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「なんでお前、姉ちゃんと仲悪いの」
唐突に湧いて出た、嫌な質問に眉を顰める。
今まで繰り返していた1分置きのやり取りが、途切れる。
(ん〜、どうしよ)
全部を素直に話す気も、起きない。今日知り合ったばかりの異性に何でも話すのは少し気が引ける。いくら女子校で男子と関わる機会が少ないとは言っても、そう簡単に信頼していいものでは無いことぐらい、わかる。
リサちーの幼なじみの、『中野 想』くん。
彼は今、私にとって1番都合のいい人物だ。
お姉ちゃんが嫌いになっても、神田ちゃんや江戸川ちゃんに恨まれても私には被害の出ない、本当に都合のいい人。
それに、今 彼は私の『お願い』を断ることはきっと出来ないから 余計に都合が良い。
具体的に何があったかは分からないけれど、きっとあの顔と視線はリサちーと何かがあったはずだ。
私は、他人の考える事を理解するのが得意なのだ
昔はむしろ逆だった、他人になんて興味はなくて お姉ちゃんぐらいにしか、興味はなかった。だから、ずっとお姉ちゃんのやってる事に興味があったし お姉ちゃんのする事は全部一緒になって取り組んで行った。
あの日、お姉ちゃんに拒絶されるまでは。
昨日みたいな、雨の日だった。
『もう 私の真似しないで』
『迷惑なの』
晴天......ではなかったけど、霹靂ではあった。
今まで盲目的にお姉ちゃんのやる事を追い続けていたけれど、それが 知らず知らずのうちにお姉ちゃんを追い詰めていたのだ。
その言葉が、私の身体を貫いて 頭の奥にある大事な何かを引き裂いた音が、聞こえた気がした。
それぐらい、衝撃的だった。
(どうして、そんな事言うんだろ)
(何が行けなかったんだろう)
頭が保身や言い訳を必死にこねくり回す。
過去の記憶を端から端までほじくり返して、次にする自分の行動の候補を手当たり次第に並べて、吟味して考察して結果辿り着いたのが 現状だ。
『お姉ちゃんの邪魔をしない』
これが、私が出した答えだった
そのために私は努力を惜しまなかった。本来なら中高一貫で、そのままエスカレーター式で上がっていくのだが、あえて私は別の高校を受けた。お姉ちゃんと、私を比べられないようにするためだ。
その辺から、私は他人の表情を気にするようになっていた。自分とお姉ちゃんを比べているのではないか、もしかしたら私はお姉ちゃんの邪魔をしてしまっているのでは無いか。
そんな事ばかり、考えていた。
でも、最近になってひとつ気づいたことがある
(きっと、このままじゃお姉ちゃんが私に対して劣等感を抱き続けてしまう)
自分で言うのを憚る気はもう無いが、私は割と何でもできてしまう。逆に上手くできない方法が分からないぐらいだ。
だから、このままのお姉ちゃんだと私に勝てない
このまま同じように努力をして、同じように私から逃げていたらきっと、ダメだ。
でも、私はお姉ちゃんの邪魔をしたくない
これ以上、嫌われたくない
けれど、今のままじゃ限界がある
そんな時に、湊友希那と中野 想を見つけた。
存在はリサちーから聞いていたけれど、初めて本物を見た。特に中野 想は私にとって都合が良かった。これでお姉ちゃんと今のバンドを引き離してくれる人が見つかった。
これで、お姉ちゃんが私に劣等感を抱かなくて済む環境が出来る。
口角が自然と上がってしまう。
今日の私は、少し変だ。ずっと、上機嫌なのだ。
想くんから送られてきたメッセージを流して、お姉ちゃんのバンド...『Reeves Rose』のライブの話を伝えておく。すぐについた既読に、また口角が上がる。
自分の部屋で1人、笑っていた。
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「お姉ちゃんの事、聞きたい?」
別に、話す義理も無いのだが。
何となく送ってしまった。またすぐに既読が着いて「聴きたい」なんていう表情の見えない文章が送られてきた。
(がっつきすぎ)
RINEで送ることはせず、脳内でそう呟いた。
なんで、私はこんなにおしゃべりになっているのだろう。ただ、都合が良いだけの人と、なぜこんなに喋っているのだろう。
急に、我に返ったように。
冷水をかけたように思考が止まる。
もしかしたら、
今まで 誰かに話したかったのかもしれない。
誰かに聞いて欲しかったのかもしれない。
今まで1人で考えて、1人で行動をしてきた私に唐突に現れた初めての共犯者。
もしかしたら、
そんな存在に少し気を許してしまっていたのかもしれない。少し落ち着いた思考で彼の事を、もう一度定義し直す。
彼はただの都合のいい人物で、
『お願い』が終わったら、もうきっと関わる事が無いようなそんな人物だ。
でも、
今だけは ちょっとだけ
ほんのちょっとだけ 信頼してもいい気がする。
そう、結論づけた私は緑の通話ボタンを押した。
「もしもし」
ぶっきらぼうなその声に、また1人 笑っていた
好きなのはこの中だと...
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