女の子を助けたら裏社会に堕とされた   作:なっち様

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プロローグ

『君、少し勘違いしていないかい』

 

 男の声がする、その声はどこか楽しげで喉を鳴らし笑っている。疑問の形をとっているがその言葉ははっきりとした断定だった。

 

 

「勘違いだと?」

 

 分からない、なぜ男は急にそんな事を言い始めたのだろうか。嫌に自分の呼吸の音が聞こえる。

 

『ああ、勘違いだ。どうも君はここを法と秩序が支配する場所だと思ってそうだからね、認識を正してあげようと思って』

 

 男は一呼吸置いて続けた。

 

『今、ここは暴力と利益が支配する鉄火場だよ』

 

 瞬間、空気を切り裂く音がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第一話

 

 朝起きて朝食とお弁当を作る、と言っても朝食はトーストを二枚焼いてバターを塗るだけだ。焼きあがったトーストを皿に移し牛乳が入ったグラスと一緒にテーブルに置けば朝食の完成だ。我が家の朝食は乳製品が多く割合を占めている。十分もかからないで完食し洗面台で歯を磨きひげを剃ってから制服に着替え家を出た。「行ってきます」は必要ない、家族はいないから。

 

 俺と同じ制服を着た学生がまばらに歩いている道を同じように進んでいると背中から声をかけられ張り振り返るとそこにいたのは月城恭子(つきしろきょうこ)だった。

 

「おはよう刀夜!」

 

「ああ、おはよう」

 

 恭子は俺の幼馴染だ。恭子は俺の隣に並び俺も再び歩き始め、そういえばと前置きをして話し始めた。

 

「今度の超能力検定が終わったら皆で打ち上げするって聞いた?」

 

「……知らない、どこでやんの?」

 

「前と同じで焼肉行くって」

 

「サンキュー」

 

 朝から落ち込んだ気分になる、恭子が異能力検定のことなんか言うからだ。

 超能力検定とは全人類が持っているとされる様々な異能の力を教育によって画一的にするために行われる検定、要するに超能力テストだ。『透視』や『千里眼』の能力を持つ者は決められた水準まで視るテスト、『テレパシー』や『精神操作』の能力を持つ者はメッセンジャーにどこまで伝えられるかの試験など規格と範囲は違ってもやれることが似た能力同士で測る試験だ。それが近々ある。

 

ただ、超能力検定は検定という通りテストではない、だから赤点はない。そもそも似た能力であって同じ能力ではないのだ、画一的と言っても限界がある、出来ないからと責められるようなことはない。しかし、検定結果は英検、漢検のように資格として扱うことが出来るのだ。それが就職や進学と闘う世の学生が真面目にこの検定に挑む理由でもある。

俺――火野刀夜(ひのとうや)の場合はそれ以外も真面目に検定に挑む理由がある。

 

月城恭子に勝ちたい。

 

それが一番の理由。

幼馴染の俺たちは付き合いも長く仲もいいが、付き合いの長さの分だけ喧嘩もしてきた。子供の喧嘩だ、手が出ることもある、超能の力をぶつけ合うことだってあった。そしてそうなった場合俺は恭子には勝ったことがない。恭子は強かった、それは今も変わらなくて学校一、もしかしたら日本一、超能力が強いのかもしれないと思わせるくらいには恭子は強い。

 

そんな俺と恭子の能力は似ていた。

出力も範囲も違ったが引き起こす現象だけは似ているのだ、そうなれば当然人は比べたがる。最初は喧嘩の勝敗で、次は超能力検定でだった。結局それでも俺が恭子に勝ったことはない。むしろそのころになると周りの判断なんかとっくについていた。

 

月城恭子の能力の方が火野刀夜より優れている。

 

気づいたころには勝ち負けと意識してるのは俺だけだった。一度判断がついたからには周囲の人間にとってもう勝負ですらないのだ。

 

並んで歩いていたはずの恭子は気づけば俺の先を歩いていた。少し考えすぎたか。「遅いよ」と言う恭子は超能力検定のことなんて気にしたことすらないのかもしれない。俺は走って恭子の元まで行った。

 

 

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