リストラおじさん、ゴップになる   作:寒原光雪

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いよいよ、第13独立戦闘団のデビュー戦であります。


サイド7防衛戦

==== サイド7から約900kmの宙域

 

サイド7を出港したホワイトベースは随伴艦のサラミス級2隻とペリー級4隻を伴いサイド7の

防衛線である一番外側の「壁」がある宙域までやってきた。

「ケンプ、RX-78-1出るぞ!」掛け声と共にオリーブドラブに塗装されたRX-78FAが発進する。

続いて、カイ、ハヤト、フレッドの順で発進していった。さらに続いて第2小隊各機が発進する。

第2小隊の発進後、重装備のせいで他の機体より二周り大きく見える機体がカタパルトにセット

される。

「イオ・フレミング少尉、RX-78L出るぞ!」イオが重装備の78L型を発進させ、続いてジョブ、

ダンク、ウモンが発進する。最後に「アムロ・レイ、RX-78-2行きます」と純白のRX-78 2号機

が発進する。

 

「ウモン、お前随分とイキった塗装にしたじゃねぇか」ジョブ・ジョンはウモンのRX-79Lの

頭部に施された塗装を見て半ば呆れた声を出す。ウモン機の頭部には歯をむき出した口が

マーキングされていたのだ。

「これ、元は前の部隊で乗ってたリ・ガードの塗装なんス。この塗装で活躍すれば前の

部隊のおっちゃん達喜ぶかな、と思ってモーラさんに頼んだんすよ」とウモン。

彼を可愛がるモーラ・バシット軍曹は注文通りRX-79Lの頭部に巨大な口を描いたのだった。

小隊長のイオは咎めるどころかヒューと口笛を吹いて「いい趣味してるじゃない、ウモン君も」と

彼のセンスを褒め称えた。WW2のレシプロ機を乗り回す彼には共感できるものがあるようだ。

「小隊長が許可したんなら、俺が言うことじゃないな。目立つ塗装は的になる、気張れよ」

とジョブ。彼こそ、第3小隊の先鋒、ついては中隊の先鋒を務めるのだが、「一番先頭は案外弾が

当たんないもんだ」と気にしていない。

 

「アムロ君、膝に掴まってくれ」イオは自機の膝のステーに2号機を捕まらせるよう指示する。

イオのRX-78Lは右肩に大口径ビーム砲、左肩に6連装ミサイルポッド、右腕に連装ビーム

ライフル、左腕に連装ロケットランチャー、さらに増加装甲内部にミサイルを仕込んでいる

重装機である。

シールドも両腕の他にサブアーム2本で2枚を掲げ合計4枚という徹底ぶりである。

今回の出撃では膝に新設したステーにアムロの2号機をぶら下げているので、更に重い。

 

「お世話になります、イオ少尉」とアムロは恐縮しながら膝からブラ下がっている。

「なに、操縦する俺は重たくもなんともないよ。Linda(リンダ)どうだ?重たいか?」

と自機のAIに質問するイオ。「はい、RX-78-2を積載している為、本機の推進材消費量は75%

増加しています」とAIは正直に答える。今回の作戦では背部に切り離し式の推進材タンクを

増設している。

「アムロ君の2号機は軽装だけあってあんまり重荷じゃないようだぜ」2号機は戦場で全力を

発揮する為、イオの6号機をSFSとして使い自機の推進材を節約していた。

「重いのは苦手なので…」とアムロ。2号機は左肩のマグナムランチャーを外し、ビーム

ライフルとビームサーベル2本という軽装備であった。

「俺って下手クソだからシールド4枚も持ってるんだけどね」とイオが苦笑する。「イオ少尉の

機体は重武装ですから…」とアムロ。「下手なりに敵の目を引いて部下を守ろうと思ってさ」と

イオ。重武装と4枚のシールドは敵の目を自機に引きつける狙いもあった。

 

「クロエ、無理すんなよ」とゲーツはあくまでクロエの体調を気遣っていたが、クロエの乗る

8号機のAI、Leah(レイア)が「今回の作戦、マスターはリリー・シェリーナ特務准尉のサイコ波

通信によって指定された目標を狙撃するだけですので身体的な負荷は低いと推定します」と

答えた。「そんな訳だから、アンタは自分の心配しなさいな、ルーキー」とアリシア軍曹が

ゲーツに声をかける。「普通の人間に負ける気なんかしねぇぜ。なにせ俺もリリー准尉の声が

聞こえるしな」とゲーツは返事したが、今度はクレア中尉が「それってホント?なら、早く言って

くれないと!」と凄い剣幕で聞いてきた。「いや、さっき気がついたんで…。クロエの近くに

いないと聞こえないみたいで…」とゲーツ。「あなたからリリー准尉に話しかけてみて」と

クレア。ゲーツは頭の中で(テ、テステス…リリー准尉、聞こえますか?)と考えてみた。

すると頭の中に(聞こえてるわ、ゲーツ。貴方とこうして話せてうれしい)と返事が返ってきた。

「通じた!話せました!中尉」とゲーツは大喜びで報告する。「おそらくクロエを中継してで

しょうけど、2回線確保できたのは大きいわね。リリーも2箇所から観測できるから精度が上がる

しね。でかしたわ、ゲーツ。帰ったらあなたとクロエにパフェごちそうするわ。大きいヤツ」

「いや、俺パフェなんか…」とゲーツが大人ぶって遠慮しようとすると「ガキが大人ぶってんじゃ

ないわよ。遠慮なく食べなよ。アタシも自腹で一緒に食べてやるからさ」とアリシア。

「貴女の分も私が出すわ。小隊みんなで食べに行きましょ。基地の食堂じゃなくて外のお店に

にね」とクレア。

 

「第2小隊は打ち上げの相談してるな、君らは何がいい?」とウィリー。「俺、いつものステーキ

屋じゃなくてフレンチのフルコースとか食ってみたいスねぇ。ミライ少尉とかきっといい店知って

ますぜ」とカイ。「俺は堅苦しいマナーなんか知らんぜ」とフレッド。ハヤトは「中国料理の

満漢全席とかどうですかね?」と「品数多くていいな、アレ」とフレッドが同意し、「ま、俺は

高いメシならなんでもいいだけどね」とカイも同意する。「しょうがねぇなぁ。少佐に掛け合って

祝勝会を戦闘団の予算でやることにするわ。ダグザんとこの連中も一緒にな」とウィリー。

「さっすが大尉。自分の懐からは出さないんスねぇ」とカイがおどける。

「自慢じゃないが、俺は俸給の殆どをバイクに突っ込んでるからな。金はないぜ、さっきのは

何を少佐にお願いするかって話さ」とウィリー。音声通信でもドヤ顔が伝わってくる口調だ。

「ち、しけてやがんなぁ」とフレッド。彼もウィリーの乗っている電動バイクに興味があって

いくらかかるか聞いてみたが、金のかかることに驚き、普段の足には電動スクーターかエレカを

レンタルしていた。

「お、そろそろ待機地点だな。カイ君、狙撃ポイントで待機。例の仕込みを忘れずにな」と

ウィリーが引き締まった口調で命じる。「フレッドのペアはこの先で待機だ。待機する前に

アレの作動テストもしておくように」

「了解!」小隊各員は予め決められたポイント、壁を構成するデブリに潜んだ。

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==== 重巡『ファルメル』CIC

 

「レッドバイカウントⅡの位置は把握しているな?」シャアの質問にオペレーターが「現在あちら

も無線封鎖中ですが、最後の通信から進路は分かりましたから概ね判明してます。この距離では

粒子の濃度までは測定できませんが…」と答えた。

「結構。ドレン、敵はこちらの存在も把握していると思うか?」シャアの問いに

「している、と思って行動した方が無難でしょうなぁ。楽観主義者は常に不意の不幸に襲われる、

と云いますし」とドレン。

「そうだな。偵察機からは何と言ってきている?」通信士は「ハラウェイ機は15分前に定時連絡

をしてきましたが、その後は…いえ、通信が入りました!敵の偵察機らしい頭の膨れたジムと

遭遇したようです。敵は1機、周りに護衛機はいないようです!」通信士の報告に

「全艦第一種戦闘配備。ドレン、私も出る」とシャアは身を翻して格納庫に急ぐ。既に第二種

戦闘配備を発令した時点でノーマルスーツに着替えていた。「ご武運を!」格納庫へと走る

シャアの背をドレンの声援が追いかけていった。

 

「連邦のドクトリンからいって、単騎での偵察は考えにくい。既にファルメルの位置は割れて

いると思った方がいいな…」真紅の06Sは右手に突撃銃、左手にジャイアント・バズといった

装備で出撃した。肩を紅く塗ったブラウンの06Rはシャアと同じ装備、マイヤーの06Rは突撃銃と

同じ砲弾を使用する120mm重ガトリングを両手で持っている。更にデニム軍曹が率いる

ファルメルの6機、随伴艦『ケンプテン』『ノルトハウゼン』搭載の計18機の06Fが左右に

展開していた。戦隊の直掩にはザク3機を残してきた。

 

06Sのモノアイは試作型に換装されており、稼働率はともかく分解能は高い。その強化され

た光学センサーが敵機の姿を捉えた。「首がある…敵はジムか。数は12。ブラウン、マイヤー、

敵に仕掛ける。ついて来いよ!」真紅のザクはスラスターを全開にして敵機の方向に飛んだ。

2機の06Rが半瞬遅れて続く。残りのザクは遅れているが、指揮官に置いてけぼりにされても

デニム軍曹は動揺することなく同じ方向へ進ませた。

 

「敵の頭部がデータと違いますね、新型でしょうか?」マイヤーの疑問に「旧型かもしれん。

なにせジムのデータは少なすぎるからな」ジムと遭遇した部隊はかなりの頻度で大損害を受けて

おり、全滅した部隊も少なくない。実機の鹵獲どころか、戦闘データすらろくに集まっていない

のがこの時点、UC.0079 3月現在であった。

敵機、ジムの頭部は我々の知るコマンド型であった。連邦統合参謀本部はサイド7の警備部隊に

新型を装備していたのである。

ジムコマンドは連邦の定石通り4機づつの小隊を3つ組んでシャア達を包囲しようと動く。

ここでシャアとブラウン、マイヤーは06、1機と06R、2機に別れ、それぞれが別の小隊目掛けて

飛んだ。

 

ジムコマンドはビームカービンを真紅のザクへ向けるが、シャアの巧みな回避機動を

捉えられない。

小隊長機らしきジムが突撃銃の3点射を2回被弾してコックピットから炎を吹き出した。

「ベムなら3発で仕留められたのだが…」シャアは敵の装甲に舌を巻いていた。

(あの片眼鏡にビーム兵器を送って貰わねばな)自機を機動させる思考の片隅でこんなことを

考えながら仮面の男は敵の新型機との戦闘を楽しんでいた。

 

マイヤーの放つガトリングの弾幕に捉えられたジムが機体の各所から炎を噴き出し火の玉になる。

ブラウンは敵の放つビームを肩のアーマーに掠らせながら接近し、敵機の目の前でジャイアント

バズを発射した。2機を瞬く間に撃墜されながら敵に怯んだ様子はなかった。

「こいつら、手練だ!」ブラウンはマイヤーに注意を促した「あぁ、こっちを残った4機の方に

誘導してる。侮れないぞ」とマイヤーも十分に用心しているようだ。

結局、敵の目論見は果たせないまま、ブラウンの突撃銃とマイヤーのガトリングの弾幕を浴びて

残り2機も撃墜された。「これでジムを5機、ジムエースだな、ブラウン」マイヤーがブラウンの

スコア達成を祝福している。ベムとは比べ物にならぬ高性能機ジム5機を撃墜した者は

「ジムエース」と呼ばれ金的持ちより尊敬を受けた。直掩機のいない艦船を撃沈するより余程

難しいと考えられていた為だが、一方で戦意高揚の意味もあった。

既に残った4機のジムもシャアによって撃墜されていた。

 

敵は複数の中隊で索敵を行っていたようで、シャアの左側を進むケンプテン隊が接敵、こちらにも

被害が出たが、撃墜機はなく損傷機は母艦へと撤退していった。敵も何機か落とされた後、

後退した。

右側のノルトハウゼン隊も接敵したが、こちらはファルメル隊の到着によって勢いがこちらに

流れると敵は後退していった。

 

シャアは後退してきたジム中隊を狩りながら、06Fの到着を待っていた。戦隊の全力をもって

敵の母艦に仕掛ける気だ。18機のザクが接近すると4隻の巡洋艦と8隻の駆逐艦とフリゲートから

なる小艦隊は防空型の機関砲を装備したモビルポッドを繰り出してきた。

「アレには人が乗っているようだ。若年兵の錬成にもってこいだ。ブラウン、アレは若年兵(ジャク)

にやらせる。危なくなったら助けてやれ」シャアは部下に経験を積ます気だった。

念の為、巡洋艦や駆逐艦の対空火器目掛け突撃銃を発射し、これを潰しておいた。

 

敵の艦隊と直掩のモビルポッドはデニムの率いる06Fの攻撃を受け殲滅されたが、

「これは敵の先触れに過ぎん。さらに前進し、敵の本隊をこちらに引きつける。

皆、ここが本作戦の正念場だ。奮闘を期待する」とのシャアの激にブラウンとマイヤーが

「「応!」」と答えると若年兵達も少し遅れて「オー!」と声を出した。

(ようやくここに至って部隊として纏まってきたようだな…)

シャアは片頬を上げた。少し笑っているらしい。

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「第7哨戒部隊が接敵!赤いザクと肩が赤いザクを確認!『赤い彗星』です!!」サイド7防衛

司令部に悲鳴にも似た報告が上がる。司令部に緊張が走るなか、いささか呑気な声で「あの、

素人の質問で恐縮ですが…」という声が上がる。「ヤシマ大佐、なにか?」防衛司令の

准将はシュウ・ヤシマ予備役大佐に何か疑問があるのか、と問いかけた。「サイド7(ここ)

作ったのはヤシマなんだから、何か我々の知らんカラクリがあるかもしれん」と招集手続きを

取らぬまま、CEOのヤシマ予備大佐をアドバイザー的な立ち位置で司令部に招いたのだった。

 

シュウ・ヤシマは「(コロニー)公社や軍に内緒の設備なんかあるわけないでしょう」と苦笑

しながらもシェルターの中で情報もないまま震えているよりマシと考え、観戦していたのだった。

「ええ、その『アカイスイセイ』とかいう敵はそんなに厄介なのですか?」と尋ねるシュウ。

経営者として、リスクを過小に見積もるのは厳禁だが、同時に過大に見積もるのもまた誤り

である。司令部に敵に怯えるような空気を感じ、敢えて呑気な声を出したのだった。

 

司令の視線を受けてシュウに付けられた若い士官が説明を始める。

「ヤシマ大佐。『赤い彗星』というのはハッテで戦艦5隻を撃沈したシャア・アズナブルという

敵のトップエースです。ここ2ヶ月の通商護衛作戦でも我が軍は新型重巡を含む艦艇20隻、

MS30機以上をヤツとその麾下の部隊によって失っています。肩が赤いザクはハッテからシャアに

付き従っている腕利き達ですよ。敵は最精鋭をここ、サイド7に差し向けてきたのです」と

予備役大佐に早口で説明した。(この若者、随分と怯えているな…)シュウはそう思いながらも

微笑みながら「ありがとう、少尉。さて、司令、発言を許可していただけますか?」と防衛司令に

発言の許可を求めるシュウ。「貴方なら何かいいアイデアをお持ちかも知れません、許可します」

と司令。「13独戦を当てたら如何でしょう?」シュウ・ヤシマの発言に司令はえ!?という顔に

なり、傍らの副官に「今の発言は記録するな…」と小声で指示した。何しろ、シュウが溺愛を

周りに公言している息女ミライ・ヤシマ少尉が所属している部隊を敵の最精鋭に当てようと

言ったのだ。

 

「13独戦はこのような敵に対処する為に最新鋭の機体と選抜された乗務員を揃えたのでしょう?

なら、今活用しないでいつ使うのですか」とシュウ。「あぁ、ミライのことでしたら心配して

おりません。母艦のオペレーター席に座っておるでしょうし、13独戦が敗北しなければ彼女も

無事でしょう。負けた時はここにいる我々の命も危ういでしょうしね」

とヤシマカンパニーCEOは大物らしい肝の座ったセリフを吐いた。その大物ぶりに司令は

気圧されつつ「13独戦は既に出撃中です。どこに出撃したのかは言えない、というより知らない

のです。なにしろかの部隊は参謀本部の直属で私は指揮権を持たされていないので…」

と予備役大佐に内情をぶちまけた。

「と、いうことは13独戦を指揮するベッカーズ少佐の手腕に我々の命運がかかっている訳ですか」

とシュウ。(あのハンサムな少佐、ただ者ではないと思っていたが、そこまでセンパイに信頼

されているのか…)と娘を預けたチャーリー・ベッカーズという男を見直す思いだった。

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==== サイド7、1バンチのシェルター

 

ジョアンナ・ジョンは近所のお姉さんであるフラウ・ボゥの誘導でカツ・ハウィン、

レツ・コファン、キッカ・タキモト達と一緒にシェルターに避難していた。キッカは両親と

はぐれ、ずっとぐずっている。

「めそめそとうっとうしいんだよ!」大声を上げる子供がいた。カミーユ・ビダン、誰彼かまわず

喧嘩を売る札付きともいえる問題児だった。横にいる少女が「ちょっと!やめなさいよカミーユ。

ごめんね、キッカちゃん」と頭を下げながらキッカに謝っている。

ついにキッカは大泣きを始めた。

するとレツ・コファンが「ちっちゃい子がぐずるのは当たり前だろ!お前こそ当たりちらしてるん

じゃねぇよ!」と怒りをカミーユにぶつける。

「なんだと、このガキ。おれはガキ相手だろうがようしゃしないからな!」とカミーユが空手の

構えを取った。するとジョアンナが何も言わずに立ち上がるとカミーユの腕を掴み

「カミーユ君、もうやめようよ、こんなこと」とカミーユの目を真っ向から見つめながら穏やか

だが、毅然とした様子で言った。

 

彼女の意外な程の力強さと口調に気圧されたカミーユは「あぁ。ジョアンナがそう言うならさ…

レツ、命びろいしたな」とレツに嫌味を言うのは忘れずに引き下がった。

「なんだと!」と、なおも食ってかかろうとするレツをカツが羽交い締めして止めた。

「助かったわ、ジョアンナちゃん凄いね…」突然始まった子供同士の喧嘩にオロオロする

ばかりだったフラウは一言でそれを鎮圧してしまったジョアンナに脱帽する思いだった。

ジョアンナは「施設に来て日が浅い子は大きな声を出して他の子を脅かせば自分の言い分が

通ると思ってる事が多くて喧嘩は日常茶飯事でしたから…」見かけよりずっと大人びている

父こそいないが、と祖父がいる自分には想像できない境遇をジョアンナは送って来たのだな、

と思うしかないフラウだった。

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==== 『レッドバイカウントⅡ』CIC

 

「敵の動きは?」コンスコンは今日何度目かの同じ質問をした。首席参謀は「未だ、敵の動きは

観測されていません。ドローンに探知された以上、動きがないのはおかしいのですが…」

とこちらもまた同じ回答をする。航空参謀が「既に艦載機は全機発進しております。

アイスラ少尉のMS-06Eを先鋒に索敵は行っているのですが」と索敵網に穴が無いこととを

報告するが、コンスコンは「敵は艦載機のセンサー範囲の外でずっとこちらを見張っているの

かもな…」と漏らすと「その可能性は十分にあります。悔しいことに連邦軍のセンサー性能は、

こちらより上です。特に偵察機に積まれているハイエンドな装備では性能差が顕著です」

と航空参謀。「アイスラ少尉達は敵に劣る装備で、かつ丸腰で偵察を行っているのだな…」

コンスコンは攻撃軍では人情家で通っている。これはと見込んだ若い将校が敵に劣る装備で

必死に任務に邁進している姿には胸を打たれるものがあった。

「ソロモンに帰還したら観測装備の更新を具申しましょう。確か、新型の観測ポッドが有った

筈です。そのセンサーを偵察機に搭載すべし、というのはどうでしょうか」首席参謀の提案に

「私の名で上申書をしたためてくれ。ドズル閣下には私が手づから渡す」とコンスコン。

 

そんなほのぼのした空気がCICに漂った時、宇宙を切り裂くように2本の光条が走った。

それはレッドバイカウントⅡの傍らを進んでいたムサイ級『エトナ』のブリッジ直下に突き刺さり、

エトナは名前の由来となった火山のごとく艦橋から火炎を吹き出し、その数瞬後爆沈した。

「な、なぜ本艦では無くエトナを狙った…」コンスコンは唖然としながらも当然の疑問を口にした。

「敵が見つからない以上、遠距離から狙撃される危険性は十分あると思い、閣下のご裁可を得て

ビーム撹乱幕を展開しておりました」と砲戦参謀。

「そ、そうだったな。いや、すまん。全艦に撹乱幕を展開させよ!」コンスコンは慌てて全ての

艦に撹乱幕の展開を命じるが、今度は『シュトラールズント』に2本のビームが突き刺さる。

軽巡は船体に内蔵されたCクラス ミサイルが誘爆したのか轟沈した。

 

「敵はどんな手段でこちらを観測しているのか…」コンスコンは呆然となりかかるが、

「撹乱幕はどうなっている!」と大声を出して自分と周囲を奮い立たせようとした。

「一足遅かったですが、生存している艦の前面に撹乱幕を展開しています。敵の射撃は2本の

ビームが同じ箇所に命中していることから敵はCIC付近を狙って撃ってますね。

シュトラールズントを狙った狙撃はミサイルランチャーの誘爆を狙ったのかより下を狙って

います」と砲戦参謀。

「ピンポイントを狙撃だと…。MSしか有り得んな」コンスコンはその射撃精度からMSによる

狙撃と断定した。「そのようです。MSでしか不可能な精度ですよ、これは。

ビーム兵器を持つMS-09でもかろうじて可能か、といったレベルです」航空参謀は敵の能力に

ショックを受けている。

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「クロエ、聞こえてるかしら?こちらは貴女の目を通じて敵を観てる」とリリーの声が

クロエの頭の中に響く。眼前のモニターでは距離が遠く細部の判別がつかない

敵艦の細部まで「見えた」。彼女はAIの補助なしに引き金を引いた。

ゲーツ・キャパにも同じタイミングで声が響き敵が「見えた」。彼も同時に引き金を引く。

RX-78-8とRX-79Dの2機から発射されたビームは敵ムサイ級のCICがあると思しき箇所に命中し、

2本のメガ粒子の奔流に貫かれた軽巡は艦橋付近を吹き飛ばされ火柱を上げながら轟沈した。

 

(このまま次、行くわよ)「クレア達は足を止めて狙撃、援護されたし」サイコ波とチャットで

クロエとクレアに同時に指示を出すリリー。イースも能力を十全に発揮する為起きて目を凝らして

いた。「了解!AA、援護よ!」クレアの指示にアリシアは「了解!」と一言だけ答えてモニター

に映る遠すぎて機種も定かでないが、一番手近なMS目掛けてビームを放つ。

敵MSのどこかに当たったようで、被弾した敵は後退して行った。

クレアもモニターに映る敵MSのうち、その動きから隊長機と思しき機体にビームを放つ。

こちらは掠ったかしたようだが、大きな損傷には至らずビームの方向からこちらの大まかな

位置を掴んだのか、飛んで来た。

この間にクロエとゲーツは2隻目の軽巡を沈めていた。

 

(クロエ、ゲーツ、壁の中へ。それといい?距離が近くなると敵の声が響くかも知れないから

感覚をカットして。方法は知ってるわね)クレアはクロエとゲーツに「2人はリリー准尉の指示

に従うように。援護はこちらの判断で行うから心配しないで」と音声で指示する。

 

RX-78-8を凝視するリリーに声をかける者がいた。ナイン・バルトだ。「実はクロエ機にはサイコ

波を受信してモニターに表示する機能を追加したんだ。要するに直接MSと交信できるんだが、

使ってみるかね?」

「ゲーツ機には?」というイースの質問にバルトは「クロエ機とデータリンクを行えばAIが

アプリをインストールする、簡単さ」とバルトはこともなげに言う。「一々頭に語りかけるより

モニターに映った敵をマーキングして射撃を指示する方が合理的だよな」

「そうでもないわ。機械は故障するもんだし」とイース。リリーは既にバルトから戦場に意識を

戻している。バルトは肩をすくめ「ま、使う使わないは任せるよ」と立ち去った。

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コンスコン艦隊のMSは母艦ごとに中隊を編成していた。レッドバイカウントⅡ搭載のMS-09

中隊12機は軽巡エトナが狙撃され、シュトラールズントが続いて狙撃された時にビームを

観測していた。

その方向へ急ぐ彼らに別の方向からビームが襲いかかる。1機が右足を撃ち抜かれ、推力の

ほぼ半分を失い後退する。隊長機の左肩にビームが掠めたが、艦隊のMS大隊長を兼ねる少佐

でもある彼は残ったドム11機を率いビームを放った狙撃者を目掛け飛んだ。

何度かビームが飛んでくるが、ザクより遥かに推力の大きいドムが回避に専念していれば躱せ

ないことはなく、撃墜される機体はなかった。

「いける、もう少しだ」ドムのセンサー有効範囲すなわちビームバズーカの射程まであと少し、

というところでドムのセンサーが別方向から急速に近づく高熱源体を3つ捉えた。

「この速度、モビルアーマーか!?」新たに現れた高熱源体は4つに増え、さらに近づいてくる。

一際大きい熱源から太いビームが飛来し、3番機に直撃する。ビームに貫かれたドムは一瞬

へし折れたように見えたが、その次の瞬間火球となった。

 

「この火力、モビルアーマーだ!全機!態勢を立て直すぞ!」隊長は中隊各機に指示を飛ばし、

編隊を新たな敵へ向き直した。手近なドムから最早目視できる敵目掛けビームバズーカが

発射される。次の瞬間、ビームは敵機の手前で四散してしまった。

「ビーム撹乱幕か!?」必殺の筈のビームバズーカが無効化され、呆然となるドムを敵機の

放ったミサイル弾幕が襲う。最初にビームを放った機体を含め3機が犠牲となった。

 

隊長は叫び出したい衝動にかられたが、それを堪え回避機動に専念する。

その時、彼は白い閃光を見た。

と、ほぼ同時に彼の意識は消え失せる。頭にブレードアンテナを生やしたドムは敵の

ビームに貫かれ融合炉の爆発で火の玉となった。

 

生き残ったドムの最先任搭乗員、カワハヤ少尉は反射的に「後退!!」と叫び生き残りに撤退を

指示した。彼らを襲った4機は見逃してくれたのか離れていった。

母艦レッドバイカウントⅡへの帰還コースを取ろうと後退を始めたドムのセンサーにまた別の

方向から熱源の反応があった。だが、随分と小さいもので最初はドローンか何かだとカワハヤは

思ったが、だが、ドム4機が敵ビームの餌食となり熱源は少なくともMSであることが判る。

パニックになりかけたが、訓練の成果か回避機動を取りながらカワハヤはビームバズーカを

発射する。今度のビームは四散しなかったが、敵は安々と回避してのけた。

 

回避機動のGと悲鳴を上げるのを耐えつつカワハヤはこちらに接近するMSを光学センサーで捉えた。

それは宇宙では背景に溶け込む暗い赤に塗られた機体でジムとは決定的に違う点があった。

「顔がある!」敵MSは二つのカメラ・アイと口のようなスリットを備えていた。

更に2本の角まで生えている。

「オニ…!」カワハヤは祖母が読んでくれた絵本に出てくる怪物の名を呟いていた。

オニは両手に光る剣を持ち、彼のドムを解体し始めた。最初に両腕を斬り落とされ、次いで両腿を

切断された。彼は悲鳴を上げつつ投降信号のボタンを連打していた。

こうして、カワハヤはMS-09ドム搭乗員最初の捕虜となったのだった。

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「ありゃ、敵の新型機か!スカートはいてやがる…、小隊、あの『スカート付き』に全力射だ!」

イオ・フレミング少尉はこう叫ぶと右肩に装備したビームランチャーを発射した。

ライフルより数段太いビームが頭と胴体が緑、手足が灰色の『スカート付き』に突き刺さり

これを火の玉に変えた。

イオは次に胴体に仕込まれたミサイルランチャーを起動し、小型のミサイルをばら撒く。

ミサイルは少し飛ぶと爆発し、ビーム撹乱幕を形成した。

「ナイス!」とジョブ・ジョン。事前の手はず通りだが、実戦では手はず通り

出来ない者もいるのである。「サンク!」とダンク、「…したっ!!」とウモン。

ビーム撹乱幕によって敵のビームを防いだジョブ達3機はミサイルを斉射、多数の

直撃弾を食らった敵機が吹き飛ぶ。

 

既にアムロはイオ達第3小隊から離れ独自行動していた。1発で角の生えた『スカート付き』

を仕留めると残りのドム編隊をそのままにさらに先へ飛ぶ。

イオ達も相対速度を殺してまで残りに構うつもりもなく飛び去った。

 

「敵新型機はイオ少尉の命名により『スカート付き』と呼称する。生き残りを掃討するぞ」

ウィリーは機体を覆う光学・熱線迷彩シートからダブルビームライフルを突き出し発射した。

第1小隊4機の射撃はイオ達に注意を向けていた『スカート付き』達を捉え、4機を撃墜

する。

 

「残りは白兵で仕留める!!」フレッド機が遮蔽物としていたデブリから飛び立ち、ビーム

ライフルを乱射しながら突貫する。『スカート付き』は手にした大型の火器を向けようと

したが、RX-79Pの高機動を追いきれず懐に入られた。

そして胴体をビームサーベルに貫かれ動きを止める。

「お、コックピットをぶち抜いたみてえだな」フレッドは舌なめずりした。

 

ハヤトのRX-78-4は閃光弾を折り込みながらフレッドより慎重に敵機に近づき、

少し遠間からビームサーベル二刀流で斬りかかった。まずは火器を持った右腕を次いで

背中に装備した白兵戦武器らしき棒を抜こうとした左腕を斬り飛ばす。

さらにメインスラスターがある足につながる両太ももを横薙ぎに斬ったところで

敵機が「投降する」とモノアイを点滅させ知らせてきたのでコックピットハッチを

貫くのは止め敵機にビームライフルを突きつけた。

 

残りの1機はカイのRX-78-3が大型火器を狙撃して破壊してい為、背中の棒を抜いて

ウィリーのFAガンダムに切りかかってきた。ウィリーは焦ることもなく、ダブルビーム

ライフルで敵の頭を吹き飛ばすとビームサーベルで袈裟斬りにした。

 

こうして第13独立戦闘団はジオンの新型MS-09増強中隊12機を殲滅したのである。

======

 

『エトナ』中隊のMS-06F、9機は母艦が撃沈された時、既に全機発艦していたが、

母艦にビームが突き刺さり轟沈する有様を目撃した若年兵から悲鳴が上がる。

母艦にいる愛しい人の名を叫ぶ者、「神様、神様…」と呟く者、中隊の士気は

どん底まで下がった。

 

(まずいぞ、これは…)中隊長は焦るものの、士気を回復する手立てが見つからず、

取り敢えず大声で「貴様ら、戦友の死を無駄にするのか!」と怒鳴るが、若年兵

達は盛り下がったままだ。小隊長を務める下士官達も意気消沈したまま、兵を

励ますこともしない。

(エトナはソロモン配備で通商破壊戦にも出ていない、戦場度胸が無いのだ…)

訓練する時間だけはあったから技量面で問題ない筈だったが、いきなり帰る場所が

吹き飛ぶ事態に動転してしまうのは仕方がない面があっただろう。

 

すると、隊長機のモノアイがこちらに接近する光点を捉える。

「敵が来た!貴様ら、そのままでは死ぬぞ!」隊長は死の恐怖で部下を鼓舞しようと

試みた。効果があったのか、8機のザクは訓練通りの機動を始めた。

(やれるか…)と隊長が思った瞬間、光の奔流が押し寄せ彼は蒸発した。

残った8機のザクは純白の敵MSに追い立てられるように散り散りとなり、1機づつ

ビームライフルの餌食となった。

 

『シュトラールズント』中隊はベテランの割合が多いためか、士気は下がらず、

むしろ戦友の敵討ちに燃えていた。中隊各機が接近する4つの光点を発見した

のとほぼ同時に敵が放った高出力ビームに先頭を行く機体が貫かれ爆散する。

こちらの中隊長は「的になる」という理由でブレードアンテナを装備しておらず、

最初の犠牲者とはならなかったのだ。

敵はこちらに突っ込んでくるのではなく、ザクが観測できるギリギリの距離を掠める

ようにして飛んできてはその度にビームを放った。撃つとさらに距離を取り、編隊を

組み直そうとすると襲ってきた。

遠距離ではザクのモノアイでは敵機の細部が分からず銃口の向きを見てビームを回避する、

というテクニックが使えず、生き残りたければ闇雲な回避機動を取るしかない。

編隊飛行など望むべくもなく、バラバラになった中隊は1機づつビームに貫かれて

いく。『ブレスラウ 』中隊に応援を呼ぼうにもあちらも敵の襲撃を受けていた。

 

やはり遠距離からビーム攻撃だ。BM-02ベムから連邦はビーム兵器を使い出したが、

ここまで大火力、かつ正確な射撃をしてくる敵はいなかった。

「七面鳥撃ちのつもりか!」ブレスラウの中隊長は吐き捨てるが、ザクの携帯火器では

どうすることもできない。恐慌状態を起こした若年兵が足を止めてマシンガンを乱射する

のを無視して、まるでこちらをからかうかのように縦横無尽に飛び回る白い閃光に次々と

ザクが墜とされていく。

最後まで生き残った中隊長が投降信号のボタンに腕を伸ばしかけた時、彼に終末が

訪れた。メガ粒子の奔流にコックピットを貫かれ彼の身体と意識は蒸発した。

======

 

「ドムは残り1機、ザクも27機が既に落されている…」コンスコンは作戦続行を

諦め、撤退を決めた。レッドバイカウントⅡはビーム撹乱弾を既に使い切っており、

随伴艦、ムサイ級『ブレスラウ 』が旗艦にビーム撹乱幕を提供していた。

「高熱源体、4! ブレスラウの方へ向かっています!」旗艦のオペレーターが悲鳴

と紙一重の報告を上げる。「奴らには撹乱幕が見えるのか!?」戦闘中ずっと撹乱幕

を張り続けている旗艦にはビームは飛んでこず、随伴艦のみを狙ってくる敵の戦術に

違和感を覚えたコンスコンだったが、砲術参謀の「撹乱幕を光学観測すると少し像が歪みます

から腕のいい観測員ならなんとか…」という話にそういうものなのか、とそこで思考を打ち

切った。

 

軽巡ブレスラウは残った最後の撹乱幕弾を放ち、対空機銃を撃ちまくるが、敵機は撹乱幕を

張ってない面に回り込み、ビームを放つ。軽巡は二つのエンジンブロックと船体を貫かれ

爆散する。

 

コンスコンは「全艦180度会頭!」と叫びたくなったが、オペレーターの「敵艦!本艦の射程内

です!」という報告にほぼ反射的に「全艦、敵艦に全力射!先頭のヤツだ!」と叫んでいた。

巡洋戦艦レッドバイカウントⅡの3連装砲塔3基から9本のビームが先頭の敵艦に伸びる。

だが、恐るべきことにビームは敵艦の手前で進路をひん曲げられた。

 

「対ビームアクティブ装甲です!」砲術参謀が叫ぶ。「我軍でも開発が進んでいますが、連邦は

既に実用化していたとは…」参謀は最後心底意気消沈した口調になった。敵艦は必殺の420mm

3連メガ粒子砲でも歯が立たない相手だった。

コンスコンは自分の作戦の見通しが甘かったことを改めて思い知らされた。

 

コロニーを奇襲して一撃の後、遁走する、という作戦は敵に察知された時点で罠は口を開けて

いたのだ。艦隊はみすみすその罠に飛び込みこの有様である。

「こんな指揮官に率いられる兵達が哀れだ…」コンスコンが革張りの提督席に沈み込むのとほぼ

同時に「熱源!9時!」という報告と共にCIC直上のA砲塔が吹き飛んだ。

メガ粒子砲の発射準備をしていたら砲塔は大爆発をしていたかもしれないが、幸い発射直後で

あり、砲塔が吹き飛んだだけで済んだ。

 

前方の敵艦、前足の生えた異様な形のフネで木馬のような姿をしていた、から大出力のレーザー

通信が入る。「投降サレタシ。ムダニ兵ヲ失ウナカレ」と。

コンスコンは席に沈み込んだまま、首席参謀を呼び、全艦の機関停止と投降信号を打つよう

命じた。

 

ムサイ級『ケルグラン』『アンフェルネ』は旗艦からの通信で旗艦停止を行い、ブリッジ直上の

投光器で投降する旨の発光信号を発した。ケルグランのCICでは僚艦の爆沈を散々見せられた後

で「助かった」という空気が流れた。艦載機も恐ろしく正確なビーム射撃によって6機を失い、

残った3機は戦意を無くし武装を放り投げ、旗艦が投降する前に勝手に投降していた。

 

アンフェルネの艦内では、ここまで通信管制や航路の設定に苦労してきたのは何だったのか、

という徒労感に包まれていた。

搭載していたザク9機はさらに正確な狙撃で頭と右腕を撃ち抜かれ無力化されていた。

メインのセンサーを無くし左腕一本となったザクはそれでも母艦からMSを引き剥がそうと

苦闘していたが、旗艦が投降信号を発すると動きを止め、手のひらを開いて左腕を上げた。

 

アンフェルネの艦長は「敵にはこちらに情けをかける程余裕があった、ということか…」と

呟いた。「このまま嬲り殺しにならなかっただけ運がよかったと思いましょう」と傍らの

副長が呟く。「後で喫煙スペースに行こう。久しぶりに吸いたくなった」と艦長。

「酒保を開放して皆で酔っぱらいましょう。バカな作戦を強行したバカなジオン兵っぷりを

連邦軍に見せつけてやりましょうや」と焼けっぱちとなった主計長が焼けっぱちな

具申をする。

 

「許可する。喫煙スペース以外での喫煙も今後3時間の間許可するぞ」と艦長。

数時間後、アンフェルネを接収すべく艦内に入ってきた連邦軍海兵隊は軽巡の至るところで

タバコの煙をくゆらし、酔っ払ったジオン兵の姿を見ることになった。自分は下戸だ、

と自己紹介するジオン士官がぐでんぐでんになった艦長を引きずって来たが、

海兵の指揮官は「1時間後、また来るのでそれまでに艦長にシャワーを浴びさせ着替え

させて欲しい」と伝え去った。

「広報班には見せるなよ。プロパガンダに利用されるのはけったクソ悪いからな」と

海兵大尉は部下達に命じた。(ろくな情報も無しにニュータイプ部隊と当たる

ことになったからな。味方から見てもバカバカしい程のワンサイドゲームだった)と

彼は内心で呟く。

======

 

アムロは怯えを見せる敵にビームライフルの射程ギリギリから3連射し、角付きを含め

ザク3機を立て続けに撃ち落とした。

ザクはまるでビームを受けるのを待っていたように易々と胴体を貫かれ爆散する。

「只今、4機を撃墜」Lisaがスコアを告げる。アムロは頷くと編隊を維持できなくなって

散り散りとなった敵機を順番にビームライフルで仕留めていった。

 

(アムロ君、敵の断末魔を聞くな…)頭の中にレヴァン・フウ大尉の声が響くが、

アムロは(大丈夫です。こちらも必死でそんな暇ありませんから…)と答えた。

事実彼の脳はガンダム2号機に戦闘機動を取らせることと射撃にリソースを振り分け、

敵を感知するのには使われていなかった。最初に撃ち落とした新型機らしき機体から

はいきなり絶命の一撃を食らった驚きが見えたのだが。

 

ザク9機を全機撃ち落とすと少し離れた所にいる9機を新たな目標と定めこちらも

射程ギリギリから先頭の機体を火球に変える。

「アレは隊長機じゃなかったみたいだ…」アムロの独り言にLisaは「敵編隊の動き

から確かにそのようです」と答える。ザクがマシンガンを見当違いの方向に乱射する

のを素早く照準し撃墜する。8機を落とし、最後の1機を火球に変えた後アムロは

「あ、あのザク戦意無くしてた。しまったな」と呟いた。AIは沈黙している。

 

「俺達はあの編隊をちゃんと組んでる連中を狙う。しまっていくぞ!」イオ少尉の

激に(士官らしくなってきたじゃん)とジョブ・ジョンは思いながら「ラジャー!」

と叫びダブルビームライフルを発射する。

イオのRX-78L(FA)とジョブのRX-78L、ダンクとウモンのRX-79Lは敵と

一定の相対距離を保ちながら敵機を狙い撃っていった。

回避機動を取るも『スカート付き』より数段鈍い動きのザクは易々と餌食になった。

「羊の群れを襲ってる狼の気分だな…」イオは敵を仕留める興奮と裏腹の性能差の

あり過ぎる戦闘に少し後ろめたさを感じていた。

 

ウモンは(あ、これだ…)敵機がスローモーションで動く感覚を再び覚えていた。

スラスターバーニアを全開にして機動している筈のザクがゆっくりと動いて見えるのだ。

ウモンは反射的にダブルビームライフルとシールドのミサイルを放つ。

同時に二つの火球が生まれた。

 

ダンクは「これって一方的過ぎませんかね…」と漏らすが、ジョブは「バカか!これが

一番安全な戦い方なんだよ!」と一喝する。ザクはマシンガンやバズーカを放つが、

火線は大体こちらの方向、といった具合で回避するまでもなかった。

敵は整然と組んでいた編隊も解けて、バラバラに孤立していた。

 

その孤立したザクを小隊各機が仕留め、戦闘は終わった。

「俺らが9機仕留める間にアムロ君、18機落としてるみたいだ…」イオが感嘆を漏らすと

AI:Lindaが「アムロ軍曹機は我が機の42%の時間で照準し、射撃しています」と解説した。

イオは「そんじゃ、母艦をやるとするかぁ」と呟くと進路を敵戦艦と随伴艦の方向へ

定めスラスターを吹かした。

 

敵戦艦にはアムロが取り付いているため、イオ達は随伴艦を狙った。ムサイ級は対空機銃で

弾幕を張り、小型のミサイルを放つが、ろくに照準もされていないようで高機動MSには

付いてこれない。イオは敵艦の下の潜り込むと肩のビームランチャーを放った。

艦橋の真下から貫かれた軽巡は同時にエンジンブロックとMS格納庫に直撃を受け、

爆砕された。

 

本部小隊と第2小隊が敵艦隊の直掩に付いているザク編隊に狙いを定めた。

カイはロングビームライフルの調子が悪くなった為、デポのあるデブリにライフルを取り

に行った為、置いてきていた。

FAガンダムとガンダム4号機、ピクシーの放つビームに次々と散華するザク。これを2回

繰り返した所で残ったザクが武器を放り投げ、モノアイの発光信号で「投降する」と

告げた。

 

第2小隊では、リリーの誘導でクロエとゲーツが引き続き狙撃を行っていた。

(いい?あなた達の機体にリアルタイムで敵の情報を送ってる、今度はAIの支援付きで

まず敵の頭を狙ってみて、その次は武器を持ってる右手よ)と彼女はバルトが追加した

機能を使いザクを無力化しようとしていた。クロエとゲーツは別々の機体を狙い撃ち、

見事頭を吹き飛ばした。次いで右手を吹き飛ばした。だが、戦闘能力を失ったザクは

囮となってこちらの目を引きつけるつもりか、戦闘機動を止めようとしなかった。

 

(こいつら、母艦を守って死ぬ気だわ…)リリーとイースはショックを受けていた。

「必死の決意で戦う敵兵もいる。これが戦場なのだ」と背後に立ったレヴァンが

リリーとイースの肩に手を置きながら告げる。「お前達は戦況によってはそんな彼らを

殺さねばならない」と敵の生殺与奪の権が二人にないことも周りにも聞こえるよう

口頭で告げたのだった。

 

敵の戦艦、艦橋を無くして砲塔を増やしたチベに見える、の横位置を取ったアムロは

敵の意思が発せられている箇所、CICに狙いを定めたが、ビームを放つ直前に声が響いた。

(アムロ君、少し待ってくれ…)レヴァンの声だ。

(これ以上、殺さずに済むかもしれない)という落ち着いた声で戦闘の興奮から醒める

アムロ。(どうするんです?)こちらに気づいたのか、対空砲塔が旋回するのを見ながら

特務大尉に問いを発すると(ホワイベースを前進させる。敵わないことを思い知ってもらうのだ)

と大尉。(Iフィールド、アテになるんですか?)サイド7で母艦に追加された新装備について

(設計者のマルデン少佐が乗り込んで調整している。大丈夫さ)(ウッディ少佐、いい人

そうですけど腕前はどうなんでしょう?)やけに馴れ馴れしくアムロ達に「僕のことはウッディ

と呼んでくれ」と自己紹介する造艦少佐を今ひとつ信用してないアムロだった。

 

「艦長、艦を前進させてください。Iフィールドは起動していますよね?」とチャーリー少佐。

パオロ・カシアス大佐は「ええ、全力で起動中です。お陰でホワイトベースはメガ粒子砲が

使用不能です。この艦を囮に使うのですか?」と質問しながらも「前進!随伴艦は後ろに

下がらせろ!」と指令を発した。

「敵の斉射を防いだら、こう打電してください」とチャーリー少佐。

パオロは文面を一瞥するとにやりとして「なるほど」と言った。

 

Iフィールドは無事その機能を果たし、ホワイトベースを狙う15本のビームをへし曲げた。

通信士が打電した数分後、敵艦から「投降する」という信号が発せられ、生き残ったザク

は手のひらを見せながら腕を上げモノアイから発光信号を出している。

「統合参謀本部の構想には彼らが必要なのです」とチャーリー。

パオロは(あぁ、そういうことか。善意からではない、と思ってはいたが…)と内心で

呟いた。

 

カイは「壁」の端っこに取り付いた敵の偵察機を察知した。

デブリに隠れいていた偵察型ザクがいきなりオープン回線で「コンスコン艦隊、降伏セリ!」と

全方向へ怒鳴ったので発見できたのだ。

カイは「そのまま隠れてりゃいいのによ!」と吐き捨てるとロングビームライフルを放った。

ビームは3つ目のザクの胴体を貫き、カイは「ジーク!ジオン!!」という叫びを聞いた。

オープン回線を開きっぱなしにしていたからかもしれない。

偵察型はもう1機いたようだが、閃光弾をばら撒きながら撤退していく。

「こちら、カイ。敵の偵察型が戦艦とは別の方向へ飛んでった。大尉の言う『別働隊』

じゃねぇのか。こっちの推力じゃ追いつけない速さでずらかってる!」と通信を入れた。

彼の3号機は狙撃用のロングビームライフルを交換する為、デポになっているデブリに寄っていた

ので、偵察型に対応できたが、他の機体は戦艦の方へ行ってたので、1機取り逃がしてしまった。

 

「コンスコン艦隊、降伏セリ!」オープン回線でケイト・ヨン軍曹が叫ぶ。全方向に電波と

レーザーで発信されたのですぐに敵に発見されるだろう。

フーバー・アイスラ少尉は「バッカ!ケイト、テメェ!!」と叫ぶと閃光弾をばら撒きながら

デブリから飛び出した。即、スラスターを全開にして離脱する。

ケイト機は敵MSから放たれたビームを被弾し、火の玉になった。

「ジーク・ジオンじぇねぇだろ、バカがよ…」ドム中隊やザク中隊が嬲り殺しになっているのを

一言も発することなく記録していたフーバーも、直属の部下が戦死するのは堪えたようだった。

======

 

「敵艦の格納庫に新型モビルスーツ『ドム』が1機ありました。おそらくはアルバート軍曹の

射撃で片足を失っています」とブライト・ノア中尉が報告する。

「アダムス技術少佐は早速新型機の解析を開始しました」と付け加える。アラン・アダムスは

「敵艦隊は新型MSを装備している可能性が高い」とほぼ無理やりホワイトベースに乗り込み、

戦闘を興奮しつつ記録しながら、敵戦艦を接収するために乗り込んだ海兵について行って格納庫で

『ドム』を発見したのだった。フレッドがコックピットを貫いた機体とハヤトが鹵獲した機体は

ホワイトベースの中央格納庫に収容された。

 

敵艦の接収を進めていると、「コンスコン艦隊、投降セリ!」という女の叫び声がオープン回線で

発せられた。女は一番近くにいたカイが放ったビームに貫かれ爆散したが、偵察型が1機、

別方向へ飛び去った、という報告を受けたレヴァンが「別働隊はこちらの性能を記録して

いたようです。もしかしたら、戦わずに引いてくれるかもしれません」と言うと、チャーリーは

「それは『希望的観測』というやつだな。聞いた話だが、シャア・アズナブルという男は敵が

強いからと逃げ出す程賢くないようだ」と引き締まった顔で新たな、おそらくはもっと難敵に

対処すべく各所に命令を発している。

 

シャア・アズナブル率いるファルメル戦隊と第13独立戦闘団の戦いのゴングが鳴らされよう

としていた。

 




第13独立戦闘団とコンスコン艦隊の決戦をお送りいしました。
今回は場面が頻繁に切り替わり、時間軸も移動する為に場面ごとに
「======」という区切りを入れてみました。

戦闘そのものは一方的でしたが、コンスコン少将は積み上げてきた死亡フラグが
転じて生き延びることとなりました。

13独戦のパイロットもゲーツが恋心故か覚醒し、ウモンも感覚を取り戻しました。
レヴァンは彼が戦闘中死者の声を聞かないか、心配なようです。

次回はいよいよ、シャア対アムロであります。
お楽しみに。

6/5追記
ウモンのRX-79のカラーリングはこちら↓をイメージしています。
https://pbs.twimg.com/media/EaEpaHJU0AE3PXU?format=jpg&name=900x900
作者のデスウンコ氏は他にもガンダムイラストをアップされているのでフォローをオススメします。有名なところではドルメルですね。
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