言った。
「紗夜さんじゃなくて、日菜さんが入ればよく無いですか?」
好きなのはこの中だと...
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湊友希那
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今井リサ
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葛飾麗奈
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氷川日菜