リストラおじさん、ゴップになる   作:寒原光雪

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グレイズ・アインってサイコザクですよね。


IMMORTAL

じゃあ、その両腕切断してくれる?

 

カーラ・ミッチャムは微笑みながらそう言った。

ダリルは訳が分からないという顔をしながら「な、なぜ僕が両腕を切断しなきゃ

いけないんですか?」と震え声でついさっきまで恋人だと思っていた女に問うた。

「そうねぇ…、科学の発展のため、ついでに公国の勝利のためね」とカーラ。

少年は「かがく…」と呟くと意識を失った。

 

ダリル・ローレンツが意識を取り戻すとそこはオイルとオゾンの臭いのする空間だった。

分解されたザクが数機立っているのでMS格納庫らしい。

それと、機器とモニターが並ぶここはMSのコックピットの様だ。整備で中に入った経験が

あった。ただ、操作桿やペダルの類が一切無く違和感がある。

視線を移すと上腕はまだ生身だったが、肘と腿の先は何か機械に包まれ感覚が無かった。

(両腕切られちゃったのか…)ダリルはカーラ・ミッチャムが自分を裏切ったことが

ただ悲しかった。

 

「あら、目が覚めたのねダリル!」作業着を着たカーラがこちらに飛んできた。

どうやら0Gらしいのでズムシティのベイブロックなのだろか。

「気分はどう?良い訳ないわよね。フフ」

「こ、ここは一体何なんですか教授(せんせい)!」もう目の前の女を「カーラ」と呼びたくなかった。

「そこはねぇ、私の科学の結晶『ザク・イモータル』のコックピットよ!!」カーラは

なにかキメた様な目つきで叫ぶ。

「ザク・イモータル?」

「そう!『不死のザク』よ!! あたし、『サイコ・ザク』って呼び名嫌いなのよね、

何よ!人のこと「サイコ、サイコ」って!!」カーラは意味不明なことを口走っている。

 

「これがその『イモータル・ザク』だとして、僕はこれからどうなるんですか…」ダリルは涙目で

彼の行く末を問うた。

「『ザク・イモータル』よ。それとあなたはねぇ、英雄になるの!このザクと共に!!」

またキマった目で叫ぶカーラ。

「このザクは『リユース・イメージング・デバイス(RID)』のお陰でアナタの思った通りに動く

のよ。あなたの脳が発信する電気信号を義肢のコネクタから読み取ったコンピューターが機体を

動かすって仕掛けなの。操縦桿やペダルを使った操縦より遥かに反応速度が速くなる凄いシステム

なのよ。でも、四肢を義肢に変えないと性能を十全に発揮できないし、誰でもエースパイロット

を越える反応速度にはならないの」肩を竦めるカーラ。

 

「最初はカスペンが有望だと思ったんだけど、彼の義手からは思った程いい数字が取れなかった

のよ。ところが、あなたの義足は他の検体とは桁違いの数字を叩き出した。幸い二等兵で融通が

利く階級だったから助手にしたの」カーラはダリルを熱を込めた目で見つめながら彼が助手

=ザクの生体ユニットに選ばれた理由を語る。

「じゃあ、あの正門のあれは…」

「そう、わざとあなたの目の前にID落としたのよ」

「!?」

ダリルは目の前が真っ暗になった。そして、ここ数週間の浮かれていた自分を呪った。

(最初から僕を実験台にするつもりだったなんて…)

 

「あと、あなたにもメリットがあるのよ、このプロジェクトは。なにせ総帥府の肝いりだから、

お父さんはこの国で最高の医療を受けられるし、家族も優遇されるわ。具体的にはズム

シティに家が持てるの。アナタの傷痍軍人手当も規定の10倍は出るわ。

このままザク・イモータルに乗ってくれればね」

「僕の家族は人質、というわけですね…」ダリルは会話の傍らカーラの言うようにザクを動かせ

ないか試すことにした。

「あら!あなた賢くなったわね、その通りよ。それとザクは炉に火が入ってないからまだ

動かないわよ。よしんばザクを動かせても私を握り潰したり壁に投げつけてぺちゃんこ

にはできないわ。システムにロック掛かる様にしておいたから」メガネの中で微笑みながら

お前には自分は殺せない、というカーラ。タブレットでダリルの脳信号を検知したらしい。

「!…」ダリルは自分の目論見が見抜かれ数少ない自由になる部位、唇を噛んだ。

 

「あなた自身もまず軍の秘密兵器開発に志願した愛国的な少年兵、としてメディアに露出させる。

実戦に出たら、ザク・イモータルの性能を発揮して英雄の出来上がりよ『赤い彗星』

『黒い三連星』みたいなね。ダリル、あなた何色が好き?」微笑みを浮かべながら計画を語る

カーラ。彼女はダリルの首筋にキスをすると注射器を首に押し当てた。

ダリル・ローレンツの意識は再び暗闇へと落ちた。

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==== 重巡『ワルキューレ』会議室

 

部屋の中央にホログラムが投影されている。どうやら連邦軍のMSらしい。

「このMS-03のコピーMS『BM-01バム』を各位はご存知でしょうが、本作戦の成果で新たに

敵艦載機について情報を入手しました。こちらが『首無し』こと『BM-02 ベム』であります。

ベムはBeamが由来ではないか、と情報部では考えております。これは連邦のモビルアーマー、

『GW-01 ワルキューレ』、ペットネームの由来はドラマシリーズの宇宙戦闘機だそうです。

さらに『大顔』は『モビルポッド RG-01 リガード』とのことです。残骸を調査したところ、

融合炉と熱核ロケットを搭載しており、従来の戦闘ポッドとは一線を画す機体であることが

判明しました」

 

「タチ中尉、今はここまででいい」ランバ・ラルは部隊の情報参謀の発表を一旦止めさせた。

「さて、我々に立ちはだかる敵機の身元が割れた訳だが、取り敢えず部隊での敵機の名称を統一

すべきだと思うが?」敵機の渾名は所属艦によって多少違るので取り敢えず型番かペットネーム

で統一しようと言うのだ。彼は麾下の戦隊長達を招集し、作戦会議を開いていた。

目的は各戦隊の戦果と被害の確認、今後の方針についてである。政治将校の干渉無しに部隊の

総意をまとめておきたかった。

 

「賛成です。バムとかベムとか短くていい。ただMAはこの艦と名前が被りますな」ドナヒュー

大尉が賛意を示す。彼は今までに挙げた戦果からラル司令の右腕と目されていた。

「敵のMA、ドラマに出てきた帝国軍の戦闘機に似てますよねぇ。少し角ばってるけど」ワシヤ

大尉が呑気な口調で続ける。「長いのはアレなんで『G1』でいいじゃないですかね」と

結論らしきことを言った。既に10機以上の敵機と敵艦数隻を沈めているワシヤも部隊で一目置かれ

ており、敵MA、GW-01の呼称は『G1(ジーワン)』に統一されることになった。

 

重巡『チェーホフ』の艦長、イリアス少佐が「『大顔』は『リガード』でいいと思いますな。

それより、我が戦隊を奇襲した新型の情報はありませんか?」と連邦の「新型」について尋ねた。

 

「タチ中尉、頼む」ラル大佐が参謀を促すと、タチは「先日、チェーホフ戦隊を奇襲したMSは

『MMS-04 レオ』戦闘ポッドは『MMP-02 キャンサー』といいます。いずれもサイド4の民間企業

が開発した機体であります。サイド4内部から入手した情報です。ただ、性能の詳細について

は入手できず、先日の戦闘データから得られた情報しか持っておりません」

 

「サイド4が独力で機動兵器を!?」会場からどよめきが上がる。

「ザクの劣化コピーであろうよ」と既に戦闘データを見ていたので能力を低く見積もる者もいた。

タチ中尉はさらに続けて「憂慮すべきは、これらの機体がサイド4からサイド6に纏まった数が売却

された、という事実であります。未だサイド6に残る公国派より掴んだ情報であります。政庁と

契約したPMCが運用するとか。先の戦闘の様なほぼ素人と言える搭乗員より練度は高い、と

見るべきかと」

 

「サイド6がMSと戦闘ポッドを!?」さらに大きいどよめきが起きた。中立を標榜するサイド6の

武装を禁ずる国際法も条約もないが、ジオン公国軍はサイド6が軍事的に無視できることを前提に

戦略を組み立てており、それが崩れ去る、というのは会議室に居並ぶ士官たちにはショックが

大きかった。

 

「ビーダーシュタット大尉、『トロンプ』の艦長は何か言っていたか?」ラル大佐は「外人部隊」

のビーダーシュタットにこの場にいない艦長がサイド4のMS開発とサイド6武装化について何か

知らないが質した。

「ダニンガン少佐は連邦じゃ閑職も閑職、退役間近の将官の世話をしていたそうで何にも知らん

でしょう。チェーホフ隊が遭遇したMSについても何も言っておりませんでしたし」と肩を竦め

ながら答えるケン・ビーダーシュタット。

 

ジャマイカン・ダニンガンは開戦直前の昨年11月、連邦軍を脱走してきた連邦士官で公国軍も

当初は義勇兵の一部隊を任せていたが、「指揮能力の著しい不足」と連邦軍の機密、とりわけ

MSに関する情報を何も持っていないことが判明し、義勇兵を統括するダグラス・ローデン大佐

がビーダーシュタットと「抱き合わせ」でランバ・ラルに押し付けてきたのだった。

今は軽巡トロンプのお飾り艦長として艦長席を温めるだけの任に就いている。

トロンプにやってきた政治将校はジャマイカンを連邦の工作員と見て一挙手一投足を監視して

おり、その分トロンプ隊は戦術上のフリーハンドを得られていた。

 

「今後サイド6からの船団を臨検する際には1個中隊では心もとないな」

ランバ・ラルは麾下の士官たちにサイド6の船団もMSに護衛されている、という想定で望む

よう命じた。

MMS-04の呼称は『レオ』となり、MMP-02は『カニ』と呼称されることになった。

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==== サイド7 『V作戦 R&Dセンター』

 

「戦争、始まっちゃったな…」カイは椅子もたれ足をデスクに投げ出しながら呟いた。

「RX-78のAIもかなり仕上がりましたし、僕達お役御免ですかねぇ」コーヒーカップを持った

ハヤトは半ば期待を込めた推測をするが、カイは「バッカ、お前、こんだけ軍事機密に触れ

ちゃった俺らを軍が手放すわきゃねぇだろ」と即座に否定する。

「じゃあ、どうしたらいいんですかぁ?」とハヤト。

 

「そんなんアレよ、志願しちまうのさ。整備のおばさんとか何人か軍人に聞いたんだけどよ、

俺らっていうかアムロの評価メチャクチャ高いわけよ。それでこっちから軍に入りますって

言えば待遇はいいだろうってさ。少なくとも下士官か上手くすりゃ士官様だって話だぜ」

カイは自分なりの人脈から得た情報で軍に志願した方が得だと訴えた。

アムロは「僕も知り合いの軍人さんに事情聞いてみます」と答えた。

カイは「アムロ君の知り合いってAI開発のリーダーの人だろ?なんかスゴイ偉いさんの

ムコさんだって話の」

「ダニー・アトキンソン中佐です。今、アポ取れたので会ってきます」とアムロ。

 

「君達、志願するって言うのかい?」ダニーはアムロから相談を受け(来るものが

来たか)と思った。自分達の仕事、RX-78のAIには自信を持っているがそれを使って個人的

に親しくしている少年が殺し合いをする、というのは感情的には割り切り難いものがあった。

彼が民間企業からの転職組であるのと無関係ではないだろう。

 

「そうです。中佐は民間からの転職組だって聞いて職業軍人の人より僕らに近い感覚

なんじゃないかと相談にきたんです」とアムロ。ダニーは「僕が経験してきた範囲で

しか言えないけど何でも聞いてくれ」と請け負った。

 

「今度、ここにも僕達と同年代のパイロット達が転属してくるんですけど、その人達に

途中から入ってきた僕達はどう思われるんでしょう?」とアムロ。

「自分達は一番下からスタートして努力して上がってきたのに僕達が軍曹とかからスタート

なのをズルいと思わないでしょうか?」

「僕らみたいなエンジニアやパイロットは技量が全てで、優れた者はいい待遇を受けて

当然と思ってる所あるからね。大丈夫だと思うよ。

とはいえ、僕も自分の能力を証明するまでは腫れ物扱いだったよ。なにせ制服組トップの

義理の息子だからね」肩を竦めるダニー。

「今度ここに配属になるパイロットは実戦、サイド4防衛戦でエースになった凄腕でそうだ。

だが、僕は君とLisa のRX-78(ナナハチ)に敵う機体など無いと思ってるよ。要は初っ端に

模擬戦やってかましちゃえばいいのさ」拳を握って笑うダニー。

「そういうものですか…」アムロは納得したのかしなかったのか分からない表情をした。

 

結局アムロ達は軍に志願し、3人共軍曹からスタートすることになった。

テム・レイは一人息子の志願を単純には喜べなかったが、今後ジオンの攻撃が予想される

状況下ではやむを得ないと考えた。

チャーリー少佐は「下士官というのは事態によっては他人に「死ね」と命じる立場なんだ。

そのことを肝に銘じて欲しい」と訓示した。そして、「地球連邦軍にようこそ」と

3人と握手を交わした。

ブライト・ノア中尉はアムロ達の志願に「まだ15歳だというのに見上げた覚悟だ!」と

アムロ達を持ち上げた。すかさずカイに「俺、ダブってるんで16なんすけどね…タハハ」と

照れ笑いされ、「え?な、なんだ、大したものだよ、うん」とフォローにならないフォロー

をした。

 

ウィリー・ケンプ大尉は3人の志願に大喜びし、1バンチにあるアズナブル夫妻が経営する

ステーキハウス『テキサス』に連れていき、1ポンドステーキを何枚も食べる3人を見ながら

タコスをつまみにビールを飲み、兵隊スラングの解説をした。カイは大笑いしながら聞いてい

が、ハヤトは眉をひそめ、アムロはRX-78が要求する身体作りのため、黙々と牛肉を食べていた。

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==== サイド6

 

サイド6政庁と輸送船護衛を請け負っているPMC『アッセンブル』のCEO、ゴン・ヌーはサイド4

から輸送されたMMS-04(A1) レオをトレーラーに載せ「ホシザキ重機」の看板を掲げた工場に

持ち込んだ。「相変わらずならず者の様な従業員ばかりだな、ここは」工場で働く強面の従業員達

を見て呟く傭兵隊長。

「社長はおるか?」ゴン・ヌーは応対に出た青年にホシザキ社長の在否を尋ねた。

「はい、すぐに参りますので…」と青年は上客を応接室に案内する。

 

「おう!社長。外のアレ、モビルスーツだよな。アンタんとこも大手の仲間入りだねぇ」

とツナギ姿の中年男が応接室に大股歩きで入ってくる。

禿頭の傭兵は「なに、サイド6がMSを手に入れる名目に使われただけさ。ウチに所有権がある訳

じゃない。ただ、戦闘で撃破されても賠償義務は無いがね」と裏事情を明かした。

「サイド4のフレミングだったか? 建機メーカーが作ったMSだって話だが、もう乗ってみた

のかい?」

「いや、まだだ。社長にはこいつ、MMS-04におかしな仕掛けがしてないかチェックして欲しい。

ついでにチューンアップもして貰おう。急ぎでな」レオのトラップの解除と強化改造を

依頼するゴン・ヌー。

「まかしときな。MS-05(ゼロゴー)の開発してる頃に輸入部品の検査はさんざやったからな。連邦の仕掛けは

お馴染みさんだよ。それとチューンだが、急ぎだと外付けロケットのポン付けと駆動系に

ブースター噛ますくれえだけどよぉ、だいぶ乗り難くなるぜ?」ホシザキ社長は急ぎ仕事だと

操縦性に悪影響が出る、とクライアントにデメリットを説明した。

「構わんよ、腕のいい新入社員がいてな。今日持ち込んだ機体をいじってくれ。残りの機体は

仕掛けの解除だけでいい」とクライアント。

「よし!早速かかるぜ!」

「ああ、頼んだ。ところで、私をここに案内してくれたのはムコさんかい?」

「あぁ? ありゃウチの営業担当だよ。わりぃ奴じゃないが、ミオンを嫁にやるってのは

別の話だ!」

「そうかね。ああいう若いのが後を継いでくれりゃ、アンタんとこも安泰だろうに」

「てやんでい!俺はあと30年は現役だっての!」

ゴン・ヌーはホシザキ社長が工場に飛んでいきたくてうずうずしているのを見て早々に退散する

ことにした。

 

数日後

 

「社長、あのMSな、やっぱり仕掛けあったぜ。特定の信号受信するとシステムが落ちる。

MS-05開発した時に連邦製の部品に仕込んであった手だ。殆どのパーツはMS-06のコピーだって

のに操縦系に連邦のパーツ使ってるからさては、と思ったらこれだよ。まぁ、輸出許可と

引き換えなんだろうがね。パーツはウチで内製したのと取っ替えといた。他の機体もやっとく

から次々持ってきてくんな。なに、小一時間で終わる仕事だ。じゃんじゃん持ってきてくんなよ」

ゲンザブロウ・ホシオカは調査結果と対策をまくし立てる。

「社長、あまり面白い仕事じゃなくてすまなかったな。爆発物でも仕掛けられてれば愉快だった

ろうに」と、物騒なことを言うゴン・ヌー。「ところでチューンを依頼した機体はどうなった

かね?」

 

「よくぞ聞いて下さった!ってとこだな。ふくらはぎのとこにロケットブースターを付けた。

融合炉から上手いこと動力パイプを取り回せたんで、核ロケットを積めたぜ。駆動系もブースター

噛ましといた。AMBAC機動はだいぶマシになってるはずだぜ」ホシオカ社長は久々にMSを触れ

満足の様だ。

ザクの開発に関わった『ホシオカ』の社長親子はじめ社員一同は昨年秋、ジオニックの外注開発

主任テオ・パジトノフからこのままでは会社に親衛隊か憲兵が押し寄せる、と聞かされ夜逃げする

様にサイド3を脱出し、ここサイド6までやって来た。テオの上司や同僚も一緒でどうもMSの機密

漏えいの嫌疑がかけられていたらしい。皆、家族を連れて一か八かでジオンを脱出し、サイド6に

亡命した次第である。

 

「明日にでも納品可能かな?」ゴン・ヌーは納期を尋ねるが、ホシオカは「そんなもん、今すぐ

持ってってくれていいぞ。乗っけてきたトレーラーそのまま庭に置いてあるしよ」

「うむ。支払いは宝石で良かったな。粒の大きいのを見繕ってきた。これが鑑定書だ」ゴン・ヌー

は経営するPMC、アッセンブル社は度々宝石を支払いに使っていた。祖国の宝石マーケットに流通

している石だ。実のところ彼の会社のオーナーは祖国の王室であった。

連邦政府も承知のことだ。

「フフ、あやつがこの暴れ馬をどう御すのか見物だな」足にロケットブースターを装着したレオを

見上げながらゴン・ヌーは独りごちた。

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==== サイド3 秘密工場

 

ダリルは未だ『ザク・イモータル』の実機には搭乗できず、ひたすらシミュレーションをやらされ

ていた。義肢を全て外されて機器に繋がれ、VRゴーグルを被らされている、という一見新手の

拷問に見える姿だった。

 

「ほら!スラスターを意識してって言ったでしょ!ロケットパックを背負って義足にロケットが

付いてるイメージを頭に描くのよ」カーラの指示通りにダリルは自分の姿を思い浮かべ、仮想空間

の中のザクはスラスターを噴射し、敵の射撃を回避した。

 

「そうよ!いいわ、そうよダリル!次はBM-02、ビームを撃ってくるわ。ロックオン警報に耳を

すます前に敵の銃口を注視するの。銃口が真円にならない様機動するのよ」

カーラが次の指示を出す。すると、仮想空間に首のないMSが現れる。そいつは螺旋軌道を描いて

ザクにビーム銃を向けるが、ダリルには酷くのろのろとした動作に見えた。

「遅い!」ダリルは気合と共にすれ違いざまジャイアント・バズを放ち、ベムはタンデムHEATの

高圧ガスに胴体を貫かれ爆発した。

「そう!バスーカは敵に押し付けるつもりで撃つの。MSを遠くから怖々撃っても当たりゃ

しないわ」カーラは目を爛々と輝かせダリルに指示を出し続けた。

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==== ルナ2

 

501戦闘団『ホワイト・ディンゴ』は新型機受領の為、ルナ2に移動していた。

「今度の新型ってのは首があるんだな」ヤザン・ゲーブル()()の新型量産機RGM-79に

対する第一印象はこれだった。

 

RGM-79『GM』はサイド7、5バンチで開発されていたが、開戦から2週間後ロールアウトし、

ジャブローとルナ2の工廠で初期型の量産が始まっていた。501戦闘団はこの新型機を受領し、

慣熟訓練を行うべくサイド2からルナツーへ移動してきたのである。

 

まず、RGM-79の開発主任であるアラン・アダムス技術少佐から、本機の性能についての

ブリーフィングがあった。次にテストパイロットのヒーリィ中尉から操縦の癖などパイロットの

立場からのブリーフィングが行われ、その後レイヤー中佐以下501のパイロットがGMに搭乗する

が、30分もしない間に全員がチュートリアルモードを切っての操縦が可能となった。

RGM-79A、最初の量産型はルナ2工廠で既に100機が生産されており、501戦闘団の面々は

工作精度の良い機体を選ぶことができた。

 

「おい、ヤザン。貴様AIはどうすんだ?」ユング大尉がヤザンに自機のAIはどのタイプを選ぶのか

尋ねた。「俺はL-1だ。中隊長だからな、戦術データベースが充実してて気の利いたやり口を提案

してくれるのがいいんだ」とテネス。

「俺はL-2だな。無口なのがいい。お喋りな機械はイラつくんでな」とヤザン。「だが、何か

得体の知れないモンを感じるな…」L-1はウィリーのRX-78 1号機のLita(リタ)、L-2はアムロの

RX-78 2号機のLisa(リザ)を原型としている。現在RGM-79のAIはカイの3号機Lora(ローラ)

が原型のL-3、ハヤトの4号機Lana(ラナ)を原型としたL-4の4種類が用意されている。

 

501の他のメンバー、団長のレイヤー中佐はL-1、M中隊長バーガー大尉はL-3、リーフェイ大尉は

L-4を選んだ。情報幕僚のレオンは敢えてレイヤーと違うAIを選んだらしい。

 

K中隊のカジマ大尉は4種類のAIを乗り比べ、最も反応速度の速いL-2を選び、ヒューズ中尉は

射撃精度の高いL-3を、フュリス少尉は最も乗りやすいと感じたL-4を選んだ。副中隊長格の

キルマー中尉はL-1を選んだ。B中隊はバニング、ベイトがL-1を、ラドリー、アデルがL-3を、

モンシア、ロフマンはL-4を選択した。G中隊は狙撃手以外がL-1を狙撃手2人がL-3を選んだ。

 

戦闘団全体の傾向では名の通ったウィリー・ケンプというパイロットが練り上げたL-1ことLitaに

対する支持は高かった。逆にL2ことLisaの支持は低く、選んだのはユウとヤザンの2人だけだ。

AIがアムロの機動をベースに操作の先回りをする様な動作をするため嫌われたらしい。

LitaからLanaまでの4種のAIは個性の違いこそあれ、BM-02のシステムに対し格段に高い反応速度

と射撃精度、白兵戦性能、機動性能を備えている。501の教官クラスのパイロット達にはRGM-79

の機動パターンを作り上げていく任務も課されていた。要するに自動攻撃モードと回避モードの

開発である。

 

1日GMを乗り回した501の面々は開発部の技術将校に改善点を挙げ、自分向けの改造を依頼した。

具体的に言えば、レイヤー中佐が機体の通信機能と索敵能力の強化、バーガーは射撃システムを

強化し、ビームキャノンを搭載した機体を中隊分8機、ヤザンは機体の軽量化と高機動化を

ラドリーが長射程ビームライフルと精密照準システムを要求した。

基本的にBM-02に乗っていた時と同様の内容であったため前もって用意してあった改造キットを

適用するだけで改造が可能であり、1週間以内に希望者全員に機体が渡された。

この改造型の幾つかは制式化されるだろう。

そうなればBからZのアルファベットが割り振られ『RGM-79x』型と呼ばれることになるだろう。

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==== 宇宙要塞ペズン

 

「サハリン大佐のお陰を持ちまして『天王星』エンジンは完成を見ました!」

ギニアスの手を握りながらジャン・リュック・デュバル少佐は感に堪えないといった顔をした。

ここ、ペズンにジオニックのエリオット・レムがいないのが残念だった。あの気取り顔が悔しさに

歪むところを見たかった、とデュバルは思うが、彼の脳内レム少佐は彼の鏡像であることに気づく

はずもないジャン・リュックだった。

 

ギニアスは「重元素を使用する推進機はパイプの目詰まりが稼働率を下げる要因となっており、

添加剤によって解消できることは分かっていたが、中々マッチングする物が見つからなくてね。

運に助けられた所も大きい」とギニアス。

 

総帥府の意向で月から異動していたノリス・パッカード()()は「これでMS-09の完成に

目処が付きましたな。増加試作機が組み上がり次第我ら9人訓練を始めます。ソロモンや月の

戦友達に一刻も早く『決戦機』を渡したいものです」と鼻息が荒い。

 

ギニアスは「『天王星』の機構を流用してMS-05の主機も完成を見た。MIPのスタッフが礼を

言っていたよ『これぞ挙国一致』だとな」とツイマッド社の功績を讃えた。

デュバルは「当たり前のことであります。本国で09までの繋ぎ、MS-06の改良型を拵えている

ジオニックはそう思ってないようですが」とジオニックを腐すのを忘れなかった。

流石にギニアスも苦笑し「彼らもまた公国の為戦っているのだ。貴官もエンジニアなら企業間の

反目は一時忘れて欲しい」と苦言を呈した。

デュバルは「流石はサハリン大佐。感服いたしました」と眼の前の貴族将校を持ち上げた。

外見と裏腹にサラリーマン気質の持ち主のようだ。

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==== サイド3秘密工場

 

ダリル・ローレンツはやっと『MS-06FR ザク・イモータル』の実機に搭乗することができた。

『サンダーボルト』劇中のサイコ・ザク1号機がMS-06Rを原型としているのに対し、イモータル

はMS-06Fを原型としている。

「技術本部は最初MS-05を原型にしろ、とかはざいてたのよ!あのクソ片眼鏡が!幸い私が総帥府

にコネがあったからF型を回して貰えたワケ。突撃機動軍も一枚噛みたいみたいで月の会社が

作ったっていう融合炉と推進機を送ってきてくれたわ。後、プレゼンに欠かせない()()もね」

と意味深なことを言うカーラ。

コックピットに括り付けられている形のダリルにとってはどうでもいい話だったが。

 

カーラが制御機器のキーをひねるとザク・イモータルの融合炉に火が入りダリルのVRゴーグルに

ザクのモノアイが捉えた映像が投影される。視界をザクと共有すると一体感が増す気がする。

ダリルが腕を捻るとザクも腕を捻り、歩くイメージを浮かべて腿を動かすとザクも独特の

動作音を響かせ歩いた。

ダリルは視界の端にカーラの姿を捉えると彼女に腕を伸ばそうとするが、視界の中央に黒字に

赤く「Blocked」と表示されダリルの身体に電菱が流れ思わず「がぁっ!」と声を上げた。

「うふふ、お・し・お・き」と笑うカーラ。システム的にロックを掛けているなら電流は

不要なのだが、調教のつもりらしい。

 

格納庫を出るとザク・イモータルの進路を塞ぐようにMS-05が2機現れた。ダリルは旧ザクが

ケーブルを引いているのを見て「遠隔操作の無人機か。遠慮は無用だな」と呟く。

ここのところのフラストレーションを無人機に八つ当たりして少しでも晴らそうと決めた。

 

ザク・イモータルはスラスラーを吹かすこと無く走りながら間合いを詰め、手にしたヒート

ソードを赤熱化させて旧ザクに斬りつける。無人機は2機ほぼ同時に胴体を寸断された。

「ナイス!ナイスよダリル!次は火器を持ってるわ。ペイント弾だけど全部躱すのよ」と

カーラはMS-06Cを今度は3機けしかけた。

 

ザク・イモータルは姿勢を低くして横飛びとステップを交えてザクマシンガンの弾幕を

躱し、今度は3機ともコックピットを貫いた。ついでとばかり腕と脚を斬り飛ばす。

ダルマ状態となったザクを見つめ激しい息をつくダリル。

セクストン技官が青い顔になって「教授(せんせい)、被験者の血圧と脈拍がイエローを越えて

ます。それにザクの間接が…」とカーラに実験の中止を進言する。

カーラも「今日は確認だけだからこんなものでしょう。次、実機を動かすのはプレゼンの時ね。

ねぇ、ダリル。あなた()()のあるMSを斬ったり撃ったりできるかしら?」

カーラ・ミッチャムは微笑みを浮かべながら開発室のメインモニターに映るザク・イモータルに

語りかけた。

 

ダリルはザクから「外され」義肢を装着されると与えられた栄養ドリンクを飲みながら工場の

廊下を歩いていた。(この手足よりザクの方がずっとしっくりくるな…)とぼんやり考えながら。

 

 

 




28話をお送りしました。猛暑でだいぶへばってしまい更新が遅れました。
今回初登場の不死のザク、『ザク・イモータル』ですが、カーラ教授は「サイコ」という
単語が嫌いなようです。なんか書いててダリル君がかわいそうになってきましてが、
彼も強大な力を手に入れ否応無く変わっていきます。

タチ中尉が連邦軍の機体のペットネームを発表する下りは原作のコズンの通信が元ネタです。
今後はジオンはベムとかG1とかリガードとか呼びながら戦いますが、RGM-79、あと
例の機体といった新型はあだ名で呼びます。「白いヤツ」「スカート付き」
「トンガリ帽子」って呼ぶの好きなのです。

GMの量産が始まり、ドムも開発が佳境に入っています。
GMはスピンオフも含めると下手するとザクよりサブタイプが多そうですが、既に
何種類か登場させました。
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