俺がヒロイン   作:愛夢広入

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頭を空っぽに。

考えたら負けですよ。


01 俺が美少女幼馴染

「彼は間違えた」

 

 そう呟く。それは致命的で、悲劇的な間違いだ。もはやその間違いは罪と言っても過言ではない。しかしそれは仕方がのない間違いだ。なにせ、彼自身にはどうしようもない間違いなのだから、その責任を彼に問うのは酷だ。ましてやその罪を背負わせるのは、それこそ間違いである。だとしたらどこに責任があり、何に罪を負わせれば良いのか。

 答えは一つ。大罪とも言えるそれを担えるのは神しかいない。それに人が干渉が行えない以上、上位存在である存在するが実在しないそれに丸投げする他はないのだ。

 いや、そもそもそれらを求める必要はない。それに対して何をするかが大事なのだ。だから俺は間違いから目を背けず、それに向き合う。

 

「だってそれが親友って奴なのだから」

 

 俺と彼との付き合いはかれこれ十余年になる。所謂幼馴染という奴だ。ほぼ同時期に産まれ、家も近く、幼稚園も同じだったとなれば面と向かって親友だと言い合える仲になるのは自然の流れだった。彼の年の離れた姉が、俺達の仲を取り持ってくれていたのもその要因かもしれない。ともかく彼と俺は親友である。

 そんな親友に俺は昔から違和感を感じていた。違和感と言ってもそれは小さなもので、時折"あれ?"と感じる程度のものだ。しかし、その違和感は徐々に大きくなっていく。彼と顔を合わせる度に、会話を重ねる毎に、何とも言えぬ感覚に襲われる。

 そこで一度、その違和感の正体が何なのかを考えることにしたのだ。観察し、触れ、話し、考察を行った。その過程で女子が騒いでいたが些細なことだ。

 そして俺は件の間違いに気が付いた。スッ、と心が晴れ渡る。嗚呼、これだ、と。歯車が噛み合う。それと同時に使命感を抱く。俺がどうにかしなければ、と。

 俺がしようとしているのは神の所業。現在の技術でも不可能ではないが、完璧なものを求めるならばそれは神域に踏み込む必要がある。更に欲を言えば、間違いを無かったことにしたい。歴史の改竄という現在への冒涜。罪を大罪をもって消し去る。矛盾すら感じるそれを、俺は為したいのだ。

 ベストは歴史の改竄、ベターは現在の変革。目的が決まる。それからの行動は早かった。この世界で最も神に近い彼女を頼ること。それが唯一俺ができることだった。

 

「ということで一夏をTSさせてくれませんか」

 

「頭おかしいんじゃない?」

 

 中学三年生の春、どうしても助けがいる時に連絡しなさいと渡された通信装置を使って、指名手配中の彼女――篠ノ之束を呼出した。そして事の経緯を話し、頼んだ。即行で断れた。解せない。

 

「……?」

 

「いや、心底わからない、みたいな顔されても束さん困るんだけど」

 

「良く考えてくださいよ。一夏って、男にしとくの勿体なくないですか」

 

 容姿端麗で、運動も勉強もできる。かなりの御人好しで、人となりも良く、男女ともに友人が多い。それに加えて料理も上手いのだ。あれに慣れてしまうと外食ができない、それほどのレベルである。家事もできるし完璧な主夫なのだ。そしてなにより幼馴染属性があり、ボディタッチも多い。

 

「もうこれ、異性だったら恋始まってるよ。だからTSさせよ?」

 

「妹の幼馴染がしばらく会わない内におかしくなってる件について」

 

「できれば、過去改変で最初から女の子にできるなら尚良し。やっぱり中身男より中身も女の方が良くないですか」

 

「手遅れだこれ」

 

 結局、彼女とはロクな会話にならず通信は終わった。解決しなかったが、長年の"違和感"は解消されたので一先ず良しとする。

 

「はぁ……俺の幼馴染ヒロイン化計画が」

 

 良しとしたが素晴らしき計画が消えてしまった事には変わりはない。常識を引っくり返す天災兎ですら無理となるともう諦めるしかないだろう。良い考えだと思ったのに残念である。

 

「いや、待て。無理とは言っていなかったぞ」

 

 束さんは終始首をかしげて何を言っているかわからないポルナレフみたいな表情をして、最終的に断ってきたが“無理”とは言っていなかった。その代わりに、えー、とか、嫌だ、と言っていたのだ。“嫌だ”つまり、できるけど嫌だということだろう。

 

「では何故断ったのか」

 

 何の疑いもなく俺の意見は間違ってはいない。にも関わらず断ったのは、そこに一夏の意思がないからであろう。それならば納得である。確かに、勝手に人の性別を変えるのは良くない。例え“間違い()”であっても、だ。

 

『一夏、女体化しないか』

 

『ちょっと何言ってるかわからない』

 

 なので、メールを送り許可を得ようとしたら断られた。解せぬ。今度こそ、計画が終わった。流石に嫌がっている一夏を女にすることはできない。俺にとってそれ(一夏が男なの)は間違いであるが、彼にとってはそうではないのだ。自身の都合を、理想を押し付け、そうでなければ罪だというのは、それこそ罪であろう。

 

「可愛い幼馴染ほしかったなぁ」

 

 本音が漏れる。もはや取り繕う必要もない。俺はただ、幼馴染とラブコメしたかっただけなのだ。

 束さんの妹という可愛い幼馴染事態はいるのだが、彼女には何かと顔を赤くして殴らたりと嫌われているので望みはない。

 ならばポテンシャルがある一夏を女体化と考えたが、人生そう上手くいかないものである。

 そんなにTSするのは嫌なのだろうか。そういう作品を見るにそこまで悪くないような気がするがのだけど。

 

「――っ!」

 

 衝撃、走る。

 

 俺はラブコメがしたいのだ。幼馴染とのラブコメがしたいのである。そう、幼馴染とのラブコメができればそれで良い。

 ()()()()()T()S()()()()()()()()()()()()()

 

「そうだよ、その手があった」

 

 そこからは早かった。目指すは彼女の家の地下。かの神器(IS)が産声を上げた聖地。そこにあるであろう奇跡の果実に手にするのだ。あの様子では彼女は助けてくれないだろう。ならば自身の手で成し遂げるしかない。

 

「あった」

 

 秘密のその部屋は幼かった頃と変わらず、合い言葉も変わっていなかった。あっさりと開いた扉のその先、最奥。ガラクタだらけの部屋で唯一片付けられたそこに置いてあったのはISコアの原型であった。始まりのISの更に前のプロトタイプ。

 奇跡を起こすには奇跡に頼る他ない。女性にしか扱えないISの心臓。これを扱うことができれば逆説的に俺は女ということになる。

 

「ふっ、我ながら完璧だ」

 

 そして俺はそれに手を伸ばし――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヤバい、俺超可愛いんですけど」

 

 

 

 

 ――この日、俺は女の子になった。

 

 

 

 

 




「俺は男をやめるぞ一夏ー!」

ISコアを胸にグシャー!

ペカーッ!!


「フハハハ見ろ、見事な美少女だァ!」


そんな光景があったりなかったり
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