果たして作者の筆力は人の革新にどこまで迫れるのでしょうか?
副官をぞろぞろ引き連れた私は大出力レーザー通信が可能な司令室に急いだ。
司令室に入ると、盗聴防止設備が整った通信ブースに入り、リーとバスクのみ同室を許可し、
若い副官達は部屋の外で待たせておいた。彼らは通信ブーズのドアの前で衛兵の如く整列
している。
レーザー通信回路を開くと早速画面にはAE.社のメラニー・ヒュー・カーバイン会長が現れた。
事前、といっても15分前、に統合参謀本部事務局からAE.社に連絡していたからだが、突然
といってもいい通信にも関わらずカーバイン会長は微笑みを浮かべながら挨拶した。
流石は
商売人ぶりだ。
私は世間話もそこそこに彼に本題を切り出し、会長は少しだけ眉を上げたが愛想よく私の要望を
了承してくれた。
まぁ、V作戦じゃずいぶんと儲けさせ、今後も儲けさせるだろうからね。
これくらいは無理を聞いて貰えんと。
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その3時間後、連邦政府の行政機関が集中するワシントン
連邦政府中央議会議員、フランシス・マーセナス氏と私は会談していた。
わざわざ北米から彼がやって来たのは、通信では連邦政府内のまだこちらが
知らない『黒幕』から盗聴を受ける恐れがあるからだ。
電波暗室の会議室に通された彼は部屋に入るなり、
「コンニチハ、リディのおじいちゃんです」と挨拶だけ日本語で話しかけてきた。
え!?この人ガンダム・センチュリーのシンパだっていうけどやはり…
「ええ、私もこのガンダム世界に生まれ変わった一人です。ここに来る前は合衆国
上院議員である父のスタッフをしていました。太平洋の向こう側と緊張が増す中、
大統領のシンパと見なされていた父が乗った車は爆破され、同乗していた私は
こっちに来たという訳です」と肩をすくめるマーセナス議員。
「私は21世紀の日本からです。おそらくは病死でこっちに来ました」と自己紹介する私。
フランシス・マーセナス議員は移民問題評議委員会の大物で、大気循環システム使用料金
(通称:空気税)を12歳以下には免除する法案をコロニー公社の大反対を押し切り成立
させた超が付くやり手の政治家として知られている。
たしか、現在34歳の筈の息子ローナンと8歳の孫娘シンシア、そして5歳の孫、リディがいる。
「大将、貴方は『宇宙のイシュタム』というマンガをご存知ですかな?」コミックではなく
元日本人の私に気を使ってか「マンガ」と言う議員。
「たしか『第08MS小隊』の後半を監督した人が描いたものですな。一週間戦争の顛末を描いた
作品だったと記憶してます」と答えた。
議員は陰鬱な表情となり「あの作品のジオン側の主人公、劇中『イシュタム』と呼ばれる
エリザ・ヘブンは孤児となり空気税を滞納し窒息させられそうになります。そしてジオンに買われ
てくるのです。私の同志の一人が映像記憶能力の持ち主でね、『宇宙のイシュタム』を完全模写
し、私に読ませてくれたのですよ。勿論公用語版です。ま、著作権的にはナニですが」
とウインクしてちょっと舌を出す(テヘペロ)する議員。
政治家先生にはこういうスキルもいるんだろうなぁ。
「あの様なことはこの宇宙世紀では良くあることなのですよ。流石に密閉空間に閉じ込めたり
真空中に放り出されたりはしません、というか殺しては新鮮な内臓もとれませんし、児童ポルノや
スナッフムービーにも児童買春にも使えませんからね」今度は真剣な面持ちで宇宙世紀の闇を語る
議員。知識としては知っているが、こうやって正面切って言われるとクるものがある。
『ブラック・ラグーン』の双子の様なことがこの世界でもやはりあるのだ。
「私はその大きな原因である空気税をなんとかしようと考え、12歳以下は空気税を免除する
『マーセナス法』をかなり強引に通したんですよ。コロニー公社からは合法非合法を問わない
圧力を掛けられましたがね。あの時は憲兵隊にもお世話になりました」議員は肩をすくめる。
さらに話を進め「前世で『ガンダムUC.』を見た時はマリーダを殺したリディを四文字言葉連発で
罵ったものですが、いざ自分の孫となると可愛くて仕方がないのです。ですが、その孫が後年
殺した相手と心を通わせ一生その記憶に苛まれるとやはりね…」と目元を潤ませる議員。
これは彼の本音だ。
「大将、私はマリーダ・クルス、プル12の様な強化人間にされる子供達
孤児やDVの被害児童を集めた福祉施設に里親を紹介すると称し、人体実験疑惑のある研究所に
売り飛ばす悪徳NGOがあるのです。貴方が追ってらっしゃるAE.以外にも子供を類人兵器に
しようと買い集める輩がいるのですよ」と私を正面から見据える議員。
彼は間違いなく私達の同志だ。私は彼に協力を誓い、互いの立場で何ができるか話し合った。
会談後ワシントンに帰る途中、議員はPX(別名:ショッピングモール)に寄り、フライマンタ
戦闘機のダイキャストモデルを買っていったそうだ。リディへのお土産だろう。
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====ジョアンナ・ジョン(11歳)は現在サイド4、8バンチにある児童養護施設に入所
している。
酒浸りで母や兄ジョブを殴る父親から母子が逃げ出して3年、その後母が亡くなり、兄は
彼女を養うため、空気税を払うため、軍に志願した。
5歳上の兄とはもう数ヶ月もメールだけで言葉を交わしていない。兄はどうも秘密基地にいる
らしく、メールは発信元が隠され何箇所か■になっていた、直接通信など不可能だった。
ここには孤児だけでなく彼女の様なDVから逃れてきた子供達も大勢いて近所から「シェルター」
と呼ばれていた。8バンチの避難シェルターも近くにあるせいかもしれない。漏れ聞く施設の
大人達の会話から、ここの懐事情がだいぶ厳しいことを彼女は知っていた。そして、里子を出す
見返りに援助を申し出ている団体があるのも。
ある日、施設に人の良さそうな顔をした男女数人がやって来た。リーダーらしい男は施設の
代表である女性職員に「あの話、ご検討いただけました?」と揉み手をせんばかりの態度で
持ちかける。職員が「その件なのですが、子供達の前ではちょっと…」と言いよどむのを他所に
ジョアンナ始め年かさの子供達が「あたしが里子に行きます!」「オレも!」と手を上げた。
男は大喜びして「いや~、感心だ!みんなのために里子に行く訳だね。絶対君達がいい所に行ける
よう手を尽くそう!」と大声を出したところで、施設のドアの方から大きな音がして、ヘルメット
に膨れたベストを羽織り銃を持った10数人がなだれ込んできた。驚愕の余り固まる男、一緒に
来た男女は既に床に手を広げて這いつくばっている。
銃を突き付けられ男も這いつくばった。銃を突き付けたベストを着た男は施設に援助を申し出た
NGOの代表、を自称する男のポケットから拳銃を探し出しポーチにしまう。
女性とおぼしき体形のベストを着たのが施設職員と子供達を部屋の外に連れ出す。
車に轢かれたガマガエルのような有様の自称NGO代表は「俺たちにこんな真似しくさって、
〇〇先生が黙ってないからな!」と銃を突き付けた突入班に悪態を付く。
すると、突入班に代わってスーツ姿の男が「その辺の事情については後でゆっくり聞こうじゃ
ないか。特にムーア議会の〇〇先生についてじっくり、とな」と答える。
悪態をついていた男は「キサマ…
こんな地球から離れたサイドの
だろう。スーツ男は「いかにも、イヌのおまわりさんだよ。わんわん!奴隷商人召し捕ったぞ!」
とおどけて言った後、冷酷な目で「俺はな、お前らみたいな連中には容赦せんぞ。自治警を
抱き込んだからって大手を振って仕入れに来たのが運の尽きだ」と言い捨てた。
NGO、後で大人達が話していたが、
男女が連行された後、スーツ姿の連邦捜査官は施設の代表に「大変お騒がせしたうえ、
子供達を怖がらせてしまい申し訳ない。ああいう手合は今日日だいぶあからさまに子供を
集めていまして。我々も事態を憂慮していたのです。で、あいつら子供達をどにに里子に
出すと?サイド6?そうですか、サイド6、と」男は携帯端末に何事か書き込み施設の代表に
紙切れを一枚渡す。
「これは事件を追っている時知り合った真っ当な団体の連絡先です。地元自治体が当て
にならないのでしたらここに相談されたら良いでしょう」代表はずっと豆鉄砲を被弾した
ハトの顔のままだ。一連の騒動をドアの隙間から覗いていた男の子達は「アレSWATって
いうんだろ!かっけー!俺SWATになる!」
「あの刑事さんシブくてかっけーな。俺はFBI捜査官だな、悪党にあんな感じでシャレた
台詞言ってやるのさ」と盛り上がっていた。
ジョアンナは(もう兄ちゃんに二度と会えない)と覚悟していた昨晩のことを思い出し、
(神様っているのかも…)と思いながら生前母が唱えていた祈りの言葉を口の中で唱えた。
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====ジョアンナの兄ジョブ・ジョンMS特技兵長はルナツーで妹からきたメールを
読んでいた。「え、ジョー(ジョアンナの愛称)のやつ売られる寸前だったって!?」
妹に起きた災難にあのクソ施設から早く妹を救出しようと決意を新たにするジョブだった。
自身も早くに両親を亡くし、ジョブを弟のように可愛がる、そして厳しく罰する、小隊長が
「ジョアンナちゃん、施設の連中が怪しいNGOに騙されて怪しいとこに里子に出されそう
だったのか…まぁ、騙されてたのか実は共犯なのか分からんけどな」彼も兄妹と似たような
育ちで大人達のやり口は知っている。「でも、FBIがそのNGO捕まえてくれたんだろ?
その上真っ当な所教えてくれるってそいつ本当にFBIか?善良な
その階級は曹長の小隊長は軍に食うため志願するまでおよそ公務員という人種に良くして貰った
経験がなかった。彼にとっては軍、それもノボトニー中隊だけが家族なのだ。
「分かんないスけど、アレじゃないスか?MS絡みみたいに上の方針が変わったとか」自身の
歩兵分隊の新兵だった頃からの数ヶ月を思い起こして、彼なりの推論を話す。小隊長は自らに
話しかける時は口調のことを煩く言わない。
「そーだなー。ま、そんなとこだろうな。大事なのはジョアンナちゃんが助かったことと、
オメェが一人前のパイロットになってあの子を養ってやれるようになることだな」
「え!?俺まだ半人前なんスか?勘弁してくださいよぉ」と驚いた顔のジョブ。
こないだ、エライさん達に腕前を披露したばかりではないか。
すると小隊長はニヤリと笑い「よーし、それじゃ卒業試験だ。これをパスすりゃオメェは
一人前だ」と顎をしゃくり、格納庫についてこい、とポーズを取った。
ジョブは愛機BM-01L『ジョセフィン(母の名前)』に乗りルナツー近海の空域にいた。
模擬戦の相手は小隊長だろうが、3回に1回は勝利している。自分の成長具合を考えれば
もっと勝率はいいかもしれない、勝ったら小隊長に自分を昇進させてくれるよう中隊長に
具申してもらおう、と皮算用をしていると対戦相手らしき機体がやって来た。
「エエエエエエエエエッ!!!!!?」模擬戦の相手は機体に「The Beast」のロゴと
狼男がでかでかと描かれたBM-02だった。
「ヤザン・ゲーブルかよ!!聞いてねぇよ、こんなん!無理ゲーだろが!!」無線がoffなのを
確認してから悪態を付きまくるジョブ。無線が入ると画面にはにやにや笑う小隊長が現れ、
「どうだ、手応えあるだろ?少尉に勝てたらお前を下士官に推薦するぞ。伍長すっ飛ばして
軍曹だ。嬉しいだろ?」と半笑いの顔でジョブを煽る。
「スマンな、坊主。ノボトニー大尉にゃちと、借りがあってな。断れんのよ。ビーム
ライフルは演習モードになってるのをちゃんと確認したから安心してかかってきな」
と、『ジェヴォーダンの野獣』が哀れな子羊にかかってこい、と手招きをする。
人間離れした姿のBM-02ベムがやると本当に怪物じみている。
ジョブはこうなりゃヤケだ、とばかりに愛機のスラスター推力を頼りにランダム回避運動を
取りながら、ヤザンのBM-02に迫る。だが、BM-02はジョブが放つビームを最小の動きで
回避しながら、ジョブ機が居ない方向にビームを放つ「ほい、と。1回死亡だ」ビームは
ジョブ機の未来位置を読んだかのように胴体を捉えていた。コックピット直撃だ。
「うげ!ちっきしょーっ!!」ジョブはさらに熱くなり、己の限界までGの掛かる機動をくり
返しながら、ところどころで野獣にビームを放つが、ことごとく回避される。まるで、
どこを狙っているのか事前に分かっているように。
そして、機動を先読みされているかのようにビームがジョブ機に命中する、今度は
背部の大型スラスターだ。「ん?おまけで大破にしといてやる」とヤザンは2発目を
放ち、ジョブ機の胴体に命中する。
結局模擬戦でジョブは10回死に、ヤザンには1発も当てられなかった。
すっかり萎れた様子でコックピットから這い出るジョブ。ヘルメットの中の顔は
汗まみれだ。その中の何割かは冷や汗だろう。
ヤザンはシオシオになったジョブに近づくといきなり彼の股間を掴み、「どうした?
縮んどるじゃないか」と言う、ヤザンが模擬戦を終えた後、対戦相手の訓練生に
良くやる一種の儀式だ。野獣は教官パイロットでもある。
「見なよ、あのジョブの顔!」「ヤザン教官にタマ揉まれてやんの」ヒャハハ フフフ…
女子訓練生、皆揃いも揃ってライラを真似たショートカットだ、が指差して笑っている。
1人だけ、やたら目を輝かせてジョブとヤザンを見てる女子がいるが、周りの男子達は
彼女の性癖を知ってか目をそらした。
女子達がことさらジョブの失態を言い立てるのは彼が一足先に実戦部隊に配属され、
兵長に昇進したからだ。やっかみ、と言ってもいい。一方でヤザン教官を女子達は
ライラに向けるのとはまた違った眼差しで見つめている。
団長直々に『野獣』の渾名を賜ったヤザン・ゲーブルだが、ルナツーでの女性人気は高い。
花形のMSパイロットそれもルナツーで一二を争う操縦員ならモテて当たり前のようだが
もう一人の一二を争う操縦員、ハンサムなカジマ 少尉ならともかくヤザンが彼を上回る
女性人気を集めているのは(比較的)女性に優しいからだ。
女子訓練生には模擬戦が終わった後、身体に触れることは一切なく、「ちゃんとシャワー
浴びとけよ」と気遣った言葉をかける。訓練や罰則は男子と同じように課すので、
スケベ根性からではないことを訓練生達は知っていた。自分が受け持つ訓練生の
誕生日にはフランス製の香水の小瓶、実家から送ってきた物らしい、を渡し「ライラの
真似もいいが、若いんだからちっとは身なりに気を使え」とさり気なく言うのだと
ある訓練生はうっとりとした表情で言う。
口の悪い訓練生は「教官、鼻が利くからアイツ等の体臭が気になるんじゃね?」とか
身も蓋もないことを言うが。
「カッコいいのよねぇ、ヤザン教官」「そうそう、アルファオスって感じじゃない?」
『美女と野獣』の美女志願の10代女子達が姦しいのを他所に、ジョブはヤザン、
そして中隊長のノボトニー大尉を交え模擬戦の講評を聞いていた。
「動きはいい、判断も早い、だが、教本通りというかオート回避モードに頼りきりだな。
アレじゃ、どこにどうやって逃げるか丸わかりだ。なにせ、俺たちが作った回避マニューバ
だからな」ヤザンはタブレットを持ちながらチェックシートにチェックを入れていく。
ちゃんと教官の仕事をしているのだ。喧嘩沙汰で営倉入りして勤務できないこともあるが。
自身はトマホーク攻撃機からの転向組のノボトニー大尉はヤザンに「ランダム回避パターンは
かなりの種類があるが、やはり教官には分かるのかね?」と自身のためにも質問した。
「そりゃあ、そうです。アレはあいつの癖、コレはあいつの癖って分かるもんなんですよ。
つまるところ、機体にプリセットされたマニューバは俺達の手癖を纏めたもんなんですから」
ヤザンは彼にしては丁寧に答える。
「すると、ジョブ・ジョン兵長は機体にプリセットされた回避パターンではなくて自分の
マニューバを編み出さないといけない?」と大尉。
「その通り!いいか、坊主、若いんだから楽をしちゃイカンぜ。コックピットにいない時も
考えろ。プリセットされたマニューバを組み合わせてもいいし、シュミレーター使いながら
一から作ったっていい。
なるかもしれんぞ?」と彼にしては細かいアドバイスを送るヤザン。
ジョブに光るものを見つけたのだろうか。
ジョブは大声で「ご指導ありがとうございました」とヤザンに敬礼した。
その後、なぜか小声で「あの、少尉はもしかしてニュータイプなのですか?」と聞いた。
何か他人に知られると困ることのように。
ヤザンはガハハと笑いながら「俺はそんな超能力者じゃねーよ。単に坊主とはコックピットに
座ってる時間が二桁ほど違うだけだっての!」とジョブの背中を叩く。
ヤザンのその仕草に歩兵時代の分隊長を思い出すジョブだった。
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ふたたびゴップです。ジョアンナちゃん助かって良かったね、ジョブ君!
兄妹が戦場で再会、とか胸糞展開にならずに済んで良かった!
それはさておき、U.C.0078 8月、私はニホンにいた。この弓のような列島は事実上
ヤシマグループが支配する国だ。この連邦加盟国でもかなり豊かな、それでも21世紀よりは
影響力が小さい、国は産業の殆どをヤシマのグループ企業が占め、政府は「ヤシマグループ
総務部」と渾名される始末だ。グループの中核企業ヤシマ重工は連邦軍の艦艇の何割かを
建造する巨大な宇宙船ドックを宇宙に保有している。テキサスコロニーはまぁ、なんと
いうか
私はこの国の
一国を支配する大企業のトップと言えば、裸の美女を侍らせ「ムハハ」と笑いながら
スシを食ってるイメージだが、シュウはいかにも育ちの良い紳士かつ、やり手のビジネスマン
である。21世紀の日本で言えば、かの大手自動車会社のCEOのようなカリスマ経営者として
知られている。
「シュウは相変わらず飛ばすねぇ」私と彼は彼の一族が「デッチボウコウ」と呼ぶ従軍時代
からの付き合いで互いをファーストネームで呼び合う仲だ。実は幼いミライさんが両親と
一緒にうちに遊びに来て娘と遊んでたんだよ、ご本人は憶えてないかもだけど。
「いやぁ、そういうボブこそずいぶん飛ぶようになったじゃないですか」彼はセンパイを
立ててくれる男だ。
「若い人にトレーニングを付き合って貰ってね」と私が言うと、シュウはちょっと目線を
後ろに向けて「彼ですか?いや、凄い身体をしてますなぁ」と感心した口調でゴルフ
ウェアとキャップ姿で私のゴルフバッグを担いでいるバスクを褒める。
「私自慢の優しい巨人さ。仕事の方も実に有能な男だ」と私が自慢すると、携帯センサー、
距離や風速・湿度を測定できる狙撃手の隣の観測員が持ってるような
ヤツ、を持って後を付いてくるリー大尉が(え?僕は?)みたいな顔をする。
見なかったことにして私はシュウに本題を切り出す。
「シュウ、グループにタキム重工とボウワを加える気はないかね?」
タキムはMSの融合炉、ボウワはビームCAPとビームライフルを納入している軍需企業だ。
わざわざニホンまで足を伸ばした理由はこれだ。私の唐突な提案にシュウ・ヤシマは
「アナハイム、ですか。彼らの寡占を許さないおつもりですかな?」と驚かない。
事前連絡でそれとなく私の意向を伝えていたからだろう。
「そうだ。あそこにしろ、君の所にしろ、軍需の売上はグループ全体でみればさほど
大きくない。だが、政治的な発言力は別だ。AE.が軍需市場の
絶大な影響力を持つだろう。『持続可能な戦争』を起こせる程にね」と私は前世の知識や
現在のゴップの知識を動員して予想した起こり得る未来を予言する。
「カーバインさんは状況を操作できる、と自惚れるような人ではないのですが…」
カーバイン=サンとAE.会長を呼ぶシュウ。彼と会長は商売敵だが、個人的にも親しく語らう
関係だ。
「現在そうだとしても、人は歳を取るさ。それにあそこは長男のヨメがね」『ヨメ』とニホン語で
言う私、シュウはマーサ・ビスト・カーバインの
ある女人ですが」と答える。彼の一族は妻の実家がグループの経営に口をだすのを好まない。
その割に自分の娘は大物官僚ブルーム家に嫁がせようとしてるが、彼個人の意向というより
一族の総意的なものなんだろう。シュウは妻を亡くしてから、さらに娘を溺愛するようになった。
「この件、少し時間を頂いて役員会で話し合います。私は賛成票を投じるつもりですが」
とシュウは前向きに検討、というか実質了承してくれた。
私は(頼むよ)という顔をしながら、「そう言えばシュウ、『ムラサメ』という名前に心当たり
あるかい?」と世間話のように尋ねた。
言わずと知れたここニホンを本拠に強化人間やサイコマシンの研究をしていたあの研究所だ。
この時点ではまだそこまで研究は進んでいないらしいが。
シュウは「そういえばプロヤキュー選手のドーピングが騒がれた時、メディアにそんな名前が
取り上げられましたね」と経営者らしく時事ネタに強いところを見せる。
我々やFBIの捜査でもニホンのムラサメ研はプロアスリートに検査を掻い潜るドーピングや
受精卵を遺伝子操作して知能や美貌に優れた子供を産ませる事業などで稼いでいるらしい。
本当の目的から目を逸らすカモフラージュか、研究資金稼ぎのつもりなのだろう。
ちなみにシュウは公言こそしないが、極東地域の野球リーグでは一族発祥の地を本拠にしている
チームが贔屓だ。若い頃、彼の宝物だという「プロヤキューカード」を見せられたことがある。
彼も商売人なので本当のこと
関わっている気配はないようでひとまず安心した。
シュウは「私は来年早々にはサイド7の現場で陣頭指揮を取ろうと思っています。しばらくの間は
ボブとこうしてゴルフを楽しむことはできないでしょう。今夜は是非セッタイさせてください。
後ろの若い将校サン達もご一緒に」と思い出したように地球を離れることを告げた。
そうだ、シュウはサイド7に行くのだった!
今後状況が「THE ORIGIN」の通り進むなら彼とは二度と会えない。
この美しい彼の故郷にして前世の私の祖国、ニホンも巨大津波で壊滅的な被害を受けるだろう。
私は劇中ではザクの奇襲で死亡する友とその故郷を救うことを改めて決意する。
ゴルフの後、シュウのセッタイを受けた翌日、私はジャブローに帰る前に鶴岡八幡宮に寄り
マエバラ君に送る武運長久の御札を貰ってから極超音速機の機上の人となった。
折角の里帰りだが、宇宙世紀の日本をほとんど観光できなかったな、戦後の楽しみとしよう。
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月への通信や議員とのミーティング、ニホンへの弾丸ツアーなどの結果、私の目の前には
魔女が、統合参謀本部第三局次長モニカ・ハンフリー大佐がいる。『サンダーボルト』15巻の
ようなホログラムではなく実体だ。15巻のあの表情のまま座っている。
彼女は表向き統合参謀本部の幕僚の一人で私の指揮下にあるはずだが、色々ややこしい背景を持つ
のでここまで手を尽くした後でないとふん縛って連れてこれなかった。
「なんで、ここに連行されたのかは分かっているね?」私は最初は優しい声色で尋問を始める。
私の背後には念の為、バスクにサングラスを着用させて立たせている。実のところ怖い、賢くて
優しいがやはりゴリラが背後に立っているようなものだ。バスクのサングラス越しに睨みつける
視線の方が尋問対象へのプレッシャーになってるかもしれない。彼はリー大尉から如何に今回の
尋問対象がヤベー奴なのか、強化人間とはなにか、を懇切丁寧に説明して貰っている。
横で聞いてた私も時々自説を述べたりしたが。
結果、彼は別の世界の自分が非道な強化人間プロジェクトを推し進めていたことに戦慄し、
そして憤慨した。彼は優しいゴリラから怒りに震えるゴリラとなった。
ところが、ハンフリー大佐は「存じません」とにべもない。バスクの存在も何らプレッシャーを
与えていないようだ。同じくグラサン着用のリーが「大佐殿、貴女が設立に参画し現在も理事を
なさっているAE.社出資の小児科病院ですよ。10年以上も入院している患者がいるようですね。
いや、被験者と言うべきですかな?」と調査結果を突きつけるが、彼女は「閣下もご存知のよう
に私は国内留学で大脳生理学を学びました。当時学友だった小児科医に頼まれ病院の理事に名を
連ねていますが、運営には関与していません」とカバーストーリーを開帳する。
確かに例の施設は表向き小児科病院で、AE.社は社会貢献と称して資金援助とグループの医療機器
メーカーから検査や治療機器の無償供与を行っている。が、実態は表沙汰にできない人体実験の
研究データを製品開発に使っているのだ。
彼女のバックはアナハイム・エレクトロニクスだ。そのせいで私はドタバタさせられたのだが。
そら、ΖやΖΖのバイオセンサーやらその後のサイコフレームやらをぽんぽん開発できる訳だよ。
一年戦争の20年近く前から人体実験を繰り返しデータを蓄積していたのだからな。
サイコ・コミュニケーターの基礎理論は確立しており、後は実践あるのみ、だったんだろう。
「大脳生理学、というのは12歳の少年を13年に渡ってあれこれいじくり回した挙げ句、脳腫瘍に
させて殺す学問なのかね?」私は少しはハンフリーが動じるのではないか、とレヴァン・フウを
引き合いに出した。ハンフリーは動じること無く、「長年の治療の甲斐無く症状が悪化した患者も
いるでしょう」と素知らぬ風だ。
「あなたという人は、あなたを母と慕う子供達を何とも思わないのですか…」バスクがゆっくりと
だが、怒りをにじませた声色で彼女に迫る。彼も両親が自分より民族運動を優先させた言わば
捨てられた子供だ。何%かは自分の両親への怒りもあったかもしれない。別の世界の自分への
怒りの方が割合は大きかったろうが。
「中尉、かしら…貴方背が高くて階級章がよく見えないわ。私も時々見舞いに行く度に『モニカ
おばさん』と駆け寄ってくる子供達は可愛いわ。でも、彼らや彼女らが裏でどんな目に遭って
いるのか知らないのよ。先程のハンサムな大尉さんの言ったことは私にもショックなの…」と
まるで自分も被害者だ、という顔をしている。
「君、何か勘違いしとりゃせんかね?」私は例の『ドスの効いた顔』で彼女の顔を睨めつける。
「この場でそこの大男に殴り殺されるか、優男の方に射殺されなければ、自分は逃げ切れる、
と思っとるようだね。生憎だが、頼みのウェリントン執行役員は既に解任されとるよ。
私とカーバイン会長が話した結果、解任されオフィスから締め出されたんだ。
その様子だと、君との直通回線も塞がれ連絡もできなかったみたいだな」頼みの綱、AE.の
グループ企業ヴィックウェリントン社の創業者一族でもある執行役員、が既に千切れている
ことを知らされ流石の魔女も表情を曇らせた。
「あと、君、軍法会議に掛けたら全部ぶち撒けるぞ。と私を脅すつもりなんだろうが、
私は連邦軍を隠れ蓑に非道を行った君を自身が『クライムファイター』になってでも
許さんよ」悪人をリンチするダークヒーローになってやるぞ、と脅したのだが悪人顔な
私が言うと単にマフィアのボスが脅迫してるように見えるだろう。
まぁ、要するに手段の合法・非合法を問わずお前を追い詰める、と宣言したのだが。
流石に制服組トップの私にそこまで言われたハンフリーの額にはうっすら汗が浮かんでいる。
「私はどうなるのです?」このまましらを切ると本当にこの場で殺されかねない、と
判断したハンフリーは自分の行く末を私に尋ねた。
私はふてぶてしい顔で「さぁ、現在押収している
供述、被験者、いや
この即席軍事裁判を証拠調べのため一時休廷すると、と告げた。
ハンフリーは手錠をされ、同志でもあるMPに両脇を抱えられるようにジャブロー地下に
作られた機密扱いの拘禁施設に連行されていった。その周囲を武装したMP一個分隊が
警戒しながら進む。彼等は、何者かが大佐を奪回しようとしたら即座に彼女を射殺する
命令を受けている。
バスクは護送隊を見送りながら「何があの人をあんな狂った所業に邁進させたんでしょう?
10数年前と言えば、ジオン共和国は建国されていますが、そこまでの脅威ではなかった
はずです」と半ば呆然と呟く、ある意味自問だったのかもしれない。Ζのバスクの方は
一年戦争のトラウマ、個人ではなく人類という種の、があったからだが。
「猟奇殺人の犯人になぜ、と動機を聞くのは愚問だよ。『やりたかったから』と答える
だけさ」とリー。彼は時々やたらドライなことを言う。私はおちゃらけてる彼の方が
好きなのだが。「彼女はきっと『人類の革新』のため、と言うだろうね。核弾頭を
空に打ち上げて作った曙に何の意味があるのかは知らんがね」と∀ガンダムの
『夜中の夜明け』を思い出しながら私。
数多の犠牲の上に生み出された新人類は犠牲となった同胞の復讐のため既存の人類を
絶滅させるのではないだろうか。レヴァン・フウがAE.壊滅に残った寿命を賭けたように。
私の好みはもうちょっとハートウォーミングなやつだな。
小児科病院を隠れ蓑にしたニュータイプ研究所から被害者である子供達は保護され、
機密扱いの司令本部特別児童養護施設(臨時で私が作った)で匿うことになった。
普段は将兵の子供を預かっている劇中にも登場する女性育児官、実は彼女は児童心理学の修士だ、
は普段と勝手の違う子供達に最初は戸惑っていたが、組織犯罪被害者に対する対応でよいのだと
分かるとうまく子供達と馴染めたようだ。
NT能力に目覚めかけている子供達が言うことも
理解らしい。
「あら、青い宇宙に赤いお星さま、きれいねぇ」と、大人が実験結果を記録するではなく、
感嘆の声を上げるのが楽しいらしく子供達は例のNT効果線の絵とか『この世の果て』の絵とか
描いて彼女に見せる。前衛芸術めいた絵を彼女は一々褒める。子供達、特に低年齢の子は
次第に年相応の明るさを見せるようになった。年かさの子達は彼等の兄、被験者で成人まで
生き残ったただ一人の男、の身を案じていたがそうだが、シェリーナ姉妹の妹イースが
目覚め、姉のリリーが「レヴァンは生きてるわ…」と言ったので胸を撫で下ろしたのだと、
彼等をNT研からジャブローまで連れてきたG.C.の同志が興奮した様子で語ってくれた。
そりゃあ、NT能力の発現を目撃すりゃ興奮するよねぇ、私だって正直羨ましい。
その被験者唯一の大人、現在25歳のレヴァン・フウ。彼の脳には悪性腫瘍があり、例の病院、
NT研では手がつけられなかったらしい。このまま彼が「放流」されてしまったら取り返し
のつかない事態になる、とハンフリー大佐の拘禁を急いだ訳だが。どうやら滑り込みセーフ
だったようで、ジャブローに詰める医療スタッフ、連邦政府高官達の緊急避難に備えて
集められた連邦最高水準の知識と腕を持つ彼らはこの脳腫瘍の青年を救うべく緊急手術を
開始した。
実用化されたばかりの医療用ナノクロマシンやらその他医療技術を総動員して行われた手術は
成功し、患者は命を取り留めた。だが、腫瘍に侵された大脳皮質をいくらか切除したそうで、
同志でもある執刀医によるとレヴァンのNT能力はだいぶ失われたらしい。
彼自身の幸福を思えばその方が良い、と私は思う。他者を洗脳し、自分の思うがままに組織して
動かす能力など持っていた所で自分も他人も不幸にしかしない。
幸い、NT能力以外の脳機能については後遺症が残らないそうだ。彼には「普通の人生」を送る
権利がある。
麻酔が効いて眠るレヴァン・フウの寝顔を見ながらそう思うボブ・ゴップなのだった、
と第三者視点で語ったりしてね、いいじゃないですか、レヴァン助かったんだし冗談くらい。
手術の明くる日、私の目の前には統合参謀本部第三局長の中将が座っている。
『サンダーボルト』15巻に出てきた禿の将官に似てるが、バーコード頭だ。
二人が座る部屋はジャブローのだいぶ地下にある盗聴や盗撮防止策まみれの小会議室、
お互い副官を連れずに二人きりで対面している。ボディチェックはしてるものの、
バーコードがヤケになって隠し持ってる拳銃か刃物持ち出したらヤバいかもしれん…
こちとらリー大尉じゃないが、射撃は苦手なのだ。できるのはマエバラ君から餞別に貰った
マシンピストルを「数撃ちゃ当たる」を信じて全弾撃ちまくるだけだ。
そんな内心ではビクついていたのが、素知らぬ顔をしてハンフリー大佐の支援者、
見様によっては教唆犯、とも言える男に私は気軽な感じで
「ハンフリーは謳ったよ。彼女は過去に遡って軍籍を剥奪された。つまり最初から軍に
いなかったことになった。君達の計画はおじゃん、ということだね」と話を切り出し
悪戯っぽくウインクした。マーセナス議員のマネをしてみたんだが…
第三局長はじっとデスクの上に組まれた自分の手を見つめてる。キレるのか?
懐のマシンピストルに手を伸ばす私。すると、おもむろに彼は
「私、私達は騙されておったのです。閣下」と声を絞り出す。キレるのではなく、言い訳
にもならんような言い訳をしている。参謀本部の局長ともあろう者が容易く欺かれた、
とはそれだけで大きな失態だ。と、目で語る私。局長は言いたいことが伝わったのか、
「AE.社の役員から説得を受けまして…」と今度は既に役員を解任されたウェリントンに
罪を擦り付けようとする。
「手形の裏書きをしたウェリントン氏は既に会社を追われたよ。そうした方がいいかね?」
と目を細めて私は言った。目の前のバーコードは青くなった。
「おおかた、M粒子環境下でも従来のデータリンク戦術が可能となる、とかいう触れ込みに
飛びついたのだろうがね。君の前任者も関与してたようだしな」と私が調査結果を披露する
とぶんぶんを首を縦に振り「閣下の仰る通りです」と罪を少しでも他人に背負わせようと
する局長。
「昨日、例の研究所の被験者の手術が上手くいってね、君達には言わば恩赦を出そうと
思うんだよ。もちろん、表沙汰にできない話だから普通の人事異動としてね」
取り敢えず、軍籍剥奪とか禁錮とかにならずに済み、ほっとした様子のバーコード。
ここの医療スタッフに君も礼を言うべきだね。
「君はシャイアンマウンテン基地に異動となる。あちらも地下基地でエアコンが効いて
快適だよ。ここより施設は古いけどね」あの旧
一部に旧暦時代の施設が残っている。ジャブロー建設の際には随分参考にさせて貰ったがね。
「話はこれで終わりだ。退室してよろしい。荷物を纏めたまえ」と言うと、局長はキャリアはふ
いになったが、G.C.が流した噂で極刑も有り得る、と思っていたようで命だけは永らえた、
という顔をして部屋を出ていった。残りの二人も似たような具合、局長が主導したくらいの
違い、でそれぞれ左遷先を告げられしょぼくれて出ていった。
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翌日、私は再度、モニカ・ハンフリー、彼女の軍籍は最初から無かったことになったので、
今やただの初老の女性だ、と対面していた。
今日は副官達、特にバスクの精神衛生に配慮し、二人きりで会っている。
二人以外の副官も外からの襲撃に備え尋問室に待機していたのだが、若い彼等のSAN値は
だいぶ削れたらしい。
「レヴァン・フウは命を取り留めたよ」とまずはいいニュースを彼女に告げる。
もう鉄面皮を演じる必要もないモニカは素直に喜んだ。君が彼をあんなにしたんじゃ
ないのかね? 何か被害者が命を取り留めたことを喜ぶ傷害犯のようだが。
まさかレヴァンが生き延びたので自分も生き延びた、とかお花畑なことは考えてなさそうで
本当に嬉しいらしい。MADサイエンティストの恐ろしさを改めて知った。バスクを連れて
来たら流石の彼も大声を出すかも知れない。
「君への措置を告げる前にひとつ話をしよう。いささか長いが勘弁してほしい。
きっと君には興味をそそらられる話だと思う」と私は21世紀の日本人、山田次郎が亡くなった
ところから今日まで掻い摘んでモニカに話した。彼女は一々、ちょっと大げささじゃなかろうか、
と思うほど大きなリアクションを取り、それに乗せられたのか私も色々喋ってしまった。
最後まで聞き終わったモニカは
「大変興味深いお話でした、閣下。でも、私にこんな秘密を明かされるのは
私は生きてジャブローを出られないからですね」と冷静に自分の末路を予測する。
さっき話したDr.ミノフスキー救出の裏話のように自分も助けてくれ、と言い出さないだけ
大したものだと思う。巨悪は最後にジタバタしないらしい。
小人の私には無理だな。
私は「君への措置を伝える。軍籍を過去に遡って剥奪、ジャブロー地下の特別施設
に禁錮30年だ」と今日はいい天気ですね、的なテンションで告げる。
いない筈の軍人が地下総司令部に幽閉される、という軍法って何?的な措置だが、
味方撃ちをしたコウ・ウラキ少尉を1年幽閉した後、無かったことにして放免する
連邦軍だけに、あり得ない話でもない。
モニカは「懲役30年ではどうでしょうか?私は閣下のお仲間の役に立つと思いますわ」と
自分を売り込むモニカ。その特別施設で研究をさせろ、というのだ。自分が研究の指揮を
取らなくてもいい、実験データの解析でも役に立って見せると熱っぽい口調で自分の
能力をプレゼンしている。信じられるかね?さっきまで殺されるのを覚悟してたんだよ、
彼女。MADの深淵はまだまだ深いらしい、私のSAN値もなんか減った気がする…
「私はね、君のお友達Dr.ムラサメも違法な人体実験の証拠さえ上がれば検挙されるべき
だと思ってるんだ。これ以上、類人兵器の研究で被害者が出るのは御免だからね。
もしかして君、私の話を聞いて『ガンダム・センチュリー』は人類を裏側から支配しよう、
とか目論んでる秘密結社と思ってないか?」と半ば呆れ顔で聞くと(え!?違うの?)と
いう顔をするモニカ。
私は本格的に呆れた、という顔とポースを取り「あのねぇ、私達はこのクソッタレな
宇宙世紀の歴史ってヤツの横っ腹に蹴りをくれて方向を変えたいんだよ。言っただろ、
人類は一年戦争に及ばない規模の戦争を延々と続けてその挙げ句には人が人を食う
有様に退化すると。私達はそんな未来を回避したいんだよ!」と最後デスクを
平手で叩いた。MADとはいえ女性の前で取り乱したのを恥じた私は咳払いをして
襟を緩める。
モニカはにっこりと笑い「素晴らしい理想です!閣下!ですから私に貴方がたの
力にならせて下さい!」と白々しく言った。
なんというか、彼女実は凄いポジティブ思考なのではないだろうか。
「君は何も研究する必要はないよ。君が収容される部屋には回線も端末もない。
退屈だろうからホロTVだけは用意した。ニュースや映画やドラマを見るのを許可する。
スタートレックだろうが、ヤマトだろうが銀英伝だろうが、長期シリーズが見放題だよ。
ちゃんとトイレや風呂もあるし、三食温かい食事も出そう。曜日の感覚が無くならないよう
に金曜日はカレーを出す。午後のティータイムもお茶かコーヒーと何か菓子も付けよう。
だが、科学chを見るのは許可しない。TVは君の音声で操作できるが、なんらかの方法で
ハックしようとしたらその日はTVは無し、いいね。照明も音声入力だが、ハックしよう
としたらその日は真っ暗な部屋で過ごして貰う。
とにかく、
大量殺人犯の天才犯罪者にそれを与える程、私は甘い男ではないよ」
と淡々と今後の彼女の境遇について話す。
研究の継続も脱走も諦めてなさそうなモニカは「なぜ、30年なのでしょう?私を死ぬ
まで閉じ込めておくなら、100年でも200年でも良かったのではなくて?」と尋ねた。
私は「そりゃ、30年も有れば私達がすっかり世の中を変えてしまうからだよ。君の
人工NTなぞ誰も顧みない世の中になってるからさ」とちょっとドヤ顔して答えた。
「人の革新」を題しながら天パ君もインド系不思議ちゃんも出てこない話になってしまいました。
『サンダーボルト』好きなんですよねぇ。
特に「成功しすぎた強化人間」レヴァン・フウの能力とか。
太田垣康男氏がNT能力を機動兵器の制御より洗脳、組織化、指揮管制に威力を発揮するのではないか、と描いたのすごい好きです。
なんかレヴァンもビグ・ザム乗るみたいですけど。
マーセナス議員は息子のローナンより孫のリディに似てるイケメンおじさんです。
この世界の評議会議員は議事場のあるダカールと行政の中心ワシントンを極超音速機や宇宙船使って言ったり来たりしてる設定です。
マーセナスが空気税関連の法案提出を決心させた『宇宙のイシュタム』なぜか子供のエリザが窒息しそうな場面憶えてるんですよね、他のシーンはおぼろげなのに。
ほぼオリキャラのジョブ・ジョン君ですが、妹も同じJ・Jにしようとジョアンナにしました。
ヤザンが割とモテるの、戦争が近い世相な上に宇宙のMS乗りって割と獣の群れに近いんじゃね、的な発想からです。まさにアルファオスなヤザンですが、俺設定では郷里に
コロニー1個分くらいの広さがある大農園のお坊ちゃまです。
個人的には宇宙世紀ではカロッゾ・ロナとかムラサメ博士と並ぶMADだと思ってるハンフリー女史ですが、書いてる内になんかレクター博士みたいな待遇になっちゃいました。
別に後でFBI入りたての男性捜査官がジャブロー地下に捜査協力を依頼しに行く、とかいう展開はないです。「羊たち~」全部見てないですし。
レヴァンを救った医療スタッフは宇宙世紀世界も救ったのかもしれません。
次回はいよいよ原作主人公が登場するサイド7編になると、いいなと思っております。
緊急事態の余暇を活かして一気にここまで書き上げた感がありますが、更新速度が
落ちてもお付き合い頂けると幸いです。