コロナにポジったぜ。 投稿者:変態糞土方   作:ぴぁおる

6 / 7


題名無し 投稿者:変態糞土方 (2020年 10月22日(日)07(なな)時14分22秒)

 

 

 

 昨日の10月21日、いつもの浮浪者のおっさんがかつて寝ていたベッドに、汚れ好きの土方の兄ちゃんが入って来たぜ。

 

 あの時のおっさんと同じく、既に呼吸はひくひくしてきていた。

 

 その日のうちに、亡くなったんや。

 

 

 もう、男汁は、出ない。

 

 

 

 

 

 

建ったぜ。 投稿者:変態糞土方 (2020年 10月30日(月)07(なな)時14分22秒)

 

 

 

 もはや医療は、本当の意味で崩壊したぜ。

 医師も看護師もコロナに倒れ、病院を管理する人は誰もいねぇぜ。

 

 治療や看護をする人がいなくなり、重症者は全員亡くなったんや。

 軽症者はどうせ死ぬならと病院の外へ繰り出し、家族に別れを告げるために、残りの寿命を体力に突うずるっ込んで脚を使って居る。

 

 

 わしはベッドの上で独り、NHKのラジオをつける。

 

 いつの日からか、ラジオから聞こえる声は、いつもの朝のテレビに出ていたおっさんの声から、知らない姉ちゃんの声に変わっていた。

 滑舌がボロボロで、聞き取りにくいぜ。至急戻してくれや。

 たまに咳と息切れが混じるし、音割れもするし、もう最悪やで。

 

 

 

 姉ちゃんによると、この医療者の死亡、そして患者の脱走は、世界中で起こっているらしい。

 

 もうめちゃくちゃや。

 

 

 

 姉ちゃんによると、CDCとかいうアメリカの機関が『既に人類の3割が死亡し、残りの7割は死へのカウントダウンに入った』と発表したらしい。

 

 人類は限界やで。

 

 

 

 姉ちゃんによると、もはやあの頃の日常は二度と戻らないらしい。

 

 

『……ケホッ、ぜぇ、はぁ……なお、深刻な人材の不足により、本日22時の再放送を以て、NHK岡山放送局の全業務を、ゴホッ、停止、いたします。今までのご愛顧、広報担当者として心からの御礼を……御礼を……ぐすっ!ひっぐ……も、申し上げますっ……!』

 

 

 ね、姉ちゃん、広報やったんか……。

 

 ああ……。

 

 アナウンサーも、記者も、デスクも、キャップも、とっくに皆死んだんやな。

 

 

 ……今までご苦労さんやで、姉ちゃん。

 

 

 

 

 姉ちゃんによると、次が最期の言葉らしい。

 

 

『ゴホッ……最後に、我が県のみならず日本全体の感染対策に、骨身を削って対応に当たった岡山県知事。故・井木凌太さんの遺言を、岡山県民の皆様にお伝えします——』

 

 

 

 

 

 

"

 人類に残された時間を、ご家族と共に過ごす為に使って下さい。

 独り身の方も、隣人の手を取って、言葉を交わしてください。

 それが私の、最後の願いです。

 

 

 隔離が意味を成さなくなったことは、廃墟と化したロンドン、パリ、ベルリン、ブリュッセルといったEU諸国。そして生存者の消えた東京の惨状を見れば、明らかでしょう。

 

 もはや世界は、限界です。

 地球が持たん時が来ているのです。

 

 

 日に日に悪化する、世界の状況。

 私は、一つの決断を下すことにしました。

 

 

 県民の皆さん、どうかよくお聞きください。

 

 人を人たらしめているのは、愛です。

 愛ゆえに、人は孤独から解放され、愛ゆえに、希望を見出し。

 そして愛ゆえに、人は生きるのです。

 愛こそが、人の生きる意味なのです。

 人は、一人では生きられません。これは物質や流通的な意味ではなく、です。

 モノに満たされていても、孤独ならば、愛が無ければ、心が耐え切れない。

 

 私はこのベッドの上で、呼吸もままらならぬ状況になってようやく、それを実感することができました。

 

 あくまで私の考えですが、あながち間違ってもいないはずです。

 

 一人ではない。そう感じられることが、一体どれだけ心の助けとなるか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この遺言の開陳を以て、岡山県は、日本国から独立することを宣言します。

 

 

 

 

 国号は、『晴れの国おかやま』。

 

 これ以降、『晴れの国おかやま』の名の元に、国内に限り、外出制限を全て撤廃。

 新型コロナウィルス感染者の外出も、全面許可します。

 

 

 瀬戸大橋に沈む夕日を見るのも良いでしょう。

 美観地区で過去に思いを馳せるのも良いでしょう。

 休園中の岡山後楽園も、自由に出入りして構いません。

 おそらく紅葉の季節でしょうから、奥津渓で紅葉狩りしたり、みやま公園でピクニックするのも良いかもしれませんね。

 観光地ではなくとも、例えば近所の公園や河川敷。そういう場所も素敵ですね。行くだけでも随分と、気が晴れるはずです。

 

 

 

 県民の皆様。

 外へ出て、岡山の美しさを堪能してください。

 喜びを、身近な人と分かち合ってください。

 

 これが日本の、岡山の、最後の季節です。

 間違いなく、冬を越すことは出来ません。

 

 限りある時間を、愛する為に使いましょう。

 せめて最期くらいは、人間らしく過ごしましょう。

 あなたは一人ではありません。

 

 

 外へ出て、自然を観照し。

 空を見上げ、人生に思いを馳せ。

 身近な人に、愛を伝えてください。

 我々の時間は、もうほとんど残されていないのですから。

 

 

 

 

 さあ、急いでください。時間はありませんよ。

 

 県内の全市役所・役場において、公用車の利用を解放します。キーは既に挿さっているので、ご自由にご利用下さい。

 また、発電機とガソリンも、市役所・役場の目立つ所にいくらか置いてあります。夜間の団欒を過ごす際に、是非どうぞ。

 そしてささやかではありますが、岡山市北区の私邸も解放します。実は私、映画鑑賞が趣味でして。映画DVDの所持数には、ちょっとした自信があります。こちらも、自由に持ち帰っていただいて構いません。もちろん、その場で鑑賞していただいても結構です。

 

 

 『国』には、希望が必要です。

 私は、岡山の希望になりたかった。

 この遺言が県民の皆様の希望になれたなら、私は本望です。

 たとえそれが、仮初のものだとしても。

 

 

 床に臥せった私が出来ることは、これが精一杯です。

 あとは、県民の皆様次第。

 どうか、悔いのないように。

 ここ数ヶ月、辛く、苦しい期間が続きました。

 せめて最期の瞬間だけは、『ああ、生きてて良かった』と思えるように。

 人生のラスト1ページ。どうか、謳歌なさいますよう。

 

 

 

 

 ……さて、一県知事の身には、少々出しゃばりが過ぎたでしょうか。

 私の役目は、これで終わりです。

 ここらで一足お先に、失礼させていただきます。

 

 最後にはなりますが、岡山県知事を務めた者として、県民の皆様に、篤く、篤く篤く、御礼申し上げます。

 今まで、ありがとうございました。

 

 

 第18-19代岡山県知事 井木凌太

"

 

 

 

 

 

 

 

 ああ^~

 

 やはり、岡山県知事は最高や。

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。