「黙示録の四騎士!」モニターでは連邦のプロパガンダ放送が流れていた。
画面には4機のMSが映っている。例の『2本角』だ。
「レッド・ライダー!その手に握られたビームーサーベルに斬れぬジオンはいない!」
両手に持った2本のビームサーベルで目にも留まらぬ斬撃を繰り出す赤黒いMS。
「ブラック・ライダー!彼の狙撃から逃れたジオンはいない!」
長大なビームライフルを構える黒いMS。ビームに貫かれるザクの映像が流れる。
「ペイル・ライダー!
背中の大型スラスターを全開にしてアクロバット飛行を披露する灰青色のMS。
「そして、ホワイト・ライダー!彼こそ『勝利の上の勝利』を連邦に約束する!」
白く輝くMSは悠然と小惑星の上に立っている。
「彼ら4機を含む、我が軍の最新鋭MS部隊はサイド7へ奇襲攻撃を目論んだコンスコン提督
麾下の艦隊を迎撃、大打撃を与え、降伏へと追い込んだのであります!」
画面にはサイド7に入港した巡洋戦艦が映っている。メガ粒子砲は全て下を向いており、
投降したことが分かる。
「そして、その増援に現れたジオンのトップエース『赤い彗星』シャア・アズナブル少佐
と交戦、敵はMS多数を失って撤退に追い込まれたのです!」
画面には赤いザクが連邦の巡洋艦を沈める様子が映されている。画面が切り替わり、
これを退けた白いMSが戦闘機動を取る様子が映っていた。
「この4機をはじめ、10代の少年少女により編成されている独立第13部隊の次の戦場は
ソロモンであります!ソロモン要塞に籠城するジオン兵に告ぐ!命を無駄にするなかれ!
生きて祖国に帰還したくば投降せよ!連邦軍は諸君らを受け入れるであろう」
大写しになるソロモン要塞とそれを握りつぶす二本角のCGでプロパガンダは終わった。
「私の敗北を早速敵は言いふらしている」シャアは肩をすくめた。
「『黙示録の四騎士』とは、あのカラーリングはこのプロパガンダのためだっのでしょうか…」
ブラウンは悔しそうだ。
「いや、一応技術的な裏付けはあるよ。あの赤黒い塗装は宇宙では背景に溶け込むんだ」とマイ。
「さて、オリヴァー、この映像から何か新しい情報を読み取ったかね?」とシャア。
「レッドバイカウントⅡの姿を確認できたくらいですね。チベ改級巡航戦艦とMS-09ドムの
性能は連邦に丸裸にされた、と思っていいでしょう。ソロモン防衛は一段と困難になりました」
技術士官は難しい顔をしている。
「グワバンはなんと言っていた?」シャアは「動く技術本部」こと戦艦グワバンに
マイが長距離通信を入れた成果を尋ねた。
「グワバンは既にソロモンに入港し、そこで新機材一式を渡すそうです。本部長は少佐に
新しいMSを用意していると鼻息が荒かったですよ」とマイ。
「ほぅ。それは楽しみなことだな。MS-06Sでは白い二本角にまるで歯が立たなかった。
新型が用意されているのであれば、一刻も早くソロモンに到着したいところだが…
ドレン!どうだ?」仮面の男は操舵輪を握る士官に声をかけた。
「明日にはガデム大尉の補給艦とランデブーして推進材を補充できます。
その後。最大加速でソロモンへ向かいます。ケンプテンとノルトハウゼンは置いていく
ことになりますが」とドレン大尉が答える。
「両艦の負傷者を今日中にこっちに移しましょう」と併せて具申した。
「結構。そうしてくれ」とシャア。ビーム兵器はかすっただけでも装甲材が非常な
高温になり、コックピットに灼熱の飛沫が飛び散るという被害が相次いだ。
ノルトハウゼン所属の某少尉などは全身火傷を負い顔の左半分が焼きただれる、という
有様で医療シートまみれで未だ意識不明であった。
「アイスラ少尉が記録した敵新型機のデータですが、抄録をグワバンに送信しました。
本部長はいたくお喜びで早速新型機の開発に反映させるそうです。
アルマージュ技師は張り切ってるそうですよ」とマイ。
「ますます期待が持てるというものだ。ザクで行ける距離に近づいたら単身でソロモンへ飛ぶか」
と、にやりとするシャア。
ドレンはぎょっとして「そいつはご勘弁を。自分はあくまで『艦長代理』なんですから」と
上官の奇行を止めようとした。
ブラウンは「少佐、その際は予備の増槽を持ってお供します」と言う。
ドレンは「ブラウン、そうなったら貴様だけでも営倉送りにしてやる」とブラウンを睨みつけた。
そんな一コマを見て微笑みを浮かべるシャア。サイド7での闘い、いや敗北以来初めて仮面の男が
笑った。マイ技術大尉はそんな「自称友人」の顔を見ながら(少佐も張り詰めてたんだな。
この人も人間だったってことか…)と少しほっとしていた。
ブラウンもドレンに小突かれながら笑っている。マイヤーの戦死から切り替えられたようだ。
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==== ジャブロー 『ゼファー プロジェクト』開発施設
クルスト・モーゼスはナミカー・コーネルとすっかり打ち解けていた。
彼女も専門こそ違えど、新人類を脅威と考えており、クルストの構想を「素晴らしい」と
褒め称えてくれた。
クルストもナミカーの「人間を強化する」構想には興味を示した。彼のEXAM機に強化人間を
乗せることで「ミュータント」達への対抗手段となる、と考えたのだ。
もちろん、二人はガンダム劇中の強化人間がニュータイプと共感を起こしている場面は知らず、
そんな事態なぞ起こり得ないと考えていた。
「モーゼス博士にご紹介したい方がいるのですが…」ナミカーはこう切り出した。
「ほう、軍人かね?」とクルスト。
「いえ、民間人の方ですが、私と同志の支援者です。政府や軍にも影響力を持った方ですわ」
とコーネル。紹介したい者に心酔しているようだ。
「是非、ご紹介いただきたい」とクルスト。
彼は『ゼファー プロジェクト』の主任設計員、カインズとAIに倫理を実装するかで
対立していた。
「敵は殲滅する、というロジックで構わんじゃないか。ロジックは単純な方がいい」と主張する
クルストに「我々は『スカイネット』を開発してるんじゃないんですよ!倫理無きAIを備えた
ドローンが世界大戦のきっかけとなったことを博士もご存知でしょう!」とカインズ。
彼はあくまで倫理機能をゼファーのAIに実装したいようだった。スタッフの多くもカインズの
側に付き、軍も参謀本部の意向でカインズの構想を支持した。
また、ここでもクルスト・モーゼスは窓際に追いやられようとしていたのである。
ナミカー・コーネルに案内されたカラカス市内の日本料理店、その個室にその男はあぐらをかいて
座っていた。ポロシャツとジーンズといったカジュアルな服装だが、金がかかっていそうに
クルストには見えた。
男はナミカーをみとめると手を振って、ここだ、というジェスチャーをした。
「クルスト・モーゼス博士、こちらはMr.ジェフリー・サクマ。ベンチャーから医療機器大手に
成長させた『ラスコ』グループの総帥ですのよ」と誇らしげに男を紹介するナミカー。
スマートグラスをかけた若い男はにこやかにあいさつし、
「いやぁ、博士にお会いしたかったんですよ。貴方の研究は我々人類の希望です。
我が社には既にナミカー女史の指導で強化人間がいますからね。是非博士のシステムが完成したら
MSに組み込みたいものです」と手を差し出し興奮した口調で言った。「乗せる」のではなく、
「組み込み」と言う辺り人間をMSというシステムの部品と思っているようだ。
クルストも自分の構想の理解者が現れたことに興奮を隠しきれずにサクマCEOの手を両手で握っていた。
クルストは日本料理を食べサケを飲みながら彼のEXAM構想について熱く語り、サクマはそれを
熱っぽく聞きながら一々相槌を打っている。クルストはEXAMにより連邦軍のAIをクラッキング
し、支配下に置くアイデアまで披露した。
日本料理とサケに舌鼓を打ち宴席が最高潮となったところで、突如閃光が走り、クルストは前が
見えなくなった。部屋には刺激性のガスも充満してるのか涙と鼻水が止まらない。
いきなり後ろから鼻と口元を覆われ、意識が遠くなった。
==== ジャブロー 地下施設
こんにちは、ゴップです。ご無沙汰しておりました。
今、私の目の前にはこの世界の『グレイヴ』が不貞腐れた様子で座っている。
私はとぼけたカエル顔で「まさか『グレイヴ』の正体が民間人だったとは。盲点だったよ」
と目の前の男に語りかけた。
男は「これは何なんですか?軍が民間人を逮捕監禁なんて軍閥政治でしょう!到底許されざる
暴挙ですよ!」と食って掛かってきた。
「だって、君をFBIが逮捕したらメディアやSNSがざわつくしねぇ。我々としてはなるべく
表面上は穏便に事を進めたいんだよ」と表情一つ変えずに私。
男は医療器具大手『ラスコ』CEO、ジェフリー・サクマだ。この時代なので当然のようにPMC
(民間軍事会社)を傘下に収めている。そこの社員を被験者にオーガスタやムラサメ研、そして
アナハイムNT研の残党を集め強化人間の開発をしていたようだ。研究施設は複数名義の不動産
に分散されていた。分散ネットワーク型の組織でここまで秘密が破られなかったのは特筆すべき
だろう。それら研究施設にも予定ならFBIと軍の合同捜査チームが突入している頃合いだ。
「実はナミカー・コーネルには以前から目を付けていてね。クルスト・モーゼス博士に接触した
時はしめた、と思ったよ。彼女まで行き着くのは大変だったが、多くの情報をもたらしてくれた」
男は真っ青になった。かなりヤバいことまでナミカーにやらせていたと見える。
「弁護士を呼べ。いや、呼んでください…。貴方は何か誤解されている。私の研究は公益に資する
ものであって、決して違法な人体実験なのではないです」途端にしおらしくなり、「誤解」だと
言うサクマ。
「クロエ・クローチェ。私の部下が救出した被験者だよ。年端もいかぬ少女を随分と酷い目に
遭わせたようだね」ギロっと上目遣いでサクマを睨む私。最近この手の顔が様になってきたと
思う、潰された研究所とクロエのことは当然報告を受けていたようで、サクマは観念した
顔つきになった。
「しかし、アナハイムの研究成果をパクって強化人間を作ろうだなんて随分と大胆だねぇ。
アナハイム配下の黒社会に潰されるかも、とは思わなかったのかね」と私。
「それは…」と言いかけて何かに気づいた顔でサクマが「閣下!私のバックを知りたいとは
思いませんか?司法取引をしましょう!私を支援していた連邦議員や高級軍人の名前と引き換えに
私の身の安全を!」と叫んだ。
「そうだねぇ。検討してみよう。もっとも、私の一存じゃ決められんがね…」と私。
「例の秘密結社ですか…」と震え声で聞くサクマ。
「そう『ガンダム・センチュリー』という組織だ。その目的は『人類社会の永続』私達は
人が人を食う絶望の未来を知っていてね、それを阻止すべく動いているんだよ。君の火事場泥棒
みたいな研究を潰したのもその一環だ」と私。表情を消したカエル顔で淡々と語っている。
サクマは目の前の将軍が訳の分からないことを言い出して唖然としている。
噂される連邦軍内部の秘密結社が狂った教義を掲げていることに呆れているのだろう。
そして、その狂人が自分の命運を握っていることに気づき、顔面蒼白となった。
「閣下、是非私めもその末端にでもお加えください。必ずお役に立ってみせますから」とサクマ。
生きて贅沢を続けられるならカルトでも何でもいいらしい。
私は意図的ににたぁ、と笑ってサクマに「そうだねぇ、同志達に諮ってみよう」と言った。
こいつをG.C.に加える気など毛頭無かったが、色々歌って貰わねばならんのでねぇ。
ジェフリー・サクマは地下の秘密施設に連行された。そこで彼の背後関係について洗いざらい
供述させる予定だ。
私は次の来訪者に入室の許可を出した。
「君は見事ミッションを達成した。次は私の番だな」とトラヴィス・カークランドに語りかける。
「で、私に何をして欲しい?」とも。
トラヴィスは「まずは俺を月面に転属させてください。エアーズかアンマンがいいですな。
それと独立中隊とその指揮権を」とトラヴィス。
「中隊でいいのかね?君なら大隊も動かせると思うんだがね」と私。
「中隊がいいんです。大隊規模だと書類仕事が多すぎましてね。倅を探してる暇なんかありゃ
しません。優秀な幕僚まで閣下にねだるのは気が引けますしね」とトラヴィス。
「中隊のメンバーに何か希望はあるかね?参謀本部オススメの兵など君は願い下げだろ?」
と私。目の前の胡散臭い男は真面目で命令に絶対服従の下士官や兵を好んでいないことは
短い付き合いだが分かる。
「腕はいいが、軍規だの部隊の空気なんぞに馴染めなくて腐ってるヤツがいれば、そういうの
こそ中隊に迎えたいですね。俺はね、独立愚連隊を考えてるんですよ」とトラヴィス。
インチキセールスマンの顔から凄みのある顔に変わっている。
私はくくく、と笑い「この私に独立愚連隊とは言ってくれるねぇ。いいだろう、なるべく君の
意向に沿った形でリストアップしようじゃないか。だが、監視役は置かせて貰うよ。
君はそのくらい緊張感があった方が良い仕事をしそうなんでね」
とトラヴィスの希望を叶えること、監視役を置いて好き勝手にはさせないことを伝えた。
「いいですねぇ。そいつを出し抜く方法を考えるのは楽しそうだ」トラヴィスは悪そうな顔で
にやりとする。なんというか、とことん露悪的な男だな。
トラヴィスが退去した後、シロッコが面白そうな顔をしていた。
「監視役に志願しそうな顔をしているな」と私。
「閣下には叶いませんね。そうです、面白そうな男だと思いまして」とシロッコ。
「それは許可できんねぇ。優秀な士官を奴に殺させる訳にはいかん」とカエル顔でドスの効いた
返事をした。
「私は殺されますか」と面白そうに言うシロッコ。
「あの男は切れ過ぎる監視役など生かしておかんだろう。まさに適当な能力の男を送るとするよ、
君も選考に参加してくれ」と私。あのトラヴィスは配下にスーパーハカーとか爆弾魔とか抱えてる
からね、シロッコといえど油断はできない。それに意気投合されて軍閥化されたらもっとタチが
悪い。劇薬は混ぜない方が無難だな。
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先日の戦い、連邦軍では『ノア沖海戦』と呼称されることとなった、でアムロは2階級特進して
准尉、クロエとゲーツは同様に曹長に昇進、その他のメンバーは指揮官のチャーリーをはじめ
MS中隊の指揮官ウィリー、搭乗員全員の階級が上がった。
今日はウィリーの公約通り1バンチの中国料理店で満漢全席を13独戦の全員、整備兵や警備兵
まで含む全員で楽しんでいた。
「自分達は何もしておりませんので…」とダグザ小尉は最初辞退しようとしたが、チャーリー中佐
の「君達が帰る場所や大事な人を守ってくれると思うから皆全力で戦えたんだ」という説得を受け
警備小隊も参加することになった。ウィリー少佐からは「最初辞退した、とか言うんじゃないぞ。
小隊の士気に響くからな」と言われ頭を下げるダグザだった。
チャーリーの簡単な挨拶の後、祝勝会がスタートした。
参加人数が多いのでビュッフェスタイルである。
カイなど「ハヤト!フカヒレだぜ!たっかいんだろうなぁ」と大いにテンションを上げていた。
「これが熊の手かぁ。父さん達も遠慮せずに来ればよかったのに。あ、お土産包んで貰おう」
とハヤト。ジョブの妹ジョアンナをはじめとしてサイド7在住の搭乗員親族も招待されていた。
カイの父親は本人が拒絶したので招待されなかった。
RXー78の主任設計者であるテム・レイも招待され、酒も入って上機嫌の彼はアラン・アダムス
技術中佐と鹵獲されたジオンの新型機について話し合っていた。
ウィリーとクレア、イオ達士官搭乗員は老酒や紹興酒をひっかけながら戦術論を戦わせていた。
ダグザはフレッド准尉に「貴様は参加せんのか?」と聞いたが「俺はコマのつもりだからな。
参加するならアムロだろうぜ。中隊の戦術はあいつの能力を前提に組み立てられてる」
と興味無さそうに答えた。
クロエはリリー、イースと一緒のテーブルでもぐもぐ料理を食べていた。
戦場での活躍との大きなギャップに「こうして美味しそうにご飯を食べてるところは
14歳の女の子ですわね」とミライ中尉が呟くと「君だって17歳の女の子だ。遠慮せず食べな
さい」とチャーリー。「座り仕事ですからパイロットと同じ量食べたら体重が心配ですわ」と
ミライは苦笑いする。「大丈夫ですよ。明日ジムで鍛えましょう!」とミユ曹長。
ノエル軍曹も携帯端末を見せて「ここに中佐立案の筋トレメニューがあります。筋肉をつける
ことで基礎代謝が上がって痩せやすくなります」とミユに同調している。
「2人がそう言うなら遠慮なく」と普段はあまり口にしない揚げ物をパクつくミライだった。
「少佐、飲んでるかぁ」とウィリーは同じく少佐に昇進したレヴァンに尋ねたが、
「自分の肝臓は強化されてますのでアルコールに酔えないのです」と答えるレヴァンに
「それは可哀想に。酒に酔えないとは人生の半分損してるじゃないか」と赤い顔のウィリー。
レヴァンは微笑みながら「額のサイコ・リミッターを調整すれば少佐の気分が伝わって
私も気分がよくなる。二日酔いにもなるんですよ」とゴップ邸での経験を語った。
「そうか。皆酔っ払ってるから能力全開にしたら明日地獄を見るぜ。弱にしといた
方が無難だな」とウィリー。
「そうします」とレヴァンは額のリミッターを撫ぜると作動中を示す赤い光が灯ったが、
弱い光だった。たちまち顔が赤らむレヴァン。
「レヴァン少佐、妹さん、すぐ回復して安心しました」と酒で少し気が大きくなった
イオが普段話しかけないレヴァンに話しかけた。
「中尉にも心配かけました。イースを気遣ってくれてありがとう」と微笑むレヴァン。
面と向かって話したことでイオに邪念が無いことに気づいたようだ。
イオは少しほっとした顔で「今後も管制よろしくお願いします。ウモンを上手く
使ってやってください」と頭を下げた。NTパイロットであるウモン、特に戦闘中の
彼をどう指揮したら良いか正解が分からないイオだった。
「私は中佐に敵情を報告するだけです。中佐の判断に全幅の信頼を寄せています。
それと、NTの子達を怖がらないであげてください。」と
レヴァン。
自分の能力はサイコ波による敵の探知とサイコ波通信であり、指揮管制ではなく、
早期警戒システムなようなものと考えていた。
正直なところ、士官教育を受けていない彼にはウィリーやアムロ達の方が余程戦術
に詳しく思え、戦闘中そこに脳の処理能力を使う余地は無いとも考えている。
前回の戦闘管制はAIの補助を受けてのものだったが、対象が2機だけだから
上手くいった。戦場全体を見渡しながらチャーリー中佐に戦術情報を提供し、
通信機としてチャーリーの戦術判断をMS中隊に伝達するのが役目と割り切っている。
「余所者の自分もお招きいただき恐縮であります」ブライト中尉はチャーリーに頭を下げた。
「いや、中尉は大事な部隊の一員だよ。カシアス艦長との間に入って大変骨を折って
くれたじゃないか。ところで大佐のご容態はどうだね?」とチャーリー。
「はい。今日見舞いに参りましたが、手術は成功し食事も取れるようになったそうで」と
ブライト。「ですが、やはりホワイトベースの指揮には耐えないとご判断され、辞職
されるそうです」無念の表情を浮かべるブライト。
艦長の交代を既に知っていたチャーリーは「残念だ。大佐には大変お世話になった…」と
返す。「ブライト中尉、君の昇進も参謀本部へ具申しておいた。新艦長の赴任と同時に
大尉に昇進する予定だ。今後ともよろしく頼む」とブライトの肩を叩いた。
「13独戦も部隊規模の拡大が認められて、幕僚を迎えることとなった。
GW中隊も編成されMS隊の足として戦術の幅が広がる。ウィリー、君の能力が試されるぞ。
新任の中隊長に舐められることのないようにな」とチャーリーはウィリーに発破をかける。
「まぁ、アムロ准尉を目の当たりにすれば大抵のヤツは舐めた態度なんざ取らんでしょう。
自分は重々しい態度で望みますよ」とドヤ顔のウィリー。
「部下が凄いから俺は舐められない、って少佐もいい性格してますねぇ」とイオ。
「アムロは誤解を受けやすい性格だし、他のNT搭乗員達もまだ子供よ。
彼らを好奇の目ややっかみから守るのが少佐や私達の仕事、中尉ももう少し余裕を持った
方がいいわ」とクレア大尉。自戒を込めての言である。前回の戦闘ではクロエと
ゲーツの指揮を丸投げしてしまったと後悔していた。
「ですね、大きく構えますよ。そういえば中佐、ウチの警備会社、都合が付きそうです。
軍からの受注ですから姉も大サービスするつもりですよ」とイオはR&Dセンターや
13独戦司令部の警備を委託する手配が付いたと報告した。
「正式な発注は後日になるが、あらかじめダグザと打ち合わせておいてくれ。警備は
彼に任せているからな」とチャーリー。
「了解です。やっこさん、口を開けば『人手が足りない』ってボヤいてましたから
喜んでもらえると思うんですがね」とイオ。
ジョブとジョーのテーブルにチャイナ服姿の少女が挨拶に来ていた。
この中華飯店オーナーシェフの娘、ファ・ユイリィである。
「ジョーちゃんが軍にうち紹介してくれたんでしょ?ありがとう」と頭を下げる
ユイリィ。
ジョーは「私はお兄ちゃんにここ教えただけだよ。美味しいって。お兄ちゃんが部隊の
将校さんに推薦したのよ。私が時々ごちそうになってるからって」と照れ笑いしながら
返事するが、兄のジョブは「ここの料理、本当に美味いよ。今日セッティングしてくれた
のはR&Dセンターの主計士官だからきっとセンターから客が押し寄せると思うよ」と
春巻きを食べながら口をはさむと「もー、お兄ちゃんお行儀悪いよ」とジョーが兄を
叱る。ジョブは「あ、いけね。軍の食堂じゃ食いながら喋るのが当たり前でさぁ」と
頭をかく。
アムロのテーブルではテムとアダムス中佐が早口で議論するのを他所に会話を聞いて
いるのかいないのか、アムロが黙々と料理を平らげるなか話しかける者がいた。
RXシリーズAIの開発主任ダニエル・アトキンソン中佐である。
「Lisaはお役に立てたかな?」と中佐が尋ねるとアムロは「ええ、他のAIのように
余計なことを言いませんし、いいですね。先だっての戦闘でも大いに活躍しましたよ」
と淡々と答える。「僕は対人インターフェースに処理能力を割くべき派だったんだけど、
君の反射速度に追いつくにはインターフェースを出来るだけ簡略化せざるを得なくてね」
とダニー中佐は苦笑した。
「ハードの性能が上がっても今のインターフェースがいいです。意味を聞き取るのに脳の
処理能力を使いたくない」とアムロ。
「君の能力も上がるだろうし、セントラルコンピューターを載せ替えても今の無愛想な
Lisaのままだろうね」とダニー。
「AIに愛想は求めてないですよ。ペットロボのハロとは違う戦闘用AIですから」とアムロ。
「そうだね。次の作戦に間に合うようAIのアップデートを進めるよ」とダニー。
そんなやり取りをアムロとしながらダニーは(ボブ父さんに「レヴは上手く部隊と馴染めてる」
ってメールしないとな)と考えていた。視線の先にはウィリーやイオと微笑みながら話して
いるレヴァンの姿があった。
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==== ジャブロー 統合参謀本部
会議室には本部長である私、ゴップ大将と第一艦隊司令のレビル大将、第二艦隊のティアンム中将、
第三艦隊のワイアット中将、第四艦隊のエルラン中将がリアルで居並んでいる。
機密上リモート会議は望ましくない、と彼らには鎮守府からジャブローまで出向いて貰った。
「ここでこの会議に新たに加わる提督をご紹介しましょう。新設される第五艦隊司令、
ダグラス・ベーダー中将です。レビル大将はよくご存知でしたな」
「ええ、士官学校同期です。若い頃はA-38攻撃機でシステムの警告を無視して地面スレスレを
飛ぶので『クレイジー・ダグ』と呼ばれていた男です。久しぶりだな、ダグ」と軽く手を上げる
レビル。「久しぶりだな、ヨハン。俺も中将に昇進してお前に後一歩のとこまで追いついたぞ!」
とベーダー中将は豪快に笑いながらサムズアップしている。顔の傷といい提督と言うより海賊船
の船長っぽい。
ダグラス・ベーダー中将、第四艦隊では艦載機部隊を指揮する飛行長の少将だった。
艦隊勤務以前はMS、GW搭乗員の養成に尽力し、MS教導団設立の立役者でもある。
ハッテ沖海戦で麾下の604MS戦闘団が大活躍し、彼の功績が認められ中将に昇進、新設された
第五艦隊の司令官となった。
第五艦隊は各サイドの駐屯艦隊を束ね、通商護衛に当たっていた部隊を付け加えた形で編成され
艦隊としての纏まりには欠ける。
配備されているマクロス級砲艦の代わりにエンタープライズ級MS空母を2隻多く配備していた。
2隻で合計96機、二個戦闘団分多く艦載機を保有しているのだ。
元々は大艦巨砲主義だったワイアットに充てがっても持て余すかもしれないが、海賊の親玉の
ような風貌を他所に艦載機運用に関する論文が軍大学の教本に使われているバーダー中将なら
十分運用が可能と統合参謀本部は判断した。
「バーダー中将、私が巡洋艦の艦長をしていた頃、貴方の操縦するトマホーク攻撃機が
危うく衝突しそうになりましたな」と、ワイアットが早速皮肉を言っている。
レビル大将が昇進を固辞したため大将に昇進しそこねたのが気に入らなかったのか、バーダー中将
に当たっているのだろう。
バーダーは「そんなこと、有りましたかな?いや、現役当時はニアミスはしょっちゅうだった
もので」とどこ吹く風で答えていた。
レビル大将は苦笑しながら「ダグラス・バーダーという男はこの通り根っからのパイロット
気質でね。彼の上官をやっていた時は随分と苦労させられた。まぁ、次の戦いでは私の第一艦隊
と連合艦隊を組むので諸君らに迷惑はかけんと思う」と他の提督にバーダーの首に鈴を付けると
宣言した。
ティアンム中将も「バーダー中将は艦載機運用に非常に長けた指揮官だと思っております。
お二人のコンビネーションに期待していますよ」と海軍パイロット時代から空海合同演習で何度か
顔を合わせているバーダーを弁護していた。
私にだけこっそり教えてくれたが、彼の操縦するF-54戦闘機はバーダーの乗る戦闘攻撃機を5回撃墜
したのだそうだ。1回返り討ちにあったそうだが。
バーダーは「いや、自分の出世も搭乗員の時代が再び訪れた時流のおかげと思っております。
全くミノフスキー博士様様ですなぁ!」ガハハと笑っている。M粒子の発見、MSの開発は軍の
主力を艦載機とした。宇宙戦艦や巡洋艦も艦載機を搭載している。
現在建造中のバーミンガム級戦艦も偽装委員長、つまり次期艦長達の嘆願で直掩のMS12機を
搭載するスペースを新たに設けた。現在の軍の指揮系統は艦長が自由に使えるのは直掩機のみで
ある。艦隊旗艦として運用されるバーミンガム級も同じだ。彼らとしては艦隊の飛行長や航空
幕僚の掣肘無しに使える機体が欲しいのだろう。巨艦といえど、艦載機の攻撃に脆いのは今まで
の実戦が証明している。最も、この新造艦はCICや機関部をIフィールドジェネレーターで防護
しているが。MS-09ドムのビームバズーカなら防げると艦政本部のお墨付きだ。
ドムの鹵獲機はビームバズーカともどもジャブローに届けられ、早速技術本部と艦政本部合同の
調査チームが性能を丸裸にした。ザクを大きく上回る機動性と装甲、なによりビーム兵器を持って
いる新型機を次の戦いでジオンは大量投入してくるだろう。劇中のリック・ドム相当の機体に
ビームバズーカ、小説版ガンダムのリック・ドムだなぁ。シャア専用とか出てくるのだろうか。
「バーダー司令の紹介も終わったことですし、次は本題の『チェンバロ作戦』について
打ち合わせたいと思います。これは参謀本部が立案した作戦案です」私が合図をすると、
ホロプロジェクターがソロモン要塞とその周辺宙域を投影する。
作戦名は「劇中でティアンム提督が戦死したので不吉」とG.C.では変更するべし、
という意見があったが、ジオン側に転生者が存在する可能性が非常に高いことから
『チェンバロ作戦』のままで行くこととなった。
作戦案は大まかに言うと艦隊で要塞を包囲し、新兵器で打撃与えたところで接近し、
上陸作戦を行う、というものだ。
肝心の新兵器だが、読者の皆さんには実戦でのお楽しみ、とさせていただこう。
メタ発言をできるのは主人公である私の特権だ。
艦隊には既に配備され実戦で使えるよう仮想空間での演習を繰り返している。
提督と幕僚達艦隊側は大筋でコレを承認してくれ、後は参謀本部スタッフと
艦隊幕僚の間で細部について詰めることで会議は終了した。
会議の打ち上げとしてホールでビュッフェ式の宴会が催された。
各テーブル毎に料理をサーブする形式だと艦隊の枠を越えた交流が生まれない
からねぇ。こちらの目論見通り立食式だとテーブルや人だかりに寄って行く
者が多い。少佐、中佐クラスだと他所の艦隊司令や幕僚長に名前を売っておく、
というのが軍隊の処世術だ。幕僚に欠員が出たときに引っ張って来て貰う下準備
ってことですよ。
私のテーブルにはボディガードのつもりなのかバスクがどっかと座っており、
私はヘボン准将のチェンバロ作戦の物資集積での手際を褒めていた。
シロッコは色んなテーブルに顔を出し情報収集しているようだ。
するとビールの入ったグラス片手のワイアット中将が寄ってきて「閣下、マクロス
級ですが、もう1隻いだだくことはできませんか?」と話しかけてきた。
「君の第三艦隊には既に第五艦隊分のマクロス級を寄越したじゃないか。まだ要るのかね?」
と私、やはりこいつは大艦巨砲主義なんだなぁ。
「3隻あれば3方向からソロモンを狙えますので、裏側のドッグベイを全て砲撃することが
可能となります。ドッグベイを破壊できればジオン艦隊はソロモンへ後退して補給ができなく
なりますからな。海戦が有利に運べます」とワイアット。
「いや、敵も予め補給艦を用意しとくとかするんじゃないかね。それに本作戦でマクロス級は
動かない的を狙う運用はしない筈だが?」とカエル顔の私。
ドッグベイなどソロモンの重要施設は新兵器によって攻撃する手はずとなっていた。
「保険という訳ということで…」とワイアットはお茶を濁すが、私は「『マクロス』と
『メガロード』の2隻で諦めたまえ。ヤマトの波動砲ごっこにはそれで十分だろ?」と拒否した。
正直こっちも酒の力を借りて素面だと言いにくいことを言っている。
ワイアットは肩をすくめ「仕方がありませんな。まぁ、2隻でなるべく多くの敵艦を直撃すべく
シミュレーションをするとしましょう」と諦めてくれたようだ。というよりダメ元のつもりだった
んだろう。
「ソロモンの裏側は第二艦隊と君の第三艦隊が担当する。ア・バオア・クーから増援が来た場合は
挟撃されかねん危険な部署だ。頼んだよ」と私は立ち上がりワイアットの肩を叩いた。
私の親密な仕草に感情を動かされたのか眉を少し上げて「まぁ、裏側では私が最先任の中将です
から。ア・バオア・クーから敵が来たら第二艦隊と連合して迎撃してやりますよ」と俺に任せろ、
と言いたげな不敵な態度を取った。
コロニー防衛戦ではできなかった大規模な艦隊戦がやりたくて仕方がないようだ。
ギレンはドロス級をソロモンへ増援に寄越す可能性は参謀本部では取りざたされていた。
100機を越える艦載機を誇る超大型空母が投入されれば、戦局がひっくり返る可能性は大いに
あるが、ソロモンとア・バオア・クーを結ぶ航路上にはステルス艦ノーチラス級数隻により、
既にセンサーノードを敷設してある。機雷のように爆発こそしないが、艦隊クラスの艦影を探知
すると全方向へ大出力レーザーを発振した後自壊する、という機雷より厄介な代物だ。
ドロス級なら単艦でもセンサーノードは作動するだろう。これにより増援部隊に奇襲される
心配はなくなった。
これを避けるには航路を外れて推進材を無駄に使うか、掃海を行いながら航行するしか無い。
ノードは機雷より小さい市販のペットロボット程度の大きさなので、ジオンの持つ掃海器具では
探知し取り除くことはまずできない。航路を外れるのはドロス級では推進材を食いすぎるので、
こちらも可能性は薄い、とされていた。
元々ドロス級空母は要塞防衛時の出城、ないし攻略時の附城をする為建造されたフネだ。
機動艦隊として艦隊戦をやるにはスラスターの推力が低すぎた。
「まぁ、手柄を立てて見せますから閣下は大将の徽章を用意してジャブローで待っててください」
ワイアット。流石に大戦果を上げるか、戦死したら大将に昇進できるだろう。
私は「ま。頑張ってくれたまえよ」と軽く手を上げた。
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==== ソロモン ドッグベイ
ソロモンに入港した「動く技術本部」戦艦グワバンに珍しい人物が訪れた。
『イモータル センチュリオン』計画の主幹カーラ・ミッチャムである。
『イモータル センチュリオン』とはザク・イモータルの如き化け物MS100機による大軍団を
編成する、というどこまで本気か分からない計画だ。
パイロットの四肢を切断してザクの生体部品として使うMADとして技術本部でも名高いミッチャム
博士を迎え技術本部長シャハト少将は少し緊張していた。目の前の女にはとかく良くない噂が
纏わりついている。曰く、被検体の少年兵を性のはけ口に使っているとかそういう類のである。
「教育に悪い」とアルレット・アルマージュ技師はソロモン整備部とミーティングをさせている。
やけに短いスカートと胸元のボタンを外したシャツを着て足を組んで座るミッチャム博士は
蠱惑的な目つきでシャハトを見つめながら「今日は閣下にお時間を作って頂き光栄ですわ」
と挨拶した。
(この小娘、私を誘惑してるつもりか…)シャハトは内心での苦々しさを隠して
「いや、私の方こそジオン科学賞受賞者を迎えることが出来、ありがたく思っておりますよ」と笑顔を貼り付けて応対した。
さらに返す刀で「して、本日の来訪の目的とは?」といきなり本題に切り込んだ。
ミッチャムはこちらに身を乗り出すと、シャハトの耳に顔を近づけ、「貴方、転生者じゃない?」と囁いた。
「はぁ!?」シャハトは内心の驚きを押し隠し何のことか分からない、という顔をする。
ミッチャムは座り直すと「閣下はここじゃないどこかから生まれ変わりなすったのではなくて?」と聞き直した。
シャハトは「次々と新機軸を打ち出す私何度もそのような中傷を受けました。ライトノベルの読み過ぎでしょうな」と今度は淡々と答える。
「あら、この艦のセンサーは閣下が嘘をついている、と言ってますわよ」とミッチャム。
今度は流石にシャハトは驚いた顔になった。
「この艦のセンサーシステムに細工してアクセス可能にしましたの。私のような者を身体検査無しで艦に入れたのは迂闊でしたわね」とミッチャムは微笑んでいる。
「貴女が天才的なハッカーであることは良く分かりましたが、何の根拠があって私を『生まれ変わり』と呼ばれるのか」と真剣な顔で聞くシャハト。いざとなったらこの女を始末
せねばならない。
ミッチャムは微笑んだまま「私が死ねば、側に立ってるザク・イモータルがこの艦を沈めます。生体ユニットは私の言うことなら味方殺しも躊躇有りませんわ」とシャハトを恫喝した。
「それと、閣下を転生者と断定したのはMS-05ザクⅠに動力パイプと何より装甲への排熱システムが付いたことがまずひとつ、ESM-04ヅダを量産させたのがふたつめ、MS-09ドムの開発がペースアップしたことがみっつめですわね。その他にも落下タンクの開発などなど、明らかに未来技術を知ってる者と私達は断定しました」と今度はサディスティックな目つきでシャハトを見つめるミッチャム。
「あ、あとアルレット・アルマージュ技師とダントン・ハイレッグ少尉をスカウトしたことから少なくともネオ・ジオンについて知識があると判断しましたわ」とネオ・ジオンの旗機サザビーの開発者としてアルマージュ技師を知っていると女は話した。
シャハトは隠しても無駄と盛大に冷や汗を拭いながら「私達、と仰ったが…」と探るような目つきをする。
「ええ、私と総帥府首席秘書官、セシリア・アイリーンですわ。私達、前世でも友人でしたの」とミッチャム。
「前世…」あけすけに自分と総帥の筆頭秘書官セシリア・アイリーンは生まれ変わりだと言う女に(此奴になら、自分の身の上を明かしてよいのかもしれぬ、というより納得が行くまで帰らんだろうな)とシャハトは観念し、自分の過去を話すことにした。
自分がU.C.0067にジオン公国で生まれたこと、火星の向こう宇宙要塞アクシズで成長し、パイロットになり、グリプス戦役や2度のネオジオン戦争、ラプラス事変を戦ったこと、
その後はミネバに仕え、U.C.110年代にサイド1のブッホ・コンツェルンの動きに警戒しながら病死したことまで明かした。
ミッチャムは「そう、そういうことね。貴方と同じ境遇の人には何人か会ったわ。この宇宙世紀
で人生をやり直してる人達にね」と感心した表情で言う。
「貴女の前世とやらについてはご説明いただけないのですかな?」とシャハトは目の前の女に
自分の前世を話してみろ、と問うた。
ミッチャムは「いいわ。貴方は話を理解するだけの知性と過去生の記憶を持ってるから
私の言うことを真面目に受け取ってくれるでしょう…」と生まれ変わりのシャハトですら驚く
奇想天外な話を始めた。なんと、この世界、宇宙世紀の地球圏はジオン公国と地球連邦の戦争
を描いたアニメーションシリーズの舞台であるというのだ。
今戦っている戦争の後、過去生の彼が戦ったグリプス戦役やネオ・ジオン戦争、ラプラス事変も
全てその続編の中の出来事だというのだ。
(私の、俺の人生は端役の見た一時の夢だったというのか!)シャハトは大声で「嘘だ!」と叫びたかったが、彼の知性は目の前の女がデタラメを言ってるように思えなかった。
話のデティールの精密度が高すぎる。なぜ、この女は彼の戦友の「地球が駄目になるか、ならないかなんだ!やってみる価値ありますぜ!」という通信を話しているのだろう。
あの時の彼はアクシズを持ち上げようと参集するMSを呆然と眺めていた。緑の光に包まれ地球から離れていく宇宙要塞を見て滂沱の涙を流していた。
「貴女がその後の宇宙世紀の歴史を知っているなら私の死後どうなったか聞かせて欲しい」とシャハトはかすれ声でミッチャム博士に頭を下げた。
「そうね、貴方の死後すぐにブッホ・コンツェルンは『コスモ・バビロニア』って国を建国して再建されたフロンティアサイドに侵攻するわ。その後について詳しい話は私の世界でも作られてなかったんだけど、とにかく数年で瓦解しちゃうみたいね。
だけど、その後も連邦の力は弱いままで各サイドは事実上独立してるわ。そんなところに木星船団を母体とした『木星帝国』やら、その残党がサイド2で蜂起した『ザンスカール帝国』とやらが地球圏を襲って名目上も地球連邦は崩壊するわ。あとはまぁ、暴力が支配する暗黒時代ね。あ、ミネバ・ザビのその後については私達にも分からない。おそらくメガラニカの中で一生を終えたんじゃないかしら」と女は早口で捲し立てた。
「果たして、我が国の奇襲を防ぎ、55億人の命を救った今の連邦がその話のように数十年で瓦解しますかな?」とシャハトは疑問を漏らした。
女は「そうね、『人類の半数を死にいたらしめた』ってナレーション無くなっちゃったわけで、血塗られた楽しい宇宙世紀は変わっちゃいそう」と肩をすくめた。
「ま、それでも精々楽しい展開になるよう頑張ってみるわ」と女は吹っ切れた表情をする。
「で、ここに身の上話をしに来たのではないでしょう。一体何をお望みで?」シャハトは女が何を求めてグワバンに来たのか薄々察しは付いていたが、敢えて聞いてみた。
「そうね、私の『イモータル センチュリオン』計画への全面的な支援。取り敢えずMS-09ドムを3機分程貰おうかしら。改造するから胴体と四肢のパーツを頂こうかしら」とミッチャム。
「いいでしょう。3機分と言わず5機分持っていって結構。ドム・イモータル、楽しみにしておりますよ」技術本部長 アルベルト・シャハト少将はカーラ・ミッチャム博士と共犯関係になることに決めた。
ただ、この戦時下のジオン公国で生き延びるために。
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私がデスクで書類仕事をしていると、卓上のタブレットがニュースを流し始めた。
「違法な人体実験の容疑でFBI、連邦検事局の家宅捜索が入った医療機器大手『ラスコ』の
続報です。本日18時ごろ、CEO ジェフリー・サクマ氏の遺体が自宅で発見されました。
死因は心不全と見られています。氏の主治医への取材では…」
あの社長、心臓が悪かったのか。心臓病は怖いよねぇ、ポックリ逝きかねない。
いよいよ、地球連邦軍は宇宙要塞ソロモン攻略に動き出しました。
新しい艦隊も登場し、ますます登場人物が増えていくことに…
冒頭の「黙示録の四騎士」は個人的にはメガテンの中ボスという印象です。
最後、お馴染みのサイコレディ、カーラ・ミッチャムと生き残りたい輪廻者アルベルト・シャハトが手を組む展開に。
ダリル君の明日はどっちなのでしょうか。
「グレイヴ」の正体が民間人というアイデアはあったのですが、「メガロボクス NOMAD」のサイコメガネがあまりに邪悪なので登場させてみました。
NOMAD劇中では「佐久間」でファーストネームはないのでそれらしいのをでっちあげ
ました。