私は『サイコ・リミッター』が今の所正常に作動し、危険性が低くなった、と判定された
レヴァン・フウを病院の退院後、私の幕僚として保護することにした。
副官にしないのは、副官は私と一緒に出歩く事が多いからだ。彼を好奇の目に晒したはくない。
レヴァンには議長特権で特務少尉の階級も与えた。
「特務」といってもジオンやティターンズのような2階級上相当官ではなくて、高い機密レベル
の情報を扱うための方便だね。
リー大尉も少佐に昇進して私の情報参謀となった。レヴァンと一緒にシギント:通信傍受をが
メインの情報収集を職域とする。
同時にバスクも大尉となり、若い副官達の取りまとめになった。
また、リーの後任、G.C.との連絡役にレーチェル・ミルスティーン中尉がコーウェン准将の
ところから転任してきた。
あの『Lost War Chronicles』のメガネさんです。やはり転生者で前世では日本で役員秘書
をやっていたそうだ。凄い美人の参入に女性秘書官達との間で緊張、マウント合戦、の兆しが
見えるとマンマ中佐が彼女をお茶に誘い、秘書官達とうち解けさせた。
「バスクの悪魔」はここでも大活躍だ。まぁ、チーズケーキ自体はバスク本人が作ってるんじゃ
なくて食堂の炊事班長がバスクのレシピを元に作ってるんだけど。
その日の定時後、ジムでガンガンマシントレーニングしてるレイチェル中尉を見かけたので
美容に気を使ってるようだ。
こんな美人がトレーニングに励む姿に素行の悪い下士官が口笛を吹こうとするが、バスクと
目が合い慌ててそっぽを向いてどこかへ行ってしまう。
また、士官学校出たての20歳の少尉も任官してきた。名をダグザ・マックールという。
側面の剃り跡も青々しいGIカットの若者だが、この時は0096のように頭頂部は鶏冠では
なくて5分刈りくらいだった。
ちなみにバスクもツルツルではなく、頭頂部に髪が残ったGIカットだ。
しかし、士官学校出たての新品少尉とは思えない鋭い目付きのダグサに(コイツ本当に20歳か?)
と思うほどだ。リーOUT、ダグザINでますます副官団がマッチョ集団になってるなぁ。
エリート集団の副官達の例にもれずダグザもMS適性こそないものの、非常に高い身体能力と
戦闘能力、戦術知識を持っている。戦術の方はおっさん従卒共に揉んで貰うとして、取り敢えず
は使い走りとか庶務いろいろをやって仕事を憶えてもらおう。
ダグサはチャーリーを尊敬しているようで、ジムでは筋トレの傍らバスクにチャーリーの逸話を
ねだり、私が折りたたみ自転車でジャブローを走ってると、まだダイエットは続けてる、後ろを
防弾ベスト着用でマウンテンバイク、連邦軍山岳部隊が使ってるゴツいの、でついてくる。
盾のつもりなのかもしれんけど、チャーリーが爽やかフェイスでいかにも「趣味で自転車
乗ってます」な感じなのに比べ少尉は鋭い目つきのせいか、外付けシールド感が半端ない。
若者の熱意に水を差したくないので、アポ先に着いたら「お疲れ様」とスポドリを渡している。
話を新スタッフからレヴァンに戻すと、彼にはまず「地球連邦軍」という超巨大官僚組織での
世過ぎのノウハウを教える必要があった。その意味でガンダム知識と要領の良さを持っている
リー少佐は教官にうってつけだった。ときおりジョークを交え、大半はレヴァンは意味が分から
ないようで真顔のままだったが、元々理解力はサイコ・リミッターが動作していても並みはずれ
ているので日に日に軍での立ち振る舞いを覚えていった。
バスクはレヴァンがガリガリに痩せてるのを気にして食事の度に「レヴァン、君、もっとたんぱく
質を取り給え、肉が食えないならトーフのような大豆食品がいい」とか「シリアルにヨーグルトを
かけるならフルーツを入れるといい」などと栄養管理士のように食事をアドバイスする。
バスクにするとレヴァンは他人とは思えないようでなにかれと世話を焼き、いつしか二人は
友となった。
レヴァンはバスクから身の上話を聞いたらしく、励ますつもりのバスクが逆に慰められたそうだ。
まぁ、おとなしい二人なので「オレ、オマエ」の仲ではなく「キミとボク」くらいの感じだが。
カロリーをろくに取らないレヴァンにバスクが気を揉んでいると、マンマ中佐があらあら、
とか言いながらやってきて、レヴァンにとても断れないテンションで「バスクの悪魔」を勧めた。
遠慮しながらも一口こってりしたチーズケーキを口に入れるレヴァン、次の瞬間(覚醒したか!)
と私が身構えるくらい目を見開きたちまちケーキを一切れ食べた。マンマ中佐はにこにこしながら
2切れ目を勧める。チーズケーキを堪能した後レヴァンは合掌し「このような菓子は初めてです。
研究所でときたま与えられる物は合成甘味料の味しかしませんでしたし…」と下を向く。「妹弟達
にも食べさせてやりたいものです」とレヴァンが言うと、バスクが「面会日に持っていけるよう、
当日朝に届ける」と受け合う。レーチェル中尉が「私、まだ大尉お手製のケーキ食べたこと
無いんですけど。よろしかったら私にも…」と便乗すると、バスクは顔を真赤にして
「は、はいっ」と裏返った声で請け負った。
結局面会日にはケーキを3ホール焼いてレヴァンに2ホール、レーチェルに1ホール渡したそうだ。
なんかいいよねぇ、こういうの。おじさんには微笑ましいばかりだ。ちなみにチーズケーキは
子供達を熱狂させたようで、リリーが一口食べた途端、イースが目を覚ましたそうだ。
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====その日ジョブ・ジョンが所属するノボトニー中隊はまたジョブの故郷
の演習に突き合わされていた。どうやら故郷の王子様、イオ・フレミングにジョブが大変気に
入られたのが原因らしい。中隊長が苦笑しながら、「先方は『州兵さん』だから怪我させない
ようにな」と中隊各員に注意喚起する。
「州兵」とは連邦加盟各国軍や月面都市連合、各サイドが持つ防衛隊のことだ。
各サイドの防衛隊は宇宙海賊対策に貨物船を改造した偽装巡洋艦を配備したのが端緒と
されている。サイド4は地球から離れているためか、自助の気風が強く現市長、事実上の
サイド4の王、の意向で「ムーア同胞団」なる独立部隊をサイド4警備隊の中に設立し、
なんと独自開発したMSまで配備しているという。軍にしてみると、
MSとその運用部隊の実力を是非とも知りたいところだろう。
(こいつ等もあの王子様と変わんねぇな…)とジョブは思う。聞けばこの州兵達はたった
10週間の訓練でMSに乗せられているそうだ。制服も連邦軍のよりだいぶ仕立てのいい、
まるで時代劇か銀英伝みたいなデザインだ。
地べたを這う歩兵上がりのジョブからすると、なんというか軍隊ごっこのように見える。
娑婆の学生、しかも恵まれた階層の大学生、の癖に互いを「貴様」と呼び合って一端の
軍人を気取っている。
(つきあってらんねぇ…)「上」の意向はともかくジョブには付き合いきれなかった。
彼等のMS『MMS-04 レオ』は全高16.2mと小柄な機体で四角いカメラアイを備えた固定式
の頭部と、我々の知るMS『リーオー』に似ている。
ムーア同胞団の制服もOZのそれに似ており、転生者の影響が見て取れる。
だが、レオの動きはリーオーに程遠く、覚束ない足取りでルナツー表面を歩いている。
衛星表面のような不整地を歩いた経験は少ないようだ。
宇宙での飛行も、スラスターが背中にしかないため、股間に装備できなかったらしい、
推力が低くジョブからしたらカモもいいとこなダッシュ力しかない。
「ブリキの兵隊」が中隊の仮想敵を指すコールサインになった。
「こんなポンコツに
演習はジョブのいる第3小隊がレオ1個中隊12機を相手取る状況から始まった。
飛び回る。レオは散開もせず、足を止めたまま105mmマシンガン、デモンスト
レーションのためペイント弾装填、を撃ちまくる。
狼狽え弾、しかも警備艇のそれを流用したFCSでは高機動MSランサーの動きは
捉えられず、1機また1機、とレオはビームを被弾し、作動を停止した。
3分あまりの間に12機のレオは全てビームの直撃をくらい作動を停止していた。
その後、ムーア側のパイロットを変えて第1、第2小隊と模擬戦を行ったが、ランサーの
動きこそ違えど、レオはやはり足を止めて弾をばら撒くばかりで2戦とも4分とたたずに
レオは全機作動停止していた。ノボトニー中隊の損害は0だ。
「マジでポンコツじゃねーか!ざっけんなよ!チクショー!」と故郷の連中、彼には
同胞意識などない、の体たらくに本気で腹を立てるジョブ。小隊長が『お肌の触れ合い
通信』で「ジョアンナちゃん、ここに呼べないか?所帯持ち向けに2Kの官舎とかある
からよ…」と心配そうに言う。部下の妹を守るサイド防衛隊の惨状に本気で心配に
なったようだ。
演習の「打ち上げ」事実上の歓迎パーティで、ジョブはムーア同胞団の3曹だという
オズワルド・ワーカーという学生と話をした。彼はジョブの生まれた町の出で、苦学生
だというので、まともに話ができそうだと思ったからだ。
実は彼等の多くは「フレミング奨学金」というムーアを支配する大企業、フレミング
インダストリーが出す奨学金で大学に通っており、軍に従軍するか防衛隊に入隊しない
とそれを卒業後全額返さないといけないと言う。「学生ローンみたいなもんさ、
金じゃなくて血で払うんだけどね」とワーカーは肩を竦めたが、エンジニアになる
夢を諦めきれない、という。さらにあのポンコツを設計したクラークとかいう
フレミング社のエライさんは彼の大学の教授でもあるようで防衛隊でもムーア同胞団
を選ぶしかなかったと、とワーカーは語った。ジョブは一見自分より恵まれた立場に
見える彼等にも事情があるのを知った。そして、もし、自分がMSを開発するんだった
らもっとマシなのを作ろうとも思った。今の彼にそんな学はないが。
ルナツー基地司令アーネスト・ワッケイン少将はレーザー通信の相手、第3艦隊司令
グリーン・ワイアット中将に「如何でしたか?」と尋ねる。
ワイアットは肩を竦めながら「いかがもなにも、というところだねぇ。MSは対空ドローン
にも歯が立ちそうにないし、練度と言ったらそれはもうボーイスカウトだよ、コレ」
「(統合)参謀本部の意向で今回の演習を受け入れましたが、正直言ってルナ2まで
観光旅行に招待したようなものです。サイド4政庁は何を考えているんでしょう?」
「私にそれを聞く?知ったことじゃないね。大方あの
他のサイド、特に中立のサイド6にでも売り込みたいんじゃないかと思うが、
あのデモンストレーション見て買おうなんて奇特な
当面の策として、そっちで保管してるRCX-76の旧式FCSでも供与したらどうかと思うね。
VOLKS SUITの命中精度も少しはマシになるだろう。
それと有事に第3艦隊はサイド4に進駐することをゴップ大将に具申しておこう。
『無能な味方』はジオンより怖いがね…」
ワイアットはMMS-04レオをナチス・ドイツの「国民」の名が冠された急造兵器に例えて
こき下ろし、パイロットの練度や図演でのムーア同胞団司令部の指揮をさらに強烈に
こき下ろしながらだからこそサイド4を守るため進軍すると言った。
ワッケインは対策として参謀本部にFCSの供与を具申することにした。
結局、ジョブは妹をルナ2に呼んだ。船賃はノボトニー隊長が全額出してくれる、と言ったが
隊員達が自分も出したい、と言い始め、中隊の皆で出し合うことになった。ダンクも少ない
俸給から喜んで出してくれた。ジョブは少し肩の荷が下りた気がした。
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なんだ、あの「なんちゃってOZ」は…ゴップです。
あんなんでもヒイロが乗ったらバカ強くなるのかねぇ。
ルナ2を舞台にしたサイド4防衛隊の一部隊、『ムーア同胞団』の惨状を私も見た。
サイド7にいるアダムスの代わりにレオの解析結果を報告しにきたマリオ・レナート、
ビルドファイターズの3兄弟の長兄、が彼らしく冷静に、性能をこき下ろした。
「機体の駆動に使われている流体パルスシステムは動きを見るとおそらく建設重機の物を強化して
使ってます。FCSは20年モノの旧式警備艇のFCSを載せてるようです。流石にスラスターは熱核
ロケットですが、推力は低いですね。バーニア周辺の映像を分析するとせいぜい2基合計で30t、
といったところでしょうか。装甲だけは豪華でビームが命中した時の光を分析すると恐らく
チタニウムが使われています。機体重量は機体形状もあいまってBM-01よりだいぶ軽量だと
推測できます」
「要するに有り合わせの要素でなんとか拵えた軽MS、といったところかね?」と私。なんか
前世のイランがF-5戦闘機をいじくり回して「新型機」を拵えたのを彷彿とさせる。
マリオは「一番問題がありそうなのが、操作系ですね。模擬戦時の反応速度を見ると、どうやら
建設用マニュピレーターのそれを流用しているようです。下半身は上半身の動きに合わせて
オートで動いてるようです。おそらく2本のレバーを交互に動かすと腕を振って旋回を始め、脚も
それに従って動くのでしょう」
「で、このMMS-04をこっちで「改良」してやることは可能かね?」
マリオは「意味があれば、ですが。RGM-79の配備でBM-01、02の各サイドにへの供与が可能
になるでしょう。現状でも02にリプレースされた01をオーバーホールして各サイド防衛隊への
供与は始まっていますので」と冷静にいう。
「ただ、さっき見たろくに訓練もしとらん学生パイロットでは猫に小判だねぇ…」
「そうでしょうね。サイド4防衛隊にはトリアーエズ宇宙戦闘機を装備していた部隊もあります
から、彼等が装備することになるでしょう」
もしかすると、ムーアの転生者は供与されたバムを分解してリバース・エンジニアリングに励み、
トールギスのパチもんを作る気なのかも知れないないな、と私は思った。
====その頃、フレミング インダストリーのCTOセイス・クラークは師匠であり、
フレミング社躍進の立役者、ムーアの黒幕ともいえる『Dr.J』に呼び出され、取るもの
も取り敢えず彼の自宅兼研究室に参上していた。
地球生まれらしい、ということしか分からない本名も誰も知らない両目が義眼の博士は
U.C.50年頃サイド4、ムーアの首都バンチに突然現れ当時のフレミング社、コロニー公社の
孫請けだった企業に工学のみならず様々なアイデアを提供、自身も建設重機を開発し、
フレミング社の王国とした。当時新入社員だったクラークは助手として散々こき使われたが、
Jの異様とも言える知識を尊敬し、桁外れの行動力に振り回さながら今日までついてきた。
お陰で
オリジナルMS、『レオ』の開発は彼の手には余った。師匠の所に何度も通っては罵倒されながら
有益なアイデアを貰い、立って歩く程度には仕上げたが、ルナ2に出稽古に行った
『ムーア同胞団』は大負けに負け、司令部以下意気消沈してサイド4に戻ってきた。
「クラーク君、こないだは気持ちいい位の負けっぷりだったな」とJは笑いながら言う。
クラークは冷や汗を流しながら、演習の仔細を報告した。
Jは「今の社長、
フレミング社の技術力では人型MSは手に余る、と再び断じた。
「では、我が社のMS開発は無駄なのでしょうか?」
「無駄ではないな。MS技術の裾野は広い。MS開発の経験は様々な商品開発に活用されるだろう」
「モビルポッドの方はMMP-02『キャンサー』として既に生産されておりますが…」
「アレはいい。なにせ融合炉積んどらんからIRセンサーにも補足されにくい。デブリ帯にでも
隠しておけば待ち伏せに最適じゃろうて」
ボケたフリなのか、自社製品のコンセプトを説明しているのか分からない老人にクラークは
出会った時からこの人はいつもこうだった、と思い出す。
「そうだ!クラーク君、来年は1月2日からここに家族連れで泊まりに来たまえ。ちょっとはマシな
シェルターがあるからそこで思い出話でもしながら『ゼロ・デイ』を迎えようじゃないかね」
この老人もU.C.0079 01 03に何が起きるのか知っていた。
「シンギュラリティ、ZEROシステムさえどっかにあればズムシティを単騎で陥とせるん
じゃがなぁ…。ワシ、ソフトの方は弱いのよな。なにせ前世は絵師じゃし」
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====サイド7近海の宙域、輸送艇に載せられ4機のRX-78はここまで運ばれて来た。
「コロニーの近くで実弾射撃すると「もしも」のことがあるかもしれんしな」とウィリーは
したり顔で言う。
カイは「え!?実弾射撃できるの?マジ?」と驚いている。今日は78で宇宙遊泳体験、くらいで
終わりと思っていたのでビームライフルをぶっ放せるとは思わなかった。
ハヤトはハッチの向こうは真空、という現実に震えていた。4号機のAI:ラナが彼を励まして
いた。「がんばれ♪ガンバレ♪」ハヤトは苦笑いしながら「赤ちゃんじゃないんだからさぁ」と
過保護気味のAIに抗議した。
アムロは早くRX-78で
4機はウィリーの指示で輸送艇と切り離され、宇宙を漂ってた。
アムロは
ウィリーは「
飛ばしてりゃ気が紛れるぜ。リタのツッコミは中々のもんだよ」ウィリーがアドバイスする。
「アナタのジョークって余りパターンないのよね」とリタ。
「そりゃあ、俺の脳は操縦に特化してるからな。スタンダップコメディを期待されても困る」
とドヤ顔で返すウィリー。カイは「大尉、AIとマンザイするの好きですよねぇ…」と呆れている。
「それより、今日のメニューはどうなってるんですか?」と余談を切り上げたいアムロ。
ハヤトも宇宙空間に慣れたのか、4号機でジャブを繰り出してウォームアップしている。
「よし、それじゃお楽しみの実弾射撃といこう!標的から2000の距離、
スラスターを吹かしてく。そこからは機動を取りながら自由に撃っていい」
とウィリーは今日の課題を発表する。1号機から送られたポイントへ4機はスラスターを
吹かし飛んだ。
「ヒャッホー!!」初の実弾射撃でテンションの上がるカイ。コクピットにはあの独特な射撃音
が轟き、メガ粒子の奔流に打ち砕かれる標的の姿と「命中、その調子よ、カイ」とAI:ローラ
の声が流れる。カイは射撃の実感を味わうためマニュアルで射撃を行っていた。
ハヤトは慎重に初の実弾射撃に挑む。ラナの指示する目標に十字のサインを左のスティック
を使って持っていき、右側の操縦スティックの射撃トリガーを引く。
「命中!初めてで凄いわ、ハヤト!」「大げさだよ、動かない的なんか当たるに決まってる
じゃないか」と照れ隠しに強がるハヤト。
アムロはフルマニュアルで次々目標を射抜く。AI:リサはFCSを調整し、アムロの視線の先に
照準を持っていくようにする。トリガーを引きながら「いいぞ」と声を出すアムロ。
最初の10発以降は1号機の指示で標的は回避機動を始めていたが、それでも2号機は1発も
仕損じる事無く撃ち抜いていた。
ヒューッ!と口笛を吹き呆れ顔のウィリー。「目標の視認から命中までアナタより平均0.05秒
速いわ」とアムロの射撃を報告するリタ。
「すまんが、今日の模擬戦はナシだ。アムロ君がライフルを演習モードにし忘れたら俺、
死んじゃうからさ」と今日は模擬戦なしを宣言するウィリー。カイは裏モードがまた
遠のいたと知り、タッチパネルを押しまくったり、口頭で様々な指示を出したり、レバガチャ
をしてローラの脆弱性を見つけようとするが、ダニーのチームが施したプロテクトは突破
できないでいた。
ハヤトは「宇宙で白兵ってどうやって相手に接近するのがいいのかな?」とラナに相談している。
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====ジオン公国近海の宙域。別名「動く技術本部」こと戦艦グワバンが航行している。
このグワジン級戦艦は技術本部が「宇宙航行可能なラボ」として総帥から下賜された艦であり、
技術本部では試験飛行や射撃テストなど様々な試験に用いている。腹の格納庫を拡張し、
3番砲塔を撤去して巨大な5m口径望遠鏡を備えた光学センサーを設置し、レーダー、
レーザーセンサー、IRセンサーを詰めるだけ艦体のあちこちに増設したお陰で
「姉妹達の仲で最も醜い」だの「ボテ腹の瘤付き」
だの陰口を叩かれる悲しい艦でもある。
この実験艦のオーナー、アルベルト・シャハト技術本部長は彼にとってはギレン総帥より
重要な人物を迎えていた。賓客の名はシャア・アズナブル中尉。彼は月面スミス海の実戦参加を
経て半ば以上ガルマの口利きの影響で士官に任官していた。
シャハトにとっては「前の彼」が仕えたシャア総帥こそが、真のジオン総帥であった。
前の彼がミネバ・ザビに仕えていたのもシャアがアクシズから彼女を連れ出し、娘のように
慈しんでいたからに過ぎない。10代の頃はハマーンの言うことを信じていたが、U.C.0088
アクシズ軍が瓦解し、シャアと再会してからは大佐=総帥こそが
彼の演説することが真理だと、確信していた。
シャハトの知性は「それは盲信なのではないか」と疑義を唱えていたのだが、本人を目に前に
して既に吹き飛んでいた。
「良くぞ参られたシャア中尉。技術本部長アルベルト・シャハトです」少将の彼が若い一介の
中尉を主君のように遇している。余人が見れば異様な光景だが、シャハトにとってはごく
自然なことである。ただ、その敬意を向けられているシャア・アズナブルは警戒していた。
(この男、私の素性を知っている?)迂闊にも彼の素性に気づいたと明かした士官学校の
同期生と同じく、彼がキャスバル・ダイクンなのを知っているのではないか、と警戒したのだ。
シャハトの
発汗をモニターしていたグワランのサーバは、HUDにシャハトの若き主君が警戒していることを
表示していた。
彼は居住まいを正して「この本部長公室は万全の盗聴対策が施されております。キシリア機関や
総統親衛隊であってもこの部屋の会話を盗み聞くこと叶いませぬ」とこの会話が外に漏れる
ことはないと宣言する。
「貴方様こそ、ジオン・ダイクンの忘れ形見、キャスバル・レム・ダイクン様。ジオン公国の
真の王であらせられる」シャアの目が『THE ORIGIN』で良くした目つき、殺意を込めた
ガンギマリの目になるが、仮面のお陰で片眼鏡の男には気づかれていない。
(士官候補生ならともかく技術本部の少将ともなればそう易易とは始末できんな)シャアは
脳内でシャハト暗殺のシミュレーションを繰り返すが、正解には辿り着けずに居た。
「この私をリノ・フェルナンデスごとき粗忽者と一緒にお考えにならないでください」
今度こそ、驚愕するシャア。またも仮面のお陰でバレなかったが。
(この男、なぜフェルナンデスのことを知っている?私が奴を謀殺したのも察している
のだろうな…)シャアは最悪の想定をした。この男を殺害してこの艦から脱出、他のサイドか
月面に辿り着く方法は?頭の中でシミュレーションするが、彼が死亡する結末しか見えない。
「ご安心ください、シャア・アズナブル。貴方様をキャスバル・ダイクンとして担ごうなど
とは私も私に同調する者達も考えておりません」シャハトとして暮らすうち、国内に旧ダイクン
派を中心にシンパを増やしてきた。最近は彼等のうちの何人かは自分と同じ境遇、やり直しの
人生を送っているのではないか、と思うようになった。それらしき言動、キャスバル・ダイクン
ではなくシャア・アズナブルを指導者として仰ぐべきだという
勿論そんなことを直接口にする者はいない、アクシズやネオ・ジオンで生きてきた者にそんな
迂闊者はいないからだ。
「シャハト少将、この一介の中尉に何をさせたいのです?」シャアは開き直って相手の要望を
聞いてみることにした。突破口になるかもしれない。
「貴方にはジオン独立戦争の英雄『赤い彗星』になって頂く。具体的にはMSで連邦軍に
大打撃を与え、
最後の『仰ぎ見る星』に特に力を入れて語るシャハト。
「ほう、英雄ですか。『赤い彗星』というのは気に入りました」ひとまず、相手の口車に乗って
みせる。目の前の片眼鏡は調子に乗ってシャアに語りかける。
「シャア中尉、此度は貴方の『専用機』候補の機体を何種類かご用意致しました。どうぞお試し
になり、ジオン独立戦争を駆け抜ける愛馬となさってください」
MSを用意している?確かこのグワバンは格納庫を拡張して27機搭載できた筈だ、とシャアは
記憶を紐解く。(MSを試せるのはいい、しかも私に献上するつもりらしいな、この男。MSが
あればいざと言う時脱出しやすくなる)脳内シミュレーションの条件を変えて再び開始する。
シャハトに連れられグワバンの「ボテ腹」と言われている格納庫にやって来たが、グワバンの
格納庫は与圧されていないのでシャアとシャハトはノーマルスーツを着用していた。
この時期(UC.0078 10月)シャアは、ヘルメットにツノの生えていないパイロットスーツを
着ていた。色は勿論赤だ。格納庫には赤い塗装と流れ星がペイントされたMS、MS-06だけなく
EM-04まであった、が4機立っていた。
「まずはMS-06最初の量産型MS-06Cをお試し下さい。この機体を
評価されるのが宜しいでしょう」
「では、早速試させていただこう」シャアは右端の機体に乗り込み、床のMSハッチから
に漕ぎ出す。スラスターを全力で吹かし、AMBACモーションの具合を確認しながら彼のオリジ
ナルマニューバを試す。「05よりはだいぶ良くなっているな…」シャアは彼の理想からは遠いとは
いえ、MS-05を大幅に上回る性能を見せるMS-06Cを高く評価していた。
「MS-06、中々の性能ですな、少将。比較のため次はEMS-04に乗ってみたいのですが」
シャハトはどうぞどうぞ、と言わんばかりの態度で許可を出す。
EMS-04ヅダは聞きしに勝る大推力だった。いつもの調子でスロットルを開けると首が後ろに
持っていかれそうだ。大推力が生み出す機動性は確かに大したものなのだが、シャアはEMS-04が
大味な機体だと思った。四肢を駆動する流体パルスシステムが旧式で反応も悪くAMBACモー
ションが大きく遅い。加速力はMS-06Cを上回るが、要するに小回りが効かない。
「これならMS-06Cに推進剤を余計に積んだほうがいいでしょう」とEMS-04に低評価を下した。
「これはMS-06の高機動型で、背部のスラスターを大推力の物に換装し、両脚に加速用
ブースター、化学燃料ロケットですが、を装着し、EM-04をも上回る最大推力を発揮する
機体です。型番をMS-06Rといいます」
「ほう、高機動型」これは期待できそうだ。シャアは少し胸が沸き立つのを感じながら
赤いMS-06Rに乗り込む。
MS-06Rはシャハトの売り文句の通り、大推力の機体だった。EMS-04のような鈍さもない、
中々に高機動である。ただし、両脚のブースターが燃料を使い切るとデッドウェイトになり、
マニューバに悪影響を及ぼすのが気になった。
「良い機体です。しかし、ブースターを使い切ると多少運動性が落ちますな」
シャハトは今日一番の弾んだ声で、「では、この機体をお試し下さい!MS-06を材質から
見直して軽量化、融合炉を試作MSと同じ出力1,034kwの物を搭載、推進機は推進剤に
重元素を使用するHa112-IIを2発背部に搭載し、両脚にはHa-102を搭載、総推力は
58tとMS-06Rに僅かに及ばないものの、MS-06Cを大幅に上回ります。
まさに『赤い彗星』に相応しい『ザクを超えたザク』であります!!」
シャハトは腕を振り上げ、説明してるんだか演説してるんだが分からない有様だ。
「材質から見直して軽量化を果たしたそうですが?」シャアは一番気になることを聞いた。
「よくぞお聞きくださった!この機体はオールチタニウム製です。装甲も月からもたらされた
連邦の技術を応用してM-120A1 120mmマシンガンの一連射に耐える強度を持っております。
機体の構造も見直し、特に構造材と四肢の外皮を肉抜きする事で材質の変更と合わせ
本体重量45.2t、全備重量55.8tと全備重量がMS-06Cの自重より軽いのであります!」
(ほぅ、この男、伊達に技術本部長をやっておらんな)シャアは眼前の片眼鏡の能力を少し
多く見積もることにした。「さっそくシャハト少将の秘蔵っ子に乗ってみたいものですな」
「ええ、どうぞお乗りを!そのために作ったのです!」シャハトは感極まった様子だ。
「それで、この機体の型番ですが…」
「MS-06
様子でその型番を明かした。
MS-06Sは確かに高性能機だった。各部スペックの強化よりシャアには軽量化が一番影響
している気がした。とにかく、彼の思い通りに振り回せる。C型を遥かに上回り、R型でさえ、
こいつに比べれば駄馬と思える。シャアはすっかりこの「スペシャルなザク」が気に入った。
ただひとつ、気に入らないのがリミッター機構だ。スラスターを全開で吹かしていると、
リミッターがかかったのか、すぐに推力が落ちる。
「チィッ!」シャアは思わず舌打ちする。枷を付けられたようで不快であった。
グワバンに戻り、コックピットから飛び降りるシャア。格納庫はOGなのでゆっくりと
下りていく。シャアは床に付きそうになると床を蹴り、整備員や開発スタッフらしき
ノーマルスーツ達が歓声を上げる中、シャハトの前まで飛んでいった。
「MS-06S、素晴らしい機体です」シャアはいささかの興奮を込めた声で感想を述べた。
「ただし、ひとつ不満があります。リミッターを解除していただきたい」
「それはお勧めしません!」見るとシャハトの後ろに立っている技術士感が慌てて止める。
「マイ中尉!」シャハトが振り返り、分際を弁えろ、と言わんばかりの態度でマイと
呼ばれた中尉を嗜める。
「ですが、リミッターが効きませんとEM-04のような爆発事故の危険があります!」
こと技術に関してこの中尉は将官にさえ譲らないようだ。
シャアは仮面の下でにやりとした。
「マイ中尉、この機体は素晴らしい性能です。さらにロシアン・ルーレットも楽しめる
訳ですな。全く素晴らしい」シャアは感じ入った、と両腕を広げる。
マイの方が先任なので、敬語で話す。
「冗談じゃありません!あなたの命がかかってるんですよ?」マイは目の前の
若い中尉のただならぬ気配に気圧されながらも自説を曲げない。
「後ほど、各部のロケットエンジンの試験データをいただきたい。
どこまで安全かはコンピューターではなく、私が判断します」傲岸とも言える
態度のシャア。シャハトも「それがよいでしょう。よいな、マイ中尉」と圧を
掛けてきたので、さしものマイも引き下がったが、
「シャア中尉の言われる通りリミッターを解除するのであれば私が責任をもって
この機体を整備します!」と言い出した。
しつこいようだが、一介の中尉の機付長が中尉というのは異例もいいところである。
巡洋艦ではMSの整備を統括する整備長はだいたい叩き上げの少尉であり、本来開発を
担当する技術本部の士官が整備に口を出すのは横紙破り、とさえ言えた。
「おぉ、やってくれるかマイ中尉!このMS-06Sは公国の未来を担う機体、貴官が
面倒を見てくれるなら心強い!」シャハトはマイの手を取って喜んでいる。
おかしな雲行きだが、「技術に誠実」といえるオリヴァー・マイという男の態度が
気に入ったシャアは(面白い展開になってきたな、元々ザビ家に近づくため功を上げる
必要はあったが、こいつらに手伝わせることにしよう。)と仮面の下でほくそ笑んだ。
遂に「シャア専用」の登場です。MS-06Sは色々盛りすぎて全備重量はハイザックの全備重量より軽いザクになりました。他のスペックは控えめですが。
RX-78とアムロが書いてる内にマシマシになったので、シャアの方もスペックを盛ることにしました。
S型に搭載されたロケットはMS-09ドムの「天王星」ロケット開発の途上で生まれた物、融合炉はコロニー・要塞戦用MS、MS-07の物という裏設定もあります。
ちなみにジオニックがタッチしておらず、設計データやパーツを流用したワンオフモデルなので、調達コストと維持コストはヤバいことになっています。
シャハト本部長は次期主力機開発の実験機という名目で予算と資材を確保しました。
新キャラ、メガネ美女レイチェル中尉とダグサ少尉(20)、バスク・オムが女性に話しかけられて、怒りじゃなくて照れで顔を真っ赤にするのはなかなか無い、と自負しております。
サイド4の「なんちゃってOZ」ムーア同胞団ですが、ジョアンナ・ジョンちゃんがサイド4からルナ2に引っ越すので開戦まで出番はない予定です。なんちゃってリーオー、MMS-04レオは開戦までにどこまで性能を上げられるでしょうか。彼等の制服はDr.Jが描いたスケッチからイオ君のお姉さんが選んだデザイン、とかいう設定を今思い付きました。
次回は週末になるといいなぁ、と思っています。