モチベ自体はあるんですけど、書けない状況が続いてます。なるべく応援してくれるとうれしいです。
気まずさから染み出た汗が肌に張り付いて、店内の空調が巻き起こした風に充てられて冷えていく。その冷たい感覚に刺されながら、辺りを見回す。
現在、俺が居るのは喫茶店『Four clover』以前リサと待ち合わせに使った店だ。そして、今座ってる席も前と。リサと2人で待ち合わせをした時と同じ席だ。
でも、
今回は、状況が違う。
今日この場にいるのはリサと友希那の2人───俺の目の前に友希那、その左隣にリサ───だ。
「でさ、バンドを組んだ理由が...」
蓋の付いた容器から伸びる、丸くて長いストローを唇に当てながら。右手はストローを掴んだままで、リサがさっきまで話してた神田達から聞き出した『Reeves Rose』のメンバーの情報の続きを話し始める。
聴覚に触れる店内に流れるジャズ、空調から出る駆動音。視覚に障るレンガ調の壁紙と、緩んだリサと友希那の雰囲気。
その全てが、落ち着いた雰囲気を醸していた。
「咲が紗夜の演奏してるとこ見て、それで気に入っちゃったみたいなんだよね〜」
大袈裟にストローを持ち上げて、ぶらぶらと掻き回しながら気だるげにそう言う。ファーストネームで神田を呼ぶその進展に、リサの持つ人ヅラの良さを再確認させられながら彼女の弁を飲み込んだ。
やはり、
俺の予想は間違っていないのだろう。
きっと、
俺は氷川と似ている。
そして、神田咲は葛飾と似ている。
「...じゃあ、一目惚れって事か?」
テーブルの下に両手を隠したまま、だらけた格好のリサに問いかける。
俺の言葉に、少しだけ驚いたように瞼を震わせたかと思いきや。すぐにリサは瞳を定位置に持ち直し、半分だけの笑顔で俺に返事を返す。
「一目惚れって...言い方変じゃない?」
リサの隣に座っている友希那も、少しだけ眉を下げて呆れてたような表情でココアの入った容器を握っている。
俺の発言を冗談だと思った2人は、微妙な表情で俺の言葉を受け止めていた。
でも、
これはウケ狙いで出した冗談では無い。
大真面目な、俺の推理だ。
「いや、多分...なんだけど」
リサの言葉への返事、というよりは少しズレた話の切り出し方で言う。俺の少し真面目な話し方に2人は、だらけたような姿勢はそのままで静かに俺の発言を待っていた。
店内に流れるBGMが、ゆっくりと移り変わっていく。
その聴覚の変化が、余計に2人の真剣さの移り変わりを際立たせていた。
「神田は、きっと氷川の事が...好き...っていうか。多分、仲良くなりたいんじゃないかな」
両手の指を組み合わせて、白化するほど強く。ぎゅっと握りしめる。
交互に重なった左右の指の接地面から伝わってくる感覚が、テーブルの下で行方不明になった両手の生存確認をしていた。
「......続けて。」
真面目な顔で、友希那が言う。
ほんのり明るい、赤橙色みたいなライトに照らされた顔が。明るい筈なのに、冷たい印象を与えるような。そんな、不思議な表情だった。
「......氷川が『Reeves Rose』に拘る理由はさ、氷川が何かを変えることが怖いから、なんだよ。」
さっき工場跡地で聞いた氷川の気持ちを汲んだ考察を、2人に話す。俺が氷川を追いかけて行った事は、リサに直接話した訳では無いのだけれど。きっと友希那から聞いてるだろうから、その辺は割愛しておく。
「で、なんで神田が『Reeves Rose』の『ベースボーカル』に拘るのか...なんだけど」
言いながら、両手は隠したままでゆっくりと正面を見る。真面目な顔で向き直っている友希那と、ストローを弄って手すさぶリサ。対照的でいて、どこか息の合っているようなその仕草が、このカフェの景色と調和していた。
「......紗夜の事が好きだから、って言いたいの?」
訝る友希那。寄せられた眉が、口ほどに物を言っていた。
「......あぁ。」
ため息か、それとも相槌なのか。判別できないほどに頼りなく。なりそこないの声が垂れ下がっていく。
友希那の、日本刀みたいに研ぎ澄まされた強い言葉とは比べ物にならない程に。今、リサがいじっているプラスチック製のストローみたいに頼りない俺の声が、辺りを揺蕩っていた。
「......上手く説明できないんだけど。何となく、そう思うんだよ。」
なんの根拠も、なんの確証もないけれども。妙に確信を持っている俺の考察を、突拍子もなく2人に告げた事に、少しだけ後悔をしながら項垂れる。
隠したままの両手を、リサの手すさびの真似事みたいに捏ねくり回して。行き場のないやるせなさを、空気を溶媒にして溶解させていく。
「......んん〜...」
そんな中、黙りこくっていたリサが喉を鳴らした。
右手を天井に向かって突き上げ。左腕を曲げて右肘にあてがい、支えるようにして身体をぐうっと伸ばしている。
その苦悶のような喉の音は、ゆっくりと空気に溶かしこんでいた俺の不安や、緊張を再結晶させるような、そんな音だった。
「......ふぅ...」
そして、凝り固まった体を伸ばしきったリサが溜め込んだ空気を排気する。その声を、俺と友希那は黙って聴いていた。
友希那は、リサの言葉を待つみたいに。
俺は、リサの言葉を身構えるみたいに。
2人とも、リサの方を見ていた。
「......想、それってさ」
両手をテーブルの上に置き。肘から手首までをベッタリとテーブルに貼り付けたまま。両手を組み合わせてリサが口を開く。
まるで、説教をする前の母親のようなその姿勢が。余計に俺の心を身構えさせた。
でも、身構えたはずの俺の心は。まだ生ぬるかったようだ。
「咲と葛飾さんが、似てるからそう思ったの?」
そのリサの言葉が、呆気なく俺の心を貫いた。
好きなのはこの中だと...
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湊友希那
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今井リサ
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葛飾麗奈
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氷川日菜