リストラおじさん、ゴップになる   作:寒原光雪

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人類初の宇宙戦争を経験し、連邦、ジオン共に新しい軍備を用意し始めます。
要するに楽しい楽しい新メカ登場回です。


インターバル

緒戦のサイド防衛戦では艦隊戦に勝利し、一度はジオンの攻勢を退けることができた。

月面都市防衛も新兵器「システム」の活躍により、師団規模の月面都市攻略軍を撃退した。

だが、その色々と課題が発見されたのも事実だ。我々はその善後策について話す必要がある。

 

あ、ゴップです。今、『ガンダム・センチュリー』のミーティング中です。事後処理だの

なんだので忙しいのでランチ・ミーティングが復活です。

今日のランチボックスはいなりズシです。いなりはお揚げが甘いほうが美味しいんだよね。

 

「まずは私から報告が、ジオンが戦時条約の交渉に応じるそうだ。中立を宣言している月面都市の

どこかでの交渉となるな。正直なところ南極にジオンを降下させたくないのでね」私が戦時条約の

交渉が始まる、と同志達に報告した。

 

次に報告したのはエルラン中将で、「アサクラ中佐とガラハウ中尉の自白動画の影響でサイド3

を除く各サイド、グラナダを除く月面都市で連邦政府の支持率が非常に高くなっています。

やはり、生命が脅かされると人は団結するのでしょう。その反面、サイド3出身者に対する憎悪

犯罪が増加の傾向にあります。特に毒ガス攻撃が計画されていたサイド2では顕著であり、なにか

手を打ちませんと」とジオン系市民の処遇に憂慮しているようだ。

 

「戦時条約で双方の国民引き渡し条項を盛り込んではどうか?」という意見もあったが、交渉中に

ジオン国民が虐殺される事態となれば、ジオンを利することになる。人道上の見地からも見過ごせ

ない問題だ。直ちに輸送船団を編成し、取り敢えずサイド7を臨時の避難所とすることになった。

ジオンは「国民の強制収容」だと言い立てるだろうがね。亡命者が出て、何か情報が得られれば

万々歳だな。

 

サイド5のアズナブル夫妻はシュウが口を利いてくれて昨年末にサイド7に避難して貰っていた。

彼らは1バンチコロニーの市街でステーキハウスを開店したらしい。

シャアとは他人を装うそうで「アズレ」と名乗るんだそうだ。

そりゃ、今のとこサイド7は軍の街だからねぇ。

 

次はオシント(オープン・ソース・インテリジェンス:敵国の報道、公式発表、出版物など

合法的に入手できる資料を分析し、突き合わせて情報を入手する手法)担当官からジオンの

国内情勢について報告があった。

「総帥府はサイド2の会戦に参加した兵を集め叙勲式を大々的に行っています。あの会戦では

宇宙攻撃軍のみならず突撃機動軍からもMS2個大隊規模の援軍がいたようですね。敵はBM-02

を非常に意識し、BM-02を撃墜した者を艦艇を撃沈した者より厚遇しているようです。

また、シャア・アズナブル少佐のみならず彼の列機に搭乗した2人の少年兵がメディアに

『若き英雄達』と喧伝され十代の志願者が有意に増加しています。学徒動員を行うまでもなく、

軍の欠員は埋まるものと情報部1課では想推定しております」

「要するに大量の未熟な兵が前線に投入される訳ですな。しかし、何度か生き残った者の

中からニュータイプが発生する可能性があります」エルランは未熟な相手こそ情けは無用、と

いう心構えがいると言った。

 

「BM-02といえば、緒戦で露呈したシステムのバグですが…」機動兵器担当のマリオ・レナート

が緒戦で大戦果を上げたベムの欠陥とその対策について発表した。

「『V作戦R&Dセンター』の協力でOSのアップデートを実施、現在保有機の78%がアップデート

されています。スウォーム・ドローンの衝突回避アルゴリズムを応用し、短時間での改良に成功

しました。これで頭部を破壊されても機体がフリーズすることは無くなります。同時にオート機動

モーションの新バージョンは進捗6割といったところですね。501と604、その他部隊の戦闘

データの解析から始めねばなりませんから」

 

「ハードの面では爆発反応装甲『コネクト7』がザクマシンガンの散弾で爆発し、装甲を喪失する

事例が相次いだことからハービック社が開発した新型ERA『ベイオネット』に交換します。散弾や

60mm以下の砲弾では反応しない設定となっています。装甲としての性能も従来品の130%を達成

おります」ERAが散弾で破裂してBM-01はザクマシンガンで次々と撃破された。

BM-02はザクマシンガンの一連射には耐えたものの、集中射撃で撃墜された機体やシャアの持つ

新型マシンガンの犠牲になった機体が10機以上も出たのだ。

 

特殊仕様のザクの性能は想定以上で、RX-78、RGM-79のスペックは見直しを余儀なくされた。

部隊は一日も早い投入を求めているが、幸い機体各部は部位ごとにブロック構造になっており、

パーツのアップデートによる性能向上は容易だ。

まずはGMを投入して、その戦訓でさらにガンダムを改良する手法を取るのだという。

 

「また、GW-01の損害が想定より多かった件ですが、スラスター部の可動部をIフィールド

モーターに変更することである程度の対策にはなります。マシュー・ペリー級の砲塔を

駆動するモーターを流用します。RGM-79や後継機の生産に影響はありません」GWは緒戦で

SFSとして大活躍したが、所詮は従来型宇宙機の強化版なのでMSとドッグファイトは難しい。

後継機は既に増加試作機が部隊に試験配備できそう、と聞いているが詳細は知らないんだよねぇ。

どういう機体なんだろ?

 

私の表情を見たマリオはにやり、としながらホロプロジェクターを起動した。

室内にどっかで見たような機体が浮かぶ。こ、これは…「なんで『GW』なんて型番にしたのか

分かったよ」と苦笑いを浮かべる私。そこには『VF-1S ストライクバルキリー』そのガウォーク

モードに酷似した機体が映っていた。手足の生えた飛行機が2個ロケットエンジンを背負って

いる、というあのスタイルだ。

 

「元ネタのVF-1バルキリーはファイターモードでも14m余りの小型機ですが、このGW-02

『ガウォーク』は脚部を後方に伸ばすと20mに達する大きさです。MSを運搬するにはこの程度の

大きさが必要でした」部屋にはVF-1とGW-02の対比図が立体画像として投影されている。

「なお、構造の単純化の為、GW-02は飛行機や人型には変形不可能です。あくまでこれは

『モビルアーマー』ですから。ただし、主翼部を揚力を生む大気圏仕様へ交換すれば飛行は

可能です。速度は遷音速までですが」飛べるのか!大気圏で戦う想定はしていないが、飛行

できるのであれば取りうる戦術の幅が広がるなぁ。空軍が何機か寄越せ、と言ってきそうだけど。

 

「元ネタで透明キャノピーだった部分は勿論装甲化され、モノアイを始めとするセンサーアレイ

となっています。実際のコックピットはその下にあります。乗降ハッチは機首側面になります。

また機首は元ネタ同様脱出用小型機を兼ねています」

そういやモノアイが装甲キャノピーに光っている。これだけでだいぶMAっぽくなってる。

 

「武装はご覧のように熱核ロケットエンジン前方に連装メガ粒子砲を、ビーム撹乱幕対策に

高速ロケットランチャーを4門備えています。高速ロケットは誘導兵器ではなく、直接照準で

敵機に劣化ウラン弾頭を撃ち込む兵器です。YS77アサルトライフルを大幅に上回る貫徹力を誇る

新兵器であります」まぁ、ビームが効かない()()がジオンにはいるものねぇ。対策は必要だろう。

「さらに腕部のマニュピレーターは3本指ですが、YS77やGM用マシンガンも装備可能です。

主翼部ハードポイントとして、各種ミサイル、ロケット弾、爆弾を搭載可能であります」

火力は正に「汎用支援火器(General purpose Weapon)」という訳だな。

 

次は「新型モビルポッド RG-01『リ・ガード』をお見せします」「リガードってあの、歩くより

キツいって言われたアレのこと?」「ええ、そのリガードが元ネタです。ですが、こちらのパイ

ロットは2m弱の人類な訳ですから色々小型しており、全高12mの小型機になっています」

部屋には確かにあのマクロスの雑魚メカ、リガードに似てる機体が映し出された、がなんか違う。

視線を下ろすと足の先が3本指のマニュピレーターになっている。足じゃなくて腕が生えてる感じ

だ、正直言ってキモい…

 

「このRG-01は歴とした核動力機です。出力融548kwの合炉を搭載し、機体側面には可動式

スラスターを備えます。推力は4,200kgであります。これで全備重量40トン代前半の機体を

駆動します。2本の脚部はAMBAC動作が可能ですが、操作は自動化されており、MS操縦適正の

無い者も、作業ポッドの操縦経験があれば動かせるでしょう。要するにボールに足が生えたモノ、

とお考えください」確かにボールは現在無人機として運用されているが、要塞戦となれば大量の

火力支援機が必要だ。

 

「武装は劇中のボールを上回るべく機体前面に180mmガンランチャーを2門備えています」

ミサイルと砲弾、両方を撃てる砲か。やはりビームは無理だよねぇ。

「対空武装として連装75m機関砲を砲塔に乗せて機体の天辺に装備します」対空ドローン ボール

の60mm機関砲はMS-06の急所に当たらないと仕留められないことが分かった。とはいえ、どこか

を損傷させることはできたので、サイズと重量面で徒に大口径砲を載せる訳にはいかない。

ちょうどいいのが75mmなんだろう。

「なお、75mm砲塔は各種ミサイルランチャーに換装が可能です。これでMSの支援機として

より高火力の直接支援が提供可能となります」これはマクロスの劇中と一緒だな。

 

ここで戦争準備の功績から准将に昇進したヘボン君が「RG-01『リ・ガード』はコロニーや月面

都市の防衛隊、所謂州兵に供与される予定で、工業基盤の薄いユーザーでも維持可能なスペックに

抑えています。調達コストもMSの6割ほど、BM-01、2機で3機のRG-01が導入可能です」とドヤ

顔でプレゼンする。スペックではだいぶ開発陣とやり合ったらしい。「戦時急造兵器ですから大層

な性能は要らないのですよ。そこのところをエンジニアは分かっていない」と私に愚痴っていた

が、当時はRG-01という型番しか知らず、こんな懐かしキモい機体になるとは思ってなかった。

 

「また、新型は全てサムソニ・シム社のIフィールド・モーターを採用していますが、RG-01は

流体パルスで駆動します。従来の生産ラインを流用できますから、各サイドや月面都市にライン

ごと供与する、といったことも可能となります」これは割と大きいメリットだな。

GMやガウォークの生産は最優先だ。その余力で生産するのにもう使わないラインが流用できる

のは大きい。

RG-01飛行試験の動画を見せながら「こうして見ると鳥のヒナのような愛嬌があるとは思いま

せんか?」と私に聞くヘボン君。彼にはコレが可愛く見えるらしい。

うん、それはないねぇ。顔から直接手の生えた妖怪に見える。

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====フォン・ブラウン市近くの月面

 

「V作戦」プロジェクトから「名指しで」外されたニナ・パープルトンは失地回復の為、同じく

プロジェクトから外されたクレナ・ハクセル部長と共に「新型ガンキャノン」のプロジェクトを

立ち上げた。「人型戦車」RCX-76はこれ以上改善の余地が無く、新規に開発する方が安上がりに

高性能機を軍に提供できる、と上を説得したのだ(クレナ部長が)。

軍からも「V作戦」の保険としてプロジェクトに承認が得られ、自社開発(プライベート・ベンチャー)のリスクを回避

できた。RGM-79の技術情報も開示されたが、「サムソニ・シム社のIフィールド・モーターを

使用しないこと」という条件を付けられてしまった。AE.は「携帯端末から宇宙戦艦まで」が売り

の総合電機メーカーなので、当然Iフィールド・モーターの試作をしており、テム・レイはそれを

当てにしてRX-78には全面的にIフィールド・モーターを採用したのだ。しかし、AE.製モーターの

開発は遅れに遅れ軍の意向もあり、サムソニ・シム社製モーターを使うことになった。

 

そうした事情から新型MS、RGC-78『ガンキャノンⅡ』には()()()モーターを使うこと、という

制限が課されたのだ。結局AE.の重電事業部はサムソニからパテントを購入し、課題を解決して

実用モーターを完成させた。

 

本日はRGC-78の稼働試験である。与圧された格納庫内の「新型ガンキャノン」は融合炉に

火が入れられ、独特のモーター音を響かせながらエアロックへ歩いていく。ここまでは

順調なようだ。

 

クレナ部長とニナは月面艇の中から試作機を観察している。間接やスラスター周辺に異常な振動は

ないか、ジャンプした後の着地時の衝撃吸収、主砲の320mm砲をバーストモードで放っても砲架

や機体各部に問題は無いか、など試験項目は多岐にわたった。

 

「いけますね、部長!」ニナは新型機の出来にご満悦の様子だ。(私を名指しで外した参謀本部、

私に「お気の毒様」と言いながら笑ってサイド7に行ったあの娘達、特にルセット!アンタ等を

この子で見返してやるんだから!)ニナは何か執念を感じさせる笑みを浮かべている。

クレナ・ハクセル部長は彼女が「V作戦」から外される原因となったテム・レイ、彼女とテムには

不倫関係の噂があった、からRX-78の自慢話、途中からテストパイロットを務める息子の自慢、

を聞いてこの新型機では太刀打ちできないだろう、と判断していた。なにせ、連邦軍の持てる

リソースの全てを注ぎ込んだ、サイドを1つ「開発センター」として建設するほどの機体なのだ。

性能は「ナナハチ」開発からから外されたエンジニア2人で拵えたガンキャノンⅡの比ではない

だろう。2人以外のスタッフは新入社員やインターンの学生であった。「V作戦」プロジェクト

は事業部総出の案件で、ニナの直接の上長の課長もサイド7に単身赴任中である。

 

(でも、廉価版のRGM-79相手なら充分勝負できる性能だわ…)クレナは開示された一部の情報

からでもRGM-79のおおよその性能を割り出していた。RGC-78は『ナナキュー』を押しのけて

主力にはなれなくとも、その支援機として導入されるだろう。ビジネスとして考えれば、量産

してもRGM-79の生産に支障が出ない、というのは大きなアドバンテージだ。

 

さらにRGC-78はBM-02用Bライフルを運用可能な機体だ。主砲の320mm砲の火力と合わせ

岩塊での戦闘、ソロモン要塞戦で活躍するはずだ。ロールアウトが間に合えば、だが。

我々の知るRX-77D 量産型ガンキャノンと似た機体はうさぎ跳びとスラスター・ジャンプを

交互に繰り返しながら月面を移動していった。

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====サイド3 ズムシティー ベイブロック

 

シャア少佐は自分の艦を与えられた。しかも、新造艦だ。

ドズル中将列席で挙行された新造艦『ファルメル』の進宙式に艦長として出席したシャアは自らが

指揮する艦を見上げ(司令部は『ワルキューレ級の重巡』と言っていたが、細部はだいぶ違う…)

と考えていた。ムサイ級やその拡大型ワルキューレ級の特徴とも言える主船体艦首のでっぱり、

大気圏突入艇が無くなり、MS格納庫となっている。艦橋のすぐ下に連絡艇がくっついているが、

大気圏突入は無理そうな形態だ。

(この形は開戦の随分前から設計されていたのだろう。で、なければここまで大掛かりな船体

の変更など間に合う訳が無い)シャアは内心、ムサイ級を与えられたらMS2機を搭載できる

コムサイを使った戦術も考えていたので、少しがっかりした。とはいえ、格納庫が広がって搭載機

が増えるのはありがたい。マイ大尉も作業場が広くなって喜ぶだろう。

 

さらに主船体後方には3連メガ粒子砲が左右に1基づつ増設され、主砲は10門となった。

機関部も少し『ワルキューレ』より大きいようだ。

 

この重巡を特徴付けるのはその艦橋のシルエットでヘルメットの左右に角が生えた様な形状を

している。(造船官は『ワルキューレより艦橋の装甲が厚い』と言っていたが、メガ粒子砲の直撃

に耐えられる程ではあるまい、気休め程度だな)とシャアは見ている。

 

進宙式が終わると、シャアは旗艦『グワラン』に赴いた。宇宙攻撃軍司令ドズル・ザビ中将直々の

話があるという。彼が司令公室の前まで来ると、センサーが働いたのか「入れ!」という胴間声が

聞こえた。

 

「シャア・アズナブル少佐、お召しにより出頭いたしました」と申告するシャア。ドズルは

「よく来た。まぁ座れ」と着席を指示した。ドズルがふんぞり返るソファーの対面に座るシャア。

 

ドズルは「貴様にわざわざ来て貰ったのは他でもない。あの『ファルメル』を使って貴様に任せ

たい任務があるのだ」とシャアの前に身を乗り出し、比較的小声で話すドズル。

「閣下の様子から察するに連邦の秘密基地を探し、これを叩く、という任務でしょうか?」と

推測を述べるシャア。ドズルはニヤリ、とし「残念だが、ハズレだ。我が軍にはあるか分からん

基地を探させて、貴様を遊ばせておく余裕はない。俺が思うに貴様ならやってやれんこともない、

と思うがな」と別な任務を与えると言う。

 

「連邦は反攻作戦としてソロモンを狙ってくるだろう。だが、先の質量弾攻撃でソロモンは大きな

被害を受けた。こちらとしてはなるべく連邦の攻略作戦を遅らせねばならん…」ドズルは深刻な顔

でシャアに宇宙攻撃軍の戦略を語る。

「通商破壊作戦ですな」シャアは即座に断言する。

「今度はアタリだ。ランバ・ラル大佐がサイド間の航路を襲撃する通商破壊作戦を指揮する。

貴様は司令部直属の独立部隊として、通商破壊部隊の『助っ人』をしてくれ」

 

「『助っ人』とは、船団の護衛戦力を叩け、という意味でしょうか。独立部隊とはラル大佐の指揮

は受けない、と?」

「そうだ。ランバ・ラルは貴様に要請できるが『命令』はできん。ヤツも了承済みの話だ」

「自分の好きにやらせて貰えるのは有り難くありますが、例えば敵のハンター・キラー部隊を探し

出し先に叩く、という戦術は許可して頂けるのでしょうか?」

 

「スマンが、それは許可できん。敵が『ジオンの赤い彗星』を狩る為に艦隊を襲撃したのと同程度

の戦力、50機以上のMSを繰り出してくるかもしれん。貴様はそれでも生き残るかもしれんが、

貴様の部下は全滅だろうな。重ねて言うが、今の我が軍にはそんな余裕は無い」

ドズルはシャアの言を退けた。

既に兄、ギレン総帥から「連邦はシャア少佐に非常に高い評価を下している。上手く使え」

と言われていた。兄貴がこう言った時は「大事に使え」という意味なのをドズルは知っている。

 

「襲撃部隊が救援を求めたら、それに応えるのが任務ということですか。勝ち目が無い時は

見捨てる判断は許されるのでしょうか。罠と知りつつ部下を死地に送るのは忍びないのです」と

しれっと味方を見捨てる許可を、人情家として知られるドズルに求めるシャアに内心では呆れなが

らも「許す。味方を囮に使う、という敵の計略につきあう必要は無い」ドズルは腕を組み、目を

閉じながら許可を出した。遺憾ではあるが、という思いを込めての許可である。

 

 

シャアが『ファルメル』に戻ると、格納庫で技術本部長シャハト少将がマイ技術大尉と共に

シャアを出迎えた。

シャハトはマイ同様パイロット用のスリムなノーマルスーツを着用している。

「わざわざの訪問、恐縮であります」と敬礼するシャア。

シャハトは笑いながら、「なに、ノーマルスーツは着慣れております。それより受勲と昇進、

おめでとうございます、シャア少佐。やはり、貴方様こそ宇宙市民(スペースノイド)の『仰ぎ見る星』!」と

大仰にシャアのジオン十字章授与と2階級特進を喜んでいる。

マイ大尉は(本部長、MS-06Sを引き渡した時より嬉しそうだ。自分が心血を注いだ機体が結果を

出したのが嬉しいんだろうな)と普段は謹厳実直な上司の意外な一面を見た思いだった。

本部長公室でのシャアとのやり取りを知らないが故の感想だったが。

 

「実は『ファルメル隊』を率いられる少佐に試験をお願いしたい機体が複数ございまして持参

いたしました。少佐ご自身で搭乗されなくとも、麾下の搭乗員を搭乗させ、簡単なレポートを

技術本部に提出して頂くだけで結構です」と試作機を再び献上しようというシャハト。

シャアは「ほぅ。しかし、試作機ではブラウンとマイヤー2人だけならともかく、この格納庫に

並んでいる全機をテストするとなると兵站上の問題がありますな。交換部品などは技術本部が提供

していただけるのでしょうか?」ニヤリとしながら只では引き受けんぞ、という態度を取った。

 

シャハトは「ご心配にはおよびません。これらの機体は制式化が内定しておりまして、言わば初期

生産型、というべき物です。貴隊には初期型に有りがちなトラブルを報告して頂きたいのです」

とセールスマンのような口調でファルメルの格納庫に居並ぶ各種のザク、MS-06バリエーションの

説明を始めた。

 

最初に居並んだザクの中でも現行機MS-06Cに一番近い形態の機体を指差し、

「これが次期主力機MS-06Fであります。核兵器が戦時条約で禁止されることを見越して複合装甲

から鉛を取り除き、装甲強度を増しております」確かに従来型のザクに比べ胸部が膨らんでおり、

装甲が増しているようだった。

 

「さらに四肢の装甲を削減することで自重を49トンと大幅な軽量化に成功しました」手足は

AMBACで動かしているので被弾率は少ないだろう。それにビームを被弾すればどのみち同じだ。

「スラスター推力を合計53.4トンに強化、姿勢制御スラスターも増設し、機動性、運動性共に

従来機を大幅に上回っているのです。この06F型はC型の改良機というより少佐のS型の簡易量産型

といえる機体なのであります!」

シャハトは新型機MS-06Fの高性能を力説した。確かに機体のあちこちにC型には無いバーニアが

見えている。

 

シャアは「ブラウン、マイヤー、貴様らこのF型に乗ってみろ。その後、シャハト閣下に要領よく

所見を述べるように」と命じた。格納庫に並ぶMS-06Fへと飛んでいく2人。ファルメルの格納庫

にはMS-06Fが9機、1個中隊分用意されていた。

 

2機のMS-06Fは色々な機動を試しながら、サイド3近海を遊弋する戦艦グワバンを標的に見立て

襲撃行動を取った。

(ふむ、ヅダよりも小回りが利くのは確かだな。あの2人の腕が上がったのもあるだろうが…)

細かく軌道を変更しながらグワバンに迫る2機のザクを見ながら機体の評価を行うシャア。

「閣下、06Fはかなり良い機体ですな。ただ、かなり推力が上がった分、推進材切れで

戦闘時間は短くなるのではありませんかな?」と新型機の問題点を指摘した。

 

シャハトは(それはいい質問ですね)という顔になり、「実はその対策も取ってあるのです。

切り離し可能な増加推進材タンクを開発しました」とドヤ顔で格納庫の片隅を指差す。

そこには確かにタンクらしき物体がラックに載せられていた。

「ほぉ、切り離し可能なタンクですか。言われてみれば何故従来機に用意されていなかった

のか、不思議ですな」とシャア。マイ技術中尉が「それは私がご説明します」と説明を始めた。

 

「実は06開発と時を同じくして切り離し可能な推進材タンクは開発されていたのです。

特殊装備に換装することで6基のタンクを装備し、6倍の航続距離を実現するはずでした…」

「結局、開発に失敗したのだな」とシャア、マイは「はい、推進材の消費により、6基あるタンク

の重量が不均等となり、異常振動を起こして取り付け部が破損、爆発事故を起こしました…」

彼の大学時代の恩師が関わっていた計画の失敗を目を伏せて語るマイ。

 

シャハトは「あれは痛ましい事故であった…」と表面は痛ましい表情となるが、内心では(あれが

失敗したのは僥倖であった)と思っている。当時、開発部の部長だった彼も試験に立ち会っていた

が、MS-06Aの段階で増加タンクが実用化されぬようジオニックや実戦部隊に働きかけ、タンクを

6本という要求仕様とし、重量計算が複雑となるよう仕向けたのだ。この男、自分がのし上がる為

には殉職者を出そうと物ともしないメンタルの持ち主である。前回の生で伊達に10代からジオン

残党として連邦軍と殺し合いを続けてきたのはではなかった。

 

「で、今回は事故防止の措置は取られているのでしょうな? 部下が片端から爆死しては戦争になり

ません」と半笑いでシャアが質問する。オリヴァー・マイは(この人のこういうとこだけは付いて

行けないなぁ)と思いながら「タンクを最大2基に減らし、重量の偏りが少ない背部に縦に並べる

形で取付部を設けています。タンク形状も細長いものからコンパクトな形状に変更しています」

確かに格納庫に置かれたタンクは、我々が知る『プロペラントタンク』の細長い形状に比べずん

ぐりとした太くて短い円筒状である。機体への取付部付近は細くなっていた。

「それでもタンク1基で75%、2基で150%航続距離が増加します」とマイ。

シャハトは「さらに航続距離を増す手立てが計画されており、現在開発中であります」とシャアに

またもセールスマンの口調で今後の開発計画を明かす。

 

シャアは(技術本部の管轄になる程度の小型艇を作ってMSを載せるのだろう)と推理した。

融合炉を積んだ()()は全て艦政本部の管轄となり、シャハト達技術本部には建造できない。

化学燃料ロケットを使う小型艇だろうと推測できた。

(だが、その程度の代物では連邦の新型宇宙艇には敵うまい)とも思っている。

彼とて士官学校同期からの情報は入ってくる。「連邦の新型突撃艇」はメガ粒子砲を発射したと

いう。核動力で動いている証拠だ。まだこの時点ではシャアはギニアス・サハリン技術大佐を中心

に開発されている「モビル・アーマー」の存在を知らない。シャハトも「主君」が直接ギニアスと

接触を持たれると困ったことになるのでかの新兵器については秘密にしていた。

ギニアスも秘密兵器のテスト飛行をソロモン直近の宙域で行うほど迂闊ではなかったので、未だ

MAの存在はシャアには露見していない。

 

そうこうするうちに2機のMS-06Fはグワバンに帰還した。

ブラウンは機体から降下すると「この新型は凄いですよ!」とヘルメット内通話で大声を出し、

シャアに「曹長、私は『要領よく』と言ったはずだが」と叱られた。ブラウンはシュンとなるも、

「MS-06Fの特長はなんと言っても機体の軽さだと、自分は考えます。挙動が一々EMS-04より

数段軽く感じました」軽量化の成果を語る。

マイヤーは「軽いのはもちろん、自分は各部間接の強度と四肢の力強さを感じました。EMS-04で

あそこまで振り回すと間接のオーバーホールが必要となるはずです」と新型機の力強さとそれを

支える関節部の強度を語った。

 

シャハトは「素晴らしい。2人共明日からでも試験部で勤務できますな」とシャア直属といえる

2人を褒め称えた。シャアはにやりとして「そうだ。貴様らの飛行を見ていて私もそう思った。

多少はMSというものが分かってきたではないか」と合格点を与えた。

マイは「君達の飛行はデータを取ったが、後でいくつか質問に答えてくれないか?」と

聞き取り調査を依頼する。2人はシャアの方を見て、上官が頷くと普段世話になっている大尉に

「はい!自分達でお役に立つことがあれば」と快諾した。

 

シャハトは「次はあの機体、MS-06R1A 『リック・ザク』を試乗して頂きたい。少数生産に

終わったMS-06Rの改良型、というよりMS-06Fを高機動タイプに仕立てた機体であります」と

格納庫に3機が用意されている、高機動型ザクを指差した。『リック』とは「高機動型」と

いう意味であろうか。

 

「3機ある、ということは私にも乗れ、ということですな?」とシャアは本部長に不敵な笑みを

向ける。「この機体ならあるいは少佐のお気に召すかと愚行いたしました」とシャハトは微笑み

ながら『リック・ザク』を売り込む。

 

シャアは(以前の06Rは推力こそ高かったが、06Sに比べれば鈍い機体だった。果たしてこれは

どれだけ私の操縦についてこれるか…)と思いながら「ご好意に甘えましょう」と大型の背部

ランドセルと脚にブースターを装着したザクに乗り込んだ。

 

MS-06R1A『リック・ザク』 3機が宇宙(そら)を駆ける。スラスターの合計推力62トンを

誇る機体は06Fより遥かに速く宇宙を駆けた。特に頭部に角を生やした06Rは06Sに勝るとも

劣らない速さと動きの鋭さを見せる。ブラウンとマイヤーもシャアほど鋭い動きでは無いものの、

ザクやヅダとは比較にならない程の速度で突入と切り返しを見せ『リック・ザク』MS-06R1Aの

高性能ぶりをいかんなく発揮した。

 

母艦に戻ったシャアは「確かにいい機体だが、私の好みとは少し違う。リック・ザクはこの2人に

使わせることにします」とシャハトに「あまり好きではない」と言い放った。

「ですが、06Sにこのスラスターを載せれば私にとって『理想のザク』となるでしょう。これは

補用機として頂いておきます」と、貰ってやる、という態度を取った。

 

シャハトは満面の笑みを浮かべ、「実は06Sをもう1機製作いたしまして、R1A同様ジオニックの

新型推進機を搭載いたしました。お気に召せば、今お使いの機体を研究材料として引き取らせて

いただき新しい機体をお使いください」と『シャア専用ザク』を新調した、と報告する。

さらに今使っている機体を下取りに出せ、という。シャアはニヤリとして、「赤くないが、

あの機体がそうなのでしょう?」と格納庫の隅に駐機しているザクを親指で差した。

 

新調されたMS-06S、ワンオフ機なので制式番号は同じ、は本来の主を得て正しく彗星の様に

宇宙を駆ける。ファルメルに帰還したシャアは「良い機体です。気に入りました」と素直に

新しい06Sを褒めた。マイ大尉は「実は少佐が使っていらした従来機のエンジン、Ha112-IIと

Ha-102は使用する度にバーニアに繋がるパイプの清掃が必要でした。推進材に使う重元素の

残留物、いわばカスが固着するのです。新型に使われているZN605とZN601Eは軽元素を推進材に

使うので、長期間の航海には新型の方が向いていますね」と整備班の内幕を明かした。

「艦載機の稼働率は今回の任務の肝となる、その方が私も有り難いな」独立部隊を預かる身と

なったシャアは自らの機体のみならずファルメルの艦載機全てに気を配らねばならない。

 

「あそこにあるのは新型が装備する火器ですかな?」シャアがまた親指で格納庫の一角を

指差す。「左様、M-130A 『130mmマシンガン』、GB803k『ジャイアント・バズ』

300mm擲弾『MSファウスト』であります。また少佐が使われていたM-120Cはドズル

閣下が『StG79 ストームガン79式』と名付けられ制式化されました。

連邦と同じ『アサルト・ライフル』という名称を使うのは業腹だと仰られまして」

「ストームガンとは…、いやドズル閣下らしい」唇の端で笑うシャア。彼もドズルを

「稚気溢れる人物」と思っているようだ。

マイ大尉が本部長の後を引き継ぎ「GB803kは装薬によってロケット弾を射出し、

一定距離飛んだ後に弾頭のロケットモーターが働く、という兵器です。SB25Kより弾頭が

大型化しましたが、バックブラストを抑える為この様な機構を採用しています」

「前のバズーカは弾頭が大きすぎて5発しか撃てなかったが、これは何発撃てる?」

「10発です」「結構、私もこいつを使おう。マゼランやサラミス相手ならこれでも威力は

充分そうだ」シャアは弾切れで戦艦を「5隻しか」沈められなかったのが今でも不満な様だ。

 

「しかし、これだけの新兵器を短期間に揃えられたのは何か秘密があるのではないのですか?」

シャアはシャハトに何か奇術のタネがあるのだろう?と尋ねる。

「少佐にご紹介したい者が2名おります。1名はエンジニア、もう1名は試験搭乗員

であります。詳しくは与圧ブロックにて…」とシャハトは彼の奇術をタネを見せるようだ。

 

ファルメルの艦長室でシャアはシャハトから少女と若い士官を紹介された。

シャハトは「アルレット・アルマージュ技師とダントン・ハイレッグ少尉です。06Fをはじめ

とする第二世代ザクが短期間で完成を見たのは彼女の功績です。彼女は少佐もご存知の研究機関

におりましたが、ことMS関連の技術に関して直感が働くのです。私がその話を聞きつけ、機関

より彼女をスカウトした、という次第でして」アルマージュ技師が緊張の面持ちで頭を下げる。

「ハイレッグ少尉は士官学校を昨年卒業したのですが、技術本部を志望していましたので、

採用した試験搭乗員です。操縦技量に関しては少佐の06Sを仕上げたのは彼、と言えばお分かり

頂けましょう」ハイレッグ少尉は敬礼しながら「ダントン・ハイレッグ少尉であります。

技術本部でテストパイロットをしております」とこちらは落ち着いた様子で申告した。

 

実は2人ともシャハトの「前」で知り合いだった。共にシャア総帥の為働いていたのである。

特にアルレット・アルマージュはエンジニア系NTと呼べる人材で総帥専用機『サザビー』の

開発メインスタッフであった。ハイレッグも「人が撃てない」という全く軍人に向いていない

性格だったが、テストパイロットとして一年戦争時からシャアの機体をテストし、ネオ・ジオン

では一目置かれる存在だった。2人とも『袖付き』には参加していないので、アクシズ落とし

以降の消息は知らなかったが、シャハトは自分の成り上がりとシャアの大望成就に欠かせない

人材と考え探していた。「機関」は脳波通信の出力が弱い彼女を実験機と引き換えにあっさり

と手放した。ハイレッグは自分の方から技術本部を志望してくれた。

 

マイ大尉は同僚からアルマージュ技師のことを聞いており、技術本部の「天才少女」と言われる

彼女の名前だけは知っていたが、顔を見るの初めてだった。

「本部長、アルマージュ技師から新型機についていくつか伺いたい事項があります」と少し

天才少女を貸してくれ、とシャハトに申告する。「よかろう、存分に聞き取って大尉も彼女の

才能に驚くといい」とシャハトは片目をつぶって見せた。マイはまたしても上司の意外な一面を

見ることになった。

 

「ハイレッグ少尉は私の部下に新型機をブリーフィングしてくれ。さっき乗った2人は私の

麾下でもまぁまぁの腕利きだ。あれらを基準にはしないで欲しいな」

「はっ!ハイレッグ少尉、新型機を『ファルメル隊』搭乗員に説明致します!」新品少尉

らしく折り目正しい敬礼をするダントンに思わず笑みが漏れるシャアだった。

最終的にファルメル隊はMS-06S 1機、MS-06R1A 3機、MS-06F 9機を受領した。

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====月面 グラナダ市

 

突撃機動軍総司令キシリア・ザビ少将はグラナダ市に設けられた総司令部、その応接室で禿頭の男

と会っていた。男、オーエン・オサリバンはAE.のグラナダ事業部を母体に誕生した

『グラナダ重工』の社長だった。

 

「グラナダ重工、とはまた捻りの無い社名だが、御大層で言いづらい社名より余程いい」キシリア

は本国の連中のドイツ趣味を内心で見下していた。ドズルの「ストームガン」という命名に兄妹

3人の通信で最初に賛成した。ドイツ被れの総帥親衛隊の連中は「シュトルム・ゲベール」だの

言いづらい名前を付けたがるだろうと思ったからだ。(ジオン訛りの公用語しか話せぬ連中が…)

 

「で、今日は何を売り込みに来たのだ?」挨拶もそこそこにキシリアは本題を切り出した。

やることが山程あるので、オサリバンには45分しか時間を取っていない。

オサリバンはハンカチで顔を拭いつつ「本日披露いたしますのは新型モビルスーツ、

仮称MS-08『ドガ』でございます。本機は月面での戦闘を念頭に置かれた『地上戦用』のMSで

ございます。まずはこちらのホロをご覧ください」と持参したホロ・プロジェクターで試作MSの

試験の様子を上映する。そこにはやたらと頭部の大きなMSがウサギ跳びをしたり、スラスター・

ジャンプを繰り返している。RGC-78のテストと同じ動作をしているが、AE.の社内規定に定め

られた動きであろうか。

 

「06より動きはいいですな」同席したビッター少将が『MS-08ドガ』の第一印象を述べる。

MS搭乗員でもある彼にはこの「頭でっかち」な機体がかなり出力の大きな融合炉を積んでおり、

スラスターの推力もザクよりかなり大きいのを見て取った。

「流石はビッター閣下!MS-08のジェネレーターは1,072kwの出力を誇り、スラスターの合計

推力は60トンでございます。さらにMS-08は脚部のスラスターを使用して短時間ですが、地表

でのホバリングが可能なのです!」営業畑出身のオサリバンはプレゼン能力でのし上がっただけ

のことはあり、突撃機動軍のニーズ、MSの機動性を強調した。

ビッターは(推進材を盛大に使っての機動は却って戦略機動性を損ねるのだが…)と思ったが、

月面経営のビジネスパートナーにいきなりケチを付けるのは憚られ黙っていた。

「それで、お前の会社は軍にどれだけの推進材を供給できる?供給量に自信があるから

こんな派手に吹かす機体を見せたのだろう?」キシリアの興味は「新型MS」より兵站の方に

ある様だった。

 

オサリバン社長は「ええ、勿論でございますとも!詳しくはこちらの資料をご覧ください…」

と表向き中立の都市が採掘した液体ヘリウムを買い付け、軍に売ると明かした。

キシリアは取り敢えず急場は凌げそうな量に「炉の燃料、ヘリウム3も要る。当てにさせて

貰うぞ」とさらに貴重な資源の供給を求めた。社長は「はい!グラナダ近郊に鉱脈を発見

致しましたので、早速採掘に入ります」とコストの面で採掘を諦めた鉱山を再び稼働させる

ことに決めた。オサリバンは(1人説得すればいいのだから、連邦軍より余程楽に商売できる)

と矢鱈と稟議だの根回しだのが必要で、時間とコストのかかる連邦軍相手のビジネスを思い出し、

ジオンのグラナダ占領を自分がのし上がる好機、と捉えていた。

 

ホロ映像はMS-08が遠隔操縦らしいMS-06Cを白兵戦で撃破する様子を流している。

ビッターは(無人機らしき相手ではあまり参考にならぬな…)と思ったが、黙っていた。

ただMS-08が持つ刀剣には見覚えがあった。『首無し』が使う剣だ。同じ剣を使うの

なら、もしかして銃の方も…

「社長、ひとつ宜しいかな?このMS-08はビーム兵器は運用できるのだろうか?」と

ジオン全軍が喉から手が出る程欲しい携帯メガ粒子砲は供給できるのか、と尋ねた。

 

オサリバンは「生憎と連邦の締付けが厳しく、グラナダ事業部時代からMSの技術情報

は一切公開されませんでした。私の方でも社内で手を尽くしましたが、何分『会長案件』

でしたので…」とメラニー会長の目が光っているので事業部長の立場ではMSが携帯できる

ビーム兵器の情報にアクセスできなかったことを伝えた。

キシリアは(要するに最初から捨てるつもりで此奴をグラナダに残したのか)と眼の前

で営業スマイルを浮かべる男を見切った。

 

オサリバンは「代わりと言ってはなんでございますが、我社の新製品『エレクトロ・ガン』

をご披露します。こちらをご覧ください」とMS-08がライフルらしき長銃身の銃を構える

立体動画を流し始めた。ライフルの銃口から何か発射された様だが、発射炎が見えない。

ライフルから発射された弾丸は標的として置かれた装甲板を撃ち抜き穴を開けた。

「レールガンですな。侵徹体にはタングステンかウランを?」

「ご明察です。それと、侵徹体は残念ながらハイパー・スチールでございます。ご存知の

通り月では重金属が採掘できません。小惑星帯で採掘された資源は殆ど全て月のあちら側に

送られておりまして…」

「まぁ、ビームに及ばなくとも『首無し』の装甲を貫徹する能力さえあればそれで良い

のですがね」とビッター少将は本音を漏らす。弾速が低くMS相手には命中が期待できない

バズーカよりこのレールガンの方が当てになりそうだ。

 

「しかし、発射速度に問題があるようですな。ザクマシンガン程でなくとも、これでは精々

セミ・オートマチック ライフルといったところですか」グラナダ工業のレールガンには

発射速度が低い、という欠点があった。オサリバン社長は「エネルギー・コンデンサーの充電に

少々お時間を頂いておりまして。1発毎に使い捨てにできる程安い部品ではありませんので…」

と弁明したが(これでは、狙撃の上手に持たせて使うより無いな)高初速のレールガンといえど、

自機に回避機動を取らせながらでは命中は覚束ないだろう。ザクマシンガンではなく、ASR-78

対艦ライフルをリプレースする兵装、とビッター少将は考えた。

 

「社長、この『ドガ』なる機体、取り敢えず9機貰おうか。実戦で評価試験を行う」

キシリアは今日初めて見たMSの発注を決めた。オサリバンは笑みを浮かべ揉み手をしながら、

「この度は早速のお買い上げ、ありがとうございます。では、初期生産分を即日納品致します」

と、MS-08は既に生産に入っていることを明かした。

 

社長が下がった後、ビッター少将はキシリアに「本国から送ってきたMS-07『グフ』は

如何致しましょうかな?」と尋ねた。MS-07、08共「地上戦用」の機体である。

パイロットや整備員はそうそう急に増やせないのでどちらかが補欠扱いとなるだろう。

「実戦テストを双方9機、1個中隊でやれば良い。総統府が詳細を知らない機体を保有すること

に意義があるのだからな…」キシリアはMS-08が07を上回る性能を発揮すればそれでよし、

07に及ばない性能なら「秘密兵器」として保有し続けるだけでも本国に対する牽制になる、

と判断した。

 

 

 

 




25話をお送りしましたが、新メカ続々登場回でございます。
GW-02ガウォークは「~ゴップになる」構想時から考えていたネタです。
一時は「マクロスⅡ」のガウォークロイドにしようかと思いましたが、
形を思い浮かべやすい、と思いVF-01Sストライクバルキリーを元ネタにいたしました。

RG-01 リ・ガードはボールより高級な連邦版オッゴを、と考えてたら浮かんだネタです。

RGC-78ガンキャノンⅡは、ニナの出番を作りたくてデッチ上げた機体ですが、
Iフィールドモーターの生産元、というネタが浮かんだので成功と作者は思っております。

シャアのファルメルが巨大化したり、MS-06FがF2相当の高性能機になってしまい
ましたが、シャハトさんが後知恵全開でやってくれました。
『Twilight AXIS』コンビが登場しましたが、今後も色々「シャア専用」を開発するの
でしょう。
「StG79 ストームガン79式」は自分でも気に入ってる名前です。なんかドズルっぽいと
思うのですが。
プロペラントタンクの下りはコミック版イグルー『603』の2巻のネタです。
最近Amazonでガンダムコミックを買い漁ってるマンなので、今後も色々なガンダム
コミックからネタを引っ張ってくる予定です。
ツイマッドの重元素ロケットはパイプが目詰まりし易く稼働率が低い、というのは
オリ設定ですが、割といい線行ってるんじゃないかと思うのですが。
重元素ロケットを採用したMS-09ドムの採用で整備班が悲鳴を上げそうのなので、
助けてギニアスお兄ちゃん。

0083の胡散臭いおっさんオサリバンさんがMS-08ドガを引っさげて登場しました。
MS-08のペットネームを「ドガ」の元ネタは20年以上前に黎明期の2ch シャア専用板
で見かけた書き込みからです。
MS-18Eが登場したらペットネームが変わるかもしれません。4文字でそれっぽい名前
のアイデアがございましたら、感想欄でご提供頂ければ幸いです。

※9/4 一部改定。
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