この世界初のMS戦はいかなる展開を見せるのでしょうか。
チャーリー少佐の転属後、私のトレーナーを務めているのはバスク・オム中尉だ。
最初、オーバーワーク気味までトレーニングするというバスクにどれだけ過酷なメニュー
を課されるかと恐れたのだが、根の優しいこの男は50代でも無理のないメニューを組んでくれる。
私がトレーニング中はずっと「その調子です!閣下! もう少しです!」と、この男にしたら
大声で励ましてくれる。
2mを越す巨漢と裏では「妖怪」と言われる私、ゴップのコンビは目立つからだろうか、
私達の周りでトレーニングする者はいない。まぁ、保安上の理由なんだろうと思うのだが。
私が嫌われてる、とかじゃないよね?
いい汗をかいたので、バスクとノミニケーションとしゃれこもうか、と誘ったのだが、
バスクはプロテインをごくごく飲みながら「ビールを飲んだらトレーニングの意味がありません。
それよりちゃんと水分をとってください」とスポーツドリンクを勧められた。
そういや思い出したが、バスクはあの巨体なのに、あまり酒に強くない。
第二艦隊時代は上司のアルハラで辛い思いをした、と語っていた。
前世では若い人を飲みに誘うなど嫌われそうで一度も無かったが、宇宙世紀に来て浮かれて
いるのだろうか。しかし、あの気弱だったバスクがこと筋肉の話とは言え私に異論を唱えたのは
いい傾向なのだと思う。
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私は勤務時間中に娘婿のダニエル・アトキンソン少佐を公室に呼んだ。
ダニーはプライベートの場でないことに緊張し、入室するとあまり様になっていない敬礼をした。
私は「座ってくれ」と彼に言うと、彼の正面の席に着いた。
「アトキンソン少佐、君に話がある。転勤して貰うことになるので、細君と相談してくれ。
断っても良い。そのことで現在の仕事に支障がないことは保証しよう」と切り出すとダニーが
発言を求めたので許可した。
「新しい任務とはV作戦ですね? AI絡みということはモビルスーツのシステムでしょうか」と
核心をついてくる。「そうだ。V作戦で開発されるMSのパイロット支援AIの開発が難航している。
君にはサイド7の開発基地に赴任して貰い、AI開発を助けてほしい、というか君がリーダーを
やって欲しい。それだけの権限を与えるし、階級もひとつ上げて中佐とする」と無表情で
話す私。最近この顔することが増えた気がする。
ダニーはショックを受けた様子もなく、「任務、了解いたしました」と快諾している。
いや、その、ひとまずは
ダニーは笑って「いえ、V作戦がソフトウェア絡みで炎上しかかってる、と
いう話はシステム軍団にも伝わってきてます。自惚れる訳ではありませんが、前の職場では
何度もプロジェクトの火消しをした実績が僕にはあります。エンジニアとしては是非やって
みたい仕事です。ただ…」
「ドロシー・アトキンソン少佐は引き続きシステム軍団勤務だ。サイド7には君一人で行って
もらうことになるだろう」
ダニーはほっとした顔になり「安心しました。それだけが心配で」そりゃサイド7がザクの奇襲で
メチャクチャになる動画見せちゃったからなぁ。
「君に頼みたいのは現在14歳の中学生がいきなりMSを動かせる支援AIだ。彼のパイロット技能を
成長させ、人間離れした操作を行ってもそれについていけるシステムを開発して欲しい」
一口にいうと前に見せたアムロのPVみたいのを作って、という注文だ。
ダニーは「オーダーメイドのAIですね、工数を見直さないと。見積書見て青くならないで
くださいよ」と微笑んだ。
もうすっかり軍人口調は影を潜め彼と最初に会った頃のエンジニアの口調になっている。
「構わんよ、これは金で時間を買うプロジェクトだ」とカッコつける私だが、軍も官僚機構なので
予算で動く。これは議員先生方に根回しせんとなぁ…
ダニーが退出した30分後彼の上司、システム軍団司令がメチャクチャ怒って怒鳴り込んできた。
娘は引き続きジャブロー勤務だよ、と弁解すると当たり前です!ゴップ・アトキンソン少佐まで
引き抜かれては連邦軍の業務システムが止まりますよ!と脅された。
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====ジョブ・ジョン一等MS特技兵はルナツーで訓練を受けていた。
教官は2歳上の18歳女性教官、ライラ・ミラ・ライラ軍曹だ。美人なのだが、髪を短く刈り上げ
筋肉質な彼女は訓練生達から「メスゴリラ」と呼ばれていた。
とにかく厳しい教官で、海兵(宇宙陸戦隊はこう呼ばれている)仕込みのシゴキ、特に海兵用の
装甲ノーマルスーツを来ての長距離走など脱水状態になりかける者が続出した。ちなみに装甲
ノーマルスーツは着用者の生理機能をモニターしており、脱水状態になるとマウスピースを通して
無理やり経口補水液を喉に注ぎ込む機能があるので危険な状態にはならない。
厳しい訓練を課し、海兵仕込みの口汚い罵倒を浴びせるものの、ライラ軍曹は訓練生達に手を
上げることは無かった。腕立てや電磁靴の出力最大で基地内のランニングなど罰はしょっちゅう
与えたのだが。ライラ軍曹が人を殴るのを見たのはランニングするジョブに酒が入ってるらしい
下士官が「お~い、ジョブ、ライラにブロぅげっっ!!」と卑猥な冗談を言いかけて顎に綺麗な
アッパーカットが決められた時だけだ。
ライラ軍曹によると私的制裁の禁止は陸軍のコマンド部隊上がり、教導団 団長ツァリアーノ中佐の
方針、そして今や全MS戦闘団の方針なのだという。
「俺は貴様らを殴らん、背中から撃たれたれたらかなわんからな」が口癖だったそうだ。
罰としての腕立てやランニングは山盛りだったそうで、あのキツい訓練も「ヤワな貴様ら向けの
軽いメニュー」だそうだ。ジョブは(ええ!?今のでも吐きそうなんですけど…)と思いながら
それを聞いたものだ。
そんなライラ軍曹は訓練生の女子達に熱狂的に支持されていた。憧れの教官に似せて髪を
超ショートにする女子が続出し、長い髪の好きなジョブを落胆させた。
「タカラヅカってヤツさ」と訳知り顔で同期が、ニホンに本拠を構える女性だけで構成された
劇団、宇宙世紀においても女性層にカルト的な人気を誇っているそれを引き合いに出してライラ
の女子人気を解説してくれた。
今日は今日とて対G試験とやらで、ブンブン振り回され重力加速度で体中の水分が搾り取られる
ような感覚を味わった。訓練の時より酷かったように思え、「俺なんかやっちゃったかなぁ」
とボヤいていると、ライラ教官から「ジョブ・ジョン一等MS特技兵、貴様、対G性能が高い
そうだ。そこで、貴様にはスペシャルな機体を与える、と本部は決定した。喜べ」と言われた。
配属が決まり、この地獄の日々から解放されるのは確かに嬉しかったが、『スペシャル』って
どんなゲテモノに乗せられるのだろう?とジョブは首をひねった。ベムとかいう新型は確かに
ゲテモノじみた姿形だが、教導団をはじめ各部隊に配備が始まっており、スペシャルという程
ではないが…
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ゴップです。U.C. 0078の6月、私はジャブローの
今日はここで第二艦隊と第三艦隊の合同机上演習が行われるのだ。
第二艦隊司令、コリニー中将は今月末付けで退役が決まっており、これが現役最後の演習と
なるだろう。
第三艦隊司令、ワイアット中将は待望のマクロス級一番艦『マクロス』を与えられ、その威力を
机上演習とはいえ披露できるのでにやけ顔が止まらない。各艦隊司令部は別々の司令室を使うので
互いの顔が見えないのが幸いと言える。もし、あのにやけ顔を見せられたらコリニーはますます
苦々しい顔になってるだろう。
想定する戦場はサイド2「ハッテ」近海、コロニー落としで地球に落下する「アイランド・
イフィッシュ」はこのサイドの8バンチで首都コロニーだ。
戦力は双方戦艦32、巡洋艦80、駆逐艦96、空母1、軽空母2、MS168機、GW48機、さらに
第3艦隊はマクロス級砲艦1を投入する。
しかし、フルチャージで撃つと再チャージに一時間かかる代物が標的が動く艦隊戦で使えるもの
なのだろうか?(相対的に)静止しているコロニーを撃つならともかく。第三艦隊はサイドを
攻撃する側ではなく防御側だ。
その疑問は演習開始とほぼ同時に答えを得ることになった。
第三艦隊はマクロスの主砲、口径20000mm(20m)メガ粒子砲、ハイメガ粒子砲を再現しようと
した、そしてそれに必要な専用回路とメガコンデンサーを巨大化することで実現した、巨砲を
チャージ率3%で試射、収束率を限界まで上げたビームは第二艦隊の艦艇をかすめた。
その4秒後、マクロス艦首の姿勢制御スラスターが作動し、艦首が斜め下に動くと同時に
光のまさに奔流が主砲から溢れ出し第二艦隊を光の剣で薙ぎ払う。1秒あまりの照射で
第二艦隊の戦艦3隻と巡洋艦8隻が直撃を受け撃沈、直撃しなかったものの光流のすぐ側に
位置した戦艦2隻と巡洋艦4隻が飛び散ったメガ粒子を受け大破していく。勿論壊滅的な打撃、
という訳ではないが、第二艦隊は一撃で艦隊戦力の10%強を失った。防空のため艦隊外側に
配置された駆逐艦に被害はない。
マクロスは主砲の各所から冷却材を噴出しながら後方に下がっていった。
第三艦隊の幕僚達がガッツポーズ取ったり、ハイタッチして盛り上がる中、ワイアットは
にやけ顔をさらににやけさせ「紳士諸君、これからが本番だぞ」と今にも笑い出しそうな
顔で幕僚達を窘めた。
そう、これからの戦争は艦載機が主役だ。
第二艦隊の艦載機、
それをGW-01より小さい光点が迎撃行動を取る、画面が拡大されると、バムの背中にGW-01の
スラスターユニットをくっ付け、右腕にはマシュー・ペリー級のものを思われるメガ粒子砲を固定
した機体だった。左腕には爆発反応装甲を貼り付けた盾を持ち、槍騎兵を思わせる。
まるで「0083 REBELLION」のデンドロの主砲とIフィールドジェネレーターを両手に持ち、
ウェポンコンテナごとスラスターユニットを背負ったGP03ステイメンのような機体だ。
槍騎兵はMSを切り離し回避行動を取ったGW-01に粒子砲を放ち撃墜すると、上方に駆け抜けた。
12機の槍騎兵は
撤退するMSが1機、という戦果を上げた。槍騎兵は一撃を加えるとそのまま戦場を離脱した。
槍騎兵に続いて第三艦隊のGWがMSを伴って参戦する。MSは既にGWと分離した状態だ。
ベムのビームライフルが生き残ったGWを優先して狙う。バムは
第三艦隊のMSがGWを援護するのを妨害する。100mm
撃墜する威力はないが、それでもシールドや胴体に装着した爆発反応装甲が爆ぜると回避機動を
取るしかない。見事なハラスメント攻撃だ。
攻撃隊のアシとなるGW-01を優先的に狙われ、12機が撃墜された第二艦隊の攻撃隊は
後退していく。
先月中将に昇進した、そして現在編成中の第4艦隊の司令に内定しているエルランが
「見てください。先程の槍持ちが艦隊に仕掛けました」と私に声をかける。
私はメインモニターに映る槍騎兵とGWが第二艦隊に吶喊する様子に目を奪われた。
「あのGW、さっき攻撃隊を迎撃したのとは別口ですな。機体のマーキングが違う」
え!?こんな目まぐるしい展開で機体のマークとか見る余裕あるの?
さすが
機動でビームを交わし、誘導弾は撃ち落としながら(槍騎兵はシールドに散弾銃を隠し持っていた)
艦隊に迫る。CIWSやボールの有効射程の外側から放たれた槍騎兵とGWのメガ粒子砲が戦艦群に
突き刺さる。1本ならともかく装甲の厚い機関部でも2本、3本と閃光が突き刺さると
マゼラン級は火球と化した。
「変ですな」とエルラン中将が呟く、「セオリーなら戦艦ではなくさらに後方の航空戦隊を
狙うはずですが…」確かにそうだ。空母同士の戦いなら戦艦ではなく空母を真っ先に狙うはずだ。
先制のマクロスの砲撃で5隻が脱落した戦艦群は艦載機の一撃でさらに6隻を失い、ついでのよう
に左手に握った散弾銃やナタをブリッジに叩き込まれたサラミスが8隻脱落していく。
「
と艦艇はMSのいいカモになるんだなぁ。こちらのMSはザクより装備がいい分、破壊力は
凄まじい。
だが、槍騎兵とGWは以前ルナツーで見た仮想ジオンMS隊と異なり一撃して離脱して
しまった。「戦果を拡大するチャンスなのに…」と私が呟くと、エルランが「見てください。
第三艦隊が突貫します」
第三艦隊を映したウィンドウがメイン画面になると、彼らは最大戦速で突撃を開始していた。
でも、何か違和感がある。違和感の正体は第三艦隊旗艦「プリンス・オブ・ウエールズ」が
拡大されると判明した。
MSが掴まっているのだ。
「タンクデサントかよ!!」ソビエト赤軍名物、一見肉盾、実は短機関銃兵による対戦車兵器
センサー兼近接防御兵器、との説もある戦車に兵隊しがみ付かせてるアレを彷彿とさせる有様に
私は全力でツッコんだ。「いやぁ、奇想ですな」とエルランが笑う。それ言いたかったんでしょ、
佐藤さん。見れば巡洋艦にも2機ないし4機が掴まっている。
既に戦艦11隻を失っている第二艦隊は砲撃戦で劣勢に立たされた。しかし、何故か第三艦隊は
巡洋艦と駆逐艦を優先的に狙っている。特に駆逐艦はマゼランの主砲一斉射で次々火球に
変わっていく。
第三艦隊がサラミス級の誘導弾まで使って駆逐艦20隻を始末したところで、GWが下方から
突き上げて来た。「あれは先程迎撃戦をしていたGWですな」とエルランが解説する。
防空網に穴の空いた第二艦隊はさらに巡洋艦と駆逐艦の数を減らした。
第一波の迎撃をしていた直掩機が弾薬と推進剤の補給を終え、再度出撃するが、第三艦隊の
直掩機、バトルシップ・デサントして来た第三艦隊のMSと乱戦になる。砲撃戦の間、輪形陣を
外れていた駆逐艦が前に出て第二艦隊直掩機を攻撃する。同士撃ちにならないのか?と訝る私に
エルランが「駆逐艦は第二艦隊の至近にいるMSを狙い撃っているようですな」とまた解説して
くれた。駆逐艦の援護下で既に直掩任務を放り出し、攻撃隊と化した第三艦隊MS隊が第二艦隊に
肉薄、今度は戦艦にビームやバズーカを叩き込んでいく。
第三艦隊はそのまま第二艦隊に肉薄、まるで「THE ORIGIN」のルウム戦役のように艦艇同士が
接触しそうな距離ですれ違う。双方の戦艦、巡洋艦、駆逐艦が主砲、ミサイルを乱射し合う。
この局面でも生き残ってる艦艇が多い第三艦隊が優勢だ。
艦隊中央部からいつの間にか最後尾に後退していた第二艦隊旗艦「タイタン」(
ティターンズを彷彿とさせる)を残して無事な戦艦がいなくなった。タイタンは殿どころか真っ先
に戦場離脱を図る。その時、戦場を一条の光流が走り、その一瞬後大きな火球が発生した。
「リプレイ」と左上に表示しているメイン画面には再チャージしたマクロスが50%の出力で放った
メガ粒子砲がエンタープライズ級2番艦「チャレンジャー」を捉え撃沈した様子が映っていた。
「状況終了!」統制官が宣言し、机上演習は終わった。
第二艦隊は戦艦20隻と巡洋艦の8割を失い打撃戦隊は壊滅、航空戦隊は旗艦チャレンジャー
を撃沈された。
一方第三艦隊は砲撃戦で戦艦3隻と巡洋艦8隻を、防空戦で駆逐艦6隻、MS12機、GW8機の損害
だった。MSの損害は全て最後の艦隊突撃の局面でのものだ。つまり槍騎兵は1機たりとも失って
ないらしい。
これでバンザイ昇進、大将で退役するコリニーはむすっとした顔のまま挨拶もそこそこに私達が
いた司令室を去ると、満面の笑みでワイアットが入室してきた。
「私の新戦術、いかがでしたかなゴップ閣下?」とドヤ顔のワイアット。
確かに演習は圧勝、と言っていい戦況だったが私には違和感があった。
「ワイアット司令、さっきの演習、もしかしてシナリオがあったんじゃないかね?」
ワイアットは今度こそ大笑いを始め「いや、まったく閣下の仰る通りですよ!」と腹を抱えな
ながらタネ明かしをする。エルラン中将を見るとウインクしながら「私もシナリオがあるのを
知っている、というかシナリオ策定に加わりました」とニヤリとした。う~ん悪い顔だ。
なんでも
第三艦隊司令部が手を入れたものだという。マクロスの先制砲撃とか艦隊突撃とかだな、きっと。
コリニー司令はシナリオを知っていたのだろうか?とエルランに尋ねると、「自分たちが
負けるのは承知していたようですが、ここまで一方的になるとが思わなかったようですな」
との答えが。第二艦隊の幕僚達はサボタージュこそないものの統合参謀本部が策定した
戦術マニュアルそのままの艦隊運用をしたそうだ。
私に「ジオン野郎どもは
(と、思われてる)コリにーは子飼いの幕僚を全て同志に置き換えられ新しい幕僚達との仲は
最悪に近かった、と第二艦隊の幕僚から聞いた。なお、来月一日をもって新司令となる
ティアンム司令部でも彼等は引き続き幕僚を務める。
この演習はワイアットのショーであり、コリニーの公開処刑、というのがG.C.の同志と
シンパで占められた統合参謀本部の意向らしかった。落ちた犬は叩きに叩いてついでに
ダブルタップする、というのが連邦軍という超巨大官僚組織の習性である。
「ところであの中世の騎士みたいな機体は何だね?バムのバリエーションのようだが?」と
尋ねる私に再度ドヤ顔のワイアット。「あの機体こそ、ルナツー工廠のオリジナル、
BM-01L『
「元々はBM-01の航続距離を延長する目的で試作されたのですが、GW-01のスラスター
ユニットを熱核ロケットごと背部に組み込んだところ
融合炉を2基載せたお陰で電力にも余裕が出たんですが、BM-02の量産に障りがないよう
駆逐艦の主砲を持たせた、という具合です」ん~、凄いな。Sガンダムの脚の代わりにブースター
ユニット付けたヤツみたいな感じだね。しかし、ルナツー工廠の成果を誇るのは君じゃなくて
幕僚長から基地司令に昇進したワッケイン少将じゃないのかねぇ。
ルナツーの本拠を置くとはいえ、司令部はジャブローにある第三艦隊司令が言うこと
じゃないと思うんだけど。
そう言えば、ワイアットがいかに調子がいいこと言ってもなんか憎めないのはこの世界の
彼の声が田中秀幸氏ではなく、「モンティ・パイソン」で声を当ててた広川太一郎氏に
声が似てるからだ、ということにふと気がついた。彼が人をおちょっくてる時の声は
広川氏そっくり、またおちょくり方が英国人らしいブラックジョーク成分が多量に
含まれるので、彼と話してると「
具合で内心では「愉快な男」と思っているのだ。
まぁ、態度や顔にそれを表すとさらにワイアットが調子に乗るので表には出さないけどね。
====ジャブローのシミュレーション室、と言っても100台の筐体が並ぶホール並の
広さがある、でジョブ・ジョンは伸びをしながら中隊長のノボトニー大尉に「他の
部隊はコンピューターが操作してるのにウチだけ人間が操縦するのはズルくないっスか?」
と尋ねた。ノボトニーはこの歩兵上がりの少年パイロットが多少行儀は悪いものの、
優れたパイロット、特に耐G能力が高い、なのを知っているのでちゃんと答えること
にした。「そりゃあな、ワイアット司令がゴップ大将に
するためだよ。制服組トップに上手いことお目見えできれば、めでたくランサーが量産
の運びになるって寸法だ」と彼なりの解釈でジョブに説明した。
「あー、そうっスね。エライさんにプレゼンすっかぁ」と感心するジョブ。直後、
彼の直属の上官である小隊長から「ジョブ・ジョン兵長、中隊長にその態度と口調は
なんだ?腕立て50回!」と言われ、シミュレーションで疲れ切った身体にさらに鞭打つ
羽目になった。
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====U.C.0078 07 01、中将に昇進したマクファティ・ティアンムは、第一艦隊司令部
司令公室でヨハン・イブラヒム・レビル中将に離任の挨拶をした。
「マック、君が抜けるのは痛手だが、あっちに行っても元気でな」
「ヨハン、第二艦隊司令部は隣の棟ですよ。そりゃ、昼飯や定時後に一杯とか気軽には
行けなくなりますが。それより、あなたを新設される第四艦隊を麾下に収める
の司令長官に就任させようとゴップ大将が目論んでいる、という噂を耳にしましたが」
「ゴップ派の実働部隊を率いるエルランを昇進させたのは第四艦隊司令にするためだ。
私にも『エルラン君を面倒見てやってくれ』と議長に頼まれたよ。どうやら彼は私を
イソロク・ヤマモトにしたいらしいな」
「そいつは大変ですな。操縦訓練には護衛機一個中隊を必ず同行させるのをお勧めします」
「いちいち一個中隊を付き合わせるのもなぁ…ウィングマークを返上するか」
レビルはいささか寂しげに呟いた。
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ゴップです。
U.C.0078 7月某日、マエバラ君がサイド1「ザーン」を母港とする新型艦の艦長に就任
のためジャブローを去る日がきた。サイド1はジオンの要塞ソロモンに近く、開戦時には
最初に戦端が開かれる可能性が高い任地だ。前世のガンダムでは一週間戦争でサイド2、
4とほぼ同時に奇襲され壊滅している。
「今まで大変お世話になりましたゴップ閣下」とぴしっとした敬礼を決めるマエバラ中佐、
彼は艦長に就任すべく中佐に昇進していた。
「君には本当に世話になった…。G.C.の仲間達に引き合わせて貰えたからこそ今日の私が
あるのだよ。新型艦、それもコンセプトからして新機軸のフネの艦長は困難な任務だが、
君ならやり遂げると信じている。武運を祈るよ。この世界に私達を引っ張り込んだ奴以外の
神にね」と握手をしながら冗談を言うとマエバラ君は握手しながら
「では、ハチマンサマでお願いします。地元の神様なので」と微笑みながら返す。
ああ、御札を貰ってきて送ることにしよう。ニホンには別の用事で出張するしね。
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マエバラ君がジャブローを去ってから2週間後、私達ゴップ派の将兵はジオニックにいるという
同志から送られたMS-04ともう1機種のテスト映像を見ていた。
撮影場所のア・バオア・クーはG.C.のもたらした情報により既にダークテリトリーではない。
「THE ORIGIN」で流れた映像との違いはあまりない、せいぜい手にしているのが見慣れた
ザク・マシンガンなくらいだ。皆が驚いたたのはサーマルイメージ、熱赤外線映像に場面が
変わった時だ。装甲が真っ赤に発光している。
アダムスが「これは、MS-04の時点で装甲材に廃熱するシステムを実装していますね」と
顎に手を当てて呟く。
しかし、本当にびっくりするのは次の機体だった。
EMS-04ヅダだ!同志によるとジオニックの生産ラインに支障が発生した事態に備え、
共に制式化され、熟練パイロット向けに数は少ないが、量産されてるらしい。
要するにアクセルを吹かし過ぎない上級者だけにヅダを与えるってところか。
操縦シミュレーターに敵機としてヅダを実装せんとなぁ。しかし、MS-06SいやR型に匹敵する
機動性を発揮してるなヅダ。これで勝手に爆発さえしなきゃ、というとところだが、MS-09ドムの
礎になった機体だ。私はアダムスにMS-09、とりわけR型リックドムの出現が早まるのでは
ないか、と懸念を示すと、「MS-06の次は当然開発している筈ですが、EMS-04の土星熱核
ロケットの改良には時間を要すると考えます」と答えた。リックドムは両足にエンジンを積んだ
双発機だ。二つ有れば、1基あたりの推力を低く抑えて信頼性が増すのでは?という疑問には、
それならMS-06の改良型で充分だとジオンは考えるだろう、と答えた。
エルランはジオン国内の転生者にはザビ家を支持、あるいは崇拝する一派がいることを私に教えて
くれた。そりゃあ、いるだろうねぇ。こっちだけが後知恵で強化とか虫が良すぎる。
上映後、かの物理学と工学の天才、トレノフ・Y・ミノフスキー博士が連邦への亡命を希望し
情報部にコンタクトを取ってきたことが報告された。
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Dr.ミノフスキーの亡命を認めるか?否か、についてはすぐに結論が出た。
このまま博士をジオンに置いておけば転生者の後知恵と組み合わさってどんな怪物兵器が
生まれるか分かったものではないからだ。
ただ、生きて亡命させるか?つまり彼の出迎えに戦力を投入するか、という点では議論が別れた。
鉄機兵中隊12人と運んできた揚陸艇の乗員3合計桁近い数の者が命を落とすのだ。
RCX-76ガンキャノンはBM-01バムの技術を流用して改良されRCX-76A5型となっていたが、
おそらく強化されてるだろうMS-04とMS-05、何よりパイロットがオールスターな特務小隊
5機相手は荷が重い。かといってBM-01やBM-02に教導団パイロットを乗せて出撃させると、
こちらの手札を明かすことになるし、万一せっかく養成した教官パイロットに戦死者が出ては
元も子もない。という意見が大勢を占めている。
もっとも、彼を放置して連れ戻されては元の木阿弥、なので亡命中に工作員が暗殺し、ジオンに
暗殺された、と敵を非難しよう、というアイデアふが出た。
博士は元々U.C.0078に死ぬので暗殺は成功するだろう、とも。
私は「それは流石に一線を越えている。暗殺などしたら歯止めが効かなくなり、それこそ
サイド3への質量爆弾攻撃などに繋がりかねない」と反対した。
かといって、こちらのパイロットに被害が出たり手の内を晒したくない。
できれば、接敵せずにオールスター特務小隊を追っ払える方法は無いものか…
議論が袋小路に入りそうな時、ある将校が発言を求めた。確か陸軍の砲兵だったか。
彼には何か以前から温めていたプランがあるらしい。
私達はそれに乗ることにした。頼んだよ。
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==== 月の砂漠を4機のMS、MS-04ブグ1機とMS-05ザク3機が跳ねるように進む。
機体の色は戦闘を行くブグが青、ザク3機は黒と紫に塗り分けられている。
我々の知るMS-05と異なるのは機体の各所から動力パイプが露出しているところであろうか。
彼らは合流地点で待っていた赤いザクと合流し、月の赤道付近の盆地スミス海を行軍する。
ジオンMS特務小隊5機の任務はグラナダ市を脱出し、フォン・ブラウン市に逃げ込もうと図る
ミノフスキー博士を連れ戻す、というものだ。
連邦のMS、ガンキャノンとかいう人型戦車とバムとかいうMS-03ヴァッフのデッドコピーが
邪魔をするかもしれないが2個中隊18機(ジオン編成)程度の戦力なら、一騎当千の兵4人
なら(ヒートホークを振るって)切り抜けられるだろうと指揮官のランバ・ラルは考えていた。
懸念材料は士官学校トップの成績ながら「暁の蜂起」の首謀者として放校になった赤い機体に
乗る19歳のアズナブル兵卒だったが、ザビ家の末子がこの作戦の責任者キシリア少将に頼み
込んで、というか泣きついて「親友」をこの作戦に組み込んだそうで。
(お荷物にはならんでくれよ…。適当に弾をばら撒いて離脱してくれ)とラルは願っていた。
親友を戦死させたらガルマ・ザビはヒステリーを起こすだろう、と子供時代から彼を知るラルに
は想像できるからだ。任務を果たしてもザビ家、それも公王が掌中の珠のように可愛がるガルマ
の不興をかっては以後の軍隊生活は不快なものになるだろう。
「まぁ、軍を抜けたっていいんだがな。だが、ハモンのヒモというのもなぁ…」とそうなった場合
は二人で手を取り合って連邦に亡命するか、MSの1機も拝借して…などと考えていると、コック
ピットに悲鳴のような通信が入ってきた。博士に同行しているであろう連邦の工作員が使う
暗号通信をデコードできる特製の通信機を指揮官機ブグは装備している。
「ウサギが罠にかかった」と小隊全機に指示を出すラル。ガイア、マッシュ、オルテガの3人はMS
開発の過程で編み出した彼らオリジナルのフォーメーションを取り、アズナブルが殿に付く。
特務小隊各機はスラスターを全開にしてジャンプを繰り返しながら月面を進む。
5分もしないうちに博士が乗っているであろう月面車を全機のモノアイが捉えた。
「ミノフスキー博士!戻ってください!」とラルが無線機で月面車に呼びかける、さらに加速して
月面車を追いかけようとした刹那、ブグのコックピットにアラート音が響く、ラルはその瞬間
「散開!」と指示を出していた。特務小隊がそのまま進んでいれば居ただろう地点に50発を
越えるのではないか、と思われる砲弾が降り注いだ。
「待ち伏せか!」ガイアが吐き捨てるように言うと「しゃらくせえ!例の人型戦車だぜ」と
マッシュが応じ「なんでもいいから突撃だ!懐に入っちまえばあんなガラクタなんざ怖くねぇ!」
とオルテガが吠える。
「敵は遮蔽物のない
砲弾の雨に打たれることになるでしょう」と若い兵卒は癇に障る程冷静に事態を分析した。
(しかし、敵は肝心な博士を砲撃に巻き込むのを恐れてないのか?)とラルが訝った瞬間、
月面車に砲弾が直撃し、爆炎と共に粉砕された。
「任務失敗!ひとまず退避だ!」とラルは戦場離脱を命令する。
来た道を戻る特務小隊を砲弾が追ってくるが、先程の激しさはない。
特務小隊はしばらくクレーターの陰に隠れて散発的となったが依然続く砲撃をやり過ごし
砲撃が止んだ30分後、月面車の残骸を回収しに行った。
「粉々じゃねぇか。とんだ骨折り損だ」ガイアが呆れ声で呟くと、マッシュは「奴ら、最初から
博士を始末するつもりだったんじゃねーか?もう連中一応MSモドキ持ってるしよ」と彼なりの
推理を語る。オルテガは「せっかく大型ヒートホーク持ってきたのによぉ」と連邦の人型兵器と
戦えなかったのを嘆いた。
ランバ・ラルはこの作戦の指揮官として、トラップに注意しながら月面車の残骸をセンサーに
かける。ブグのセンサーは焼け焦げたヘルメットをひとつ発見し、ラルはそれと残骸を
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「で、死体のDNA鑑定は済んだの?」豹柄のコートを羽織った美人だが険のある
顔立ちの女が黒いスーツにサングラス、という出で立ちの男に問いかける。
「は、ヘルメットにこびり付いていた肉片は人間ではなく羊のものだそうです」
「そう。MS5機を月面まで派遣して回収できたのが火を通し過ぎのシシカバブとはね」彼女、
キシリア・ザビは軍服姿の時は男口調なのだが、私服の時は口調が変わる。
ミノフスキー博士を殺害してでも亡命を阻止したかったが、事態は最悪のケースのようだ。
「さらに最悪なのは連邦軍に潜らせた諜報網がDr.の線から燻り出されることね…」
『悲観する者には予想外の朗報がやってくるが、楽観する者には予想外の悲報がやってくる』が
彼女の信条である。
グラナダ市内の道路を無人運転車なのか、制限速度ぴったりの速度で走る大型トラック。
トラックがトンネルまであと50m、というところで側のビルから銃弾のような物が発射され、
トラックの前輪に命中すると爆発した。前輪を破壊され進路が乱れるそれにさらに3発が命中し、
トラックは横転しながらトンネル内部で炎上した。
銃撃が行われたビルの通用口から目指し帽から靴まで全身黒づくめの男たちが現れバラバラに
街に散っていく。
グラナダ市長を乗せたリムジンは前方でいきなり発生した事故に急停車し、市警察と消防を
待たずにUターン、市長を自宅へ送り届けた。
恐ろしい体験を一日に二度も遭遇した市長が自宅のドアを開けた瞬間、爆発が起こる。
キシリア機関が一日に三度仕損なることはないのであった。
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月周回軌道を航行する戦艦「ティルピッツ」のエアブロック近くの通路でテム・レイは涙を流し
ながら恩師に抱きついた。「センセぇ~、ごぶじでよ”がっだです”~」もういい年なのに涙と
鼻水で顔をくしゃくしゃにさせた元教え子を抱きとめるミノフスキー博士。
ヒゲにテムの鼻水が付き(ヘルメット外さなきゃよかった…)と思いながら博士は教え子に
「君は作戦について教えて貰えなかったのかね?」とテムに優しくたずねる。
テムは今度は憤慨しながら「私をこの軌道上まで連れてきたこのフネの連中は、博士の乗った車が
砲撃を受けて爆発するまで何も教えてくれなかったのですよ!」と猛然とまくし立てた。
博士はまぁ、落ち着きなさいというしぐさでテムをひとまず落ち着かせると「私達はグラナダ市を
出てすぐクレーターに隠していた船外活動ポッドに乗ってフォン・ブラウンの方向から90°ずれた
方向に進み降下艇に救助され、周回軌道まで上がってきたのだよ」と種明かしをする博士だった
が、テムはまた、怒り出し「ここの連中は車が爆破されて私が半狂乱になるまで本当のことを教
えてくれなんだ!のです!」なにか口調が怪しくなってきたテムに博士は再び落ち着きなさいの
ポーズで大人しくさせて、「ひとまずは落ち着ける所に行こうじゃないか。積もる話もあること
だし」と、とにかく艦内の重力ブロックに行こうと言う博士。
(しかし、現在位置をいちいち無線で知らせ、M粒子を感知すると悲鳴を発信する仕掛けを
月面車にしておくとはな。まぁ、人のいい諜報員などいないのだろうが)と博士はこれからの
生活が必ずしも愉快な日々ではない予感を抱いた。
軌道上でテム・レイが恩師と感動の再会を果たし百面相を披露していた頃、月面を行進する
24機のMSがいた。16機のRCX-76-A5 ガンキャノン改良型と8機のBM-01バムである。
ガンキャノンは全機155mmライフルCSV-77を携帯し、バムは全機100mmアサルトライフル
AR-YS77を携帯している。
隊長機らしい頭部を黄色くペイントしたバムがガンキャノン部隊の隊長エルドゥシュ中尉に
秘匿回線を繋ぎ「いや~、あの連中こっちに突っ込んで来なくてよかった!あの回避機動を
見る限り連中、戦争が始まったら絶対エースになるぞ。しかもダブル(10機以上撃墜)だ」と
安堵した様子で語った。
エルドゥシュ中尉は話かけて来た護衛部隊を率いる中佐とその部下達の練度を知るからか
笑いながら「自分もあの連中とウチの増強中隊だけで戦うのは御免こうむります。しかし、
教導団の猛者達ならお荷物を庇いながらでも太刀打ちできるでしょう?」と返した。
ツァリアーノ中佐は「バカ言っちゃいけねぇ。奴等とハンデ戦とか冗談じゃない。お前さんら
に大砲撃ちまくって貰って全機トンズラできたら100点満点ってとこだよ」と冗談めかして
言ったが、内心では(おそらく全員教官クラスの操縦員だろうが、ジオンの練度はこっちの
数段上を行ってるな…)とMSが砲弾をらくらくと回避する様子から推論した。
連邦軍はジオン特務小隊の上空3000mに位置した偵察プローブ、有線でさらに2000m上空の
有人艇と繋がっている、が光学、赤外線、M粒子観測などあらゆるパッシブ手段で得た観測
データをガンキャノン部隊とレーザー通信でリアルタイムにリンクし、ガンキャノンが主砲
320mm自動無反動砲、1機に2門装備されている、を全力斉射(60発/分)で撃ちまくり、
20発で主砲の弾倉が空になると、こんどは全弾榴弾を装填したCSV-77を間接射撃で撃ち
まくった。
だが、ジオンのブグとザクはガンキャノンの
16機の全力斉射、合計640発の320mmと200発近い155mmの弾雨をジオンの特務小隊は損傷無しで乗り切ったのである。
連邦軍統合参謀本部はこの「スミス海の戦い」の戦訓として、ジオンMSに対して間接砲撃で対抗するには観測手段のさらなるアップデートが必要という結論に達した。
例えば、白兵戦用MSが後方の砲撃戦用MSとリンクして着弾観測を行う、など諸々のアイデアが提案され、いくつかは実用化されることをなる。
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またまた、ゴップです。私は無事ジャブローに到着したトレノフ・Y・ミノフスキー博士と
対面した。昨日ジャブローに着いた直後からMS関連の情報の閲覧を要求し、出迎えた
エルラン中将を困らせたらしい。
結局、情報部と折衝のうえ博士にアクセスレベルを設定して情報を開示したのだが、
博士は食事のときも片時もタブレットを離さず、彼につけた従卒に食べさせてもらった
そうだ。もちろん徹夜でホロ端末に向かいディスプレイをいくつも開いてMSに限らず、
ミノフスキー物理学を応用した兵器群の資料を読んでいたらしい。
たしかに目の前の老人は顔にクマを作っている。
「ご無事でなによりです、ミノフスキー博士。我々連邦軍は貴方を歓迎します」
と満面の笑みで、そら連れてくるのに苦労したからね、握手を求める私。
博士は私の手を握りながら「ゴップ大将、果たして私は貴方達に必要とされている
のでしょうか?」といきなり『私って要るの?』と聞いてきたのだ。
私は宇宙世紀に来てからすっかり身についた演技力でおおげさに驚き、
「これはおかしなことを仰られますなぁ。我々が貴方を救出するのにどれだけの力を尽くした
かご存知と思っておりました」いかにも意外だ、という顔をした。
博士は悲しそうな、寂しそうな顔になり「昨日、M粒子物理学を応用した兵器の資料を読んで、
ジオンで私が開発してきた技術の上を行っている物の多さに驚くと共に私がこと工学の面で
お役に立てることはおそらく無いだろうと思ったのです」と内心を吐露してくれた。
そして、今度は興奮した面持ちで
「特にV作戦、テム君、いやテム・レイ設計主任のRX-78、アレは凄い!私が実用化を早期に
諦めたIフィールドモーターを全面的に採用している。データを見ただけであの機体が人間を
超えた柔軟性と作動速度を発揮できると断言できます。もしや、アレは無人機なのですかな?」
いや、無人機のガンダムが主役のマンガあったけどね。
「あの機体の設計データに私は自分の時代では既に終わった、と思い知らされたのですよ。ただ、
私を越えたテム・レイという男を師として誇りに思います。先人を越えることで科学は進んで
いくのですから」と今度はさっぱりした顔になる博士。テム・レイ主任の百面相は師匠譲り
なのでは、とこの時思った。
私は今度は内心からの笑みを浮かべ「たとえ、工学の分野で若い人に先に行かれたとしても
博士にはまだ物理学があるでしょう。博士もご存知でしょうが、ジオン、いやギレン・ザビは
連邦との全面戦争を準備し、おそらく年明けと共に開戦となるでしょう。
戦争となれば基礎理論の研究は疎かになりがちです。博士が基礎理論の研究をしていただくことで
M粒子は戦後の世界に無くてはならないものとなるでしょう」と両手で博士の手を取り訴えた。
博士も微笑みながら「では、私はM粒子物理学に残りの一生を捧げましょう。我儘を申せば、
研究室は若い時分に住んでいた北米のボストンに置きたいのですが…あぁ、あの映像なら
戦艦の中でテム君と一緒に見ましたよ。ニュートン力学兵器とは時代錯誤な独裁者の思いつき
そうなアイデアですな。貴方達がそれを阻止してくれるのでしょう?
なら、私は安心してM粒子の深淵を探求できますな」
私は苦笑しながら「かないませんな。我々はコロニー落としを絶対許しませんが、
もしもの時は空挺部隊が貴方を拉致し、ここにお連れします」と言った。
博士は「ロケットで打ち上げられるので無ければ甘んじて好意に甘えましょう」と苦笑する。
月面を脱出するのに使った海兵の降下艇、月面仕様のHLVは結構なGで周回軌道まで打ち上がる。
老人にはさぞキツかったろう…
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==== ジオン公国首都ズムシティ、王宮大広間
デギン公王とザビ家の兄妹、ガルマを除く、諸将が列席する御前会議が行われている。
議題が『連邦軍のMS開発計画』、総帥府とキシリア機関との共同作戦で入手した機体データ、
の検討に移る。
機体データの検証を担当したアルベルト・シャハト技術本部長(少将)が合図を出すと、
若い技術士官がホロプロジェクターを起動する。部屋の中央には連邦マークがペイントされた
MS-03によく似たMSのホログラムが浮かぶ。
若い技術士官、マイ中尉が緊張の余り多少噛みながら「これは連邦軍の量産MS、BM-01『バム』
です。ご覧の通り、我が方の試作機MS-03の技術情報をベースに開発された物と推測されます」と説明する。
「要するにMS-03の機密を誰かが漏洩し、その情報を元に開発されたコピーMSという訳だな」
この御前会議を主催するギレン総統がマイ中尉が言い辛い事情を明かす。
「で、このコピーはどの程度の性能を発揮する?単純なコピーでも連邦の工業水準、特に基礎
工業力は我が方と隔絶している。一説では30倍とも言うな。なら、MS-05並の性能を発揮しても
不思議ではない」
総統に話しかけられ、パニックを起こしかけているマイ中尉に代わってシャハト技術本部長が
回答する。
「この動画データから察するに機体に動力パイプが内蔵されているようです。我が方のMS-05は
それを外装して駆動性能を向上させております。また、このMSはかなりの重装甲と技術本部では
推定しておりますが、反面スラスターのバーニア口径は防御性能を優先させたのか控えめです。
我が方のMS-05は運動性と機動力で仮想敵に勝り、開発中のMS-06は15%以上優位、が技術本部
の結論であります。EMS-04なら言うまでもありません」
ここでギレンの対面に座る宇宙攻撃艦隊司令長官ドズル中将が「だが、連邦の工業力ならば、
こいつを大量生産できるのだろう?だとすれば厄介だぞ。
ギリシャ諸都市の重装歩兵に古代最強国家ペルシア帝国は敗れ去ったのだからな。
頑丈そうなこいつが列を為していたら我が方のMS部隊も手こずるだろう」
と外見からは意外な程戦史に通じてるところを見せる。
「結局の所、戦争は数だ。我が方のザクやヅダが倍の数のコピー機に敗北はせんとしても大損害を
被る可能性は捨て切れん。技術本部として何か対策はあるのか?」
MS開発計画は彼が兄から任され主導してきた計画だけに、さらには祖国がその命運をMSに全賭け
しているため、ドズルは対策=新型MS開発計画が知りたくて堪らないようだ。
シャハト本部長は再びマイ中尉に合図を出すと部屋にはMSのホログラムが浮かぶ。
ザクより一回り以上大きく、脚部は巨大である。固定された頭部のせいで頭巾を被った僧兵に
見える重MSだ。
「YMS-09ドム。これが技術本部の対策であります。EMS-04の『土星』熱核ロケットの改良型
『天王星』を両脚に装備しております。総推力は60トン、MS-06のそれを10トン上回ります。
最大発電出力は1,200kWを計画しており、この大出力により、ビーム兵器の運用が可能と
なります」
『ビーム兵器』という単語に会場の諸将から驚嘆の声が上がる。それこそがMS単騎で宇宙戦艦を
一撃の元に葬る宇宙世紀の『銀の弾丸』なのである。
シャハトは続けて「このYMS-09開発計画は既に総統に御認可頂き、目下試作一号機を鋭意開発中
であります」と既に開発がスタートしていることを明かすと再び会議場が湧いた。
沸き立つ会場を他所にキシリアが冷たい、マスクのせいで多少くぐもった、声と目付きで
「ミノフスキー博士の亡命で連邦の技術革新が進む可能性について本部長はどのようにお考え
なのか?」とまるで尋問のような問いを投げかける。
YMS-09で盛り上がっていたドズルは(我が妹ながら空気を読まん奴だ…)と半ば呆れながらも、
一方で幼い頃から周囲に流されず言いたいことを言う彼女の性格は得難いものだとも思う。
ギレンの表情筋は微動だにしない。
シャハトは「礼を失する物言いですが、かの老人は既に一線を退いた人であります。
ジオニック社も専ら博士の名声を軍への広報宣伝に利用すべく技術顧問契約を結んでおりました。
我が国における博士の役割はMS-03開発で終わった、と言えましょう。
その老人が今更連邦に亡命したところで、MS-03のマイナーチェンジが精々、というのが技術本部
の結論であります」
ギレンの口角が少し上がる。ドズルは(あ、兄貴今笑った)と兄弟ならではの感覚で兄の機嫌が
良いことを察する。
キシリアは「連邦は中隊規模のMS部隊まで繰り出し博士の救出作戦を展開しましたが、高い
買い物になりましたな」と自らが主導した奪回作戦の失敗が大した失点でないことを強調する。
最初からそのつもりだったのだろう。ギレンの口角がさらに上がり近くに座る者にはニヤリと
しているのが分かる。(お前の存念など最初からお見通しだ)とでも言いたげな表情である。
それを見たキシリアはさらに周囲の温度を下げる目つきになった。
同席したキシリア機関の情報将校はスパイに相応しい鉄面皮だったが、その内心はいかばかりの
ものか、手の平にはうっすら汗をかいていた。
この議題は「対策としてYMS-09開発計画を推進する」という結論が出て会議は散会となった。
アルベルト・シャハトは本部長執務室に持ち込んだ愛用のソファーにもたれ掛かり、
ため息をついた。
「あのバムとかいうMS、動画は修正されておるのだろう…」
と技術本部の出した結論の正反対のことを呟いた。
根拠は他人には言えない、敢えて問われれば勘、としか言えないだろう。
アルベルト・シャハト、というエンジニアに「生まれ変わる」前、彼は別の名前でU.C.0067に
ジオン公国で生を受け、敗戦で両親に連れられアクシズに逃れ、そこで成長しMS乗りとなった。
彼には素質があったのか同期がビーム砲に手足の生えた機動性最悪のガザに乗せられる中、
歴としたMSのリゲルグを任され
ティターンズ壊滅後の地球侵攻作戦ではアフリカに降下し、現地の反連邦勢力を軍事顧問として
指揮し、
現地人の少女だった恋人は連邦の掃討作戦で彼の目の前で戦死した。彼女の乗るドワッジは
彼の乗るドライセンの援護も及ばす火球となった。ビームで蒸発し、痛みもなく亡くなったのが
せめてもの救いか。
ハマーン・カーン摂政が戦死し、シャア・アズナブル総帥の新生ネオ・ジオンではMS中隊長と
なり最終局面で「あの光」を見た。彼は恋人に再会したような感覚を覚え、涙が止まらなかった。
シャアの再来を名乗る男が指揮する残党組織では「大佐」の物真似に見える男を胡散臭く思い
ながら、今更足抜けもできず戦っていたが、物真似男の信奉者に後ろから撃たれ乗機を失った。
かろうじて脱出できたのは幸運だったとしか言えない。
前世の経験が、あのMS、BM-01はあの様なウスノロではあるまい、と告げている。
MS-05と同等の機動性と恐らくはザク マシンガンの連射に耐えうる装甲、RGM-79と同程度、
を持っていると考えるべきだろう。
前の彼の記憶ではRGM-89ジェガンはネオ・ジオン諜報部が手に入れたスペックからは想像
できないような高性能機だった。スペックが上の筈のギラドーガに乗った多くの戦友が
すばしっこい「89」に撃墜され帰らぬ人となった。
思えば、エゥーゴのMSA-003ネモもアクシズの諜報部が入手した控えめなスペックの印象を
裏切るタフな機体だった。
火力はあるものの、機動性最悪、防御力はその貧相な外見通りのガザCに乗った当時の彼より
若い少年兵達は次々と一年戦争上がりのベテランが乗る「003」に食われて散っていった。
控えめと言えば、あのハムラビだかアルハンブラだかいうイカ野郎だ!
彼のリゲルグはあのイカに追い回され彼は泣き喚いて逃げ回った。
アクシズに帰還した彼は諜報部に抗議に行こうとして中隊長に制裁を食らった。
気がつくとシャハトは前の彼に戻って兵隊言葉で悪態を付いていた。いかんな、と彼は苦笑し
思考を現在の問題に向けた。
「生まれ変わり」なぞ他人に知られて良いことは何もない。下手をすれば生体実験の検体に
されるだろう。
思えば、かの叛乱者グレミー・トトが人が変わったように野望に邁進したのも今の彼と同じ
事情だったのかもしれない。
彼は専制国家で生を受け、その残党の中で成長した男であった。悪目立ちを避けるのは
最早本能といえる。
アルベルト・シャハト、という今生では前の彼よりも高い知能、特に工学分野に才能を
発揮した、を利用し前の彼の知識で補強しながら出世の階段を登ってきた。
前の知識を使うのは祖国のため、という理由もあったが、一番の理由は生き残るためだ。
ジオン共和国に移住したミノフスキー博士の知己を得てMS開発計画に参画し、ジオニック社
にはMS-05開発段階でMS-06に採用された数々の機構を「アドバイス」して実装させた。
今年制式化予定のMS-06も性能を底上げされている。
いくつかの開発計画を早期に中止し、EMS-04のような有望なものは知識を利用して改良を
アドバイスし、上層部にアピールして制式化にこぎつけた。
YMS-09も元々はツイマッドが恩のある
だが、天王星エンジンは未だ試験機の一基も組み上がっておらず、この開発ペースでは制式化は
記憶の中にあるMS-09R『リック・ドム』と大して変わらない時期に成りかねない。
「MS-09の初陣は本土決戦になるやもしれぬ…」と呟く彼、入室を求めるマイ中尉の声で現実に
戻ったシャハトは「入室を許可する」と若い技術士官を執務室に招き入れた。
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私は帰ってきた! ゴップです。
U.C.0078 8月のこの日、私のもとに憲兵隊本部の同志から、例の将校を拘束するだけの証拠が
固まった、と連絡が入った。
では、早速行動に移らなければ。私はリーとバスク、新しく入った若い副官たちを引き連れ大出力
レーザー通信、もとろん暗号通信、が可能な司令室に急いだ。謙虚の前に根回しはできるだけしておきたい。
世界初のMS戦は砲弾を撃って、避けるだけ、という展開に終わりました。
THE ORIGIN劇中の展開は情報が無いなかとはいえ白兵戦ではガンキャノンの強みを活かせないですよね。なお、RCX-76-A5の主砲は実在のAMOSのような自動迫撃砲だと思ってください。射程はそんなにはありませんが間接射撃は可能という感じです。
大作戦で救出したミノフスキー博士ですが、特にRX-78の設計を見て一線を退く決意をしました。ですが、基礎理論は大事ですので、研究を頑張ってくれるでしょう。
ジオン側にも転生者が現れましたが、こちら側の世界からではなくあちら側でループする人物としました。専制国家なので、滅多なことも言えず孤立しています。
ですが、ザクは強化されヅダが並んで制式化されるなどジオンも強化されています。
ドムの開発計画もスタートしていますが…
ワイアット提督は完全に「キャラが独り歩きする」状態になってしまいました。
オラ、ワイアットがすげぇ名将に思えてきたぞ!(紅茶キメた目で)
次回は地球連邦のほの暗い所に手を突っ込む話になりそうです。
5/23追記:死体が実はマトン、は現在アニメ放映中「波よ聞いてくれ」が元ネタです。
原作読んだ時には「無限の住人」の作者なので絶対バラバラ事件だと思いました。
訂正:マクロスの主砲口径を修正しました。