女の子を助けたら裏社会に堕とされた   作:なっち様

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日常の風景

学校ではクラスの違う恭子とは別れ、自らの教室に入る。先生はいつも通りまだ来いていない。教科書を鞄から机に突っ込んでいると友人の雲川八事(くもかわやごと)が俺の机にもたれかかるように腰かけた。

 

「なあー、今日の帰りにさぁ、どっか遊び行こうぜー」

 

 えらく間延びした声で雲川が遊びに誘ってきた。

 

「場所とすることによる、ゲーセンとかなら行かない」

 

 遊び行くというだけの情報じゃ簡単に首を縦には振れない。あれだ、バイト先の女の子の「明日暇?」の質問の返答が次にお前が言うことによっては暇にも忙しくもなるといった状況に似てる。

 

「特に決まってないんだよなー、なんでゲーセンは駄目なの?」

 

「お前一緒に出来るゲームとかしないじゃん、一緒に行く意味あんまなくないか?」

 

「えー、お互いに好きなことをできる空間にいるだけで面白いじゃん」

 

 なんなら俺の事ほっといて刀夜が好きなのずっとやってていいしさ、と雲川が言う。あれゲーセンに行く流れになってないか?

 

「じゃあ、刀夜はどこか行きたいとこあるの?」

 

「……特にない」

 

「じゃあゲーセンでもいいじゃん!」

 

 雲川が言い終えるのと同時に教室の扉が開いた。先生がやって来たようだ、担任は席に着け―、といい教卓の前にたった。

 

「……あとでまた話そうぜ」

 

 雲川はそう言って自分の席に戻っていく、俺も、分かった、と返して前を向いた。

 それから担任は朝の挨拶に少しの話と連絡を告げホームルームが終わった。各々が次の授業に向かう中で俺は担任に呼び止められた。

 

「火野、前話してた『P・S・P』見学のことなんだけど」

 

 『P・S・P』とは超自然解決超能力者(Psychicer to Solve Psychic)部隊のことだ。彼らは超能力事件が絡んだ特殊犯罪を取り扱っている部隊のことだ。

 

「どうでしたか?」

 

「来週の水曜日に学校終わったら訪ねて来てくれってさ」

 

「そうですか、ありがとうございます」

 

 俺は小さく拳を握りしめた。先生の報告は喜ばしいことだったからだ。何を隠そう俺は将来『P・S・P』に入りたいと思っている。

 

「伝えたからな、何か用事が出来たときは先生じゃなくてあっちに連絡しろよ?」

 

「わかりました」

 

「じゃ授業遅れるなよ」

 

 そう言って先生は去っていった。

 

教室を出ると雲川が廊下で待っていた。二人で歩いていると階段へ続く曲がり角で雲川が口を開いた。

 

「先生と何話してたの?」

 

「『P・S・P』の見学オッケーだってさ」

 

「ああ、その話か。お前凄いよな」」

 

 雲川の目はどこか遠くを見るような目で俺を見ていた。突然の賞賛に思い当たる節が無かったので俺は軽く吐息をして返した。

 

「何がさ」

 

「将来の事もう考えてるってことだよ、しかも『P・S・P』だもんな、目標高いよ」

 

「俺は目指すきっかけがあったからな」

 

 俺が『P・S・P』に入りたいと思ったのは子供の頃の事件がきっかけだ。

 

 俺の家族は俺以外全員死んでいる。超能力による火事でだ。当時小学生だった俺は奇跡的に夜中に目を覚ました。

ベットから体を起こした俺は炎を見た。音もにおいもしない無音の炎だった、すぐ近くで燃えているのに熱さを感じない不思議な炎。それは二階の俺の子供部屋の床を燃やしていた。

 

俺の能力がなければ起きれなかったと思うその惨事に当時の俺は慌てて外に飛び出そうとした。この時に気づけていればまだ両親は生きていたかもしれない。

 

二階の子供部屋が燃えているというなら下の部屋で寝ていた両親はどうなっているのかという簡単なことにも気づかずに俺は能力で強行突破して外に出てしまった。

 

その後騒ぎを聞きつけた消防隊が火を消しに来るも消えず『P・S・P』が出動して能力によってやっと鎮火された。後で聞いた話だと能力によって消えづらいように強化されていたようで、音もにおいもせず暑さを感じさせない消えない炎という強力な能力だったらしい。

 

 復讐をしたいわけじゃない、自分のことだけじゃなく他人を助ける姿に憧れたんだ。子供の俺は自分のことしか考えれなかったから。勿論、俺が両親のことに気づいていても二人が助かっていた可能性は低いということは分かっている、けど。

 

「将来の事考えてるんじゃなくて、過去の清算なのかもな」

 

「どういうことだよそりゃ」

 

「なんでもねぇ、授業遅れるぞ」

 

「あ、おい!」

 

 俺たちは急いで階段を駆け上がっていった

 

 超能力検定の前ということもあってか先生方の手心を感じる授業が半分終わって昼休み、俺は弁当をもって屋上へと向かった。屋上を仕切る去年買い替えられた新しい扉も若さと力が有り余る生徒の前では新品らしさを保つことは不可能だったようで開けるとギギギ、と歪んだ音がした。

 

 いくらかのグループで集まって昼休みを満喫している中で一人壁を背に座る月城恭子はその美貌もあってかすぐに見つかった。

 

「雲川は?」

 

 恭子もやって来た俺に気づいたようで顔を上げて聞いた。

 

「日直の黒板けしで遅れるって」

 

「ああ、なるほど」

 

 俺は恭子の前になるように座って弁当を開く。

 

「今日も詰め込んだね」

 

 恭子がこういうのは俺が自炊しているのを知っているからだ。

 

「考えるのめんどくさいから全部焼いた」

 

「それどうなの?」

 

「食えるからいける」

 

 野菜炒め肉炒め全部入れる順番が違うだけで奥に手間がないから楽でいい。困ったときは大体フライパンに食材いれて炒めて調味料に頼っている。

 濃い味付けの肉をつまんでいると雲川がやって来た。

 

「わり、日直で遅れた」

 

「うん刀夜から聞いたよ」

 

 雲川は購買によってきたようで俺の隣に座るとパンを包装しているビニールをびりびりと破いた。

 

「じゃあこれは聞いたか?刀夜、『P・S・P』の見学OKだってよ」

 

「ほんと!?凄いじゃんか刀夜」

 

 雲川が恭子に朝の話を教えた。恭子が凄い奴をみるような目で見てくる。

 

「まだ見学だよ、それに恭子の実力なら見学なんて言わず入隊することだってできるだろ」

 

 俺は本気でそう思っている。

 

「私はいいよ別になりたいわけじゃないし」

 

 缶ジュースのプルタブを開けながら恭子が言った。

 

「いつも思うけどもったいないよな、月城の親父って『P・S・P』本部のお偉いさんだろ?絶対コネで上まで行けるのに」

 

 雲川の言う通り恭子の父親は『P・S・P』の本部長だ。幼馴染の俺ですら数えるほどしか会ったことがないほど多忙らしい。いかにも私不機嫌です、といった顔をしているのが印象深い。

 魁人はお父さんにそんな権限ないよと、こぼし、

 

「それに自分の力でどこまでやれるか試したいんだよね」

 

 恥ずかしそうに頬を掻いた後吹っ切るように缶の中身を飲み干した。

 

「何々、月城も将来の事もう決めてんの?」

 

 雲川が興味深々と言った顔で恭子に質問する。恭子は困ったのか照れたのか顔を少し赤くしてなぜか俺を見た。

 

「……それは少しだけ決まってる」

 

 首をかしげているとなぜか雲川にため息をつかれた

 

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