モニカ・ハンフリーを特別施設(地下牢)に幽閉した私は、エルラン中将と二人で
会っていた。お互い副官は連れていない。
「しっかし、TVを与える代わりにおかしな真似したら一日TVなし、部屋を真っ暗とか
えげつないこと思いつきますなぁ、佐藤さん」
「何かを与え、罰としてそれを取り上げる、というのはよくある手口でして。
私こそ、山田さんがドスの効いた台詞でハンフリー脅すとこ見たかったですよ」と返した。
前回の、ジョーカーを机にバンバン叩きつけるバットマン気取りの台詞は既にスパイマスター・
エルランの知る所になったようだ、お恥ずかしい。
モニカの最終的な処遇についてはG.C.の同志達にも内密に二人で決定し、私が実行していた。
前回の後、モニカを地下牢に連行したのはMPではなく、私の従卒達だ。
全員野戦装備で彼女を連行したのだが、出身(陸海空宇)の違いでヘルメットやボディアーマー、
野戦服が様々な色やデザインになってしまい、しかも結構なおっさん(ベテラン下士官)揃い、
こういう任務に若い従卒は使えないよねSAN値的に、なので連行されるモニカは
(これ、完全にゴップの私兵共ね…)と思ったことだろう。
まぁ、寄り集まっては陸軍や海兵出身の副官を交えジャブロー市街戦の戦術研究やっとる
やべー連中ではあるのだが、陸軍と海兵出身の若い副官達は連中にえらくシゴカれてるそうだ。
「しかし、音声入力でホロTVハックしたり出来るんですか?」娘がSEの割にプログラミング
に疎い私は専門家でもあるエルランに尋ねた。
「現在、音声入力で知性化家電に作動不良を起こさせる技法はありますが、プログラミング
する技法は知られておりませんね」専門家らしく開発されていない、ではなく未知、という
エルラン。「しかし、あのハンフリーならやってのけるかも、しれません。なにせ時間は腐る
程ありますからな」軍のハッカー共の親玉は敵を侮らないようだ。
「しかし、レヴァン・フウが命を取り留めたのは、医療スタッフを讃えたいですなぁ。彼の
手術が成功したのをリリーの透視で知った子供達が目に見えて協力的になったそうです」
「まぁ、レヴァンは彼等に取っちゃ長兄だからね、実の兄弟姉妹より深い絆があるんでしょう」
ザビ家やサハリン家を思い浮かべながら私。
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==== U.C.0078 09 18、サイド7に住む14歳の中学生、アムロ・レイはあまり親しくはない
クラスメート2人と父の勤め先に来ていた。一昨日の夜、父から「私の仕事場に来ないか?
シデン君とコバヤシ君も連れてくるといい」と言われ、ご近所さんのハヤトはともかく、とかく
評判の悪い落第生まで連れて来いという父を訝しみながら、18日訪問する約束をした。
父が不在の時、部屋に忍び込んで父のPCで「仕事」の中身を盗み見て、その実物を見たくて
たまらなくなっていたからだ。
アムロ達が住むサイド7 1バンチから父の勤務先
港からは装甲リムジンで父の勤務先まで行った。「うっひゃー!凄いVIPじゃ~ん、
アムロく~ん」と浮かれるカイ。僻みっぽいハヤトは下を向いて「やっぱりアムロってエリートの
お坊ちゃんなんだな…。ウチなんかただの公務員なのに…」とぶつぶつ言ってる。
アムロは豪華な出迎えより父のPC画面に映し出されたアレの事で頭が一杯だった。
父の勤務先らしい、どこから見ても建設現場ではなく、軍事基地かあるいは工場に見える施設に
着くとアゴヒゲを生やした若い士官が満面の笑みで出迎えた。ケンプ大尉と名乗る士官は上機嫌で
3人を施設のあちこちに連れ回し、3人は連れていかれる先々で歓声で迎えられ、大歓迎を
受けた。父の同僚だという技術少佐と名乗った軍人は彼の手を取りぶんぶんと上下に振り回した。
「あの…」と声をかけると、「すまない!大事な君の手を痛める気はなかったんだ、本当だよ」と
大げさに謝った。アゴヒゲのケンプは「気をつけてもらいませんとねぇ、アダムス少佐」と
上官をからかう仕草をして、アムロは(技術士官って兵科士官からバカにされるんだろうか…)と
父の職場での扱われ方に思いをはせた。
アムロの危惧とは真逆に父、テム・レイは職場では正に王のごとく君臨していた。
AE.のバッジを付けたスタッフは勿論のこと、軍人たちもレイ
様子が見て取れる。忙しくスタッフ達に指示を飛ばす父の代わりに同僚だというハン博士が
「おぉ、君がアムロ君か!君のお父さんは大した男だぞ!」と他の人達とはちょっと違う
テンションで歓迎してくれる。「詳しくは君にっと、まだ言っちゃマズかったんだった…」
(ここの人たち何かヘンだ…)とアムロは不審に思うも触れてはいけない気がして、素知らぬ
フリをすることにした。カイは少し真面目な顔で「アムロ、君。キミんとこ凄くね?」と
どう凄いのか分からぬまま感心したようで、ハヤトは「やっぱり、スーパーエリートじゃん」と
ジト目で横を向きブツブツ言っていた。
案内役ケンプ大尉の上司だという体格のいい少佐に引き合わされたアムロはチャーリーと
なぜかファーストネームを名乗ったその少佐に力強く握手され少し手が痛かった。
アムロは少佐から筋力以外のなにかを感じた…ような気がした。
「それじゃ、今日のメインディッシュに彼等をご案内します、隊長」とケンプが言うと少佐は
「許可する。存分に楽しんでもらうといい」と許可を与えた。なぜか3人にウインクしながら
サムズ・アップするケンプ。3人共流石にワケが分からなかった。
ケンプ大尉はスキップせんばかりのうきうきな感じでアムロたちを「1番格納庫」と書かれた
傍目には倉庫のように見える建物に連れてきた。そして、
「これが『ガンダム』だよ!アムロ君!!」と超ドヤ顔でアムロに格納庫の
中にそびえ立つ巨大人型ロボットを紹介した。アムロはアレの実物を見て興奮していた。
カイは口をあんぐりと開けながら「へへっ、マンガだよ、マンガ」と呟いた。
ハヤトは「アムロの父さん、もしかしてこれ作ってたの?」とロボットを指差しアムロに
何回も問いかける。
ケンプはドヤ顔のまま「これはだねぇ、『モビルスーツ』という新世代の兵器なんだよ。
略称をMSという。ミノフスキー粒子環境下で連邦軍の主力となるんだ、こいつは。
形式番号は『RX-78』君達が見ている白い機体はその試作2号機だ」と解説を始めた。
そして、驚愕の申し出をする。
「君達、コレに乗ってみないか?」
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遂にアムロ君とガンダム登場したねぇ。やっぱり主人公と主役メカいないと締まらないね。
ゴップです。
今、私の目の前にはエアコンの効いたジャブローの中なのに制帽を目深に被り野戦用コートを
着用した見るからにヤベー奴が立っている。本人の言によると憲兵少佐だそうだ。
転生者だそうだが、ガンダムシリーズにこんな格好のヤツいたっけ?
『08小隊』のユーリ・ケラーネがコート着てたが、着こなしが全然違う。
コート少佐、格好に衝撃を受けて名前をろくに聞いてなかったのでこの場で命名、によると
ガサ入れ時に拘束したAE.ニュータイプ研究所の研究員達が供述を始めたそうだ。
ローレン・ナカモト、Dr.アルヴィース、Dr.イシロギ、ロキではなく正確に「イシロギ」と
発音してたのでこいつは元日本人なのだろうか、
の研究スタッフでも幹部と言える3人を別々に尋問し、ナカモトが最初に「囚人のジレンマ」
に耐えきれなくなって謳ったらしい。
彼は、AE.社が見つけたNT能力を持つと見なされた新生児の体組織からクローンを作り
複数のクローン体で人体実験する、という彼等の研究手法を白状したそうだ。
ナカモトは「同じ人物の複数のクローン体を用いることで対照実験が行える。
後から身内にごちゃごちゃ言われることもない」と自慢げだったそうで。
『サンダーボルト』まんまだった訳だが、生身のやつが言ってると思うと胸クソ悪いな。
クローン体、あの子供達の身内でも何でも無い私達がごちゃごちゃ言ってジャブローまで
連行してくる、とかまさに想定外だったんだろう、ざまぁみろ。
・・・どうもこの一件では普段の割と穏当な私ではなくなるようだな、気をつけんと。
アルヴィースはナカモトが供述を始めたと知ると、「自分は研究を指揮するハンフリー
大佐に度々異を唱え、研究所を解雇される寸前だった」と自分を弁護したそうだ。
子供達からも同様の証言が上がってるので、あながち自分可愛さだけではないらしい。
一応尋問中も被験者の子供達を心配してたそうだしな。ま、真っ先に供述始めて
同僚を売ったナカモトよりはマシな人間なのであろうか。
異色なのがDr.ロキことイシロギだ。彼は生体強化臓器が専門なんだそうで、先天性肺疾患の
娘を救うべく、AE.に雇われ研究所に出向してたそうだ。
私がメラニー会長に連絡入れたのと同時にAE.の社員だった記録は消されたのだとか。
なんか切られたトカゲの尻尾の彼は前世の私と通じるものがあるなぁ。
お互い娘を持つ親でもあるし。ドロシーの生命がかかっていれば私も外道になるだろう。
前世で『A.O.Z 刻に抗いし者』はちゃんと読んでいなかった、一本目はガンダムには珍しい
法廷モノで全部読んだのだが、のでイシロギとアルヴィースの人格については予断無く
見ることができた。ローレン・ナカモトは無理だわ、ロザミィ可哀相過ぎて。
イシロギはコート少佐に泣きながら人工臓器の研究を続けさせてくれ、と懇願したという。
まぁ、このままではロスヴァイセこと、ユズちゃんは亡くなるよなぁ。
コート少佐は独断を謝罪しながら彼と娘の新しいIDと、予め交渉していたヤシマグループの
医療機器メーカーに、私もそこの血圧計を使ってる、彼の席を用意したという。
こいつ本当に憲兵少佐なのだろうか?私は独断はともかく、彼の措置をには了承を与えた。
後日、Dr.イシロギと娘ユズは新しい名前とIDでニホンへ向かった。
これも後でエルランにコート少佐のことを聞いたら、彼の正体はエルランの情報部時代の
部下で大佐だという。あの衣装は私に衣装以外の印象が残らなくするのを目的とした、いわば
誘導なのだそうで。なんというか妖怪じみた男だった、私が言えた義理ではないが。
「彼が次に閣下に会う時は別の姿と名前になってるでしょう」とエルランは不気味な予言をした。
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====アムロ達は格納庫近くの空き地、巨大な足跡だらけの、に連れて来られた。
先程の『ガンダム』が運搬車に仰向けに寝る形で運ばれてくる。
カイは「さっきは立ってたんだから歩いてくりゃいいんじゃね?」と言ったが、
ケンプは「アムロ君がRX-78に搭乗して立たせるのがキモなんだよ」と訳のわからないことを
またしてもドヤ顔で言う。いつのまにか周りに撮影スタッフらしきカメラや照明、サングラスを
した監督らしいのが集まってきた。空には結構な大きさの空撮ドローンが何機も飛んでいる。
アムロはあのドローンがM粒子環境下でもレーザー通信で制御できる高級品なのを知っていた。
ハロをM粒子環境下でも動作するよう改造した時参考にさせて貰った。
パーツ代で一月分の小遣いがふっとんだが。隣の
食べるのには困らなかったが。
背後の方から大きな音がするので3人が振り向くと、2台の運搬車が異なったカラーリングの
『ガンダム』を載せてやってくる。「カイ・シデン君とハヤト・コバヤシ君の機体だ」と
ケンプが二人の肩を掴みながら鼻息荒く言う。
カイとハヤトは「へ?」と(アレ乗るのオレ/ボクが?)という感じだ。
「勝手ながら君達の学校でMS操縦適性テストをして貰ってね。君達2人はアムロ君の次に
高いスコアを出したんだよ!」と2人の肩に置いた手に力を込めるとカイは「いてて、あの、
大尉どの?こちとらか弱い中坊なんすから…」と控えめに抗議する。ケンプはあっ!と言い
ながら「スマン、スマン。未来のエースを故障させるとこだった」とカイがプロスポーツ
のドラフト候補であるかのような態度で謝る。主に身長のせいで自己評価の低いハヤトは、
「やっぱりジュードーのお陰かな」と半ば呆然としながらもケイコは、努力は無駄ではなかった
と心のなかでガッツポーズを取った。
アムロはガンダム試作2号機の周りにいる開発スタッフの手助けを借りながらコックピット
にいた。シートに座りコックピットハッチを閉めた途端、コックピットから「Hi、私はLisa。
RX-78-2の操縦者支援システムです」と女性の声が響く。
「私の指示に従って操作すれば安全に機体を稼働させることができます」「つまり、キミは操縦
マニュアルでもあるの?」父の資料には対話型AIについて記載があり、アムロは驚かなかった。
「Yes、マスター・アムロ、私は
「え!?それって、どういうこと?」自分のため?一介の中学生にオーダーメイドのAIなぞ
わざわざ開発するだろうか?
「私は地球連邦軍V作戦開発チームにより、アムロ・レイの操縦を支援し、また、学習することで
さらに操作速度と精度を高めることを目的に開発されました。開発リーダーはダニエル・
アトキンソン中佐です」と自己紹介するAI。
アムロは釈然としないものがありながら、この『ガンダム』を操縦できるのなら大抵のことには
目をつぶることにした。
「リサ、ガンダムを立たせるにはどうしたらいい?」「このレバーを手前に引いて下さい」と
コックピットの中に矢印のホログラムが投影され、シート横のレバーを指し示す。
「よし!起動!」とアムロはレバーを思い切り引くとIフィールドモーターがその独特な
作動音を上げながらRX-78試作2号機は立ち上がった。開発スタッフや撮影クルーが歓声を
上げる。2号機のカラーリングは我々の知る、胸とコックピットハッチが青、腹を赤、腰に
黄色ではなく白一色でカラーリングされている。コートのせいで光が反射して輝くような白だ。
空撮ドローンの映像を受信してコックピットに映したアムロは「こんなピカピカじゃ実戦では
目立ってしょうがないんじゃないかな」ともっともな感想を述べる。試作機なので派手な
色なのだろう、と納得し、
ファイティングポーズを取り、ジャブを繰り出すRX-78 2号機を興奮の面持ちで撮影する撮影班、
開発班は夢中で手元のタブレットの数字と機体の動きをを交互にチェックしている。
いつの間にか現場に現れたチャーリー少佐はRX-78-2の動きを以前見たMS教導団のBM-01の
それと遜色ないどころか動作速度は完全に上回っているのを見て取った。勿論、機体スペックは
全く比較にならない、世代が違うとさえ言えるほど隔絶しているが。
ゴップ大将が見せてくれたPV、それもジオンのエースパイロットを次々と葬り去ってい場面には
及ばないが、サイド7が奇襲され初めて操縦した場面より動作が滑らかに見える。
「支援AIの完成度、想定より高い…、流石は閣下の婿殿だな」サイド7にAIプロジェクトの立て
直しで派遣されて来たアトキンソン技術中佐を改めて見直すチャーリーだった。
黒と銀に塗り分けられたカイの乗る試作3号機はおっかなびっくり、といった様子で立ち上がり、
そろそろを足元を確認しながら歩き出した。
「そう!そうよ!いいわね!次は『回れ右』よ、ふたつのレバーを交互に引くの、そう!うまい
じゃない!」喋るコンピューター、Lola (ローラ)と名乗った、に矢継ぎ早に指示を出され必死に
機体を操作するカイ。文句を言う間もなく次々指示を出されるので考える間もなく機体を操るうち
にカイはガンダムに魅入られていった。「コイツはドラッグレーサーなんかメじゃねぇぜ!
ゴキゲンじゃないの!」と改造トラックレーサーでもある彼は憧れていた0-400mレースカー
より、遥かにパワフルな「乗り物」に夢中になり
アムロ程ではないにしろ、今日初めて乗ったとは思えない3号機の動きを、全身を黄色く塗られた
試作1号機のコックピットからウィリー・ケンプは感心した面持ちで見ていた。
「カイ君、やるじゃん。パイロットの個性に合わせたAIの
と自身も世話になった支援AI(1号機はLita:リタ)の性能に舌を巻いた。
オレンジががった赤に塗られたハヤトの試作4号機はアムロほどではないが、スムースに立ち
上がり、摺り足で移動、片足でバランスを取る、という中々高度な動きをしていた。
「その調子。上手ねハヤト。次はここのスイッチを押しながらレバーを引いてみて、あら!
本当に上手だわ」Lana(ラナ)と名乗ったAI(用語くらいはハヤトは知っている)は優しい
おねえさん口調で指示を出し、いちいち褒めてくれる。元々自己肯定感の低いハヤトは美しい、
実体はないが、お姉さんに褒められまくりすっかり調子に乗って「次はジュードーの技やって
みたいんですけど」AI相手に敬語で提案する。口で技の賭け方を説明すると
それをRX-78-4で再現する操作法を示す。ハヤトがやってみると、なんとRX-78-4は受け身を
取った!地響きを立てて転がりながら地面を手の平で叩くRX-78-4を見て仰天する撮影班
と大興奮の4号機スタッフ。実はハヤトが乗り込むまで自分達はハズレを引いたと思っていた
のだが、意外なハヤトのセンスにすっかり興奮してデータをチェックしている。
まくる。ハヤトは(今度は投げを再現しよう)と思った。彼の目は完全に機体の色と同じ色に
燃えていた。
運搬車が荷台に今度は演習用ビームライフルを載せてきた。ケンプはこれも撃たせてくれる
という。アムロ達は大喜びでジオンのMSらしき形の標的を撃ちまくった。
ビームライフル演習用なのでメガ粒子は発射されず、照準用のレーザーしか出ない、
コックピットの中には例の発射音が轟き、リアルなMSに見えるホログラムが爆発し、
AIが「命中」「命中、上出来よカイ」「命中!凄いじゃないハヤト!」と報告してくれる
のでアムロ達は興奮し、撃ちまくった。
アムロは原作ではサイド6で見せた振り返りざまの射撃まで試した。
1時間後、ケンプの試作1号機が3機に近寄り、なぜか外部スピーカーを使ってある提案をした。
「みんな一通り動かせるようになったじゃないか。ここでひとつお遊びだけど、このウィリー
・ケンプが操縦するガンダム試作1号機と模擬戦をやらないか?
模擬戦はこの演習用ビームサーベルを使う。ビームは出ないが、この先っちょから刃渡りと同じ
5m以内の所を相手の機体に当たるとAIが被害判定してくれる。君らが自分のAIに好かれてれば
エコヒイキしてくれかもしれんぞ。ははは」とガンダムに腰を手を当て高笑いするポーズをさせる
ケンプ。周辺の撮影/開発スタッフは全員サングラスを着用している。
「おっもしれー!やったろうじゃん!オレが勝ったらPXでなんか奢ってもらえます?」MSを
おもうがままにうごかせるようになった、と思っているカイはすっかり調子に乗っている。
ハヤトは「稽古のつもりでお願いします」と師範に教えを請うようにガンダム4号機に
お辞儀をさせた。
アムロは「今日はじめて乗ったボクがプロのパイロットに勝てるワケないけどなぁ…」と言い
ながらすっかりヤル気でガンダム2号機をその場で軽くジャンプさせている。
「君達3人のうち1人でもオレからイッポン取ったら食堂でなんでも奢るよ。
オレが勝ったらひとつお願いを聞いてもらおうか」と挑発する黄色い1号機。
「ヨッシャー!食べ放題もーらいっと!」と叫びながらカイの3号機が渾身の力でビーム
サーベルを打ち込むが、1号機は半身で躱し、そのまま力を入れ過ぎて体勢を崩した3号機の
背中にビームサーベルを突き付けた。
「制御機構破損、融合炉停止。あなたの負けよ、カイ」と
「やっぱプロはつええわ…」としょぼくれるカイ。ケンプは「ビームサーベルは相手に当てさえ
すればいい。本物の剣のように力任せに振るのはモーションが大きくなってスキを生むんだ」と
教官のようなアドバイスを送るケンプ。
「次おねがいします!」と礼をするハヤトの4号機。ケンドーはやっていない筈の彼はなんと
ケンプの右の打ち込みをサーベルで受ける芸当をやってのけた。
直後左手に握られたサーベルで脇腹を斬られたが。
「おしかったわ、ハヤト。次がんばりましょ」とハヤトを慰める
と思いながら頷いた。
サングラスのチャーリー少佐は「この子は生身で強くなればそのままMSも強くなる、という
タイプか…」と脳内でハヤトのトレーニングメニューを練っていた。
アムロは2人の勝負を見て、「リサ、チュートリアルモード解除、リミッター解除」と命ずる。
2号機の動きが柔らかくなったのを見たケンプは舌なめずりしながら「こりゃ、ジーンやデニムの
なりきりプレイになるかもしれんぞ…」と武者震いしていた。
先に2号機が動き出す、前の2機より明らかに大股で数段速い踏み込みを見せ1号機の懐に
入ろうとする。ケンプは「おおっと!」と言いながら1号機をバックステップさせ間合いを
取った。「ちっ!」アムロは無意識に舌打ちする。何度か同じように踏み込むアムロ、
巧みに距離を取るケンプ、という攻防が何度か繰り返されると、「なら、これはどうだ!」
とアムロは2号機の両の手にサーベルを持たせ、ぐるぐるパンチの要領で両腕を回転させ
ながら1号機に迫る。両腕の回転には微妙にひねりが加えられ、軌道が複雑になり、
ただ受けたり避けたりすればもう一方のサーベルに斬られるだろう。
「うひょー!アムロがぐるぐるパンチやってるぜ!F-91は手だけ回してたっけ」とケンプは
驚きつつも、アムロのぐるぐるサーベルをサーベルで受け、そのままショルダータックルする。
2号機は仰向けに転倒、1号機が2号機のコックピットにサーベルを突き付け試合終了となった。
「見たかリタ!アムロ・レイに勝ったぜ!この俺、ウィリー・ケンプがな!記録録ったよな?」
と相棒に勝ち誇るケンプ。
その度に今日の映像流して慰めてあげるわ」と返す。
ケンプは専用AIと漫才ができるまでに彼女を鍛えたらしい。
模擬戦終了後「お疲れ様、みんな今日初めて乗ったとは思えない動きだったよ。
俺はRX-78開発当初からテストパイロットやってるから勝てたが、旧式に乗った君達より少しだけ
年上の操縦員よりよっぽど強いと思うよ」などとドヤ顔しながら3人の操縦ぶりを褒めた。
「特にアムロ君!チュートリアルモードを解除した上に機体が不安定になるリスクをおかして
間接のリミッターまで解除したのには感心した。大人のパイロットだって君には敵わないかも
しれない、旧式に乗った大人だがね」同じ機体に乗ってアムロに勝ったケンプの鼻息が荒くなる。
「あ~あ、やっぱ食い放題ナシか」と肩をすくめるカイ。ケンプは「いや、シャワーを浴びたら
全員食堂に集まって欲しい。君達への『お願い』について話したい、それと食べ放題もね」
と言った後、この日のために
『未来のスーパーエース』達の面倒をみるよう命じ、士官用シャワールームへ走っていった。
クラスに居たらちょっとドキドキしそうな感じのイケてる女兵士3人に民間人向けと思われる
シャワールームへ案内されたが、アムロは流石に更衣室にまでついてくるのは断った。
カイは「一緒に浴びたらいいじゃんよ」と言うがハヤトがジト目で睨むので口笛を吹きながら
そっぽを向いた。
「しっかし、スゴかったな~アレAIっていうの?言ってる通りに動かすだけでモビルスーツが
操縦できちゃうんだぜ?」「アムロのお父さん、凄いエンジニアだったんだね。まさかあんな
大きなモノが受け身を取れるなんて思わなかったよ」「いや、僕の父さんはハードが専門
なんであのAI作ったのは別の人だよ。AIが『アトキンソンさん』だって言ってた」
「お前のAIちゃんと自己紹介するとか随分上品だな。俺のなんか名前言っただけで即あれしろ
これしろって言われて忙しいのなんの」カイがお手上げのポーズを取ると、
「僕のはやたらと褒めてくれるから、ついその気になっちゃったよ」とハヤトが少しにやける。
「ふ~ん、僕はRX-78に夢中でAIの口調とか憶えてなかったなぁ」とアムロ。
アイドルに似てる女兵士達に案内された食堂、と言ってもそこはホテルのレストランのような
場所だった。普段こういう所に縁のないカイは「食い放題?ここで?」と目を丸くし、特別な
日に数回来たことのあるハヤトは「僕、テーブルマナーに自信ないんだけど…」と途端に弱気
になった。アムロは「お願いってなんなんだろう」と気にもしない。
案内されたテーブルにはケンプ大尉と彼の上司チャーリー少佐の他にアムロの父、テムと
技術少佐のアダムス、そしてメガネ型のディスプレイをかけた長身のエンジニアらしい人物が
座っていた。その人物は立ち上がるとアムロに握手を求め「はじめまして、僕はダニエル・
アトキンソン、階級は技術中佐、ダニーと呼んでほしいな」とおよそ軍人らしくない態度で
自己紹介した。「あ、あなたがあのAIをデザインしたんですか?」とアムロは自分を1日にして
MSパイロットにしたAIの設計者を前に少し緊張した。
ダニー中佐は微笑みながら「僕が1人でやったワケじゃないさ。スタッフ全員が頑張った成果
だよ、あの娘たちは…」とAIを人間のように呼んだ。
「そこで君達への『お願い』ってヤツなんだが、」とケンプが話に割って入り、
「では、テム・レイ主任からお話しください」とアムロの父に話を振った。
テムは咳払いをするとあらためて「アムロ、シデン君、コバヤシ君の3人には我々の仕事を
手伝って貰いたい。先程君達が体験したAIだが、アレはまだ不完全なモノなのだ。君達が
RX-78を操縦することでAIにデータを食わせディープラーニングさせることでAIもRX-78も
完成に近づくのだよ!頼むガンダムに乗ってくれ!一緒に私の夢を叶えてくれ!」と
最後の方はかなり熱を込めて頭を下げた。
カイはテムの剣幕に多少引きながらも「アレでしょ?ロボものに良くある主人公のパパが
作っったロボに乗るってヤツでしょ?いいじゃない。オレ、いやボクすっかりモビルスーツ
の虜になっちゃったよ。1000馬力のドラッグレーサーなんかアレに比べたらチャリみたい
モンだし。それにこっちの方も出るんでしょ?にひひ」と指で輪っかを作り、
『いやらしい笑いかた』をした。
「僕も報酬が出るならやってみたいです。ウチの家計はそんなに楽ではないし…」と内心では
またあの優しい声を聞きたかったからだが、建前で話すハヤト。
「僕やるよ!」とアムロは即答だった。父の夢より、自分の好奇心のためだったが。
するとチャーリー少佐が「では、早速君達には開発スタッフのIDを与え機密レベルを
設定しよう。我々もスケジュールに余裕が無いのでしばらく学校は休んで貰うこと
となる。もちろん単位を取れるよう我々が授業を行う。ちなみに体育は私が担当する」
と軍服の上からでも分かる力こぶを作りながら言った。
ケンプ大尉は「楽しい楽しい『ガンダム部』のコーチはオレだ。ひよっこなキミ達を
ジオンの色付き共が裸足で逃げ出す凄腕にしてみせるぜ」とドヤ顔のままウインクした。
アダムスは興奮した面持ちで「レイ主任がお忙しい時は自分がRX-78や他のMSについて
解説しよう。それこそ自分でMSをデザインできるくらいにしてみせる」と鼻息荒くいった。
ダニーは同僚たちの興奮ぶりに苦笑しながら「君達の仕事は僕らのAIの話し相手と
MSの操縦なんだが、なるべく僕自身が会話をして君達を知りたいと思ってる。
教えるのは得意じゃないんだが、プログラミングについて質問されればなるべく
答えるよ」ときさくな感じで語った。
チャーリーは「好きなだけ食べたら、今日は一旦家に帰ってご両親に報告するといい。
明日、また迎えを寄越す」と「相談」ではなく「報告」と言った。親が反対したら
「迎え」が強制的に連れてくるのだろうか。
カイは「アルコールはないわけ?アルコールは?」と言いながら腹が破裂するんじゃないかと
思うほど食べた。ハヤトも身長を伸ばそうともりもり肉料理を貪った。
アムロは食事もそこそこにアダムスにMSの構造について、ダニーにはハロに搭載した自作、
といっても既存のホビーAIの改造型、のAIを改良するにあたってのアドバイスを聞いた。
テーブルの紙ナプキンはたちまちメモ帳になり、アムロはその日、宝物となったその紙束を
愛用の鞄にしまって家路に、つかなかった。基地に泊まった。往復の時間も惜しいほど
RX-78や操縦者支援AIに惹かれたからだ。アムロはその晩、開示が許可された資料を
読みふけった。
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遂にガンダムが大地に立ったねぇ、ゴップです。私達はサイド7から秘話通信で送られて
きたアムロ達「
今まで見てきたMSの動きとはまるで違う。まさしく隔世の感、というヤツだ。
彼等と同年代の少年少女兵もBM-01、BM-02を巧みに操ってるように見えたが、この3人は
次元が違う。特にアムロの模擬戦なんか教導団の猛者が駆るBM-02より強いんじゃないか?
生憎と副官にはMSパイロット適正者はいない、そんなん副官任務より前線に配属したい、
のでG.C.から誰かパイロットを解説に寄越してほしい、と頼むと、凄い特徴的な
髪型と眉毛の金髪男が来た。金髪さん(♂)はブラン・ブルターク大尉と名乗ると
転生者でロシア空軍のSu-57パイロットだったといった。
「シンプルなゲームじゃないな」とか劇中ではアメリカ人っぽいブランだが、こっちは
元ロシア人か。しかし、ケンプといい前世でもパイロットだった人はなんで自分が乗ってた
機種を言うのだろう?乗ってた機体がそのまま自己紹介になる、みたいな感じだ。
彼はRGM-79の量産に備えてRX計画に準拠した搭乗員訓練プログラム策定の中心人物だ。
パイロット支援AIに関してはエキスパートといっていい。
ブランは挨拶もそこそこにノア・ボーイズの動画を見ると「ほう、白いのがアムロ搭乗機ですね、
模擬戦ではチュートリアルモード切ってますね、これ。間接の作動リミッターも外してます」
と解説した。
操縦支援AIのチュートリアルモードは説明を受けている。AIが音声とホログラムで操縦を教えて
くれる初心者モードだそうだ。BM-02以前の機体にプリセットされている回避モードや
攻撃モードとはどう違うのだろう?
「BM-02以前のプリセット機動はパイロットが音声やスイッチの操作で選択すると機体が
オートで動くわけですが、RX-78のチュートリアルモードはパイロットがAIの指示で
操作します。ま、「あんよはじょうず」とAIが優しく教えてくれるワケです」
「それじゃ、オートの方が速くないかね?」と私が聞くと、ブランは
「最初の内はそうです。しかし、RX-78はパイロットをモニターし続けてますから、パイロット
の習熟度と反応速度に比例して指示が速くなります。動画の最後まで黒いのと赤いのは
チュートリアルモードを切ってませんが、後半の動きは明らかに違いますね。
かなりの速さで指示を出してるはずで良くついて行けるものだと感心しました。
おそらくジャブローやルナツーのMS特技兵ではAIの指示に操作が追いつかないでしょうな。
ま、RGM-79ではあの3人が鍛えたAIが載る訳でプリセットでもかなりの機動が可能な筈です。
パイロットが耐えられれば、ですが」劇中のブラン・ブルタークは強化人間に忌避感を
持っていたが、この人元ロシア人なんであまり抵抗なさそう(偏見)。
「間接のリミッターを外したのは2号機がなんかゆらゆらし始めたんで私にも分かった。
でも、アレってなんか効果あるのかね?」
「航空機と同じで安定性を犠牲に運動性を上げています。ビームサーベルは刃が届きさえ
すればいいのを理解した動きですな」流石元空軍パイロット、分かりやすい解説だ。
「しかし、同じRX-78ならプロの軍人のほうがまだ強いんだねぇ。確かにケンプ大尉は
凄腕だと思うけどね」ブランは苦笑いしながら、
「自分も同じRX-78に乗れば同じくらいやれる、言いたいですが、無理でしょうな。
彼は
あれは」と感服した様子だ。
「今現在、連邦最強はウィリー・ケンプのRX-78-1かもしれませんな。
もっとも、も数週間後は王座陥落、下手すれば4位でしょうが」
プロから見てもアムロ達の伸びしろは物凄いらしい。ケンプはカイやハヤトには圧勝に見えた
のだが、プロ、それもRX-78の機密を扱ってる者に言わせると初っ端にあれは凄いのだと言う。
特にハヤトは格闘技経験者だからか、白兵戦に光るものがあるそうで、カイは劇中の活躍
や射的の結果から射撃向きだろう、という。ゼロ距離射撃で敵機仕留めてたからなぁ、カイ君。
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9月下旬のある日、私は緊張の面持ちでジャブローの軍病院にいた。分厚い対NBC兵器防護ハッチ
の先を進む私とリー大尉、さらにベテラン従卒から選抜された早打ちの名手2人。
バスクは万一のことがあると最悪なので今日はお留守番だ。
私はこれから、この警戒厳重な病棟に入院している患者に面会に行くのだ。
患者の名はレヴァン・フウ。宇宙世紀でも5本の指に入る厄モノである。
執刀医の報告では彼はNT能力の大部分を失ったらしいのだが、そう思い込ませたのかも、
しれない。彼の能力はそれほどに厄介だ。あの怪人マッシュルーム男パプティマス・シロッコ
でさえ会って秒で洗脳、とか無理だ。だが、彼は洗脳と同時に被害者の脳を介してさらに
洗脳を広げ、サイコ・ネットワークを構築し、特にNT能力に秀でた者をルーター:幹部と
して組織を作り上げるのだ。ピラミッド式でない、潰すのに手を焼くネットワーク型組織をだ。
しかも、通信はM粒子環境下の方が都合がいい、というオマケ付きで。
そんな訳で副管をゾロゾロ連れて行くわけにいかず、ガンダム知識の豊富なリーと腕自慢を
連れてきたが、彼が私達の知る彼のままなら意味を成すまい。私もAE.壊滅のコマとされる
だろう、おそらくルーターにされ、連邦軍全軍がAE.討伐軍になりかねない。
危険は承知の上だが、彼をこのまま生物兵器扱いして封印しておくのもマズい。
彼が恨みを募らせるようなことはすべきでない、とこの時の私は思った。
彼の病室の周には人間の警備はいない。その代わり
を装備した警備ドローンが警戒していた。
私は警備ドローンに手のひらを当て、あっかんべーをして、「ゴップです」と声をかけた。
掌紋と瞳の虹彩、声紋認証で病室のドアが開く。私は内心恐る恐る、表面上は平静を装い、
「気分はどうだね?」とか言いながら病室に入った。
その青年、レヴァン・フウはベッドに座っていた。私をじっと見るとサイドテーブルに
置かれたタブレットを手に取り何か打ち込み、私に見せた。
まだ、話せないので、これを使って会話するのをお許しください。
やっとアムロとガンダム登場までこぎ着けました。
アムロ、カイ、ハヤトのキャラクターは『THE ORIGIN』をベースにしています。
安彦先生の描くカイとハヤト好きなんですよね。
ガンダムの支援AI4姉妹は会話しながらだと戦闘シーン書きやすいのではないか、と
構想練っている時から考えていました。
Lisaはそういう名前のコンピューターがアップルから出てたので使わせてもらい、
あとの姉妹はLから始まる名前にしました。
劇中、ドヤ顔しっぱなしのケンプ大尉ですが、前世でTHE ORIGIN アニメの
「ガンダムってなんなんですか?」の台詞にこう返したい、とずっと思ってたんでしょう。
彼はワルい先輩というか部活の顧問的ポジションですが、普段は冗談ばっかり言ってるくせにいざと言う時には頼れるアニキになれるといいのですが。
おそらく今後カイと漫才繰り広げることになると思います。
同じくやっと台詞?があったレヴァン・フウですが、彼はこの物語のキーパーソンです。
海外ドラマのシーズン1最終回に出てくるヤツです。
彼を物語に絡めることで風呂敷を畳めそうな気がしています。
次回、ゴップとレヴァンの対話はどのような展開を見せるのかご期待ください。