「シーマ・ガラハウ中尉、紹介しよう。アルテイシア・ソム・ダイクン嬢だ」
「アルテイシア嬢、こちらはシーマ・ガラハウ中尉」
「元、ですがね。あのビデオに出たせいでアタシゃ軍籍を剥奪されましてね」
自分の階級を訂正したシーマは次の瞬間、ぎょっとなった。「ダ、ダイクン!?」
私はとぼけたカエル顔をシーマに向け「そうだよ。彼女こそジオン・ズム・ダイクンの
忘れ形見、アルテイシア・ソム・ダイクンその人だ」
「もっとも今はこちらのディアボロ・マスの養女となりセイラ・マスと名乗っていますが…」
アルテイシア=セイラは傍らに眠る紳士に優しい眼差しを向け自己紹介した。
彼女、セイラさんは本当に養父を慕っているのだなぁ。まぁ、そのディアボロ氏の心臓疾患を
ジャブローの腕利き心臓外科医達が治療したのと半ば引き換えに彼女を担ぐ今回の企てに
同意して貰った。17歳の少女を政争に担ぎ出すとか我ながら嫌になる。「構想」をセイラさん
に話した時の彼女の目、怖かった…
「お慕わしや、ダイクン家の遺児が本名を名乗れないなんて…」シーマは涙目になってる。
「ガラハウ君、どうだろう、彼女に力を貸してくれないかね?君とその部隊にはアルテイシア嬢の
警護と『軍』の旗揚げに尽力して欲しいんだが」とシーマに用意を約束した「いいもの」のタネ
明かしをした。
「お
ですねぇ…」シーマの目つきが変わる。目の前の『姫』をこの身に代えてもお前らの好きには
させない、という剣呑な目だ。
「私、アルテイシア・ソム・ダイクンと同志達はジオン共和国の再建を目指しています。
『軍』とはジオン共和国が保有する軍事組織のことです。貴女にはそれに参加して欲しいのです」
セイラさんは自分も承知している話であることをシーマに明かす。
「お家を再興される訳ですか、それをアタシのようなマハル生まれの卑しい者が関わるなど
恐れ多い…」とシーマは感激した様子だが、セイラさんは突如厳しい目つきになり、
「貴女、シーマ・ガラハウといいましたか。今の言葉取り消しなさい!」と強い口調で叱った。
シーマは「へ?」という顔になった。これから仕えるつもりの主君にいきなり怒られたのだ。
「貴女は今の言葉で貴女と故郷の人々を卑しめたのです。私はダイクン家の者としてジオンの
国民に卑しいも貴いも無い、と思っています。私の同志となるのなら、貴女にもそう考えて欲しい
のです」と強い口調で言った。シーマは目に涙を浮かべ、「はい、取り消します!取り消させて
頂きます!!」と頭を何度もぺこぺこと下げた。「アタシを…同志だって…」と呟いてるので
今度は嬉し涙の様だ。
その後、セイラさんとシーマを病院の応接室に連れていき、今後について話し合った。
と、いっても連邦が「ジオン共和国亡命政府」の旗揚げに用意したものの説明に終止したのだが。
その中には軍事組織「自由ジオン軍」の組織と装備にも含まれる。
応接室のドアをノックする音が聞こえ、私は「入り給え。軍備の詳細は今来た男から説明しよう」
と入室してきた隻眼の将校に話を振った。「フェデリコ・ツァリアーノ大佐だ。ガラハウ君がここ
にいる理由の一つ、連邦のMS部隊を作った男だよ」
「閣下、それはいくらなんでも言い過ぎってもんで」とツァリアーノは照れ笑いをする。
「大佐、君は最初のMSパイロットの一人で最初のMS教官でもある。パイロットの確保が最大の
難関だった部隊の編成に君の功績は大だよ」
「はぁ、それは有り難くありますが。そろそろ本題に…」
「そうだね。このツァリアーノ大佐は自由ジオン軍の軍事顧問団の責任者だ。要するに相談事が
有ったらまずは彼に相談して欲しいってことだね」
「ツァリアーノ大佐です。お見知りおきを、
口調と所作でセイラさんに話しかける。それが堂に入ってるから「連邦軍一の伊達男」と言われる
だけのことはある。ところがセイラさんは眦を決して「ツァリアーノ大佐、わたくしは女王に
なったこともなるつもりもありません。『ジオン共和国亡命政府』の名目上な代表を引き受けた
だけですから。そこだけははっきりしておきましょう」と言い放った。
ツァリアーノは一瞬驚いた顔になったが、「これは失礼致しました、代表。自由ジオン軍の編成を
お手伝いするフェデリコ・ツァリアーノでございます。ご相談には誠意対応させていただきます」
と芝居がかった口調で返す。アルテイシア・ダイクンに関しては情報管制下にあり、大佐も事前に
彼女のパーソナル・データにアクセスできかったので下調べができなかったのだろうな。
ただ、口煩い程に共和主義者であることを主張するセイラさんに好感を持ったようだ。
「ふん。手負いの騎士とならず者の頭が姫様の最初の家臣って訳かい」とシーマが方をすくませる
と、「また、貴女はそんなことを…」とセイラさんが眉を顰める。
シーマは「いや、気分の問題ですよぉ。アタシは無学ですから、騎士物語にでも擬えないと頭が
付いていかないんですよ、姫様」と笑う。彼女も士官学校をまずまずの成績で卒業してるので、
教養が無い訳ではない。ただ、士官学校ではだいぶ不愉快な目に遭ったらしく、それで蓮っ葉な
物言いをするようになったらしい。「まぁ、いいでしょう。それと私のことは『セイラ』と呼んで
ください。親しい方にはそう呼んで欲しいのです」とセイラさん。私も「セイラさん」と呼びたい
が、立場上ねぇ…。
「それでは、連邦軍が貴軍に提供する支援についてご説明したいのですが、よろしいですか?」
と大佐。セイラさんは「お願いします」と答え、ツァリアーノの説明はほぼ2時間に及んだ。
私はところどころで相槌を打って大佐の言うことに太鼓判を押す係、という感じで説明は
進んだ。
内容は資材に関して言うと鹵獲したザクを一個大隊分、これにはサイド1のブッホ・ジャンク社
がリビルドした機体も含まれる。それとムサイ級軽巡を3隻とボーグ級護衛空母3隻、ペリー級を
9隻供与する。とはいえ、いきなり宇宙で艦艇に乗せる訳にはいかないので、当分はジャブロー
で編成と訓練をすることになるだろう。セイラさんは軍事の素人なのでシーマが横で解説を加えて
いる。シーマは主君の役に立てて嬉しそうで、シッポが生えてればぶんぶん振ってそうな感じだ。
病院からの帰りリムジンの中でシーマは「大将閣下、アタシ達に用意した『いいもの』謹んで
戴きますよ。マハルに帰りたきゃ、姫様をお守りして、ギレン共をぶちのめせ!ってのが
シンプルでいいじゃありませんか。それと『自由ジオン軍』ってのも気に入りましたよ」
と、やる気に燃えた目で言った。
今後、2つの宇宙要塞を攻略し、グラナダを解放してサイド3へ侵攻となった際に表舞台に立つの
が共和国政府と自由ジオン軍だ。連邦が宇宙市民の独立を阻止する、というのではなくジオンの
国民がザビ家の独裁体制を打倒する体裁を取り、そしてその象徴になるのがダイクン家だ。
以上はオクスナー・クリフが作った構想だが、ゴーサインを出しておいて今更ながら
(大丈夫なのかな…)という思いもある。セイラさんがジオンの人々から裏切り者、売国奴として
憎悪されることにならないだろうか?
オクスナーは「本土決戦との二択になれば、国民の大半はダイクン家を選ぶでしょう」
と澄ました顔で言う。
そもそもザビ家の勃興はサイド3住民のフラストレーションに起因すると彼は言う。
ジオン・ダイクンが亡くなり、残された共和国政府、後の公王デギンも首脳部の一員だった、
が連邦の経済制裁といった独立への横槍に対して右往左往するばかりだった。
その政府に対する不満をギレンは巧みに利用し、ザビ家独裁体制を打ち立てたのだと。
要するにジオンの国民は頼りになる指導者としてギレンを奉じている。
戦争の敗色が濃くなるほどギレンとザビ家一党の地位は危うくなり、サイド3での本土決戦
が目前となれば自身達の生命と財産を守るためにザビ家を捕らえ差し出すだろう、と。
差し出す先が連邦政府より共和国政府の方が心理的に楽だろう、とオクスナーは言った。
「とはいえ、部隊のMSパイロットはアタシを勘定に入れても10人かそこらですからねぇ、
ザクは大隊を編成できるだけ貰えるそうですが…」シーマは先が思いやられる、という顔をした。
「まぁ、人員については捕虜の中から志願者を募る。人というのは自分が最初の裏切り者に
なりたくないが、誰かが先に裏切ってたらそいつを悪し様に罵りながら裏で裏切るもの
らしいよ。聞いた話だがね。まぁ、来月のソロモン攻略戦には間に合いそうもないが、
その次くらいには戦隊か上手くすると分艦隊を編成できるくらいの人数になるんじゃないかな」
と景気のいいことを言った。
「アタシは自分を散々罵った連中を部下にする訳ですか。ま、そういうモンなんでしょうね」と
肩をすくめるシーマ。
「あ、あと自由ジオン軍での君の肩書だが、第一MS大隊長で少佐からスタートして貰おう。
働き次第では閣下と呼ばれる様になるかもね」とカエル顔で内示をするとシーマ少佐は顔を
強張らせ「随分と旨い話ですねぇ。アタシに何をお望みで?」と声に警戒の色を滲また。
「なに、君を厚遇しまくって他の捕虜にザビ家に背く動機を与えようってことさ。
『貰っといてやる』位の態度でいたまえよ」と私が笑うと「そういうことにしときましょう。
閣下の腹の中を探ったところでアタシの得にはならないようですしね」とまた、シーマは肩を
すくませた。
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== サイド2 ⇔ サイド1 航路
ステルス艦『ノーチラス』はこの一ヶ月敵の通商破壊部隊の捕捉と逆襲撃の任に就き、既に
3個戦隊撃滅を味方艦隊と共同で成し遂げていた。ノーチラスはその間一度も攻撃を受けて
いない。最も、攻撃は味方艦か自走ミサイルランチャーが行い、ノーチラスは偵察と観測を務めて
いたお陰なのだが。
現在は、鈍足の旧式重巡でありながら、巧みに警戒網をすり抜け再三輸送船団を襲撃する小癪な
『チェーホフ』を発見し、味方艦隊に通報する任に就いている。
「噴射炎確認しました。パターンからAIは『チェーホフ』と断定しています」オペレーターの報告
に艦長のイッセイ・マエバラ中佐は通信プローブの射出と自走ミサイルランチャーの切り離しを
命じた。味方艦を通信で呼び寄せ、チェーホフが追われて逃げて来たところをミサイルランチャー
で待ち伏せ、といういつもの仕掛けである。(我ながら性格の悪い遣り口だなぁ…)とマエバラは
思うが、部下の手前口には出さない。
「念の為だ。本艦の対艦ミサイルを再度チェックせよ」と命じた。CICに「緩み」のような空気
を感じたが故の命令だった。砲雷士官は手順に従ってのチェックを部下に命じている。
ニルス・テオレル軍曹はMS-05からMSー06E偵察機に乗り換えアンジェリーナ少尉の偵察小隊に
配置された。
「敵を撃てない」ニルスの欠点も偵察機ならば問題は無く、また彼の観察眼を見込んでのイリアス
艦長の抜擢だった。そのニルスが敵機の接近を知らせてきたが、報告が「敵編隊20機以上が接近!
MSは識別表にない機体で首があります!」「敵MAには飛行機に手と足!?」という代物で
イリアスは「テオレルはよくよく新型機に出会う運があるようだ」と苦笑しながらも戦隊の艦載機
全機発進を命じた。
いつものように偵察小隊以外の27機、9個小隊で出撃したチェーホフMS隊だったが、いきなり
ビームの直撃を受けMS4機が火球となった。「狙撃機か大砲持ちがいる。撹乱膜展開!」イリアス
は命じながら(新型はベムより遥かにセンサー性能がいい…)と戦慄を覚えていた。何しろMS-06
の有効射程の遥か手前で狙撃されたのである。
チェーホフ隊は回避機動を取りながら敵編隊に接近する。「手足の生えた飛行機」MA16機が
まず接近し、旧式MA、G-1とは段違いの機動、AMBAC機動を見せながら接近し、ビームと大量の
ミサイルを放った。ザクも欺瞞装置を作動させ、フレアを放って回避するが、弾幕に6機が囚われ
爆散した。「『飛行機』は本物のMAだ!G-1のつもりだと死ぬぞ!」イリアスは激を飛ばすが、
本物の恐怖はこれからだった。
20機に減ったチェーホフ隊は「首がある」敵MS12機と接敵したが、敵の新型はこれも旧型とは
段違いの機動で接近し、これまたベムより遥かに速い動作でビーム銃を向けたちどころに4機が
犠牲となる。(敵は急所を狙って仕損じない技量の持ち主ばかりだ、不味いことになった…)
イリアスは自らのMS-06F-4に回避機動を取らせながら、撤退を考えていたが、1機の敵MSが
味方に接近し白兵戦の間合いに入った時驚愕するべきことが起きた。
敵はザクを光の剣で両断したのである。イリアスには盾に狼男の絵を描いたその敵が笑ったよう
に見えた。
「全機、閃光弾射出!離脱する!!」戦隊長は半数の15機を失い離脱を命じた。閃光に一瞬
怯んだ新型から逃れたチェーホフ隊だったが、そこに偵察小隊から「敵MA接近!」と警報を受け
再度閃光弾を使用する羽目になった。なんとか15機はその場を切り抜けたが、機雷を搭載して
いた機体が撃墜されていたので母艦まで追撃を受けるのは必至だった。
「ヘクトルを残して来て良かったな…」イリアスは独り言ちた。
「おーおー泡食って逃げてくぜ」黒いGMに乗ったテネス・ユング大尉は敵の引き際に感心
しながら悪態を垂れた。「俺がビームサーベル使ってザクを真っ二つにしたのにずいぶん
驚いた様に見えたな」隣のヤザンがビームサーベルを掲げて言うと、
「ま、白兵戦でも敵わないとなりゃ逃げ出すわな。しかも前と違って機雷も撒かねえで
逃げたんで母艦まで案内して貰えるって訳だ。Y中隊全機、キツネ狩りの時間だ。奴らを
追撃して母艦もろとも仕留める。『アレキサンドリア』もおっつけ追い付く。ぼさぼさしてる
と水兵共に『チェーホフ』を掻っ攫われるぞ!」と中隊に檄を飛ばす。
「ザクは俺の小隊が引き受ける。残りでフネを食いな」とヤザン。
イリアス隊は新型MA『飛行機』を振り切れず母艦に帰還した。イリアスはMSデッキから
ブリッジに上がり重巡チェーホフの指揮を取った。
その数分後、『飛行機』12機が背中に『首つき』を乗せているのをチェーホフの光学センサー
が捉える。赤外線であれば飛行機とMSは1機に見えたであろう。
14機のザクは補給も完了しないままに再発進することになった。戦隊は副司令格のヘクトルの
命令で補用機の準備を進めており、さらに9機を発進させることができた。
合計23機のザクは敵編隊を母艦への突撃を阻止する陣形を組んだが、先程の戦いを見るに
効果は疑わしかった。
「テオレル軍曹、今度は私達も戦わなきゃいけない。君が狙わなくてもいいから、敵の方向
目掛けて曳光弾をとにかくばら撒いて。ニルス、大丈夫だから肩の力を抜いて」と
アンジェリーナ少尉がニルスを励ますが、ニルスはぶつぶつと「大丈夫だよ、マリー。
ぼくは大丈夫だ…」独り言を呟き、聞いていないようだ。サイモン曹長は小隊長に
「ニルスはいつもの調子ですね」と06Eの肩をすくめさせた。
補用機のMS-06C-6に搭乗しているアーサー伍長、タミルとカミル、双子の兵長達は
初陣がチェーホフ防衛戦になり震えが止まらないでいた。口では「新型、上等じゃねぇか。
俺の力をアンジェリーナ少尉に知らしめるぜ!」「へたれニルスが出撃で、俺らが待機とか
納得いかなかったんだ。やってやる!」「そうだ!俺達のコンビネーション見せてやる!」
と勇ましかったが。
敵編隊接近にまずチェーホフが行ったのはミサイルの発射だった。
敵編隊はMAとMSが分離し、一斉にビームを放つが途中で光線が捻じ曲がった。
「初手がビーム撹乱膜か。『キツネ』呼ばわりされる訳だ。中隊各機、食えねえ相手だ。
シメてけよ!キャノン各機は移動だ。そこからじゃビームが無効になる」テネス大尉は
中隊に活を入れる。
「さっきと違って敵は後がねえ、必死で来るぞ」ヤザンも警告を発する。
麾下の各機はRGMー79『GM』の初陣ということもあり、気を抜いた様子はない。
『ハッテ沖海戦』で黒い三連星を撃退した501戦闘団Y中隊の練度は新型機を得て、
さらに練り上げられていた。
真っ先に発砲したのはチェーホフ隊のMS-06E 2機だった。
優れたセンサー性能で捉えた隊長機とその横の派手な機体に対艦ライフルを放った
のだった。しかし、黒い隊長機と派手な機体は易々と回避してのけた。
「いいねぇ、GMは。ベムとは段違いだ」とテネスが新型機の性能に感心していると
ヤザンは「『野獣』は銃弾じゃ死なねえんだよ!」と叫びながら06Eの2番機に
ビームカービンを3連射する。
「きゃあ!!」サイモン曹長機はコックピットの直撃だけは避けたものの、頭部の
センサー全損、右腕は肩からもぎ取られ、胴体にもダメージが及んだ。
「シフォン! 貴女は後退して。チェーホフじゃなくて事前の打ち合わせ通り合流地点に」
アンジェリーナは2番機へ離脱を指示し、テオレル機に囮となって2番機後退を援護せよ、
と命じた。3番機は両手に持ったマシンガンで曳光弾をばら撒きながら敵の前面で派手に
スラスターを吹かす。
「おー、なんかイキのいいのがいるじゃないか」テネスはニルスの機動に感心した様子だが、
彼の射撃は味方を狙ったものではなくただ曳光弾をばら撒く単なる虚仮威しなのを見切っていた。
ただ、AMBAC機動と噴射を組み合わせた機動は中々に高度で、過去、何度もベム編隊が逃した
旧ザクの搭乗員が乗っているのだろうと思わせた。GMのAIも機動の癖から77%の確率で同一
人物の操縦、という結論を出していた。
「ヤザン、ちょっと面白いのがいるから相手してやってくれや」テネスは彼の最強の手駒を
「ぬるぬる動くザク」にけしかけた。
ヤザンは2機が1機に見えるコンビネーションで襲いかかってきた2機のザクを両方ビームサーベル
両断したところだった。「バカめ!ビームサーベルの間合いじゃ関係ねぇんだっての!」
「ん!?あの目玉ザクか。確かにいい動きだ。お前ら、ちょいと遊んでくるからサボるなよ」と
小隊員に一言入れるとヤザンのGM軽量型はニルスの06E目掛けて飛んだ。
軽量化とスラスターを強化したGMの機動は鋭く、いとも容易く大推力のMS-06Eに白兵戦の間合い
まで入り込んだ。「ヘイ!ひとつ遊ぼうぜ!」とオープン回線で目前のザクに挑戦するヤザン。
「派手な新型! 艦長が一番警戒してた奴だ…」ニルスは生きた心地がしない。
両手のマシンガンを乱射するが、ニルスが殺すつもりで撃っても有効弾を出すのが難しい相手に
腰が引けた威嚇射撃では威嚇にもならなった。
「この距離なら、アックスだろうがよ。判断が遅え。死ね!」ヤザンのGM『The Beast』は
06Eの胴体を両断すべく横殴りにビームサーベルを振る。
その刹那、06Eはバクパック上方のスラスターを吹かし降下、胴体は守ったものの、頭部を
ビームの剣で切り離された。「ひゃあぁぁ!!」ニルスはオープンチャンネルが入っているのも
気づかずに悲鳴を挙げた。
「俺がしくじった!? しかも相手はガキかよ! おい、ガキ、投降しろ。機体は貰うが
命は助ける!」とヤザンはし損じたザクに投降を呼びかけた。
メインセンサーを頭部ごと失った状況では次の一撃で確実に仕留められるだろう、と思ったが、
敵の技量はここで殺すには惜しい、と思わせたからだ。
だが、ニルスの返答は閃光弾だった。「ちっ!」GMが光学センサーを守る動作を見せた隙を
付いて06Eは離脱していた。ヤザンはビームカービンを3連射したが、モノアイを失った機体の
動きとは思えない動きで躱して行く。「すまねぇ、テネス。例のザクを逃しちまった。野郎、
殺す気は皆無だが、躱す気だけはあった…」ヤザンは中隊長機に通信を入れた。
チェーホフでブリッジでイリアスは目前の戦闘を眺めながら(善戦はしているが、1機も敵を
仕留められていない。恐るべき練度だな…)と半ば感嘆していた。
敵の『飛行機』を2機、ザクのバズーカに手足をもぎられて後退しているが、MSは全機無傷だ。
一方、こちらは初陣の2機を始め既に6機が撃墜。7機が戦闘に耐えられない損傷で駆逐艦が待つ
合流地点に向かった。現在、戦闘可能なのは10機。
チェーホフと2隻の特設巡洋艦は目立たぬよう逆噴射を行って敵編隊との距離を取っていたが、
突如敵編隊とは別方向から飛んできた4本のビームが特設巡『クヴァシル』を貫いた。
元貨客船は機関部から炎を吹き上げ爆沈した。
「『大砲付き』射撃位置を変えてきたか!」イリアスは叫んだ。初手の撹乱膜で完封できるとは
思っていなかったが、想定よりずっと早い。(おそらくは大砲も飛行機で運んだのか…)
敵の発想に舌を巻く思いだった。
「イリアス、生き残りをまとめて合流地点に急ぐべきだ。先行した駆逐艦が味方と連絡を
付けられたかも知れん。このままじゃ全滅するぞ」『モンカルム』のヘクト艦長が撤退を
具申した。「そのつもりだが、撤退こそ難しい。下手すると合流地点で襲撃されるぞ…」
イリアスは損傷して後退した部下たちまで巻き込んでの全滅を恐れた。
「殿は『モンカルム』で引き受ける!俺もザクで出て時間を稼ぐから貴様もそんなとこに
突っ立ってないでザクで出やがれ!」ヘクトが怒鳴り声でイリアスに活を入れた。
「分かった。頼む」(すまんな、戦友…)イリアスは心の内でヘクトに頭を下げながら
チェーホフに方向転換しての離脱を指示し、自分はMSデッキへ向かった。
四角い船体の特設巡が1隻、火力を総動員して弾幕を張っている。
そこから両腕にバズーカとマシンガン、足にミサイルポッドを装着したザクが飛び出して
来て弾幕を展開している。
狙って撃っている弾幕ではないのでGMに被害機は出ていない。
それより、第一目標のチェーホフが方向転換して逃げ出しそうなのが問題だ。
「ちっ、欲かいてキャノンに特設艦狙わせたのが裏目かよ」とテネスが独りごちた次の
瞬間、何条もの太いビームが『モンカルム』を捉え、四角い船体は火の玉になった。
「『アレキサンドリア』もう着きやがったか!クソっ!水兵にいいとこ持ってかれるぞ!」
数分後、戦場から背を向け離脱しようとする『チェーホフ』も後部の砲塔と艦橋にビームを浴び、
大損害を受ける。しかし、撹乱弾を余程大量に持っていたのか再び後面にビーム撹乱膜を展開し、
連邦の新型重巡のビームから身を守った。『アレキサンドリア』は対艦ミサイルを発射するが、
長距離ミサイルは『チェーホフ』の発射するデコイに引っかかるか直掩のザクに撃破された。
「『潜水艦』の方に逃げやがって、バカが。中隊全機、八つ当たりだが、
あの張り切って撃ちまくってるザクにリンク統制射撃だ」
ヘクトのザクは何十条ものビームに貫かれ爆散した。
「それじゃ、追撃するぞ。あのボロ船が『潜水艦』の待ち伏せ地点にたどり着く前に俺らで
沈める」テネスは冷静に中隊をまとめ、追撃に移った。先程のザクの姿に思うところが無かった
訳ではないが、戦況が向こうに傾けば自分も同じことをするだろうな、と割り切っていた。
『チェーホフ』はひとまず航路上にあるデブリ帯まで辿り着き、不法投棄された貨物船の
陰に身を隠し、被弾した後部の応急修理を始めた。直撃を受けたブリッジは要員ごと消え失せ、
修理不能で生き残っても、ソロモンに後退、そこで廃艦にされるだろう。
イリアスのザクが周囲を警戒していたが、ふと勘のようなものが働き、ザクの身を翻すと
センサーが動体反応を捉えた。「ミサイル警報!!」イリアスは母艦に警報を発すると
何かをガスか何かで打ち出した物体めがけマシンガンを連射する。
そいつは弾幕に捉えられ破壊される。どうやら無人機かなにかの様だ。対艦ミサイル4発も
直掩のザクに撃破された。念の為、『チェーホフ』はイリアスの指示でフレアとデコイを
射出し、慌ててその場を離れようとした。
が、いずこからか飛んできたミサイル6発が『チェーホフ』の艦前部に殺到し、砲塔と
艦首のミサイルランチャー、MSハッチから炎を吹き出した。
「総員退艦!!」イリアスは断腸の思いで艦を捨てる指示を出し、自分は脱出するランチを
援護する為、恋人でもあるアンジェリーナ少尉に「お前は生き延びろ」とだけ告げ、彼女の
06Eが補足した敵編隊へザク5機を率いて突撃した。
MSとMAから発せられたビームで全機撃墜されるまで数分しか経たなかったが、脱出した
乗組員と損傷機が離脱するまでの貴重な数分になった。
アンジェリーナ少尉の機体に先導され合流地点に向かい、そこで軽巡『アガノ』と合流
することができた。
アンジェリーナは軽巡のワシヤ艦長に「直ちにここから離れてください!!敵は新型MSと
MA、それに新型重巡です!1隻ではとても対抗できません!!」とザクから降りずに警告を
発した。
『アガノ』に降りると、MSデッキで出迎えたニルスからシフォン・C・サイモン曹長が
医療室での治療虚しく死亡したことを知らせれた。顔を涙にぐしゃぐしゃにしたニルスに
アンジェリーナは冷たく「ニルス・テオレル、本当は腑抜けのあなたを撃ち殺してやりたいけど、
あなたニュータイプなんですって。だからこの艦を指揮する『旋風』のワシヤ大尉に頼んで連名で
フラナガン機関に推薦しといたわ。精々いい薬を打って貰って役に立つ兵隊におなりなさいな。
もしかしたら、空想の彼女も現実になるかも知れないわよ」
八つ当たりだと自分でも分かっていたが、想い人と多くの戦友が目の前の少年の怯懦に犠牲に
なったと思うとやり切れず辛くあたるしかできなかった。
その日、連邦の各メディアは『501戦闘団』が新型MS、RGM-79『GM』に搭乗し、航路上で
何度も輸送船団を襲撃していたジオン軍の重巡洋艦『チェーホフ』と巡洋艦2隻を撃沈した、
と報じた。
この報道を受けてジオン国営放送はチェーホフ戦隊のイリアス艦長はじめ全ての戦死者に2階級
特進と貴重な敵新型機の情報を持ち帰った生存者全員の昇進を発表した。
イリアスらの死はいずれの陣営にとってもプロパガンダの材料となった。
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== サイド1⇔サイド5 航路上
重巡『ファルメル』を旗艦とする、ファルメル戦隊は通商破壊部隊の応援要請に応え出撃すること
10数回、シャアはMSとMAを40機以上、後部が格納庫となっている航空戦艦を2隻。艦首が格納庫
となっている航空巡を4隻撃沈し、ジオンのトップエースとなった。
最近では赤いMS-06Sを確認すると敵が後退を始める程で『赤い彗星』の伝説はこの戦役の中で
確立された、と言っていいだろう。列機のブラウンとマイヤーもスコアを挙げ、両名とも撃墜
10機以上のダブルエースとなり、准尉に昇進していた。シャアを見習って両肩ともスパイク
アーマー仕様にしたMS-06R1Aリック・ザクはそのスパイクアーマーを真紅に塗り敵味方から
『レッド・ガード』と恐れられた。
ブラウンとマイヤーは間に立ったデニム軍曹の働きもあって少年兵達のリーダーと目されていた。
二人共少年兵達の訓練に熱心に参加し、シャアの教えを伝授していったので、戦隊の搭乗員全員の
レベルが底上げされていった。
初陣の搭乗員も最初は戦果を挙げられなくとも、何度か生き残ると経験を積み戦果を上げることが
可能となった。
オリヴァー・マイ整備長は機体整備の指揮を執る傍ら、技術本部に提出するレポートを執筆し、
だいぶ疲労が溜まっているようだった。彼は司令の専用機MS-06Sの機付き長を兼ね、シャアが
出撃する度に技術本部が寄越してくる新型パーツを06Sに組み込み、作戦開始前に比べ、
MS-06Sの推力は10%、反応速度は6%の向上を見せていた。
この様に順調そのものに見えるファルメル戦隊だが、シャアは難しい顔をしている。
マスクの為、目元は見えないが、口元を見れば機嫌が悪いのが分かる。こうなるとドレンを
はじめとするブリッジクルーはシャアに話しかけるのを恐れ、格納庫からマイ整備長を呼んだ。
こういう状態のシャアに話しかけられるのがマイだけだからだ。
マイが恐る恐る話しかけると、シャアは「ドレン、アイスラ少尉を」と短い指示を出す。
ドレンはオペレーターを介さず直接艦内放送で「フーバー・アイスラ少尉、ブリッジへ、至急」
とだけ告げた。数分後、息せき切ったアイスラがブリッジに出頭した。
「やぁ、フーバー。調子はどうだね?」シャアは死ぬほど急いで来たアイスラに調子を尋ねた。
アイスラも「もう、死ににそうです」と答える訳にもいかず「我が小隊はいつでも出撃可能で
あります!と直立不動で答えた。
シャアは「結構。では、先日貴様が偵察した件だが、私が戦った護衛部隊の後方に輸送船団は
居なかったのだな?」と尋ねた。
「はい!自分が発見したのは老朽船に骨組みだけのコンテナやバルーンを載せた囮船団で
ありました!」と少尉は答えると、シャアはマイの方を向き「マイ大尉、君はどう思う?」
と質問した。マイはしばらく考え込んでいたが「やはり、陽動かと。こちらを撃滅する『釣り』
であればもっと大きな戦力を用意しているでしょう。例えば『チェーホフ』を襲撃した新型機
部隊のような…」
「そうだな。味方が応援を要請してくるにしては敵が弱すぎる。おかしいと思い3日前に応援を
要請した『ライプツィヒ』に問い合わせところ、彼らが遭遇した敵と我々が戦った敵とではMSの
数が合わない。約一個中隊分少ないのだ。『ケーニヒスベルク』『アッティオ・レゴロ』に
問い合わせても同様だった。
マイ大尉、私は連邦軍がソロモン攻略に向けた物資の集積を終えているのでは、と思っている。
本物の護衛対象が少ないから通商破壊部隊に対し先日の『チェーホフ』のように罠を仕掛ける
余裕があるのではないかな?」とシャアは自説をブリッジクルー達に開帳した。
マイ整備長も「自分もここ何度かの戦闘で若年兵が初戦果を上げることが多過ぎると思い、記録を
洗ってみました。どうも敵機のうち、モビルポッドは無人機の可能性が大です。
モビルポッドは自動モードで運用されるとは言え、あまりにパターン化され過ぎた動きで誘導弾も
使用していないようです。ハリボテの輸送船団を同じくハリボテの護衛部隊で守り、我々を航路上
に貼り付けにする戦略と愚考します」と自説を述べた。
「なら、極端な話明日、ソロモンが攻撃されてもおかしくない、と言えるな。
私はソロモンの総司令部に作戦の打ち切りを具申するつもりだ。我が戦隊の次の戦いの舞台は
ソロモン空域となるだろうな」とシャアは戦隊の引き上げを示唆し、マイは「拠点防衛となれば、
技術本部が開発したMS用ビーム砲台を回してもらえないか打診してみます」と答えた。
シャアは頷きながら「頼むオリヴァー。若年兵をあの『ジム』とやらに当てれば皆戦死する
だろう。彼らはできるだけアウトレンジで戦わせたい」と頭を下げ整備長を慌てさせた。
ブラウンとマイヤーの二人はシャアの側に立ちながら深刻な顔をしていた。
これまでの訓練で少佐の教えを忠実に再現できた者は数える程だった。若年兵達はまだ訓練を
積む必要があるが、余り時間は残っていないようだ。
ブラウンは「司令、若年兵の訓練メニューを見直しくたくあります」と具申した。
シャアは「貴様らに任せる。存分にやれ」と発破をかけた。
ただ、彼らのいずれもまだ知らない。ソロモンの前に彼らが戦うべき戦場を。
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== サイド7 『V作戦 R&Dセンター』
ゲーツ・キャパは巨漢の軍人に連れられ、ここサイド7にやって来た。
「ここで、俺のMSが待ってるんだよな?大尉」と今やすっかり懐いていたバスク・オム大尉に
質問した。「そうだ、ここ『V作戦 R&Dセンター』に君の搭乗機が用意されている。実戦に
出られるかどうかは今後の訓練結果次第だがね」出来ればこの、世間ずれしてるようで幼い
少年が実戦に参加して欲しくないバスクは一縷の望みとも言えるセリフで答えた。
「あの~、私の仕事は?」とナイン・バルトが恐る恐るといった様子で強面の軍人に質問する。
「君は向こうに着き次第、7バンチに行ってくれ。そこの実験小隊にナカモト博士がいるから
彼の指示を仰ぐ様に。キャパ君は自分が13独戦の司令部に同行する」とバスクは事務的に告げた。
サイド7に着くとバルトは連絡艇で7バンチに向かったが、彼らの乗ってきた宇宙船も結局7バンチ
のドッグ・ベイに入港した。
ゲーツはバスクに連れられオフィスのような場所に通され、そこでハンサムな軍人に引き合わ
された。バスクはまるで肉親にあったように嬉しげに「少佐、お久しぶりです。彼が候補生、
ゲーツ・キャパ君です。オーガスタ研究所の出身だと言うのに素直でいい子ですよ。
よろしく願います」とゲーツを紹介した。
「任務ご苦労だったバスク。君がゲーツ・キャパ君か。私がここの実戦部隊、第13独立戦闘団を
預かっているチャールズ・エルヴィン・ベッカーズ少佐だ。チャーリーと呼んで欲しい」と
ハンサムな軍人は握手を求めてきた。服の上からでも分かる軍人の体躯を警戒し、おずおずと
言った様子で手を差し出すゲーツ。握られた手は温かった。(このオッサン、体温高くないか?)
ゲーツは疑問に思ったが、チャーリー少佐が真剣な顔で「ゲーツ君は14歳だったね。そこでもう
一度私からも志願の意思を確認したい。戦死するリスクを冒してでも、我々の一員となり、
連邦市民の生命と権利を守るために戦ってくれるかね?」と質問したので頭を切り替え、
「俺は施設で『可愛そうな子供』やってるよりここで軍人になる方がいい、と思ってきました。
今更『やめた』なんて言わないですよ」と胸を張った。
チャーリーは一瞬だけ顔をしかめたがすぐ笑顔になって「連邦軍にようこそ、ゲーツ・キャパ君」
とゲーツの志願を受け入れた。
その後、同僚たちが待機している待機所に連れられ、そこで皆に紹介された。
「諸君、彼が今日から仲間になるゲーツ・キャパ伍長だ。14歳でここで最年少になるから、
ジョブ曹長、よろしく頼む」と一番年長らしい若い軍人に話しかけると軍人はピシッと敬礼
して「任せてください。施設育ちでお守りは得意であります!」と返した。
ゲーツは(コイツ、施設育ちかよ。厄介な奴かもな…)と警戒した。立ち回りが上手く大人
にはいい顔して裏で年下の子をいびるのが彼の知る「施設育ち」だからだ。
「仲間」を一瞥するとニヤケ顔のタレ目と人の良さそうなメガネ、チビ2人とタブレットに
夢中でこちらを無視しているかのような陰気な奴だった。
(これが精鋭のMS部隊ってマジかよ…)ゲーツは何か騙されているのでは、という気分に
なったが、陰気がこちらを向いた時、脳内に電気が走った。(タダモンじゃねぇぞ、コイツ…)
やはり噂通りのNT部隊のようだ、とゲーツは認識を新たにした。
するとゲーツより背の低い少年が近づいてきて「俺はウモン・サモン。ここじゃお前の次に
新参さ。新参者同士仲良くしようぜ!」と無理やりといった感じで彼の手を握りぶんぶん
と上下させている。
(馴れ馴れしいチビだな)ゲーツは思ったが、声に出さない程度は世慣れた少年だったので
黙って手を握らせていた。
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ララァはまた夢を見た。夢の中の貴人はララァに「お前は研究所の者に『散歩に行きたい』と
言わねばならぬ。その際にはお前と親しいマリオンとその保護者モーゼスが同行するよう求めよ。
お前が目覚めたらその日から市内の公園に出かけ、10日間それを続けねばならぬ。
よいな、10日であるぞ」
こういうと貴人は光と共に去っていった。ララァの意識は闇に落ちた。
指揮管制艦『トリローチャナ』のオペレーションルームでレヴァン・フウ特務大尉は傍らの
クリフ准将に不安そうな顔で「何か登場人物が増えましたが、大丈夫でしょうか?」と
質問した。オクスナー・クリフはポーカーフェイスで「心配は無いさ。なにせモーゼス博士の
方から亡命を打診してきてね。彼やマリオンから情報が漏洩する心配はない。
まぁ、彼女たちを連れてくる実施部隊にも既に連絡済みだしね」と言うとダグザ少尉に
「実行部隊に参加する少尉には多少モーゼス博士を手荒く扱って欲しい。あくまで博士が
ララア拉致の巻き添えで連れ去られた、という体裁の為にね」と注文を出した。
「気絶させてもよろしいですか?」と質問するダグザに「研究に差し障りがある怪我でなければ
許可する」とクリフ。「気絶させると重いからさ。意識を保ったままの方がいいよ」と小男。
「それもそうですね。拳銃を突きつける程度にします」とダグザ。
クリフは「少尉もだいぶ特殊作戦に馴染んで来たようだ。どうだね?ゴップ大将の副官から
情報部に転任するのは?」と笑みを浮かべながら尋ねた。
すると傍らのサングラスをかけた長髪の軍人が「止めときな、お若いの。こいつの甘言に乗ると
人生棒に振ることになるぞ」と言った。小男が「然りだな。俺達みたいになっちゃいかんよ」
と混ぜっ返す。
クリフは顔色を変えず「まぁ、今すぐでなくとも少尉が諜報活動に興味があるなら、参考になる
資料や参考書、論文などを纒めた私のアーカイブへのアクセス権限を与えよう。
材料を集め自分で考えることが必要な仕事だからね」とダグザを勧誘することを諦めていないよう
だった。
ダグザは(俺に諜報活動の適性があるとは思えないんだがなぁ…)と思うが将官に高く評価されて
いるのは軍歴を始めたばかりの若者には誇らしく、時間があるときにアーカイブを覗いてみるか、
という気分になっていた。
ここのところ月刊ペースになり、まずいなと思っております。
ガンダムA誌で『キシリア転生』が始まるので一応は発売日の11/26を締め切りに設定したのですが、連休中に投稿でき胸をなでおろしております。
今回から登場しました「ジオン共和国亡命政府」と「自由ジオン軍」は今作の構想時点から
登場させるつもりの設定でした。今後は「コイツはどっち側に行くかな?」といった視点で本作を楽しんで頂けると幸いです。
シーマ・ガラハウは今後「アルテイシア・ダイクン一の家臣」と言った立ち位置で
活躍することになると思います。
重巡『チェーホフ』が連邦軍の何重もの罠に嵌り撃沈されました。
ニルス君は原作通りのレ○プ目になり、フラナガン機関に送りに。
今後どうなるのでしょう?
サイド7の独立13戦闘団は2個小隊8機を編成できるだけのメンバーが集まりました。
ですが、本作の連邦軍中隊は12機ないし16機編成ですので、さらに増える予定です。
次回は年末ですのでなるべく早く投稿したいと思っております。
今後もとも、よろしくお願い致します。