リストラおじさん、ゴップになる   作:寒原光雪

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ガンダム・センチュリー

私が途方にくれ、「どうしたらいいんだ…」と呟いていたら近くに立っていた士官、

たしかマエバラといった、が私に話かけてきた。

「閣下、なにか問題がございましたか?」マエバラ少佐は私の副官の一人で出身は

ニホンのカマクラ、海軍の原潜乗りから宇宙軍の拡大で移籍してきた、と記憶している。

 

「いや、今後のことをね…、やらなければやらないことが多すぎるくらいあるのに

私にできることはあまりに少ない、と思ってね」彼には意味が分からないだろうが、

この時の私は誰かに愚痴りたい気分だった。

 

マエバラ少佐はその言葉に何かを気がついたような表情を一瞬見せるとやたら

爽やかな笑顔でこう言った。

「閣下、ランチはまだでしたね? 私的な集まりなんですが、私達のグループの

ランチミーティングにご来臨願えないでしょうか?」

 

私の記憶には彼がミノフスキー粒子環境下での戦術を私的に研究するサークルの

一員、とある。もしかすると彼らならMS開発に賛同してくれるかもしれない、

藁にも縋る気持ちで私は彼について行き、ある会議室に入っていった。

 

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会議室の中には20人を越える士官がランチボックスを前に活発に議論を戦わせていた。

部屋の奥に座る割と悪人面の将官には見覚えがあった。

ジャン・エルラン、情報部次長の少将、出身はたしかフランスのマルセイユだったか。

 

エルランは私の顔を見ると悪人面で満面の笑みを浮かべ(正直怖い)こう言った。

「ゴップ閣下も我々にご協力いただけるのですか?」と。

 

私は彼の威勢に押されるような感じで「うん、マエバラ君に誘われてね。たしか君たちは

新戦術を研究してるんだったね?」と答えた。

するとエルランは身を乗り出して「そうなのです!我々はミノフスキー環境下でいかに

戦うかを日夜研究し、既にRIM-075イグラなど具体的な成果も挙げているのです!!」と

口角泡を飛ばす勢いで語り始めた。

RIM-075ってたしか現行の近接防衛ミサイルの5倍くらいするバカ高いミサイルだったよね、

とか思っているとマエバラ少佐が直立不動の姿勢を取りこう言った。

「エルラン閣下、ゴップ閣下もまた転生者であります」と。

 

私はギョッとした顔でマエバラの顔を見ると彼は私を横目に見ながら少し笑った。

エルランは少し驚いたようだったが、何故か安心したような顔をしながら

「いやぁ、そうでしたか。前世はどちらのご出身で? 私の前世は日本人で佐藤剛という

名前でした」

エルランは佐藤さんというらしい。THE ORIGIN本編ではレビル将軍の旗艦の位置を

マ・クベに教え核攻撃前に旗艦を逃げ出そうとして最後泣き喚いたエルランが。

 

エルランは少し遠い目をするとさらに続けた「前世と言いましたが、実はジャン・エルランの

人生はこれで2回目なのですよ。2009年の4月に事故で死にましてこの世界に生まれ変わり

前世の記憶を取り戻したのが16歳、士官学校入学式の前夜でした。士官学校では当時学会で

無視されていたミノフスキー博士の理論を前提としたデータリンク、UVAを中心とした

従来の戦術を刷新する新戦術の研究に没頭し『旧世紀の戦術を研究する変わり者』と

言われてきました。士官学校卒業後はとにかく出世し、軍を動かしジオンの虐殺を

阻止しようとしましたが果たせずほとんど何の成果もなく0079 の1月3日を迎えて

しまいました。3度の人生でも最悪の日でしたよ。数十億の人々が死んでいくのを

指をくわえて見ていなくてはならないのですから。

しかも、こうなる事を知りながらです。コロニー落下後は志願して災害派遣の現場に

立ち一人でも多くの人名を救おうとしましたが、無力感だけが募る毎日でした。

 

その後は地球各地を転戦して中将に昇進し、0079 11月のオデッサ作戦に参戦しました。

この作戦で以前から接触を持っていたマ・クベに偽情報を流し始めました。それ以前は

確度の高い情報を流す私をマ・クベは信用し、連絡役まで潜入させてきました。

私は二隻用意されていたニセの旗艦、モルトケとティルピッツのうち本物の旗艦はティルピッツ

だという偽情報を流したのです。核攻撃でレビル将軍の旗艦を仕留めたと思ったマ・クベは

なぜか指揮系統が無事な我が軍の物量に圧倒されました。本物のレビル将軍の旗艦バターンの

艦橋で私が心の中で凱歌を挙げていた(私がマ・クベに偽情報を流していたのは軍にも秘密

でした)その時です、閃光が走り私の意識は掻き消えました。おそらくはギレンがマ・クベ

に命じていた弾道ミサイルによる全面核攻撃が実施されたのでしょう。

 

気がつくとまた、私はジャン・エルランとして士官学校入学式前夜に戻っていました。

1回目のエルランの記憶を持ったままです。

今度は同志を集めようと前世の記憶を持つ者、転生者を探しました。

士官学校時代にも日頃の言動やリポートなどから同期や後輩に前世の記憶を持つ者が数人

見つかり彼らと一年戦争、とりわけ一週間戦争の、惨禍から人類を救うグループを結成したのです。

 

進路は転生者を探すのに役立つだろう情報畑を志望し、最初の任官から今日まで情報将校として

軍務の傍ら同志となる転生者を探しておりました。そうして軍内外の転生者を集め、組織化

したのが我々『ガンダム・センチュリー』なのです!」最後の方は涙ながらに語るエルランこと

佐藤さん、私は彼の壮絶なループ体験に圧倒されていた。

 

なんか妻と娘夫婦をジャブローに引っ越させた私グッジョブと思ったことが恥ずかしい。

家族を救えそうだからとりあえずよし、とした私に対し彼は一年戦争の犠牲者全てを救おうと

している。しかも、ついさっき前世を思い出した私と違い彼は30年以上に渡る人生を2回も

体験しているのだ。

なんというか佐藤さん(エルラン)には非常に強い信念から来る迫力というか気迫というもの

が感じられる。私のように破局が来るのを知りながら自分の無力さに途方に暮れた者の前に

佐藤さん(エルラン)が「一緒に人類を救おう!」と現れたらそりゃ喜んで賛同する、

今の私のように。

 

そう思ったものだから佐藤さん(エルラン)から「閣下には是非我々ガンダム・センチュリー

のリーダーになって欲しいのです!」と言われぽかんとしてしまった。

いやいや、私はただのサラリーマンだよ。ついさっきゴップになったばっかりだよ。

それがいきなり連邦軍内の秘密結社のリーダーとか、ないでしょう、それは。

 

まぁ、そのような内容をモゴモゴと話してると佐藤さん(エルラン)がサムズアップしながら

「ゴップ閣下は大将にして地球連邦軍統合参謀本部議長であらせられます。軍内部の派閥や

政府や議会、財界との交渉に閣下の肩書と顔の広さは切り札になります!」と言った。

元々悪人顔の彼が笑いながらそう言うとなんかクーデーターの神輿に祭り上げられたような

気になる。まぁ、それに近いことやらないと破局は防げないんだろうけど。

 

「そういうことなら、まぁ、名目上のリーダー、ミコシってことで」と私が応じると会議室にいる

全員の拍手と歓声があがった。隣に座るマエバラ少佐の解説によると、ぶっちゃけ彼ら

エルラン派(ガンダム・センチュリー)は金のかかる新兵器や艦艇の建造を声高に主張する

超タカ派の扱いを受けているのだという。そこに保守派の首魁の一人である(ゴップ)

派閥ごと吸収する形で傘下に収める形になるのだという。これで彼らの計画が具体化できるの

だという。

 

彼の解説を聞いた後、私は自分が派閥の長でもあることを思い出した。主に兵站畑の士官達が

集まった派閥だけにRIM-075など各種新兵器の採用をゴリ押ししたエルラン派を親の仇のように

嫌っている者もいる。ランチミーティングが終わったら午後の予定を全部キャンセルして

派閥の主だった者と面談しなければならない、サシで。

 

そんなことを考えていると、一人の士官が起立して「ゴップ閣下にお見せしたい物があります」

と言うと手元のPC(宇宙世紀でもPCというらしい)を操作してプレゼンを始めた。

彼の顔には見覚えがある。あれはウッディ大尉だ。




もう一人の主人公ともいえる元佐藤剛、ジャン・エルランの登場です。
ゴップもですが、ファーストネームすら設定されてない彼らの設定を考えるのは
楽しかったです。

ラストに登場したウッディ大尉は何をゴップにプレゼンするのでしょうか?
というところで次回に続きます。
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