肌に張り付く不快感で目が覚める
今年の春は寒春らしく、例年よりも寒くなるらしいのだけれど今日は珍しく汗をかいていたみたいだ。
寝てる間にかいた汗なのか、それとも寝る前にかいた汗なのか、どうでもいい事が少し 気になった。
昨日は、どうかしてた
って 過去形で言えたら良かったんだけど
どうやら一晩明けた朝でも、後悔は身体から湧き出てはいないらしい。
カーテンの外の景色はまだ見えない。繊維の隙間から光が漏れてこないって事は、きっとまだ朝が早すぎるんだろう。
まだ寝ぼけたままの身体を起こす
昨日の疲れが、まだ抜けきっていない
下腹部の辺りにはまだ、違和感がある
まだ暗い自分の部屋を見渡しながら
昨日のことを思い出す。
昨日の友希那の家で聞いた、想の片思いの話。
あれを聞いてから どうにも自分がどうにかなったみたいに極端な行動に出てしまう。しかもタチの悪いことに、理性で止めようと思っても 理性が体から少し遠い位置にあるみたいに その行動を見過ごしてしまう。
『どうにでもなってしまえ』
そう、思ってしまっていた。
ベッドの横の床に敷いたしわくちゃの布団の上でまだ眠っている想。今この瞬間だけは、アタシしか想の事を見る事ができない。寝ていて無防備なこの表情は、世界でアタシ1人しか見ることが出来ない。
そう思うだけで、また少し心が高ぶった
惚気、というか 自己陶酔に浸るのは一旦やめて 落ち着いて昨日の自分の行動を振り返ってみる。
昨日アタシがした事はだいたい2つ
1つめは想とキスをした事
理由は、想の話を聞いたからだ。あの話を聞いて 急に今まで考えもしなかった、想が誰かと付き合う姿を想像してしまった。想の隣に、アタシでもなく友希那でもない誰かが居て 幸せそうにしている姿だ。
その姿に気づいた時、急激に想の存在が遠のいた気がした。友希那とアタシと想、3人で話しているはずなのに 想の存在が今にも消えてしまいそうに感じてしまった。
同時に とても恋しくなった。
隣に居るはずなのに心にぽっかり穴が空いたような欠乏がアタシを襲った。それを自覚しながら、でも。友希那の前では普通を装って いつものアタシでやり過ごした。
友希那には、この欠乏や 不安を見せたくなかった
だから 想と二人でアタシの家に帰ったあと、キスをしたんだ。
少し狡いかもしれない、でも。
想の片思いの相手も、想じゃない人の事が好きなんだから。アタシが想の事好きでも、問題なんてないじゃないか。
そう、開き直ってみたんだけれど
困惑している想の顔や、バツの悪そうな顔をいざ目にしたら 少し胸が苦しくなった。
でもそれと同時に、もっとその表情が見たい
アタシの事だけで、想の脳を満たしたい
こんな気持ちが襲ってきた。
心苦しいさなんて一瞬で跳ね除けてしまえるぐらいの強い感情に押しつぶされそうになった時に、お母さんが帰ってきてしまった。
それで、頭が冷えたはずだった。
想のカバンの中に入っていた、アレを見るまでは
想が携帯を取った時、開いたままになっていたカバンの側面についているポケットから少し覗いていたピンクの袋。一瞬なんなのか分からなかったけれど、その正体に気づいた時には 頭が冷えるどころか燃え盛っていた。
『なんだ、用意してるじゃん』
それが2つ目の行動
16年間生きてきた人生で1番の大勝負だ。シャワーを浴び、燃え盛った頭をもう一度熱いシャワーで冷まし、想に問いかけた。
「さっきの、もっかいしよっか」
今思えば、随分恥ずかしい事を言った
キザというかなんというか
でも その囁きがアタシと想の間にあった見えない壁を壊した。お互いを阻んでいたモノを取り去らって、夜を貪った。2人以外、世界に他に誰もいないような気分だった。
想の片思いの相手も
その瞬間だけは、想の頭から離れていたはずだ
その瞬間だけは、想の喉はアタシの名前と同じ音しか震わせなかった。
このまま想の頭の中を、その女に返したくない
想の脳内は、アタシだけが入るスペースさえあれば それでいいとさえ思った。
それは昨日の夜だけの話じゃない
今だってそう思ってる
でも、想も片思いの相手に そう思ってるのかもしれない。自分の事を好きになって欲しいって、ずっと考えているのかもしれない。だとしたら、悲しいな。
なんで、もっと早く気づかなかったんだろう
もっと先に、中学生になって学校が離れる前に この気持ちに気づけたら こんな気持ちを患わなくて済んだのに。
病のように私の心を浸す、ドロついた感情
その感情を分け与えるように、注ぐみたいに 寝ている想の唇をもう一度奪った。
きっと、目が覚めたら 家に帰ってしまう
その前に、もう少しだけ想を独り占めしたい
だって今だけは、想はアタシのものだ
好きなのはこの中だと...
-
湊友希那
-
今井リサ
-
葛飾麗奈
-
氷川日菜