転生したものの手札は原作知識とゴップの知識と階級くらい。
果たしてコロニー落としは阻止できるのでしょうか?
私はリストラされた。
今日、テレワークの最中人事部長から通話があり、勧奨退職とやらで今月末日をもって退職に
なるそうだ。
これまで社内で敵を作らない様にしてきたのになんで?という理不尽さを感じるのと同時に
このご時世でウチの会社の辛い状況は承知していたので仕方がないか、という諦めもあった。
人事部長、わざわざ出社して会議室からリストラを告げてきた事からリストラは私だけでは
ないんだろうなぁ。
人事部長との通話が終わった途端、部長代理の緒形君がPCの画面に現れ
「部長!リモート送別会やりましょう!」と言ってきた。
私の後任で部長に昇進する内示でも受けてたんだろう、喜びが隠しきれてない。しかし、
緒形君、この状況で部長職になったら大変だよ?会社はかなり無理な数字を押し付けてくるだろうし。
緒形君にオーケーと返事して、コンビニで発泡酒じゃないビール数本とつまみを買ってきた。
そして夕方5時からリモート送別会が始まった。部のほぼ全員が参加していたが、次長の
斎藤さんは欠席で「そのうち飲みに行けるようになったら行きましょう」とメールが来た。
私の一期下の彼もリストラ候補なのかもしれない。
ノートPCのたいして大きくない画面に20個近くのウインドウが開くと緒形君の音頭で
「部長、お世話になりましたー!」という皆割と陽気な感じで乾杯する。そ
して、課ごとや年代別のグループで話始める、私抜きで。
緒形君は親しい社員達に「俺はやるぞ!」と気炎を上げている。新卒の川上君はリモート
でもやっぱりコーラなんだなぁ。私は彼らが談笑するのを特になんの感慨もなく傍観していた。
入社以来敵を作らない方針でやってきた私には特に親しい部下もいない、嫌われないよう
言動に気をつけていたし、若い人を飲みに誘ったりもしない。なので送別会でも話し
かけてくる者も少ない。時折趣旨を思い出した者が私に「お世話になりました」と声を
かけるが、二言三言話すと別の者に話しかけるといった具合だ。
そんな2時間が過ぎると送別会は切り上げとなり最後に私が短く別れの挨拶をして散会となった。
私はノートPCの画面を閉じ、残ったビールを飲みながらTVを見ていた。地上波は過去の
傑作選だとかネット動画にタレントがコメントする番組ばかりなのに閉口し、BSでおじさん
が飲み屋をはしごする番組を見ていた。
あ、申し遅れましたが、私の名は山田次郎、52歳、バツイチです。
元妻と高校生の娘に自宅を渡し、自分は今の1DKのマンションに引っ越してきた。
妻と別れる前、書斎代わりくらいの気持ちで買った部屋が終の棲家になりそうだが、
まぁ悪くないと思っている。
私鉄沿線のそこそこ賑わいの商店街に男1人で気兼ねなく入れる飲食店もある街で
不自由なく独身生活が送れてる。
自己紹介も終わったので寝るとしよう。
横になって数分もすると左胸に鋭い痛みが襲ってきた!
あれ!?人間ドックで心肺機能でD判定だったの忙しいのを理由に通院しなかった
からか、まさか、感染からの発症!? そんな事を考えてるうちに意識が遠くなっていく…
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気がつくと、私はオフィスらしい場所でデスクに座っていた。
デスクには私が知るのよりかなり薄いモニターとこれまた薄いキーボードが乗っている。
視線を下ろすと制服なのだろうか、緑かかった灰色の服を着ているようだ。
袖になにか飾りが付いている、軍服なのだろうか?
視線を電源の入ってないモニターに移すとそこに映っていたのは…
どこかカエルを思わせる初老の男の顔だった。
彼の顔を見た瞬間、私の脳内に膨大が記憶が押し寄せて来た!!
「あ、あ、あァ…なんなんだこれは!?」私は頭を抱え何事かをつぶやいていた、と後に知己と
なった者から聞かされたが、その時の私は脳内に流れ込む映像と音声、文字の奔流に押し流され
そうになっていた。
体感時間で約一時間、デスクに乗った時計によれば約5分後、私は全てを思い出していた。
私の名は
出身は北米ニュージャージー州ニューアーク、妻と娘、娘婿がいる。
妻とは士官学校卒業後、国内留学した大学で知り合って結婚した。彼女は娘が独立したのを機に
再び働きに出て心理カウンセラーとして士官や兵やその家族のメンタルケアに関わっている。
娘はIT企業に就職し、同僚と結婚したが、私が割と強引に二人を軍に引き抜き、娘と娘婿は大尉
としてシステム開発に関わっている。
ここは私が中心となって建設を推進してきた連邦軍総司令部ジャブロー、そこの私のオフィスだ。
ジャブローはアマゾン流域のギアナ高地の地下に広がる鍾乳洞を補強、堀り広げて建設した
地下要塞で、コロニー建設で培われた建設技術の結晶と言えるだろう。
北米のシャイアンマウンテン同様核兵器の直撃にも耐えうる強固なシェルターでもある。
しかし、ゴップ大将としての記憶を獲得した、あるいは取り戻した今なら言える、
前の私、前世というべきか、は敵を作らないようにして来たから組織から排除されたのだと。
敵を作らない、誰の配下にも入らない者は味方もおらず、プレイヤー全員から殴られる立場になる。
ゴップは前の私より随分と世渡りに長けてるようで閣下と呼ばれる身分になっていた。
ゴップの記憶が実感を持って自分の記憶と思えるってことは…こういうのによくある憑依じゃ
なくて転生ってやつなのかな。ハイスクールの登校中スマホで予備校の講義を見ながら歩いて
たらフットボールのQB、スミスから「ガリ勉ボブ」とからかわれたものだ。
そんな事を思い出していたら、ある重大な事に気がついた…
デスクの時計は0077 05/01 18:00を示している。
つまり後、1年と8ヶ月後に……人類の二人に一人が死ぬ!!
そうだ、サイド3と6を除く各サイドがジオン軍の攻撃を受け、地球にサイド2のコロニー
一基が墜落、落下時の衝撃波で街は薙ぎ払われ、大地震と大津波、異常気象を地球全土を
襲い50億を超える人々が犠牲になるのだ…
前世の私は「機動戦士ガンダム」を1979年の本放送時から見ている所謂ガノタだった。
永井一郎氏の重々しいナレーションが今は絶望を告げる予言として脳裏に再生される。
妻と娘夫婦をジャブローに呼び寄せたのはもしかすると前世の記憶の断片を思い出した
のかもしれない。我ながら公私混同ではないか、と思いながら娘婿のダニーを軍に勧誘
したのを思い出した。軍務経験があれば起業する際に軍需関係の発注が見込める、
が殺し文句だったような…
私と私の家族だけ助かっても駄目だ… おそらく生まれるであろう孫はジオン大戦と
その後延々と続く戦乱の時代に生まれ、そのどれかで生命を失うかもしれない。
UC.0079 01/03 に勃発する一週間戦争の惨禍を防がなくてはならない。
しかし、どうやって?
途方に暮れ、窓を眺めると外を肩に大砲を生やした
ガンキャノンが0077に存在するってことはここは「THE ORIGIN」の世界なのか。
MSを開発しましょう、と働きかけなくても既にあるのはありがたいが、この世界の
ガンキャノンは12機がかりで5機のブグとザクにメタメタにやられる程度の性能な
上に軍は陸戦兵器として考えておりコロニー防衛の役に立ちそうもない…
他ならぬ私が、
推進を命じるのが0078、遅い、遅すぎる!
今すぐにでもRX計画を含めたV作戦と大量の軍艦を建造するビンソン計画を立ち上げ、
強力に推進し、0079 01/03 に間に合わせなければならない!
だが、ゴップの培ってきた知識が「だが、どうやって?」と問いかける。
軍はミノフスキー・イヨネスコ型熱核反応炉という新時代の動力源を搭載したガンキャノン
の無敵を疑っていない。ジオンがMS-03と呼ぶ類似の兵器を開発しているのは知っているが、
コロニーや資源衛星で働く建設重機だと認識している。
現状でビーム兵器、メガ粒子砲を携帯する新型モビルスーツの開発を声高に主張したら
どうなるだろう? 今の私には敵も多い、彼らに足をすくわれ失脚するだろう。
そうなったら家族すら守れなくなるかもしれない…
そんなことを考えながら腕を組み「どうしたらいいんだ…」と呟いていたら近くに立っていた
士官、たしかマエバラといった、が私に話かけてきた。
初めての投稿です。
ゴップに転生、という小説はまだなかったな、という着想で書き始めました。
主人公ゴップの目的は一年戦争初期の惨禍を防ぐ事ですので大長編にはならない予定です。
軽く読み飛ばしていただけますと幸いです。