な!なんだあいつ!(展開が)速すぎてついていけねぇ!
総武高校生活、2日目がもうすぐ終わる。
体感的に今日はとても早く感じた。というのも、授業がとても難しかったからなのだが。
そういえばここ、進学校だったな。2日目で、いきなりセンター対策とかしだすからわけわからなかったぞ?なに?あの長文の量。俺が知ってる単語、2割ぐらいだったんだけど。
まぁ、おかげで昨日のことをよく考えることができた。
奉仕部は、いつなくなったのか。そして、何故なくなったのか。
だが、まだ答えは出そうにない。こればかりは、本人達や、関係している人たちに聞くのも憚られるからなぁ。いや、マジでどうするんだよ。
そんな終礼の終わり直前に先生は、俺にこう言ってきた。
「はい、じゃあ放課後、評議委員は、評議委員会があるから。後藤君はすぐに生徒会室にいくようにね」
「あ、はい....」
そうでしたぁ!俺、評議委員でした!転校生なのにね!もっと、適任がいただろ!前の方の相模とか!相模とか!相模とか!
まぁ、しょうがねぇか....
そんな、めんどくささ半分、もどかしさ半分で俺は教室を後にした。
人は、本当に見たかったものをみたとき、動くことが出来ないという。今の俺がまさにそれだ。だって、いろはすが目の前に居るから。
え、かわいすぎん?想像の100倍かわいいんだけど。え、ヤバい。また泣きそうになっちゃう!これは、避けなければ!
そうして、俺は視線を横にずらす。
今、俺は生徒会室にいる。ということは、ほぼ確実にいろはすがいるわけで。
「じゃあ、後藤先輩?席に着いたら、この書類に必要なこと書いてくださいね!」
そう、言いつつ書類を俺に渡してくる。と、その時偶然、手が触れてしまう。当たり前だが、向こうはなんともないようにしている。だが、俺はというと、そうとうヤバかった。
え。今手触れた!?なに?わざと!?いやなわけないか!そうだよな!俺なんかには、そんなことしないよな!めっちゃ柔らかかった!
大分、動揺しつつも、なんとか席につく。いやぁ、いいことあったなぁ。まぁ、手なんだけど。
評議委員会と言っても内容はただ、仕事の説明だけだった。どうやら、学級委員長のようなことをするらしい。
その時俺は、正面の長机の端に座っている、役員らしき男子の後ろにある、ファイルに目が止まった。
2019年度部活動活動報告書?え?てことは、あれを見れば、奉仕部がいつからなくなったのか、わかるんじゃないか?
「はい!これで今日の評議委員会は終了です!お疲れ様でしたぁ!」
そこでいろはすの間延びした声が聞こえる。今日のところは終わりらしい。みんなが早々と、帰っていくなか、俺はファイルの目の前の男子生徒に話しかけに行った。どうやら、副会長らしい。
「ごめん、副会長。突然だけど、その後ろのファイル見してもらっていい?」
「ちょっと確認しますね。会長ー?この部活動活動報告書、見していいかな?」
するといろはすは訝しげに俺を見てくる。
「えー....、先輩はそれで何をするんですかぁ....?」
「あーいや、ほら!俺、転校生だからさ!部活選びの参考にしようかなって!」
「....もう、3年なのに?」
「え?あ、いや、俺進学しないからさ。だから、いいかな?」
「まぁ、じゃ、いいですけど....」
いろはすは納得してないようにしぶしぶと行った感じで答えてくれる。
ごめん!いろはす!後で個人的に謝りにいくから!だから待っててね!(キモい)
そして俺は、そのファイルを手に取り、開いてみる。
えーと、ほ、ほ、と....あった!そこには、えらくきれいな字で奉仕部とかかれている。どうやらこれは、名前のまま、各部活が毎月の活動をただ書いていくだけのものらしい。柔道部なんて毎月、端までびっしりと書いてある。
対して、奉仕部はというと2月の時点で活動報告が書かれていない。
つまり、2月。2月に決定的な何かが奉仕部にはあったのだ。
「ありがとう。助かったよ」
「特別ですからね。先輩。こういうのがばれるとめんどくさい先輩がいるんですよ....」
「ああ、絶対に言わないよ」
それだけ言うとファイルを返し、俺は生徒会室を出る。
2月に奉仕部はなくなった。ならば、それは2月のいつなのか。それを確かめるために俺は図書室へと向かった。
良かった。まだ居た。彼、材木座義輝は図書室の端で怪しげな本を読んでいた。というのも、生徒会室に向かう途中、図書室に入って行く材木座を見かけたのだ。大分時間が経っていたので居ないかも、と思っていたが、まだいてくれた。
「ごめん。ちょっといい?」
「ぬわ!な、なんだ男か....」
おい、図書室でなんて本読んでんだよ。
「ぬ、見掛けぬ顔だな。お主、名はなんと申す!」
「ああ、転校生の後藤だよ。よろしく」
「そうか!ならば、我も名を名乗ろう!我の名は、剣豪将軍!ざいもくざよし」
「で、ちょっと聞きたいんだけど」
「おおぅ....お主もそういうタイプか....」
「奉仕部ってあったよね?で、それがいつから....活動しなくなったなのか、分かる?」
「なぜそれをお主に話さぬと行けぬのだ?」
「話してくれたら、その本のこと、黙っといてあげるからさ。お願い!」
「ふ!?本当か?約束だぞ!絶対だぞ!」
「....げぷん!げぷん!残念だか、我にはあの部活のことはさっぱりだ!だが....あれは、2月の終わりに差し掛かる位のことだったか。我のともである、八幡という男がいてだな。それ以降、そいつを、放課後誘ったら珍しくついてくるようになったのだ。だから、もしかしたらそういうことかもしれんな!」
そうか、つまり....
「分かった。ありがとう」
「礼にはおよばぬわ!わはははは!!」
俺はそれを背に、状況を整理しながら図書室を後にした。
比企谷が急に放課後、材木座の相手をするようになったということは、いつも放課後にあった奉仕部がなくなったということではないだろうか。なんだかんだ言いながら、毎日奉仕部に顔を出していた比企谷だ。十分あり得るだろう。
つまり、あの2月の終わり....水族館での一件で奉仕部になにかが起こったのだ。
奉仕部がなくなったのはいつなのか。その答えは、もう出た。
ならば、次は何が起こったのか。その答えを出す必要がある。
もう夕日が姿を隠そうとしている。今日は、もう帰ろう。そう思いつつ、見慣れない廊下を歩き、玄関へと向かった。
あれから、1週間が経った。しかし、時間だけがすぎるなかで、俺は何も成果を得られていなかった。
もし、それに理由をつけるならおそらく、踏み出せないからだ。
あの水族館でのことは、完全に奉仕部だけで行われていた。つまりそれをしっているのは、当本人たちだけ。ということは、その他の人に聞いても分かる訳がないのだ。
それに第一、このことには、本人たちだけにしかわからないことが必ずある。
そうすると、なかなか前に進まない。
そうして今日もまた、1日が過ぎていく。
その日は、気をまぎらわすために近くの本屋に寄っていた。
そういえば、俺、本屋で殺されたんだったな....
いや、本屋で殺される。って、なかなか無いよな。あれか?図書館戦争にでも巻き込まれた?俺?
なんて考えてると、見覚えのある艶やかな長い黒髪の女性が目にうつる。
あれは、平塚先生!?
俺は、何も用事はないのだが、ただ喋りたいという理由だけで平塚先生に話しかけてみる。
「もしかして、平塚先生?」
やはり、平塚先生も原作と少しも変わらず、その「かっこよさ」を全身から出している。
「ん?あぁ、君は、確か....」
「後藤です。転校生の」
「ああ!そうだ、そうだ!後藤か!....ところで何をしている。こんなところで」
そこで、咄嗟に嘘をついてしまう。
「ちょっと、辞書を買いに来ようかと思って来たんですけど良いのが無かったですね。で、平塚先生は何を?」
「なに、ちょっと雑誌をな....」
平塚先生の手に握られてる雑誌には、「一人でできる!簡単料理!」とかかれている。
あぁ、この世界でも独りなんですね....
「君は、何か今悩みがあるだろう」
突然かけられたその言葉に俺は、短い言葉しか発せなかった。
「え、いや、なんで?」
「君の顔が物語ってるさ。そうだな....何かに臆病になっているように見える。今自分が立ち上がっていいのか、とか、そういう類いのな」
その言葉は、思いの外自分の心の穴にぴったりとはまった。
そうか。臆病になっていたんだ。先日、決意したように自分を騙していても心の底では、ぜんぜん納得いってなかった。だから、もう一歩が踏み出せなかったのだ。
だとしたら、助けてもらってもいいんじゃないだろうか。あの部を幾度も支えてきたこの先生に。
「....そうだとしたら、どうすればいいんですかね」
「難しいことを考えようとはするな。真っ向から向き合えばいい。相手だってそれがなんであろうと正面から答えてくれるはずさ。それに、君が立ち上がることで救われる人がいるかもしれないぞ?....だから、君が助けたい人を自分なりに助けてあげればいい」
そう言うと平塚先生は雑誌を棚に置くと颯爽と本屋を出ていった。
帰り際の「じゃあな」がまぶしすぎて見えなかったのは、平塚先生だからこそだろう。
助けたい人を自分なりに助けてあげればいい。
その言葉は、今の俺を動かすには充分過ぎた。
もう、俺が成すべきことは、心に決めた。
あとは、動くだけ。
きっと簡単ではない。俺自身も何回も間違えるはずだ。
でももう悩まない。そう決意し、俺は軽くなった足取りで家へと帰った。
「ねぇ、比企谷君。今日放課後空いてる?ちょっと聞きたいことがあるんだけど。できれば国道沿いのサイゼで」
「は?」
彼が俺を見る目は、とても腐っていた。
サイゼで待つことしばし。彼は時間ギリギリに来た。
「で、なんだよ聞きたいことって。俺今日、めっちゃやることあるんだけど」
彼は座るやいなや、そう言ってきた。
彼のことだ。きっと嘘なんだろう。そう思いつつ口を開いた。
「ハッキリ言うと奉仕部のことについて聞きたい」
「....帰るぞ」
「ごめん!ちょっと待って!もう少しだけ!お願い!」
「はぁ....で、なんだよ。前も言ったがもうあそこはなくなったぞ」
俺はずっと言えなかったことを、傷つける覚悟で、平然を装い伝える。
「なんで、なくなったの?比企谷君、奉仕部だよね?なんか知ってるんじゃないの?」
直後、場が凍ったように感じた。
「なんでお前に話さないといけないんだよ。じゃあな。俺はもう帰るぞ」
そう言って彼は席を立つ。
「待って!俺も全て正直に話す!だから、どうか比企谷君も全て話して欲しい!」
その言葉が彼に届いたのか分からない。だが、彼は確実に止まってくれた。
そして彼は再び席に着く。
これは単なる想像だが、まだ奉仕部に執着があるのでは。そう思った。
俺から喋り出す。
「ほんとに正直に言う。今は、まだ理解できないかもだけど後から必ず話す。だから、一度俺の言うことを聞いて」
「俺は奉仕部を知らない体を装っていたけど、あれは、嘘。ほんとはもっと前から知っていた。それこそ、ここで奉仕部ができる前と言っても過言じゃない」
「でも、その俺が知ってる奉仕部は、今とは、全然違ってるんだ」
「だから、前提として聞きたい。比企谷君は、今の奉仕部に納得してる?」
「....なんだよ。それ。信じられるかよそんなの。第一納得してないなんて決めつけるなよ」
「これは、あくまでも想像。だから、違ったらごめんね。....あの水族館での出来事。あの時比企谷君は、言えなかったんじゃないのか?」
「なんてだよ?」
「それが欺瞞であると。雪ノ下さんが誰かに左右されていいはずがないと」
「だから、結果的にその関係はすぐに崩れた。ちがう?」
「....だとしたら、どうなんだよ。戻せるのかよ。お前に。あの頃の俺たちに」
「それは、分からない。俺、女子と話すの苦手だし」
「はっ。なんだよそれ....」
「でも、戻さなくてもいいと思ってる。結局、結果的に比企谷君達が納得してくれたらいいと思ってるから」
「ここでは、比企谷君達が選んだのが、この選択ってことでしょ?なら、俺はそれを尊重したい。でも、納得してないなら話は別だ。さっきの答え方、絶対に納得してないよね?キャラ達が納得してないのに、読者が納得するわけないじゃないか」
「は?読者....?つか、そんなの自己満足じゃねぇか」
「そう。自己満足だよ。だから、こういうお願いにする」
「俺に奉仕部を取り戻させてほしい」
もう迷わない。そう決めた。だから、こんな無茶苦茶なお願いができる。
「....あーくそ!こんなこと言うのは、クリスマス以来だ」
彼は頭を掻きながらそう言う。
「....俺は本物がほしい。まだ納得なんてしてねぇ。それに俺が問題点とも言えるんだ。なっとくなんてできるはずかねぇよ。だから、後藤」
「一緒に奉仕部を取り戻してくれ」
「まず確認したいけど....」
俺たちはその後もサイゼで作戦会議をしていた。あのあと、両者ともにきまづくなったのは言うまでもない。
「比企谷君達が水族館に行った時。あの時に奉仕部は、なくなったと言ってもいいんだよね」
「ああ。そうだな」
「じゃあ、もう決まりだ。いつか近い日に、他の奉仕部2人を俺が部室に呼び出す。日にちが決まったら、連絡するから、そこで比企谷君たちは、納得する結論を出したらいい。そうしたら、俺も比企谷君も納得できる」
「いや、お前簡単に言うんじゃねぇよ。引きこもりなめんなよ。マジで。1回離れたやつともう1回話すっていうのは、K級難易度なんだよ。内村航平でも無理なの」
「はぁ。まったく。いい?大事なこと言うよ?これは、とある本から引用だけど....」
「1言で済まないならいくらでも言葉を尽くせ。言葉さえ、信頼ないなら、行動も会わせればいい....ってね」
その後、彼はブーブーいいながらをしぶしぶ承諾した後にすぐ帰った。それはもう早かった。
とにかく、これでもうすべて揃った。
何をするのか。その理由は。どうやって動くのか。誰に伝えるのか。
もう、あと俺の仕事は彼女らを部室に呼ぶことだけだ。
そんなことを考えつつ、彼が払わなかった分の会計を支払い俺は店を出た。