ここまで模擬戦を繰り返してきた本作も遂に実戦です。
スミス海…、あれはガンキャノンの実弾演習ですから。
とうとう宇宙世紀0079になってしまった。
私は年末から司令室に泊まり込み官舎にもこの一週間帰っていない。
司令室を出たのは去年の27日、リー少佐とレヴァン特務少尉が乗るシャトルを見送った時だけだ。
そう、レヴァンは戦場へ行ったのだ。
24日の夜、幕僚本部では自粛モードでクリスマスパーティをしていた。
と言っても職務の合間にターキーを食べたりケーキを食べるくらいだが。
シャンパンを飲む者はいなかった。レヴァンが私の元に前線勤務を志願しに来たのはこの時
だった。
「閣下、私も微力を尽くしたいのです」レヴァンはこれ以上ない真剣な面持ちで私に訴えた。
普段はおちゃらけた雰囲気のリー少佐も「彼は本気ですよ、閣下。愚行するに月面での
間接砲撃に彼の能力は絶大な威力を発揮するはずです」とシリアスな顔でレヴァンの「能力」を
活かすべきだと言う。
私はいささか狼狽し、「こないだ言ったことはあくまでものの例えであって、君が今、前線に
行く必要など無いのだよ…」と、最後の方はだいぶおろおろした感じで遠回しに彼の志願を
拒否すると私の後ろに控えるバスクが「閣下、レヴァンを行かせてください。彼は閣下の、
いえ連邦軍の恩に報いるのは今をおいて他にない、と思っているのです」とこちらもいつもの
調子と打って変わった力強い口調で友の想いを無駄にしないでくれ、と訴えた。
ダグザまで「レヴァン特務少尉の護衛に志願します。員数外の少尉である自分なら閣下の
職務に差し障りありません」と言い出した。いつの間にか幕僚達やヘボン君まで集まってきて
「レヴァンを行かせてやってくれ」という視線を送ってくる。リーめ、根回ししておったか。
こうなってしまうと鉄面皮のゴップもかたなしだ。降参のポースを取りながら、「レヴァン、
いやここは家の中と同じ『レヴ』と呼ぼう、 君の能力はどのくらい先の敵を探知できるのだね?
10kmかそこらなら既存のセンサーと大して変わらんから後方で書類仕事をしてもらうが…」
とせめてもの抵抗を試みたが、レヴァンは「リー少佐やDr.アルヴィースと様々な実験を試みた
所、MS大隊規模の敵なら200kmで探知が可能、という結論に達しました。月面諸都市やマス・
ドライバーを占領するのに最低その数は要るだろう、という計算です。また、人はMSに乗ると
如何なる理由か、Dr.はミノフスキー粒子を発生する
増幅されるようなのです。それで、彼らが
確かに敵の現在地やその侵攻方向が分かるのは砲兵にとっては大変ありがたいだろうが…
「閣下、サイド7にV作戦基地を作ると決めた時から我々は『NTを軍事利用する』と決めていたの
ですよ」とリーがシリアスな、それこそ銀英伝のワンシーンのようなテンションで「もう遅い」と
私に告げた。アムロ少年や級友2人を戦場に送る、と決めた時点でこうなることは決まっていた、
ということか。
出発の日、私は同行するリー君やダグザ君、Dr.アルヴィースに「くれぐれもレヴを頼む…」と
拝み倒し、シャトルが発進すると、通信室に駆け込みんでマエバラ君のノーチラスに緊急暗号電
を打った。最悪の場合、彼のステルス艦なら4人を月から脱出させられるだろう。
--------------------------------------------
====U.C.0079 01.03 07:20 ジオン公国は地球連邦に宣戦を布告した。
その
『コロニー制圧部隊』巡洋艦6隻と民間の貨客船を改装した特設MS空母2隻からなる戦隊を
向かわせた。巡洋艦にはそれぞれ6機、貨客船改造空母にはそれぞれ9機の合計45機のMSが
搭載され、母艦の支援があれば、両サイドの占領ないし、破壊は充分可能とされていた。
連邦の艦隊を発見するまでは…
====サイド4近海 U.C.0079 01.03 08:00
「『彼らは来た』か。全艦、最大戦速。旗艦『プリンス・オブ・ウエールズ』発砲を合図に
砲撃を開始せよ。艦載機は作戦案に沿って行動せよ」第三艦隊司令グリーン・ワイアットが
号令を発した。彼は眼前の敵軍が想定を大幅に下回る戦力なのに拍子抜けしていた。
「『マクロス』を連れてこなくて良かった。小鳥を大砲で撃つのはあまり上品でないからね」と
傍らの幕僚にこぼす。
ジオンは無警戒なサイドを襲うつもりが当てが外れたのか、反転してソロモンへの帰路について
いる。反転を終了するのと時を同じくして6隻のムサイ級の横っ腹に幾条もの光が走る。
予め予想侵入航路に近い『壁』に伏せて置いたMSとGWが放った光だ。
803戦闘団『ランサーズ』MS48機と303飛行隊『ガントレッツ』GW24機の一斉射撃で6隻
のムサイは機関部を撃ち抜かれたちまち火球と化した。艦載機のMS-06 24機と
MS-05 12機は第3艦隊の足止めの為、既に発進していたが、ザクマシンガンの射程に辿り着く
前に次の斉射で12機が火球となり、斉射後すかさず空戦機動を取ったBM-01L、BM-02が
10機を片付けた所で生き延びた6機が武装を投げ捨て投降し、逃走を図った8機はビームに
貫かれた。
ジョブ・ジョン軍曹は「MSの実戦ってこんな簡単に終わんのかよ…」と呟いた。すかさず短距離
通信で「気を抜くんじゃねぇぞ!!ジョブ!」と小隊長に怒鳴られた。
「ま、かくいうオレもいささか拍子抜けだけどな。そういやお前地球でドンパチの経験あったな」
「アッチの方がずっと怖いッスよ。歩兵はビーム小銃とか持ってないスから敵と同じ射程ですし」
「ジオンの士官様は使い捨てカートリッジ使うレーザーライフル持ってるらしいぞ」
「地球で軍閥の親玉が持ってったスけど、アレ、とんだこけおどしッスよ」
N中隊第3小隊は雑談しつつ、後方にいた為初撃を免れた「仮装巡洋艦」目掛けて飛んだ。
ジョブはこの日、新旧のザク5機を単独で撃墜。ムサイ級1隻を中隊共同で、仮装巡洋艦を
小隊共同で撃沈した。「仮装巡洋艦」は戦後の調査で特設MS空母『ムスペルヘイム』と
判明した。
--------------------------------------------
====サイド1近海 U.C.0079 01.03 08:00
第2艦隊から分派された分艦隊と第三艦隊から派遣された巡洋艦二個戦隊を組み合わせた
『ザーン方面隊』を率いるジョン・コーウェン少将は(『N』のお陰でジオンの動きが早期に
捕捉できた。戦場はコロニーから離れば離れるほど良いのだ)と思いながら指令を下して
いた。「全艦、適当な距離を確保しつつ敵を追い込め。この程度の敵相手に損害を出しては
先が思いやられるぞ!」方面隊各艦はマゼラン級16隻の射程ギリギリの距離を保ちつつ、6隻の
ムサイと2隻の貨物船を改装したと思しき「仮装巡洋艦」を『壁』の方向へ追い込んで行く。
既に方面隊各艦は戦艦と巡洋艦の直掩MSまで発進させて網を広げている。
ジオン艦隊は「デブリ帯」を利用して逃走を図ったが、いきなりデブリの一つが火を吹きながら
突進し、特設MS空母『タングリスニ』に正面衝突した。空のダンボール箱のように潰れながら
直後火球となるMS空母。空母『タングニョースト』は慌ててザクを放り出すが、ザク達は
デブリ帯から伸びた火線、ビームではなく曳光弾のようだ、に包まれ次々と火球と化した。
ザクは不慣れな兵が乗っているのか、回避機動をせずに足を止めてデブリに隠れる敵にザク
マシンガンを乱射している。その隙を利用して背後に回った
ライフルを3点射すると、ザクはランドセルから火を吹いて撃墜された。その僚機達も次々と
撃墜される。
巡洋艦も分艦隊の砲撃と「デブリ帯」から飛び出した異形のMSが放つビームの前に沈黙し、既に
4隻が轟沈していた。
4隻目のムサイが火球と化した次の瞬間、マシンガンを放り投げ手を上げる新旧のザク。
バムは腰に付けたヒートナタを左手に持たせて近づき、ザクの腰からヒートホークを奪い、
融合炉の停止とコックピットハッチの開放を命じた。
炉の停止を確認すると、ワイヤーでザクの手首を縛り(ザクなら容易に引きちぎれるが、次の瞬間
ヒートナタの餌食だろう)母艦へ帰還するバム。
メガ粒子砲を破壊された残りの特設空母も光モールス信号で投降を告げ、機関を停止した。
このジオン小艦隊を率いるアーダルベルト・ブランケ大佐は旗艦『ハーゲン』のブリッジから
生き残った僚艦『テンリュウ』に戦闘停止を命じ、自分は艦長室で拳銃を咥え発射した。
2隻のムサイは機関を停止し、投降した。
「MS-05とMS-06、合わせて10機とムサイ級2隻、仮装巡洋艦1隻を拿捕か…。据物斬りなら
新兵で充分と侮ったか」コーウェンは敵の不甲斐なさから敵の主目標サイド2方面はキツい
戦いになる、と予測した。
「第3艦隊から入電!」
『ワレ ソロモンへ 進軍ス. 分艦隊ハ 原隊ニ 復帰セヨ. 』
おそらくはワイアット中将のブラフだろう、コーウェンは思った。サイド4からサイド2に急行
しても決戦には間に合うまい。少しでもジオンの気を引こうというのだろう。
助っ人の巡洋艦は既にソロモン方面へ転進していた。
こちらはサイド5に急ぎ第2艦隊本隊と合流しよう。
--------------------------------------------
====サイド5近海 U.C.0079 01.03 09:00
「ジオン艦隊、反転、離脱します」M粒子反応の濃さと範囲の広さから大艦隊がいるのを
察したらしいジオンの「小艦隊」は射程の遥か手前で反転し、離脱を図っている。
マクファティ・ティアンム第2艦隊司令はインヴィンシブル級空母1隻とマシュー・ペリー
級駆逐艦6隻を念の為サイド5に残して第ニ艦隊に追撃を命じた。
そして、なにか思いついた顔をすると、通信幕僚に
「友軍のいる全方向へ高出力レーザー通信。『ワレ
ズムシティ ニテ 再度 マミエン.』と打ってくれ」通信幕僚は目を見開き、「本気ですか?」
という顔になった。
ティアンムは苦笑しながら「ブラフだよ。ここからサイド2へ直行してもおそらく決戦には間に
合わない。この通信を傍受した敵が幾ばくかの艦をジオン本国に引き返してくれればめっけもの
じゃないか」とウインクしながら語った。普段は実直謹厳そのもの、といった司令の茶目っ気に
幕僚達の間から笑いが起きる。幕僚長の准将は「『ビクトリーロード』なんて作戦案あったかな?
と慌てて検索してしまいましたよ、提督もお人が悪い」と苦笑している。
結局、ムサイ級5隻は先行した巡洋艦戦隊の砲撃で沈み、元貨客船と思しき「仮装巡洋艦」3隻は
投降した。ティアンムはサイド2方面への転進を命じた。
-------------------------------------------
====サイド2近海 U.C.0079 01.03 09:00
艦隊決戦の陽動として、『第二特別強襲大隊』の半数『フェンリル』『ヴィゾーヴニル』の
二個中隊36機はゲラート・シュマイザー少佐に率いられサイド2への奇襲攻撃を企図して、
この宙域までやって来た。彼ら『特別強襲連隊』各中隊は母艦の名称がそのまま部隊名となる。
サイド2のコロニー1基につきザク1機という戦力はいささか過剰ではないか、とシュマイザーは
思った。流石に核弾頭は「艦隊決戦に温存する」と言って置いてきたが。
前方に一見、デブリ帯に見える小惑星の欠片達を発見したところで少佐は全機に停止を命じた。
『フェンリル』隊のロベルト少尉は「ただの削りカスですよ。もしかしたら爆薬を埋め込んでる
かもしれませんが…」と距離を取って迂回すれば安全だと主張する。
ベテランのオースティン軍曹は「少佐は爆薬どころかフネかMSが隠れてるんじゃ?と疑って
らっしゃるんですよ、少尉。あの
レクチャーする。ロベルトは「確かに…」と考え込んだ。
その時、シュマイザーが直卒していない『ヴィゾーヴニル』中隊から「次席指揮官、威力偵察
を具申します!」という通信と共に18機のザクがデブリ帯目掛けスラスターを吹かした。
「許可は出しておらんぞ。全く…」シュマイザーは突撃機動軍司令キシリア・ザビの覚えが
めでたく無い。自然と機動軍第7師団から派遣されてきた者の中には彼を軽視する者もいた。
同じく第7師団から派遣されてきた第二大隊長、パッカード中佐とは上手くやってきたのだが。
許可なく突っ込んだとしても、味方がみすみす罠に掛かるのを見過ごせない彼は中隊に
抜け駆けしたザク達が「デブリ」に近づくと、小惑星の陰から光条が走り2機のザクを貫いた。
「メガ粒子砲だと!? やはり艦艇が隠れていたか!」『ヴィゾーヴニル』隊を率いる大尉は
中隊に突貫を命じた。距離さえ詰めてしまえば艦艇などMSの的でしかない。
だが、おそらく巡洋艦が隠れている筈の小惑星に取り付いても艦艇は見えない。
「砲台だな」大尉は小惑星のクレーター直上まで進むと隠見式のビーム砲塔を見つけ、
マシンガンの一連射でこれを破壊した。中隊各機も同様に砲塔を見つけ始末したようだ。
『ヴィゾーヴニル』隊の各機はコロニーへの最短距離を進むべくデブリ帯に突入し、そこで2機が
デブリ間に張られたワイヤーに引っかかり、デブリに仕掛けられた爆薬で吹き飛ぶ。
「
無視していたようだ。大尉はいまさらながら14機に減った中隊各機に警戒するよう命じる。
だが、彼らは未だコロニーへの最短ルートである「デブリ帯」の突破を諦めていなかった。
次の罠は作業用を改造したと思われる対空ポッドだった。球型のてっぺんに大型機関砲を載せた
ポッドがザクを砲撃する。しかし、火線はザクを捉えられず、9機の改造ポッドは皆ザクマシン
ガンの餌食となった。
中隊長はデブリ帯の切れ目からサラミス4隻を視認し、「あと一息だ!」と部下に突撃を命じる。
その時、ジオン言う所の「MSモドキ」およそ24機が彼らを囲む様に現れた。
モドキ達が携行しているライフルを連射すると、後方から撃ち抜かれた2機が撃墜、1機が右脚と
右腕を失う。次の斉射で手負いの1機とさらに1機が撃破され、中隊の残余は10機となった。
慌てて回避機動を取ると、今度は一撃で撃墜される機体は無く、ザクマシンガンの弾幕にモドキ
が捉えられる。しかし、中隊各機が驚いたのはその直後だ。奴らは平然としている。
「マシンガンが効かないだと!?」中隊長はすかさずバズーカに持ち替えロケット弾を放つ。
モドキは左腕の盾でそれを防ぐ、盾にはHEAT弾頭が抉った跡が残るものの、それ自体は
無事だった。
「
「連邦は
非難したが、実際に対して見ると実に厄介だ。
自分達の火器がザクより動きの鈍い「モドキ」を撃破できないことに狼狽した部下達は1機、
また1機と斃れ、とうとう中隊は6機を残すばかりとなった。
大尉がパニックを起こしそうな心を必死に鼓舞していると「遅れてスマン!!」と通信が入った。
『フェンリル』中隊が救援に来たのだ。『ヴィゾーヴニル』隊は増援に備えて陣形を変えた
モドキ共の間をすり抜け、『フェンリル』隊と合流した。
「すまんな、大尉。トラップの解除に手間がかかった。これなら貴官の言う通り核を持ってくれば
良かった」とシュマイザーは詫びるが、大尉は「いえ、次席指揮官殿の許可を得ず突撃した自分が
責を負うべきです。部下をお願いします」と部下からベルト給弾の重マシンガンMMP-77を受け
取ると、小惑星のひとつに隠れた。殿を務めるつもりだ。
「すまんな。時間を稼いだ、と思ったら投降してくれ…」とシュマイザー別れを告げつつ
残ったザク23機を回収ポイントへ転進させた。
--------------------------------------------
====サイド2近海 U.C.0079 01.03 10:00
ドズル・ザビ中将は目前にせまりつつある艦隊決戦を前に体中の血潮が沸騰しそうな高揚感を
得ていた。高揚感のままに通信参謀に向けて「全艦に打電!電文は…」
『人類史上 決戦ノ舞台 宇宙ノ試シナシ. マシテ艦隊決戦ノ試シナシ. 諸君 歴史ヲ生ムベシ.』
(これは歴史に残る名文句になるぞ…)と鼻息の荒いドズルであった。彼はネルソンやトーゴーと
いった人類史に残る名将にあと一歩で自分も並ぶのだと思って疑わなかった。
ジオン宇宙攻撃艦隊旗艦『グワラン』から電波とレーザー、それも最大出力で発せられた電文は
連邦軍連合艦隊にも傍受されていた。
「確かに彼の言う通りだな…」司令長官レビルはドズル・ザビという青年が士官学校の校長に任ぜ
られると「教える者が戦史に疎いのはよくない」と必死で勉学に励み、サイド3駐在武官だった
レビルが驚く程の知識を蓄えたことを憶えていた。
「向こうがヤル気でいてくれるのは有り難いな」と傍らの幕僚長カニンガン少将に告げると、彼は
「敵艦隊の動きの鈍さが気になります。艦隊戦より先にMSによる奇襲を試みるのではないで
しょうか?」と眼前の艦艇は囮ではないか、と危惧していた。
レビルは「その可能性は充分あるな。既に艦載機は発艦しているのだろう?」と通信幕僚に尋ね、
彼は「『エンタープライズ』のベーダー少将からは麾下の戦闘団、飛行隊共に全機発艦完了、
と報告が来てます」と答えた。
旗艦『アナンケ』のCICのメインスクリーンは直掩機
「では、こちらから殴らせて貰おう。MS、GW攻撃隊は所定の作戦案に従って出撃せよ。
全艦、前進。距離を詰めるぞ。旗艦の合図で全艦斉射だ。直掩隊は艦砲射撃に巻き込まれんよう
艦隊の上下に展開」と号令を発した。
「連邦艦隊、前進してきます!」と戦術オペレーターが警告を発する。
ドズル中将は「グワランは射程に敵が入り次第、一斉射。各艦は順次射程内の敵艦に斉射せよ!」
と号令を発する。
(各艦の性能差があり過ぎる…)ドズルは思った。麾下の艦艇は同じ艦種でもメガ粒子砲の
性能やセンサー性能にバラツキがある。特にムサイ級は貨客船を改装した初期のイオージマ型と
最初から巡洋艦として建造されたムサイ型の違いは顕著であった。一応同型艦同士で戦隊を組んで
はいるのだが…
「別働隊が来るまでに何隻沈められるか?」と、彼は独白した。艦隊戦で決着を付ける気は無い。
この人類初の宇宙艦隊決戦は、ジオン艦隊の旗艦『グワラン』の主砲520mmメガ粒子砲8門の
一斉射で幕を開けた。有効射程ギリギリの斉射は先頭のサラミス級に至近弾となるも、命中は
得られなかった。連邦艦隊はマゼラン級を前面に押し出すと前方を指向した主砲400mmメガ
粒子砲10門を斉射する。こちらは火力を最大にする為側面を向けていたチベ級重巡2隻を捉え、
光の奔流に貫かれた重巡は火の玉になった。
「『イエローバロン』『デアフリンガー』轟沈!」悲鳴のような報告が上がるが、ドズルは
「動じるな!重巡各艦は90度回頭!頭を敵に向けろ。軽巡各艦、前進せよ!」通信能力が高い
重巡を連邦は真っ先に狙ってきた。このグワデンではなく…
ドズルは敵将レビルを侮ったつもりは無かったが、敵将は彼の想像を超えてきたようだ。
(彼奴も艦隊決戦なぞ初めてだろうに…)ドズルは顔には出さないもの軍服の下で冷や汗を
かいた。
両軍の距離が詰まるとムサイとサラミスが砲火を交えるようになった。
今度はムサイ級のような外観だが、3割ほど大きいムサイ改級『ワルキューレ』に砲撃が
集中する。軽巡15隻からなる分艦隊の指揮を取るユーリー・ハスラー大佐の乗艦である。
「ハスラーに下がれと言え!」一時旗艦に据えていたこともあり、ドズルは思い入れの深い
「嚮導巡」を失いたくなかった。連邦はこのムサイの拡大版を執拗に狙っている。
「『イオージマ』轟沈!」ワルキューレを庇うポジションについた軽巡が集中射撃を受け
火の玉になる。「貴様らの死、決して忘れはせんぞ!」ドズルは涙を流しながら
『提督用ケージ』のステーをひん曲げた。
艦隊の15%を砲撃戦で失い、ドズルは艦隊を後退させることにした。
「ビーム撹乱幕展開!全艦逆噴射!敵を指向したまま後退!」ジッコ突撃艇とガトル
戦爆が決死の覚悟でビーム撹乱幕を展開する。ジッコが数隻、ビームの直撃を受け散って
いくのをドズルは涙を流して眺め「すまぬ…、だが無駄にはせんぞ…」と呟いた。ステー
はさらにひん曲がった。
突撃艇や戦爆の挺身で撹乱幕を展開したジオン艦隊はひとまず射程から逃れることができた。
連邦艦隊は前進して来ない。どうやら敵もMSを繰り出してくるつもりらしい。
「あの『MS-03モドキ』をシャハトに見せられた時からこんなことになる、と思っておった」
ツシマ沖のトーゴーではなく、ミッドウェー沖のナグモになる予感を打ち消しながらドズルは
独り言ちた。
-------------------------------------------
====サイド2近海 U.C.0079 01.03 10:27
「運転ご苦労さん。ここで下ろしてくれ」ツァリアーノ中佐は404飛行隊『ギャラクティカ』の
スレッガー・ロウ中尉にそう言うと
から離脱した。
「ご利用ありがとうございました。運賃は特別にまけときます。地球に帰ったら中佐のアルファに
乗せてくださいよ」と自身もガソリン車(マスタング)の愛好家である中尉は軽口を叩く。
「無事に帰れたら、な…」中佐は緊張で乾いた唇を舐めながら、だが不敵な笑みを浮かべて返事を
した。
「『セモベンテ』各隊集合!」の命令で、中佐の側に麾下の各中隊長が集まる。
各中隊は既に集合を終えている。
中佐は満足そうな笑みを浮かべ「それじゃあ貴様らジオンにカチコミかけるぞ!」と
号令をかける。52機のベムと26機のGW-01:ワルキューレから鬨の声が上がる。
フェデリコ・ツァリアーノ中佐は604MS戦闘団『セモベンテ』と404飛行隊『ギャラクティカ』
両隊合計78機を率いる攻撃総隊長である。
GW-01E偵察機が「敵航空艦隊らしき反応!」と報告してきたので大佐はMSとGWの合体を解除
させ、襲撃準備の体勢を取っていた。偵察機によると輸送艦改装空母と駆逐艦の艦隊らしい。
「『404』が先鋒だ。一航過で離脱して合流地点で待っててくれ。アシがやられちゃならんぜ」
と命じると26機のGW-01はスラスターを全開にして飛び去った。
「さて、『604』の紳士淑女諸君、戦乙女に続いてカチこむぞ。全機空母を狙え。一航過で全部
沈めるつもりでのぞめ。護衛の駆逐艦はこっちと同じでMS運用能力は無いらしい。Eパックを無駄
に使うなよ」と指令を下す。首のないベム52機は背部と脚部のスラスターを吹かして「ジオン航空
艦隊」をめざして飛んだ。
特設空母『ニーズヘッグ』のブリッジにアラームが鳴り響き、「敵突撃艇らしき集団!直上!!」
とほとんど悲鳴の報告が上がる。艦長は「慌てるな!既に艦載機の発艦は終わっている。本艦に
残された任務は囮として敵の攻撃を吸収し、本隊の損害を減らすことにある」とブリッジの
全員に告げた。ただ、副長を呼び、「若い兵卒達をランチで脱出させろ、指揮はマイ中尉に
取って貰え、お客さんだからな彼は」と脱出準備を小声で命じた。
モニターで視認できる距離まで近づいてきた「突撃艇」は驚くことにメガ粒子砲を撃っている。
レーザーに比べ威力で隔絶しているメガ粒子ビームの数少ない欠点が「可視光線」であることだ。
大出力レーザーであれば、艦体のコーティングで防げるのだが、輸送艦改造空母ではメガ粒子には
耐えられまい。事実、同型艦『スレイプニル』は光線を何本も浴び彼の目前で轟沈した。
「ありゃ、少なくとも巡洋艦並の火力だぞ…」艦長は冷や汗を流しながら(脱出は間に合う
だろうか…)とまだ10代の兵達とあの人の良い技術中尉はなんとか救いたい、と思っていた。
突撃艇は空母『ヘイズルーン』を集中射撃で沈めると下に抜けてそのまま去った。
「見逃してくれた?」ブリッジからため息が上がる。だが、数分後「MSらしき集団!直上!!」
との報告が上がると再び空気が凍りついた。今度は助かるまい…
副長が耳元で「ランチ本艦を離れました。駆逐艦Z-578が回収し、ソロモンへ回頭中」と報告し、
老艦長は少し肩の荷が下りた気がした。
「直掩機がいない、だと…」ツァリアーノは一瞬虚を突かれた顔になったが、顔を引き締め、
全機に攻撃を命じた。
604戦闘団52機が放つ52本の光線は2隻の空母と空母を庇った駆逐艦6隻を貫いた。
駆逐艦はたちまち船体がへし折れ、次の瞬間火の玉になった。空母は1隻は轟沈し、残りも
船体のあちこちから炎を吹き出している。間もなく沈むだろう。
対艦兵装なのだろう、駆逐艦の主砲は全くベムに追随できず、ミサイルも明後日の方向に飛んで
いる。ベム全機が下に抜けると、残った駆逐艦は逃走を図って全速で宙域を離脱しようとする。
「ドズルが指揮する艦隊はこんな練度じゃねぇだろうがな…」ツァリアーノは次の戦いに
思いを馳せる。宇宙攻撃艦隊には直掩機もいるだろう。さっきのは言わば空き巣狙いのような
ものだ。
炎が上がり、そこかしこで爆発を起こしている『ニーズヘッグ』のブリッジで老艦長は
未だ生存していた。最も左脚は膝から先が無くなっており、あと数分の生命だろう、と彼は
自己診断していた。「シャア中尉、仇を取ってくれよ…」ここにはいない派手な部下に語り
かけると火柱が上がり艦長を包んだ。
「ビーム兵装…」オリヴァー・マイ技術中尉は駆逐艦Z-578号のブリッジで呆然と呟いた。
敵の「首無し」が使うビーム兵器は驚愕の一言に尽きる。我が方の次期主力MS-09が装備
する予定のビームバズーカより遥かに小さいあのビーム銃は少なくともパプア級やガガウル
級の装甲を貫徹する能力がある。ムサイ級やチベ級でさえただでは済みそうにない。
「シャア中尉は、ブラウン伍長やマイヤー伍長は果たして生還できるのだろうか…」
技術者として敗北感を味わいながらマイ中尉は彼がここにいる理由となった変わり者の士官に
思いを馳せた。
-------------------------------------------
====サイド2近海 U.C.0079 01.03 10:30
マスター・P・レイヤー少佐はテネス・A・ユング大尉が指揮するJ中隊以外の501MS戦闘団
『ホワイト・ディンゴ』40機と本来なら情報幕僚のリーフェイ大尉機を引き連れ、自機を
含めた合計42機でハンター・キラー戦術を実行していた。
既に敵一個中隊、どうやら09:00 にサイド2を襲撃した連中らしい、を捉えBキャノンを装備した
M中隊のBM-02C 8機と長距離Bライフルを装備したB中隊とG中隊のBM-02D 4機が放つ長距離
ビームでザク6機を仕留めた。残りのザクは一目散に離脱したが深追いは避けた。
彼らの任務はあくまで「連合艦隊を狙う敵MSの排除」だからだ。
M中隊の『ビッグ・アイ』BM-02Eから「10時、敵の大隊規模と思われる集団」と報告が入る。
敵は大隊規模、36機と推定、こちらはわずかだが数で勝り、ビーム兵器のアドバンテージがある。
101飛行隊は既に他のMS隊に接触したらしい、この機を逃すと101が挟撃されるかもしれない。
「仕掛けるか」レイヤーは独白するとB中隊長バニング大尉にヘルメット内通信で「仕掛ける
つもりだが、大尉はどう思う」と意見具申するよう促す。「コイツらを見逃せば101と艦隊が
危ない。やるべきでしょう」バニングはレイヤーの判断に同意した。
団きってのベテラン士官の同意を得てレイヤーは戦闘団全機に「眼前の敵に仕掛ける。ビーム兵装
の優位を活かし有効射程に入り次第全力射だ。ジオンMSはこちらより素早いと思え。
ドッグファイトに付き合っちゃならんぞ」と命令した。
M中隊長、マクシミリアン・バーガー大尉(バニングより先任だが、ベテランに気を使って自分の
中隊をM中隊と名付けた)が、「虐殺者どもを叩きのめしてやりましょうぜ!まだコロニーは無事
ですけど」と答える。501各機から忍び笑いが漏れる。
付き合いの長いレイヤーには彼の言動の半ばは士気を上げる演技なのを知っている。
情報幕僚レオン・リーフェイ大尉は「敵は宇宙攻撃軍の教官連中のようです」とジャブロー直属の
情報将校らしいことを言った。
「そりゃ精鋭だな。締めて掛かるぞ」レイヤーは全機に警告を発する。
この距離だと、敵の中に緑色ではない「色付き」がいるのが分かる。
敵もこちらに気がついたようで転進して向かってきた。
『ビッグ・アイ』4機とリンクしたBM-02CとBM-02D合計12機が長距離精密射撃を行う。
他の機体も同時にビームライフルを発射した。38本のビームが前方の敵MS大隊に伸びる。
こちらを探知してすぐに回避機動を取っていた敵MSのうち、6機を撃墜し、4機が何らかの
損傷を被ったことを『ビッグ・アイ』小隊は確認した。
「もう一斉射で『目玉』は下がって『壁』に隠れろ。M中隊は援護、残りは空戦機動を取りつつ
敵との距離を詰める」とレイヤーが指示を出す。
次の射撃では手負いの4機を仕留めた。さらに4機が損傷する。残りは26機。ジオンはMSがビーム
兵器を使う想定はしていなかったようで敵戦力の1/3弱を一方的に撃墜できた。
「
『ヨルムンガンド』と『ヘイズルーン』二個中隊からなる「第一特別強襲大隊
中佐は狼狽えた声を出す部下を叱責し、即座に指令を発した。
「全機、シールド切り離し!ビーム相手には無用の長物。軽量化するのだ」
MS-06全機が右肩や左肩、中には左腕に装着したシールドを爆発ボルトで切り離す。
「損傷機は合流地点に急げ!手負いでは戦えぬ相手だ」4機はしぶしぶと言った様子で転進する。
「ガトー!貴様らのR型を先鋒とする。前方の首無し共を突破し、『大砲付き』を叩け」
「承った!」アナベル・ガトー中尉、ケリィ・レズナー中尉、カリウス・オットー伍長が駆る
3機の高機動型ザク:MS-06R 3機はスラスターに加え脚のブースターにも点火して突撃する。
「カークス!対鑑ライフルで狙撃し、ガトーらを援護せよ。」「はっ!」頭部を改造した
MS-05 6機がASR-78ライフルを抱えて近くの残骸に位置取る。
「よいか、無理はするな。狙撃手の基本通りやればよい」「承知しております」カークス中尉と
その中隊員達は「狙撃型ザク」が機動性に欠ける機体なのを知っている。
セオリー通り一発ごとに狙撃地点を変える必要がある。
護衛のMS-06C 3機は本隊に置いて行った。
「残余は全機我に続け!彼奴らを叩けねば対艦装備のA集団が危ういと思え!」「「応!!」」
「先鋒を援護する、ミサイルを持つ者は時限信管5秒で発射せよ」B集団は連邦のBM-01なる
コピーMSを仮想敵としている為、ミサイルランチャーには閃光/煙幕弾頭を装填していた。
7機が両脚に装備した3連ミサイルランチャーを放ち、その5秒後、閃光と煙幕が発生する。
17機のMS-06Cはスラスターを全開にし、先行するガトー達を追った。
「レオンの言った通り、こいつら腕利きだぞ」レイヤーは前方の閃光と煙、それを利用して
巧みな回避機動を取りながらこちらに近づく20機近いMS-06の群れを見ると、501各機に
これ以上接近せず、敵を包囲しながら射撃する『鳥籠陣形』を命じた。
長距離射撃隊のバーガーには「我々が突破されたら一目散に逃げろ。キャノンとロングライフル
は捨てて構わん」と命じておいた。「は!M中隊一目散に逃げます」と軽口で応答するバーガー。
敵集団先頭の3機、特に青いのは動きが速い。「新型機か…」レイヤーは唾を飲み込むと
傍らのレオン大尉機にあの3機の機動を記録するよう命じた。
最初に敵と接触したのはB中隊だった。バニングは飛んでくる長距離砲の砲弾をシールドで
受けながら、ビームを易易と回避する敵機は余程の技量の持ち主、と考えた。
「キサマら、団長の言う通り白兵は厳禁だ。
激を飛ばす。モンシアが「ひえぇ」とおどけた声を出した。
長距離射撃隊に抽出した第4小隊を除いたB中隊12機は脚部スラスターを逆噴射し、迫りくる
「新型ザク」3機から距離を取ろうとする。だが、新型のスラスター推力は凄まじく、たちまち
ベイトが指揮する第2小隊に迫る。
「取った!!」ガトーは裂帛の気合と共にマシンガンを放つ、弾幕は「首無し」1機に直撃、
撃墜、と思った次の瞬間、彼はビーム兵器より驚くべきものを見ることとなった。
敵機は無事であった。
「F〇〇〇!!」アルファ・A・ベイトは悪態を付くと、自分に当てた「青いの」にビームを放つ、
敵機は軽々と(と彼には見えた)ビームを回避し、再び彼にマシンガンを放つ。
ベイトは再び4文字言葉を叫んだ。
「どーすんだよ!
と、ベイトは怒鳴りながら「距離を取れ!チャンバラはヤバいぞ!」と取り敢えずの指示を出す。
「また、耐えた。だと…」ガトーは敵のタフネスに背筋が凍る思いだった。
こちらは一発でも貰えばお終いなのに、敵は悠々とザク・マシンガンの直撃に耐えている。
理不尽であろう。「こうなれば白兵戦しかない。ケリィ、カリウス援護を頼む!」ヒートホークを
白熱化させながら手近な「首無し」に迫る青いザク。レズナー、カリウス機はマシンガンを乱射、
レズナーは左手でクラッカーを投げ、他の敵機の気を引く。
「うわぁ!くるなぁ!!」悲鳴と共にコックピットハッチにヒートホークがめり込み、パイロット
を失ったベムはスラスターを吹かしたまま明後日の方向に飛んでいった。
「ジィィムッッ!」ベイトは初めて持った部下の死に絶叫した。「クソが!!売女のガキが!!」
と喚きながらビームを乱射するベイト。普段の皮肉屋で冷静な彼はどこかに行ってしまった。
レズナーのMS-06Rは相対速度を利用して「首無し」の右肩を破壊、既に狙撃で左腕を失っていた
敵機の攻撃力を奪った。
カリウス機は敵の銃を狙い撃つ曲芸を見せる。ガトーは目前の敵を放置し、「大砲付き」を叩く
ため前進した。
Eパックを使い果たし、「青いの」を見送るベイトにはザクの後ろ姿にベムの中指を立てること
しかできなかった。
第2小隊を「軽くあしらった」新型3機にバニングは戦慄した。「青いの」以外の2機も尋常な
腕前ではない。
「中隊全機、Bライフル以外の武装も総動員だ!山刀も使っていい、なんとか凌げ!」
既に敵機撃墜ではなく、M中隊が退避する時間を稼ぐことに方針転換したバニングであった。
敵機は右手にビーム銃、左手に突撃銃を持って乱射している。ビームは勿論のこと、銃弾を
受けてもタダでは済むまい、ガトーは再び世の理不尽を感じながら敵編隊8機に迫った。
ヒートホークは先程の一撃で刃がボロボロになり、カリウス機のを貸してもらっている。
爆薬を装甲に使う、というのは士官学校で習ったが、その時は「使い捨て装甲とは!」と
物量を誇る(しかない)連邦を笑いものにしたが、実際に使われると侮れる物ではなかった。
「このような技術と物量を誇る敵を相手取っているのでしょうか…」カリウスの気弱な呟きに
「今更だぞ!」と怒号を発するレズナー。ガトーは「言うな、ケリィ。私も今同じことを
考えていた」とレズナーを窘めた。「だが、もう戦は始まっている。この上はなんとしても
生還し、戦訓を味方に伝えるより他に道はない」
ガトーは右手にヒートホーク、左手にマシンガンを持たせ、敵に肉薄した。
「!!!」カークス軍曹機が「青いの」にコクピットハッチを割られ、軍曹は即死した。
「カークス!」驚きの声を上げるアレン准尉機に2機が肉薄し、ゼロ距離射撃でコックピット
周辺に10数発の直撃弾を受け、ベムの腹に大穴が空いた。
「チッ!!」バニングは動ぜす、舌打ちだけすると、青いザクに射撃を放つ。
見せ球のビームを回避した所を左手のYS-77で100mm弾幕を張り、今度こそは手応えがあった。
「抜かった!!」ガトーは左肩を敵の銃弾に貫かれ反射的に叫んだ。必殺のビームをフェイント
に使うとは大した手練だ。「ガトー!!」「中尉!!」列機に大事無い、というポーズを取り
ガトーは「後に続く本隊に血路を開いた。我らは合流ポイントに転進する」と離脱を宣言した。
「たった3機を相手にBM-02が3機撃墜、2機が戦闘不能だと…」レイヤーはB中隊からの報告に
一時呆然とした。が、次の瞬間自分を取り戻し、「『目玉』は母艦に帰還、先程の戦闘詳報を
一刻も早く艦隊司令部に提出せよ!」「M中隊はあと5000下がれ。02Gに乗ってる『盾持ち』
は悪いが、キャノンとスナイパーの盾になってくれ」「G中隊は自分達2機と一緒に敵を迎撃だ」
G中隊長ギルダー大尉が「増援は望めんでしょうな」と言うと、レイヤーは「腕利き3機は
下がった。残りはアレほど強くはない、と信じたいな」と指揮官としては気弱なことを言った。
42:26のスコアが現在は28(本部+G中隊10機、M中隊12機、B中隊6機):23の僅差だ。
まだ、逆転されてはいないが、無策では逆転負けするだろう。だが、策がない、訳ではない。
「頼むぜ、マックス」レイヤーは長距離射撃隊指揮官、バーガー大尉の愛称を呟いた。
伏せたカードがハマれば敵を撃退できるだろう。
とうとう開戦です。初っ端から幾多の戦略的、技術的奇襲を受けたジオンは散々な目に会いますが、ネームド・エースキャラの尋常でない強さでレイヤー率いる501戦闘団は危機に瀕します。
ネームドなのにいきなり死んでしまったディック・アレンとラバン・カークスは相手が悪かった、と思ってもらうしか無いです。ベイトがかなりキレてますが、『0083』では一年戦争を戦い抜いたベテランだったので、初戦だとこんな感じでは、と思います。
ガトー達が06Rに乗ってるのは『THE ORIGIN』がルウムで06Rに乗ってたので乗せようと思いました。シャハトさんが頑張った成果だと思って下さい。
次回は「赤い彗星」を筆頭にネームドキャラ総進撃回です。お楽しみに。