評価増えてて嬉しい!!!あと6人でバーが伸びます...
モチベが爆上がりするのでまだ評価をしていない方はぜひ...!
「じゃあ、またね」
中野くんと一緒に帰れる時間が、終わってしまった。寂しさが募っている心を見せないように、明るく言う。なんというか、『重い』ことはしたくないのだ。
彼に『重い』と思われるのが、すごく嫌なのだ。
だから、まるでなんとも思ってないように笑って別れの言葉を彼に言う。笑顔で手を振る私に中野くんが手を振り返しながら、
「おう、じゃあな」
と言い渡す。そんな彼の姿を十分見終えた私は振り返って、1人になった家路を辿る。学校にいた時よりもだいぶ落ち着いた胸中のモヤモヤだったが、考えなければ いけないことが1つ増えてしまった。
中野くんが私と会うまでに話していた女の子の事だ。
あの人の事が、気になっていた。
中野くんの事を名前で呼んでいた、あの人形のような人の事が頭から離れない。彼女は中野くんとどういう関係なのだろうか。制服はうちの物とは違っていたから、知り合いだとすれば小学生の頃にまで遡っていく事になる。
そうなってくると、少なくとも私が彼と知り合うよりも3年以上は前から彼と知り合いということだ。本当はもっとずっと前から知っているのかもしれない。というか、あの親しそうな雰囲気を考えれば絶対もっと前から知ってる。
(考えたくないな)
そう、思ってしまう。
よく友達から言われるのだが、私は他の人よりもずっとネガティブらしい。パッと見の私は明るくて、誰とでも仲のいい人、みたいな印象らしいけれど 実際は少し腹黒くて、それでいて少しだけネガティブなちょっと内向的な人間。
自分でもネガティブだなって思う時もある。そして、私はネガティブな自分が嫌いだ。だから、なるべくそんな気持ちになりたくない。
(...嫌だな)
口に出そうになる暗い言葉をなんとか零さずに抑えて、脳内だけでつぶやく。ため息まじりの呼吸をしながら、さっきまで押していた自転車に跨り また力いっぱいハンドルを握ってペダルを漕ぐ。
頭にはまだ、あの女の子の横顔がへばりついて離れなかった。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
そして、時間は流れて日曜日。
時刻は深夜0時前、風呂上がりで少し湿った自分の体を椅子に預ける。だらしなく椅子に乗っかった私の体はまるでドロドロに溶けているみたいだった。なんでこんなにだらしの無い事になっているかと言うと、答えは簡単だ。
初めて、中野くんが1日以上返信をしなかったからだ。もう一度、既読のついた彼とのトーク画面を見る。私の送った文章の端には既読のマークがついていて、そのマークを見る度に胸が締め付けられる。
返事に困るような文でも無いはずだ。でも、返事は帰ってきていない。いつもなら、忙しくて忘れていたのかな。ぐらいで済んだかも知れない。
でも、私の脳内には金曜日の帰り道に見たあの女の子の姿が頭にチラついていた。そのせいで、ドンドンと私の心は蝕まれていった。
どうすればいいかわからなくて、お風呂に入るまで私はずっと美海に電話をかけていた。「もう1回送ってみたらいいじゃん」なんて呆れながら言っていた言葉を思い出す。私が泣きながら相談したのに、面倒くさそうに、呆れたように返す美海にムッとしていた。でも、安心もしていた。
時刻は0時、悶々とする気持ちに堪えきれず。私は美海のアドバイスを受け入れ、もう一度彼にRINEを送ることにした。『重い』って思われたくないけれど、背に腹はかえられない。これ以上気に病むのは嫌だ。
「土日って」
「どっか行ってた?」
そう、送ってみる。ドライヤーを片手に送ったメッセージにはすぐに既読がついた。その事実が、余計に苦しかった。携帯を見れなかった訳じゃないのに返事が無かった事に来るしさを覚える。
でも、その苦しさも彼の返信でどこかに行ってしまった。「いえtwねいぇts」なんていう、明らかに日本語じゃない返信が来た。でも、こんな意味のわからない文章でも返事が来たと言うだけで喜んでしまう。私って、案外チョロいのかもしれない。そう思いながら彼に返事を打つ。
さっきまで持っていたドライヤーを机に置いて、両手で携帯を持ったまま彼の返事を待って、またそれに返事を打つ。2日間出来なかった、このメッセージを送り合う時間が帰ってきた事が、嬉しかった。でも、なんとなく物足りない感じがした。だから、
「電話」
「かけてもいい?」
つい、送ってしまった。こんな時間に電話をするのは少し非常識なのはわかっている。でも、今は彼の声が聴きたい気分なのだ。しょうがない。
そして帰ってきた「イヤホン準備するから待って」という返事に、また安心してしまう。ほんとに、私ってチョロいのかもしれない。
放置されたドライヤーを見ながら、そう思った。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
彼との電話は、結局3時まで続いていた。それ程まで話し続けていても、話したいことは尽きることなく溢れていた。新しい友達の話とか、今のクラスのこととか、とりあえず沢山。
そして、少し寝不足でふらつく脳を起こして自転車を漕ぐ、朝の通学路特有の澄んだ空気をめいっぱいに吸いこんでペダルを踏みしめていく。すると、横断歩道の前に人影があった。
金曜の帰りに見た、彼の背中があった。
そして、昨日の電話の時みたいなイタズラ心が同時に顔を出てきた。バレないようにゆっくり近づいていく。
なるべく静かに踏み込んだペダル、ふらつきを抑えるために強く握られたハンドル。
ゆっくりと、彼に近づいていく。もうすぐ、声が届く距離だ。
でも、
「......葛飾」
その声で、逆に私の心臓が飛びはねた。驚かせようとしていたはずが、驚かされてしまった。
「えっ、なんで わかったの」
まるで寝起きみたいなぼーっとした顔の中野くんが振り返ってこっちを見てくる。その少し驚いた表情が、きっとたまたま当たったんだと言うことを教えてくれていた。
「せっかく驚かそうと思ったのに」
「昨日のドライヤーで もう十分驚いたから」
呆れた風に言う中野くん。昨日の出来事を、2人だけしか知らない出来事をこうやって話すのが、誰も聞いちゃいないのだけれど どこか優越感を感じさせてくれていた。
「ねぇ、ごめんって」
笑いながら言う。ついでにそっと顔を近づけてみる。そんな私の行動に少したじろぐ彼の姿が、余計に私に優越感を感じさせた。
でも、何となく彼の振る舞いが いつものものと変わっていたように感じた。どこか、変に落ち着いているというか。態度自体は変わっていないはずなのに、何となく変だった。
そして、その変な雰囲気の理由が、わかった気がした。
彼が、私に向けていた視線を辺りに向けた、不自然に止まった視線の先には、茶髪の女の子がいた。そして、その女の子も私と中野くんの事を見ていた。
少しだけ、ドロついた表情を浮かべた茶髪の女の子がそこに居た。その表情が、見ていて少し 辛かった。
「......おはよう」
近づいてくる女の子の表情に釘付けになっていた私の横で、中野くんがその子に声をかける。やっぱり、知り合いなんだ。
「おはよ〜、想」
金曜日に感じた苛立ちが胸を襲う。
また、私の知らない 彼の事を名前で呼ぶ女の子の存在にどうしようもない程の落胆が湧いてきた。私よりも、彼に近い存在に嫉妬してしまう。
「あれ、友達?」
でも、そんな醜い感情を見せないように。取り繕いながら中野くんに問いかける。でも、私の問いかけに答えたのは仲野くんではなかった。
「うん! 昔からの友達なんだ〜」
私はきっと、この人の事が苦手だ。とても明るい表情と声音で言ってくるけれど、どこか底冷えするような雰囲気を隠したような、そんな人だと感じた。なんとなく、漠然とした不安を、この人を見ていると感じてしまう。
そして、
「あれ、また今度でいいから」
捨て台詞のように そう言った。その言葉に、独りで納得した。きっと、土日の間に中野くんとこの人に何かがあったのだろう。なんの確証も無いけれど、そんな予想ができていた。所謂、女の勘というやつかもしれない。
でも、私の勘は案外冴えているかもしれない。
中野くんの表情を見て、そう思った。
立ち尽くして、去っていく女の子の事をぼうっと見ている中野くんの姿が、言葉で言うよりもずっと雄弁に語っていた。
自分の勘が冴えている事が悔しい。
多分、土日に彼が返事をできなかった理由はこの人のせいなのだろう。さっきまでの底冷えするような雰囲気から、寂しげな 大人な雰囲気を纏った彼女の背中を見ながらそう思う。
バニラの匂いが、うざったかった。
「信号変わったよ」
まだ彼女の背中を見つめたままの中野くんに、声をかける。このまま何も言わずにいたら、あの人について行ってしまいそうな そんな感じがした。そんな中野くんを諭すような優しい声が、自然と出ていた。でも、その優しい声とは裏腹に私の心はドロついていた。
それ程までに、彼女の表情は悲しかった。
好きなのはこの中だと...
-
湊友希那
-
今井リサ
-
葛飾麗奈
-
氷川日菜