果たして彼らの運命はいかに。
==== サイド7まで数千キロの宙域
チベ改級『レッドバイカウントⅡ』は敵新型MSの開発拠点サイド7を目指し、通常航路から
外れたコースを5隻のムサイ級軽巡を率いて進んでいた。既に艦隊に推進材を補給した輸送艦は
ソロモンへ帰還し作戦に参加する6隻のみの航行だった。
チベ改級はチベ級重巡の甲板中央に居座る巨大な艦橋を撤去し420mm3連メガ粒子砲塔を
3基前方を指向して設置した「巡洋戦艦」である。チベ級に対し、前方への火力が3倍以上に
増強された本級をジオン軍は巡洋戦艦にカテゴライズし直したのである。
戦意高揚の一環として「巡洋戦艦」と喧伝している面も多分にあったが。
チベ級は建造当時「宇宙戦艦」とされていたので元に戻したとも言える
航海用艦橋はザンジバル級と同様に艦首に移設された。戦闘時のCICは主装甲の内側、
バイタルパートと呼ばれる部分にある。艦橋の移設に伴い艦首のミサイルランチャーは
廃止され、艦首下のMS格納庫はMS-09ドム12機を搭載すべく大型化している。
機関も換装され、「巡洋戦艦」に相応しい機動力を与えていた。
もっとも、「機動巡洋艦」ザンジバル級のような大推力は発揮できない。
ムサイ級の最大戦速と同程度の速度を発揮できる、という程度である。それでも軽巡に
ついていける機動力は主力艦に相応しいものであった。
『レッドバイカウントⅡ』は重巡『レッドバイカウント』の改装艦ではなく、戦前より改装工事
を行っていたものを新たに命名したものである。内装も一新されており、CICの提督席は真新しい
革の匂いがしていた。その席に座るコンスコン少将は(被弾したら、これ大丈夫なのか?)と思いつつも傍らの参謀に「先程の伝令、落ち着いたものだったな」
と話しかけた。参謀は「そうですなぁ。ウチの若い士官にも見習ってほしいものです。
閣下の前に出ると皆、縮こまって噛まずに報告することすらままなりません」と笑っている。
「士官学校を繰り上げ卒業した者や招集された予備士官ばかりだからな。あのようなベテランと比べるのは酷だろう」『レッドバイカウント』のベテラン乗組員は士官、下士官の
不足により昇進して他の艦の艦長や幹部に転出して行ってしまった。
部下の出世は喜ばしいことであったが、果たしてひよっこ乗組員ばかりで生まれ変わったこの艦の性能を十全に発揮できるかは怪しい、とコンスコンは思っている。
旗艦の艦長として共に戦ってきた大佐は「養成は万全であります」と言うが、声色から不安が滲み出ているのをコンスコンは感じていた。
「あのアイスラ少尉に将校斥候をしてもらう、というのはどうかな?」コンスコンは参謀に自分のアイデアを話してみた。
参謀は「カワハヤ少尉に行ってもらう、というのは新型機ドムを敵の目に晒すリスクがありますし、良いのではと」と同意している。「では、伝令は少尉が連れてきた
下士官に任せ、彼には偵察に出て貰おう。途中まではドム一個小隊で護衛するが、サイド7宙域に入ったら彼一人で偵察することになる。口頭ではなく正式な指令書を発行して武勲に応えるとしよう」
鬼が出るか蛇が出るかわからない敵の拠点を偵察するのであるから普通の者なら尻込みするであろうが、あの落ち着いた若者なら引き受けるだろう、とコンスコンは思っていた。
「どうしてこうなった…」フーバー・アイスラはMS-06Eのコックピットで呟いた。
母艦ファルメルへ帰還するため機体のチェックを行っていたら、いきなりまたCICへ呼び出され艦隊司令コンスコン少将直々にサイド7宙域への強行偵察を命じられた。少将はフーバーの肩を
掴み「危険な任務だが、是非貴官にやって貰いたい。成功の暁には昇進できるよう取り計らおう」と(貴様を見込んでいるのだ)という態度で命令、というより頼み込むような口調で言われると
フーバーも「は!フーバー・アイスラ少尉、サイド7宙域への斥候任務につきます!」と返事してしまった。少将や参謀達はうんうん、とにこやかな顔で頷いている。
「貧乏クジ引いちまったなぁ。ファルメルの06Eなら落とされても少将の懐は傷まない、って勘定なんだろうな」と後続する06Eに乗るケイト・ヨン軍曹に近距離通信で語りかけた。
「何を言うんですか。コンスコン少将は真剣な様子で少尉に頼んでたじゃないですか」とケイトはフーバーをたしなめた。(こいつ、熱烈なジオニストだった。忘れてたぜ…)ファルメルへの伝令を命じたジャニス・ハラウェイ軍曹ではなくケイトを母艦へ行かせるのだった、と後悔したが
既に遅し、彼女は「敵の新型機開発基地」を見つけようと張り切っていた。
フーバーがため息をついていると、護衛のMS-09から「我々は航続距離の関係からここまでだ。武運を祈る」という通信が入り、離脱していく。
フーバーは(へぇへぇ、途中までだけどご苦労さん)と思いながらも06Eに敬礼させドム小隊を見送った。
観測範囲を広げ敵から発見される確率を下げるため2機のMS-06Eは散開して進む。
ここからは近距離通信もリスクがあるだろう。フーバーはヒリヒリする感覚を覚えながら宇宙を飛んだ。ケイト機も注意深く最低限の噴射で進んでいる。
数分後、フーバー機のセンサーが異常を検知した。レーザーを発振しているデブリらしき物体を見つけたのだ。「ヨン軍曹!敵の偵察ドローンだ。旗艦へ通信して君は帰還しろ。俺はこの先を
見てくる」とフーバーは意を決して単独で偵察活動を続行すると宣言した。
ケイトは感動した口調で「ご無事で…」と言うと離れていった。
「生きて帰れたらジオン十字章もんだな」
フーバーは今更ながら柄でない勇敢な言動に呆れていた。
しばらく注意ぶかく進むと、スクリーンの片隅に不自然な物が映った。フーバーが慌ててズームするとそれは一見残骸に見えたが、非常に細いケーブルが伸びているのを06Eの光学センサーは
捉えた。「有線式の偵察ドローン!?いや、それにしちゃデカイぞ…」それは対艦ミサイル程度なら内蔵できそうな大きさがあった。当然対MSミサイルも搭載しているだろう。
フーバーは慌てて06Eのスラスターを全力噴射して離脱した。
== ステルス艦『ガー・フィッシュ』
アバーエフ少佐はサラミス級軽巡『テンリュウ』の副長からこの新型艦の艦長へ抜擢された。
辞令を渡したテンリュウの艦長は「統合参謀本部肝いりの人事だそうだ。君は随分な有力者とコネを持ってたんだな」と嫌味を言った。ガー・フィッシュはメガ粒子砲を一門も備えていない
異形のフネだが、レーダー以外のセンサーは充実しており偵察艦として高い性能を持っていた。
M粒子発見以前のデータ・リンク戦術時代の艦に近い運用ができるこの艦は士官学校時代や少尉時代に習ったことが応用できるという訳でアバーエフとしては有り難かった。
ルナ2艦隊が航路帯から外れた宙域に設置したセンサーが敵MS2機を捉えた為、現在は融合炉をアイドリングして息を潜めている状態だった。
敵は偵察機らしく、ガー・フィッシュが全力運転をしていればたちまち位置が露見し接近してくるかもしれない。
対空兵装として対MSミサイルは搭載しているが、見つからないに越したことはない。
あらかじめ切り離しておいた自走ミサイルランチャーから敵MSを発見した、というアラートが入る。ミサイルランチャーの対空兵装をオンラインにし敵の行動を注視していたが、ランチャーを
発見したであろう敵機は急速に離脱していった。どうやら非武装の機体らしい。
「ランチャーを戻せ。ここにはもう敵艦は来ない。本艦も移動する。対空監視を厳とせよ!」
アバーエフの命令で息を潜めていたガー・フィッシュが動き出す。
「目潰しされた状態での不意の遭遇戦ではない。懐かしい戦争が帰ってきた」彼はそう呟いた。
「あっぶね~。」フーバーは残骸に見せかけたバルーンを破裂させて移動を開始した無人機を確認しながら引き続き逃走していた。
アレを追跡すれば母艦を発見できるだろうが、MSの待ち伏せに遭うだろう。
単騎で突っ込む度胸は無かった。
とにかく、航路から外れている宙域に敵は戦力を置いている。このことが分かっただけでも偵察の成果はあったと言える。ただ、サイド7を直接偵察できる位置には推進材の関係から
辿り着けそうにない。逃げてきた先の宙域の安全を確認してレッド・バイカウントⅡに報告する
しかなさそうだった。
「よくやってくれた!」コンスコン少将はフーバーの肩をがっちり掴み彼の勲功を褒め称えた。
参謀達はフーバーが発見した偵察プローブと無人攻撃機からこの先の宙域で連邦軍が網を張っていることが判明して作戦プランを強襲策に切り替えるべく忙しくしている。
具体的にはコースを安全が確認された宙域に変更し、直掩機をローテーションして飛ばさねばならない。やることは多かった。
「そこでだが、少尉。君にはこの後も本艦に留まり、作戦に参加して欲しいのだよ。もう艦隊がいることはバレてしまったからな。ファルメルに通信を入れたのだよ。少佐はハラウェイ軍曹を
再びこちらに寄越すのは勘弁と言っていたが、君とヨン軍曹が留まり作戦に参加するのは同意してくれた。彼は君を自慢の部下、と言っておったぞ。単騎で偵察をやり遂げるとは『赤い彗星』
が誇るだけのことはある」と少将は頷きながら語りかけてくる。
すっかりフーバーのことが気に入ったようだ。
「はは、光栄であります」愛想笑いを浮かべてフーバー・アイスラ少尉は(どうしてこなった?)と再び心の中で呟いた。
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== == エアーズ市
コナン・スチール達『ホワイトフォース』大隊は地球連邦軍に編入され、正式にブレイブ・コッド少佐の指揮下に入ることになった。
906MS戦闘団のメンバーとなり、さらに白に淡いブルーのスプリッター迷彩を施されたBM-02が配備され子供たちの士気は天を衝くばかりであった。
実のところ906がGMを配備する為お古を回されたのだが、かえって憧れの将校達が使ったMSを与えられたと張り切っていた。
特にコナンはブレイブが使っていたBM-02Gを与えられ有頂天になっている。
先輩のマサムネ・ハラダはその優しい物腰と子供たちの訓練を見てくれることから人気のあるウッズ・オフショー大尉のBM-02を与えられ専用武器のヒートレイピアを振り回して喜んでいる。
コナン達が訓練から戻ると、待機所に女下士官数名を伴って女将校がずかずかと入ってきた。
傍らの大柄というよりマッチョというべき女下士官が「注目!!」と大声で命じると少年たちは雑談を止め正面を向いた。
「私はマルセラ・スペンサー少尉。今日ただ今からこの大隊を指揮することになった。
貴様らは正式に地球連邦軍に編入され、『正式な』階級が与えられる。既に実戦を経験していることを鑑みて全員一等兵だ。
ちなみにナイアス・ヒュー軍曹は2階級特進して准尉となった。
彼には私の副官として働いてもらう。
私はここエアーズの生まれで、貴様らが女に偏見を持っているのはよく知っている。
女の下で戦えんという者は退役が認められているので、人事課のオフィスに申し出るように」
その女少尉はふんぞり返り、少年たちを
(おっかない女隊長が来た…)ヒュー隊長が部隊の指揮官から外れ新任の指揮官が来ることは皆噂で知っていたが、こんなおっかなそうな女とは思わなかった。
連れている下士官達も如何にもベテランといった佇まいであった。
「これよりMS戦闘訓練を開始する。総員、MS格納庫まで駆け足!」スペンサー少尉の号令、というより怒号に蹴飛ばされるように少年達は格納庫に走った。
「これより模擬戦を開始する。我々4機に貴様ら全員でかかってきてもいいが、将棋倒しになるのが落ちだろう。
中隊12機ずつかかってこい。MSの差で、という言い訳ができんよう我々もBM-02に乗る。まずは第3中隊からだ。始め!」
第3中隊を指揮するビクトル・ハラダ元曹長が「実戦を経験してる俺達の力を思い知らせてやれ!」と怒鳴り、中隊各機を散開させた。
包囲して十字砲火を浴びせるつもりだった。
すると、スペンサー少尉のベムは列機だけを伴いハラダが直卒する小隊めがけ突っ込んでくる。
全く躊躇のない動きでの迫撃にハラダは悲鳴を上げるのを堪え、ビームライフルを向ける。
演習用の照準レーザーが発射されるが、既にスペンサー機はそこにはいない。
ヘッドスライディングのような態勢でハラダ機の横を取り、ビームライフルを向けた。
ハラダ機のコックピットにアラームが鳴り響き、合成音声が撃墜を告げた。
ハラダが率いる小隊4機は秒で殲滅され、別の2機が向かった小隊も殲滅された。
「俺達は実戦で敵機を撃墜したんだぞ…」ハラダは呆然としている。
一般的には「一度の実戦は百度の訓練に優る」というイメージを持たれているが、実のところ戦争が続き実戦を繰り返していると軍隊は弱くなる。
未熟な兵な兵を訓練という反復で身体に覚え込ませる体験が不十分なまま前線に送り込み戦死させてしまうからだ。
ホワイトフォースの戦果もナイアス・ヒューのバムの重装甲をあてにした半ば破れかぶれの戦術がたまたまハマった、とも言え隊員達の練度は高くはなかった。
彼らの殆どは中学生なのだ。一日中訓練に明け暮れる訳にはいかなかった。
一方、大きな戦闘がない月面の連邦軍は訓練する時間をたっぷりと持っており、猛訓練に明け暮れていたので、船団護衛に就いている部隊より平均的な練度は高かった。
MSの動かし方を知っている程度の中学生がたっぷり訓練を積んだ大人の兵隊に敵わないのはある意味では当然だった。劇中のアムロ少年は例外中の例外なのである。
次にユージン・リバーフィールド元曹長率いる第2中隊が進み出た。
ユージンは「なるべく粘ってナイアス隊長に繋ぐぞ…」と勝ちにいくのではなく、捨て石としてスペンサーの手の内を暴こうとと考えた。
突出しがちなホワイトフォースにあって、慎重な彼をナイアス・ヒューは高く評価し、第2中隊を任せていた。ユージンは中隊を散開させず、半円状の陣形を取った。同時にスペンサー
の小隊と距離を保つべく後退を始めた。近距離では練度の差が出やすい、と考えたのだった。
第2小隊が後退しつつクレーターの縁を遮蔽物にして布陣したのを見て「少しは頭の使い方を知ってる奴がいるようね…」マルセラ・スペンサーは独り言を漏らした。
カレン・ジョシュワ曹長がその独り言に応えるように「さっきみたいに突貫してさっさと仕留める、という訳にはいきませんね。やはり、端から狙撃しますか?」クレーターを回り込んで敵中隊の端から仕留めていく戦術だ。
「そうね。正攻法でも敵わないことをあの子達に教えないと」なにくれとマルセラを面倒見てくれるベテラン下士官と個人的にも親しい少尉は彼女の策を取ることにした。
4機のベムがクレーターを回り込みつつ射撃を放つ。一発で仕留めようというのではなく、遮蔽物から露出している部分を狙撃して戦闘力を削っていく戦法だ。
第2中隊の各機は頭や腕を破壊され、戦闘力を失う機体も出てきた。すると、センサーのある頭や武装を持つ腕を破壊判定された機体が飛び出し囮となった。
「小賢しいわね…」マルセラは第1中隊のため、大隊の勝利のため我が身を犠牲にしようという子供達に苛立った。
実戦でもこれをやられたらたまったものではない。子供達を戦死させたマルセラは団長のコッド少佐から無能の判定を下されてしまうだろう。
もっとも、実戦に彼らを出すつもりなどマルセラにはさらさら無かったが。
囮を一発で仕留めながら第2中隊に迫るマルセラ率いる4機に怯えを見せながらも第2中隊は粘ろうとするが、結局はジリ貧となりユージン機が撃墜され中隊は全滅した。
「お願いします!」最後にナイアス・ヒュー准尉が直卒する第1中隊が進み出た。
(包囲しようと散開したら各個撃破。守りを固めてもジリ貧。どうしたらいい…)
ナイアスも軍はホワイトフォースを解隊するつもりなのは感じていた。
だが、スペンサー少尉から面と向かって「私は貴様らホワイトフォースを解隊させる任務を帯びている。エアーズ市民の感情を考慮し無理やり解散させるのではなく、横暴な女将校に隊員達が音を上げて解隊を申し出るよう仕向けるのが任務だ。ヒュー准尉、貴官もそう心得て欲しい。あんな年端もいかない少年達が戦場で死んでいいはずがない」と言われた時はショックを受けた。
(軍には式典用のお飾り部隊を養う予算はない、ということなんだろうな…)
前線に出なくても式典でMSを立たせておく位は軍も許してくれるだろう、と考えていたが軍は少年達をMSから下ろすつもりだ。
ナイアスは自分の左右の機体に目をやり、「確かにまだ子供だ。死なせていいはずがない」と独りごちた。
ナイアス機の左右、コナン・スチール、ヴィク・ウエスト両元軍曹機、2機のBM-02Gは3つあるモノアイをキョロキョロ動かして情報を集めている。
MS操縦技能に秀でる2人をナイアスは予備兵力として考えていた。それでセンサーが強化され装甲やスラスターも強化されている突撃仕様のG型を与えたのだった。
「僕ら二人でスペンサー少尉機に特攻とか、ダメですかね?」コナンはナイアスに具申するが、
「ダメに決まってるだろ。ただ、お前ら二人で少尉機を狙う、というのは一考の余地ありだ」
と元大隊長。ここぞ、というところで二人に吶喊を命じることになるだろう。
第1中隊は結局のところ、真ん中が凹んだ半弧状の陣形で下がることとした。
だだ、陣の端から攻撃され殲滅される恐れがあるので中心にいるナイアス機は特に注意深く後退していった。
「教本に則った手堅い動きですね」カレン曹長からマルセラ少尉機に通信が入る。
「確かに手堅いが、アレンジは利いていない。そこまで訓練する時間は無かったんだろう」
とマルセラ。中学生に教本通りの動きをさせるだけでもヒュー准尉は苦労しただろう。
称賛してもいい、その努力だけは。
「やることはさっきと同じだ。右端から食っていくぞ!」マルセラは小隊各機に命じる。
ナイアス機から見て左側の第2小隊がスペンサーらの狙撃を受ける。シールドごと左腕を
犠牲にすることで初撃はしのげたが、距離を詰められるとあっさりと4機は全滅した。
更に距離を詰める敵小隊にナイアスは第3小隊に裏を取らせるべく移動を命じる。
スラスターを吹かして突撃していたスペンサー機は回し蹴りをするようなモーションで無理やり機体の方向を180度変更し、第3小隊を撃った。他の3機も同じ機動を取り、背中を取ったと油断していた第3小隊は初撃で全機撃破された。
「今だ!スペンサー機に全機吶喊!」ナイアスは反射的に命じる。
無理やりな機動を取ったことで隙が生まれると思ったのだ。
だが、スペンサー機は蹴りを放った態勢のまま更に回転し、ナイアス達に向かい合った。
「な!?」驚愕するナイアスをよそにコナン達2機がスペンサーに突撃した。
スペンサー機は突撃にも怯むことなくヴィク機を狙撃すると白兵戦距離まで接近したコナン機を演習用のナタ(軽金属製)で切って捨てた。
ナイアスと列機もカレン達に撃破され、演習はホワイトフォースは0勝3敗に終わった。
「圧倒的な練度差だ…」ナイアスは自分のやってきたことが全て徒労に終わった気がした。
「貴様らがやってきたのが軍隊ゴッコなのが分かったか?」演習後の講評でラスペンサー少尉は少年達をこう切って捨てた。
36機がかりで4機に殲滅された彼らは返す言葉もない。
「女の私にここまで言われて悔しいか?」少尉は一番前の席で涙目で彼女を睨みつけるコナンに対してマルセラは彼の目を見ながらこう聞いた。
大人の女性に顔を覗き込まれて少しどきっとしながらコナンは「ノー、マム。自分たちはお話にならないくらい弱いことが分かりましたから…」と震える声で返事をした。
「そうだ!貴様らは弱い!初陣はたまたま敵がバムの性能を知らなかったがために生き残れたが、次戦場に出れば何人かは確実に死ぬ。私の任務は連邦軍の正式な訓練プログラムを実施し、貴様ら
のうちこれに付いて来れない者は除隊させることだ。これは906MS戦闘団団長ブレイブ・コッド少佐の意向である。少佐は貴様らが死なぬよう私から引導を渡すよう命じたのだ」
ブレイブの名を出され少年達に動揺が走る。教官殿はそんなことを考えていたのか、何人かはうつむいている。
「それでは、これから『正式な』訓練を開始する。全員ヘルメットを被り外に集合だ!駆け足!」
スペンサー少尉の号令で少年達は待機室を飛び出した。
「揃ったな?では、基地外周をランニングする。私に付いて来れない者は除隊だ。始め!」
と号令するとスペンサー少尉は走り出した。第一関門で脱落したくない少年達は後を走る。
だが、少尉は結構な速さでランニングしているため殆どが15歳以下の少年達は付いていくのがやっとだ。脱落しそうな少年には最後尾を走るジョシュワ曹長がヘルメット内通信で声をかける。
「大丈夫か?呼吸を整えろ。そうだ、頑張れ」思いもかけない励ましに元気を取り戻した少年は
再びペースを上げ隊列に追いついて行く。結局全員脱落することなく初日のランニングを終えた。
「貴様らと幾つも違わないMS特技兵達は装甲宇宙服を着込んで同じメニューをこなしているぞ。この程度で音を上げる者は帰りに除隊願いを提出するように。解散!」
「少し、露骨過ぎはしませんか?」解散後、オフィスに戻ったカレン・ジョシュワは年下の上官にこう切り出した。
「私が『いい警官』役じゃなくて憎まれ役をやってもいい、と以前言いましたよね」子供の前で居丈高に振る舞うマルセラが随分と無理をしている、と見ている。
だが、マルセラは「憎まれ役を他人に押し付ける卑怯者にはなりたくないの」と憎まれ役を譲る気はなさそうだ。
カレンはため息をついて肩を竦め。「少尉がそう言うのであればこの件はこれで終わりにしましょう。でもね、私は心配なんですよ。貴女が本来とはだいぶ違う性格を演じるの
がね。ストレスはかなりのものでしょう。基地のカウンセラーに予約取っといた方がいいですよ」と心配顔だ。
「ありがとう、カレン。貴女の心遣いは嬉しいわ。けど、少尉に任官して初めての任務で音を上げたくないの」とマルセラは曹長に感謝しつつもあくまで任務に邁進するうもりのようだ。
「カウンセリングを受けることは根を上げることとは違いますよ。私は衛生兵上がりですから、メンタルケアの大事さは良く知ってます」とカレン。彼女は看護師の資格も持っている。
マルセラの列機を務めるナオ・ジェシカ・パーカー軍曹が堂々巡りの議論になりそうな気配を察して「それじゃ、何かストレス発散することではもやったらどうです?恋とか」と話を切り
変える。カレンの列機、小隊で一番若いクレア・ヒースロー軍曹が「じゃ、アタシがセッティングしますよ。少尉のお相手なら同じ少尉がいいですよね」と話に食いついてきた。
カレンはやれやれという顔をしながら「まぁ、気分転換は大事です。行ってきたらいいですよ」と勧めた。
マルセラは表情を緩めると「最先任曹長がそう言うのなら仕方が無いわ。よろしくね、クレア」と気分転換のための食事会を承知した。
「まっかせてください!とびきりのイケメン手配しますんで!」とクレア軍曹は張り切っている。
(私は部下に恵まれたな…)マルセラ・スペンサーは自分の幸運に感謝した。
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==== 重巡『ファルメル』航海ブリッジ
「オリヴァー、ひとつ相談があるのだが、いいかね?」仮面の上官がこう切り出した時マイ大尉は(また、MS-06Sの軽量化かな?)と思ったが、シャア少佐の「相談」は意外なものだった。
「実は遠くにいるある女性と連絡が取れなくなっている。君ならこれをどう思う?彼女は私を疎んじているのだろうか」シャアから大真面目な口調で恋の悩みを打ち明けられ、マイは(こう
いうのを『シリアスな笑い』というのだろうか?)と思いつつ「連絡が取れない、というだけなら仕事が忙しいとか通信が制限されている環境にある、とか色々理由が考えられます。なにせ戦時
ですから。その方はどんな仕事を?」「詳しくは軍機に触れるが、彼女には特殊な才能が持って
いてとある研究所で働いている」(あぁ、噂の『ニュータイプ』か)「軍機」「特殊な才能」にピンときたマイは「それでしたら、重要な実験か何かで忙しい、あるいは外部への通信を禁じ
られている、といったところではないでしょうか。少佐を疎んじている、と考えるのは早計では」と答えた。
シャアは「そうか。その可能性には至らなかった。いや、君に相談して良かった」と仮面越しにも分かる明るい表情になった。
そんな他愛もない会話をしていると伝令から帰還したジャニス・ハラウェイ軍曹が出頭し、レッドバイカウントⅡの様子やアイスラ少尉がヨン軍曹を連れてサイド7への偵察に出たことを
報告した。
「ご苦労、下がってよい。貴様は本艦に残って目をやってもらう、今は休め」シャアが労うとハラウェイは顔をほころばせ、退出していった。
「ほら、少佐は女の子ウケいいじゃないですか。自信を持つべきでしょう」とマイが軽口を言うと艦長代理のドレン大尉まで「少佐の生写真はWAVE共の間で高値で取引されているようです。
ブリッジ要員の中には小遣い稼ぎに隠し撮りしてる者もいましてね。厳しく叱っておきました」と報告する。
「軍務に支障が無ければ小遣い稼ぎは黙認するとしよう」シャアは珍しく機嫌が良いようで、部下の盗撮も黙認するという。
「流石にシャワールームにカメラを仕込まれるのは御免だがな」と冗談まで言っている。この男には非常に珍しい事態である。ララァに嫌われたのではない、と
いうのに気づいたのが余程嬉しかったようだ。
そんな和やかな雰囲気は「レッドバイカウントⅡから通信!敵の哨戒線にアイスラ少尉が引っかかったようです。少尉は無事帰還したとのこと」という通信士の報告で一気に変わる。
シャアは顔を引き締め「奇襲が強襲になる、ということか。第2種戦闘配備発令。敵の偵察機が現れるのを想定して動け」という司令でブリッジごと下部へと降下を始める。
ブリッジが装甲区画に収まるとブリッジはそのままCICとして機能するのである。
「ブラウンとマイヤーは格納庫で待機。マイ大尉、06Sの暖機を始めてくれ」
シャアは何時でも出撃できるよう準備を命じる。ブラウンとマイヤー、マイはそれぞれ格納庫へと急いだ。
「さて、果たして何が潜んでいるのか…」シャアは不敵な笑みを浮かべた。
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==== ジャブロー
クルスト・モーゼスは亡命してからと言うもの事情聴取は行われるものの、一向に研究に関する話が出てこず苛立ちを覚えていた。
「何をぐずぐずしておるのか!もう、奴らは本拠地や母艦まで手に入れているそうではないか。このままでは全てが間に合わなくなるぞ…」
焦っていた博士の元に『ゼファー プロジェクト』なる無人MS開発計画に協力して欲しい、という話が舞い込んできた。
彼の亡命作戦を指揮していたクリフ准将からのオファーで、彼の中でオランウータン似の軍人は「どうでもいい奴」から「親愛なる同志」に格上げされた。
「はじめまして、モーゼス博士。私はワルハマー・T・カインズ、『ゼファー プロジェクト』の技術主任を務めております」
手を差し出された手をモーゼスは両手で握り「貴方の機体は人類の救世主になるでしょう。私の知識と技術を全て提供します。共に無人MS完成に邁進しましょう!」と熱く語った。
クルストの剣幕にいささか気圧されたようにカインズは「私は前途ある若者が戦場で死ぬのが我慢ならないのです。この現状を変えるのが無人MSだと思っています」と自分の信念
を語る。「ええ、そうです。未来の為の機体です、我々が作るのは」とモーゼス。下手なことを言ってこのプロジェクトから外されてはたまらない。目の前の主任に調子を合わせておこう、と思った。
「我々のスタッフを紹介しましょう」カインズは開発スタッフの紹介を始めた。彼の以前の勤務先ロボット大手のライアン重工業から来た技術者が多いようだ。
軍事ドローンの開発者も多く、モーゼスには頼もしい開発陣に思えた。
「彼女はナミカー・コーネル。大脳生理学が専門です。人間や動物の脳をエミュレートするプロジェクトに参加しています」カインズが紹介したのは険のある女だった。
「よろしく」手を差し出す女の手をモーゼスは(セクハラなどと言い出され計画から外れては敵わん…)と思い慎重に握手した。
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== サイド7 、7バンチ 13独戦司令部
「敵が来ます」レヴァン・フウ特務大尉の言葉にチャーリー・ベッカーズ少佐は即座に対応策を打っていた。
「ホワイトベース、こちら13独戦司令部。出港を要請します。我々が機材と共に搭乗し次第、出撃していただきたい」
この7バンチに停泊する母艦のホワイトベースに出港を「要請した」。
ホワイトベースの艦長、パオロ・カシアス大佐は即「了解しました。艦を臨戦態勢にしてお待ちしております」とまるでチャーター船の船長のように恭しく答えた。
「ブライト中尉、細々した調整は全て君に任せる」チャーリー少佐はブライト・ノアにホワイトベースとの調整を投げてレヴァンと話し込んでいる。
同じ頃、哨戒線の無人機が敵偵察機を発見、という報が入る。
「敵は2方向から来ます。一方は主力と思われる敵ですが、もう一方の遊撃隊と思われる敵から強い力を感じます」
レヴァンは目を閉じ、座禅を組みながら瞑想していた。
頭のサイコ・リミッターには作動停止状態を示す赤いLEDランプが光っている。
「2方向か。どちらを先に叩くか…」チャーリーが考えていると、既に全員集合している士官達を代表してウィリーが「やはり、数は少ないが強力な敵じゃないでしょうか。逆に敵を奇襲して
やりましょう」と具申する。
すると、レヴァンが「私は戦術には詳しくありませんが、遊撃隊と接触したら、サイド7を目指している敵主力がこちら襲う心配があります。敵の狙いは新型MSを運用している私達
13独戦ですから、目標を変更してくるでしょう」と告げる。するとウィリーはさも当然のように「じゃあ、敵主力を先に叩くとしましょうよ。一番外側の『壁』で防衛線とするってのは
どうです?」と再度チャーリーに具申した。
「そんなところだと思うが、ダグザ少尉はどう思う?」とチャーリーはダグザに話を振ると
「敵は突入艇を使って陸戦隊をサイド7へ送り破壊工作を試みる可能性があります。
自分達防護部隊はここに残り敵の破壊工作に備えたく思います」と具申した。
「V作戦R&Dセンター」の施設やなにより中で働く技術者を誘拐ないし殺害されれば大損失である。敵の目標が「V作戦」にあるのなら、R&Dセンターを防衛するのは当然であった。
「許可する。存分にやってくれ。サイド7防衛司令部とは常に回線を繋いでおくこと。有線ならほぼリアルタイムで司令部へ戦況が送れるからな。君は通信回線の確保に全力であたり、
ガンアクションは他の者に任せるんだ」特殊部隊上がりの少佐はまだ若い少尉に具体的に指示を出した。
「はっ!通信の確保に努めます!」とダグザ。彼の指揮する50名余りの小隊が触覚となり、脳である司令部へ情報を送り出すのだ。
ミライ少尉が運転する装甲車を先頭に13独戦の面々は港に停泊するホワイトベースに到着した。
指揮型ガンタンクは艦隊戦なので駐屯地に置いてきた。
MSはトレーラーに乗せるのではなく、パイロットの操縦で歩いて前足の格納庫へ入っていく。
ゲーツ・キャパは自機の腕を伸ばしてクロエ・クローチェのRX-78 8号機の肩に触れると
「クロエ、大丈夫か?MSに乗ってて頭痛くならないか?」と心配そうに聞いている。
「大丈夫だよ、ゲーツ。おそらく戦闘になるまで頭は痛くならないと思う」とクロエ。
「クロエには私とイースが付いてるわ。あなたは自分の任務に専念しなさい」と
リリー・シェリーナ特務准尉がゲーツに声をかける。「は、クロエをお願いします准尉」とゲーツはひとまず8号機から手を離した。
「助かったわリリー。このままゲーツがクロエに話しかけ続けたら叱らなきゃいけなかった」と
クレア・キルマー中尉が短距離通信で礼を言った。思春期の男の子、という存在は姉妹しかいない彼女には中高の同級生くらいしか知らない。
中隊長のウィリーは「まぁ、ビシっと言ってやればいいんだって。美人に怒られると男はシャンとするもんだからさ」と軽口を言うが、陽気でミユ軍曹に怒られても笑っているウモンは
ともかく、ゲーツという少年はずっと繊細に思え迂闊に叱れば傷つけてしまいそうで怖かった。
結果としてゲーツのことはアリシア・アルバート軍曹に任せてしまうことが多くなる。
アリシアは弟がいるそうでこの年頃の子の扱いに長けており、クレアには有り難い存在だった。
「強化人間といってもメンタルが極端に不安定という訳ではないんです。それにゲーツは精神
操作を受けていませんし、普通の男の子ですよ。そんなに怖がらないであげてください」
リリーはそんなクレアの心中を察したのかもっと気楽に接するようアドバイスする。
「そうね。少しフランクに接してみるわ。小隊のデビュー前に話ができて良かった。ありがとう」
クレアは今度は心からリリー・シェリーナに礼を言った。そして、いきなり試作7号機でゲーツのRX-79Dの頭を小突いて「あんま女の子にしつこくしてると嫌われるわよ」と言い出したので
リリーと隣に座るノエルは思わず吹き出した。イースは後席で寝息を立てている。
ゲーツは少し驚いたようだが、アリシアに「ほら!気ぃ抜いてんじゃないわよ!」と一喝され「分かってらい!」と明るく答えた。
「よし、第2小隊は大丈夫そうだな。第3小隊はどうだね?フレミング少尉」とウィリー・ケンプ大尉はイオ・フレミングに冗談めかした口調で語りかけた。
イオは「うちの小隊は皆実戦をくぐり抜けたベテラン揃いですからね。自分の指揮を除けば不安はありません」とリラックスした口調で答える。
「貴様の指揮はそう悪いもんじゃない。自信持って指示を出せ」とウィリー。
「そうッスよ。小隊長、自信持っていきましょう!」とジョブ・ジョン。「俺達みんなスコア上げてますし、ジョブ曹長とウモンはエースっスよ。気を大きくしていきましょう」とダンク。
ウモンは珍しく口数が少ない。(おっちゃん達が死んだ時から随分経った気がするけど、まだ一ヶ月かそこらなんだよな…)と考え込んでいる。
「どしたぁ、ウモン。バカの考え休むに似たりだぞ!」とジョブが緊張しているのかと思い活を入れる。
「ひっでぇ~。俺だって考えごとくらいしますって」とウモン。
イオ小隊長は「ま、気楽に行こうぜ。俺達ベテラン小隊があがってちゃ不慣れな戦友達を助けられんしな」と冗談めかして言うが今度はクレアが「お生憎様だけど、うちの小隊は私とA.Aがいる
から平気よ」と返した。内心ではゲーツとクロエが暴走するのでは、と気が気でなかったが。
「アムロ君はこれから初の実戦だが緊張してるか?」とウィリーは傍らの白いRX-78に語りかける。
「緊張はしてます。演習と実戦は違うことは分かってるつもりですから。死ぬ時はビームでコックピットを直撃されて一瞬で蒸発するのがいいですね」と冗談なのか分からない返事をするアムロ。
「死に方に注文をつけられるんなら大丈夫さ。カイ君とハヤト君はどうだ?」とウィリー。
「俺達のこと憶えてたんスね。俺の任務はこそこそ隠れて狙撃ですからそんな怖くないですが、ハヤトはどうよ?」とカイ。
「そら、怖いですよ。敵はこっちを殺すつもりで来る訳ですし。だけど、フレッド曹長が横にいてくれるんで心強いです」とハヤト。彼とフレッド・リーパーは
ペアを組んで敵MSを駆逐するのが任務だ。「俺のピクシーは装甲が薄いからな弾除けにはならないぜ」とフレッド。例のチャンバラを通じてハヤトとはだいぶ親しくなっていた。
「アテにはしてないですよ。むしろ自分の機体を盾にしてください」とハヤト。
「そんなカッコ悪い真似ができるかよ」とフレッド。
「俺はアテにしてるぜ、最先任曹長殿」とウィリー。本当はジョブが最先任なのだが、彼は「いや、俺ってその器じゃないッスよ。フレッド曹長お願いします」とフレッドに半ば押し付けた
役職で、ウィリーが最先任曹長と呼ぶ時は大抵いじってくる時だ。
「精々微力を尽くしますよ、中隊長殿」とフレッドは舌なめずりしながら返事した。このRX-79Pという新鋭機の力を実戦で試せるのが待ち遠しくて仕方ないらしい。
「MS中隊全機いつでも戦えます」と装甲車を降りCICへ向かおうとするチャーリー少佐にヘルメット内通信で報告するウィリー。
チャーリーは「ホワイトベースの直掩としてヒーリィ大尉の実験中隊を呼び寄せた。艦が出港し次第、左足の方に着艦する手はずになっている。打ち合わせる時間はほとんど
無いので、連携は難しいだろう。MS中隊は後ろを気にせず敵の撃滅を優先して欲しい」
と命じた。「MS2個中隊積めるとはこの艦はちょっとしたMS空母ですな」と感心するウィリーに「艦種としては『強襲揚陸艦』だそうだ。宇宙要塞に突入して陸戦隊を送り込む
なんて運用はしないとは思うがね」とチャーリー。ホワイトベースは足に当たる格納庫がだいぶ長くなっており、両足にMS2個中隊最大26機まで搭載が可能だった。
(アムロ君、私の声が聞こえるか?)レヴァン・フウは思念でアムロに呼びかけた。
(聞こえます。距離が近いからなんでしょうか?)とアムロ。
(M粒子を介した思念波通信はまだ分かっていないことが多い。距離が離れても減衰は少ないだろう、とアルヴィース博士は言っていたが…)とレヴァン。
(色々とぶっつけ本番ってことですね)とアムロ。
(そうだな。私達が全力で支援するから君は思い切り戦ってくれ。君とクロエ伍長が私達の思念波を中継してくれればいいんだが…)とレヴァン。
(それこそ、やってみなきゃ分かりませんよ)とアムロは少し笑い、思念波を感知できないカイから「お前、なに笑ってんの?」と呆れられた。
「ようこそ、ホワイトベースへ。艦長のカシアスです。ブライト中尉、連絡将校の任ご苦労だった。引き続き君はここに留まって13独戦との調整役を命じる」とパオロ・カシアス艦長は
チャーリー達13独戦をまるでチャーター船の船長のような恭しさでチャーリー達を迎えた。
副長は内心で(統合参謀本部直属だからってそこまで卑屈になることはあるまいに…)と思っていたが、彼も波風は立たせたくないのでそれを黙っている知恵はあった。
13独戦の少佐は「第13独立戦闘団のチャールズ・ベッカーズ少佐であります。乗艦を許可いただき、有り難くあります」とピシッと敬礼を決めると「早速ですが、この宙域まで艦を
異動して頂きたい」と切り出した。「それと間もなく着艦するRGM-79中隊ですが、この艦の直掩隊としたいので、貴艦の防空幕僚に指揮をお願いします」と矢継ぎ早に要請という
より事実上の命令を下すベッカーズ少佐にいささか面食らったパオロだが、防空幕僚を兼任している副長に「君が79中隊の指揮を取れ。ヒーリィ大尉にはCICまで出向いて貰って打ち合わせしておこう」と指示を出した。
その様子を見ながらブライトは(やはり、カシアス艦長は優秀な人だ。折角の機会だし、少しでも勉強しないとな…)と感心していた。
ホワイトベースは太陽電池とミノフスキー・クラフトの発振体を兼ねている主翼をサイド7で取り外していた。これにはレーダーによる被発見率(RCS)と光学観測による発見率を低減する
狙いがあった。そのためか、「ペガサス」の面影はだいぶ薄れ、むしろ「スフィンクス」「スピンクス」と呼んだ方がしっくりと来る。
前足のやけに長い
37話をお送りしました。
コンスコン艦隊の旗艦『レッドバイカウントⅡ』は原作に登場しない拙作の完全オリジナル艦として設定しております。
重巡を超えた巡洋戦艦としておりますが、超甲巡、ないしポケット戦艦のような艦だと
お考えいただければと思います。
フーバー・アイスラ少尉は書いてて色々と便利なキャラに成長しました。
エアーズ市の「ホワイト・フォース」は連邦軍に正式に組み込まれ、パワハラをブレイブ・コッドに期待されているマルセラ・スペンサー少尉が指揮することになりました。
彼女自身は喜々として子供イビリに邁進している訳ではないのですが、果たして。
突然恋の悩みを打ち明けるシャア、という謎展開ですが、オリヴァー・マイをシャア
なりに信頼している、という描写のつもりです。
連邦が持て余してるクルスト・モーゼス博士は餌として無人機プロジェクトに
参加することになりました。ゼファーガンダムやカタールが登場するかはまだ未定です。
第13独戦がいよいよ実戦に向けWBと共に出撃しました。
次回は派手な展開になると思います。ご期待ください。
一年前、この話を書き始めたのも緊急事態宣言のさなかでした。
一年後、また緊急事態ですが、一年前と違いワクチンという希望が見えてきました。
お互い気をつけて頑張って参りましょう。