ジェラルドVS雛森桃~もしジェラルド・ヴァルキリーが聖別されなかったら~   作:ジェラルド・ヒナモリー

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起こすしかありませんね……奇跡を……!

「ふん、貴様の動きようやく見切ったわ! 死ねいっ」

 

「ぐあっ!」

 

「一角っ!」

 

「貴様もだっ!」

 

「うぐっ!」

 

 

 

 轟音と共にジェラルドの光り輝く巨大な手が一角、弓親を叩き潰し勝敗は決した。

 

 ジェラルドの勝利である。

 

 

 

「副隊長ですらない割には我の腕や足を叩き切ったり、霊圧を吸ったりと骨はあったが……つまらぬ戦いであった。他に我に挑みかかるものはいないかっ!」

 

 

 

 ジェラルドが声を発するがあたりはシーンと静まり返っている。

 

 

 

「おらぬか……ではしょうがない。改めてとどめを刺し……確実に死んでもらうとしよう!」

 

 

 

 辺り一帯を破壊するために巨大なる神聖滅矢を放とうとジェラルドが構えを取ったその時、

 

 

 

「ここに……いるぞっ!」

 

 

 

 苦しそうな叫びと共に遠方から飛来した雷光と火炎がジェラルドの体を突き刺した。

 

 

 

「まだいたかっ!」

 

 

 

 ジェラルドはダメージを意に介した様子も無く、振り返ると同時に神聖滅矢を放つ。

 

 だがその矢は空へと弾き飛ばされ届くことは無かった。

 

 

 

「卍……解 『紅梅殿(こうばいでん)……火雷飛天祭祀(ほのいかづちひてんのさいし)』」

 

 

 ジェラルドは見た。ボロボロになりながらも己に立ち向かわんとする死神の少女の姿を。

 バチバチと雷光を発する黒雲を背にし、ごうごうと燃える炎に包まれた七支刀を握る雛森桃の姿を。

 

 

「誰かと思えば先程の少女か! 我が力の奔流を受けて死んでいたとばかり思っていたがなかなかしぶといな!」

 

「死神は……あなたと違って、死して尚、というわけにはいきませんから……死ぬわけにはいかないんです……!」

 

 

 

 ぜえぜえと苦しそうに息を吐きながら満身創痍の雛森が啖呵を切る。

 

 

 

「その意気や、よし! だが少女よ、見たところその卍解はついさっき目覚めたばかりといったところだな。そのような未熟な卍解で先ほどの隊長格より霊圧の小さき貴様が我に勝てる道理など無し。大人しく死んだふりでもしておればよかったものを惜しいことをしたな!」

 

「勝てる道理が……ありませんか……じゃあ起こすしかありませんね……()()()……!」

 

「はははははっ!!!!」

 

 

 

 傷だらけの体で己のごとき台詞を言い放った雛森にジェラルドがけたたましく哄笑した。

 

 

 

「そのようなボロボロの体で何ができる!? 言ったであろう貴様らに奇跡など起こらぬとっ!」

 

 

 

 そういうとジェラルドがわざと出現させた弓矢を地面に叩きつけて傷つけ神のサイズへと交換した。

 

 

 

「先ほどの我が力の奔流はその剣で弾き飛ばせたようだが、これにはそんなことはできぬぞっ! いま我が『絶望の滅矢(フェッツヴァイフルング)』で一思いに楽にしてやろうっ!」

 

 

 

 すると、城のごとく巨大で煌々と輝く神の弓矢が出現し雛森のいる方を向く。

 

 

 

「まずいっ!……」

 

 

 

 雛森は直感した。あれに触れれば剣で弾き飛ばす前に消し滅ぼされるかもしれない。おまけに射線上には日番谷が倒れている。仮にあれを弾き飛ばせたとしても、その前に彼が死ぬのは確実であった。

 

 

 

「死ねいっ勇敢なる少女よっ!……ッ!? なにっ!?」

 

「おいデカブツ……俺たちとの楽しい戦いはまだ終わっちゃいねぇぞ……」

 

 

 

 だが『絶望の滅矢』が雛森たちへ放たれることは無かった。

 

 

 

「戦いの最中に油断して相手に背を向けるとは……美しくないね」

 

 

 

 ジェラルドの両足にそれぞれ龍紋鬼灯丸の鎖と瑠璃色孔雀のツタが巻き付いている。

 

 

 

「「ぶっ倒れろっ!」」

 

 

 

 瀕死の状態ながらも生き残っていた一角と弓親が息を合わせジェラルドの足を引っ張った。

 バランスを崩したジェラルドは仰向けに転倒し、『絶望の滅矢』は誰にも当たることなく上空へと放たれた。

 

 

 

「おのれえええっ! 一度ならぬ二度までも我を転倒させるとはああっ!」

 

 

 咆哮し、体勢を立て直さんともがこうとしたジェラルドの腹ににずぶりと鋭い衝撃が走る。

 

 雛森の卍解、紅梅殿火雷飛天祭祀が自らの胸へと突き立てられたのだ。

 

 

「ぐおおおおおおおっ!……だが……だが……刺したところで我は……倒れぬ!……この程度の炎や雷で我を倒せるはずが……」

 

 

「そう……でしょうね。本気の氷輪丸の氷でも倒れなかったあなたを……ハァ……あたしごときが出せる炎や雷で倒せるとは……ハァ……最初から思っていなかった。だから……飛ばします」

 

「なっ……!?」

 

「あたしの卍解の本質は火や雷を出すことではなく……切ったものを飛ばすこと……どこまでも……」

 

 

 

 そう言うと雛森がジェラルドの体から剣を抜き飛び降りる。

 

 

 

「ば、馬鹿な……我が体が浮いて」

 

 

 

 ジェラルドの巨体がゆっくりと地上を離れ空へと浮き出した。

 

 

 

「馬鹿なっ! 認めぬぞっ! こんな結末などっ! 認めぬぞおおおっっ!」

 

 

 

 ジェラルドは最後の悪あがきで雛森へと神聖滅矢を放ったが……

 

 

 

「さようなら……神の戦士よ……空へとお行きなさい……」

 

 

 

 悪あがきが通じるはずも無く、神聖滅矢はそのままはじき返され、ジェラルドに直撃した。

 

 

 

 

「ぐはっ……力なき民衆の中に……神の戦士を天へと導く戦乙女がいたとはな……まさしく……奇跡と言うほか……あるまいな……」

 

 

 

 かくして神の戦士は天の果てへと飛ばされていき、勝敗は決した。

 

 死神たちの勝利である。 

 

 

 




ついに決着がつきました。次でエピローグとなります



オリ要素解説

〇『紅梅殿(こうばいでん)火雷飛天祭祀(ほのいかづちひてんのさいし)

 炎に包まれた七支刀の刀身と背中に黒い雷雲を背負う感じの卍解です。
 雷要素があるのは飛梅が雷神として有名な菅原道真由来のネーミングだからです。
 能力は火球と雷を飛ばすこと……だけではありません。切ったものをどこまでも飛ばすのがこの卍解の本質です。

 雛森の幼馴染である日番谷の大紅蓮氷輪丸が物質の機能を停止させるほどの冷気を発する卍解でしたので、対比させて物質をどこまでも飛ばしていく感じの卍解にしました。
 メタ的に言えばこういう反則じみた能力じゃなければジェラルドに勝てなさそうだと思ったという理由もあります。少なくとも作者には真っ向勝負で雛森がジェラルドに勝てる可能性が全く思いつきませんでした。



〇『絶望の滅矢(フェッツヴァイフルング)
 
 原作ではこんな技ありませんけどジェラルドに必殺技がないのも寂しいですのでオリ技を作りました。
 自ら作った弓矢をわざと傷付けて神のサイズに交換することで発動する大技です。
 すべてを消し滅ぼし民衆を絶望させる矢です。

 名前はドイツ語で絶望を意味するVerzweiflungから取りました。
 発音はいい加減です。


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