==== 月面 グラナダ
「『キマイラ』はソロモンに到着したのだな?」キシリアは傍らの参謀に念を押した。
「先程の暗号電によればキマイラ戦闘団は大歓迎を受け、ドズル中将はケルビン大佐に『貴様等こそ、公国軍が一体であることの証である!』と仰ったそうで」と参謀は胸を張って答える。キシリアは面白く無さそうに「宇宙攻撃軍も司令長官肝いりの作戦で新鋭艦と新型MSを失っているからな。見え透いた示威行為だ」と切って捨てた。
コンスコン艦隊降伏のニュースは当然のごとく突撃機動軍にも広まっていた。チベ改級巡戦とMS-09ドムの性能データは丸裸にされた、と言ってよく関係各所の頭を悩ますこととなった。
特にソロモンへ派遣した『キマイラ戦闘団』は全機MS-09ということもあり、何度かグラナダの司令部とレーザー通信が行われたが、結局の所現場の奮闘に期待する、という結論にしかならなかった。「『黒い三連星』やジョニー・ライデンのようなエース パイロットが操るドムならそうそう遅れは取らない(はずだ)」という理屈である。
「MS-09の改良ならびに新型の開発はどうなっている?グラナダ重工はビジネスチャンスと捉えているのだろう。何か言ってきたか?」とキシリア。コンスコン艦隊の降伏はジオン軍全体に打撃を与えたが、キシリア個人にすれば、宇宙攻撃軍を率いるドズルと彼の作戦を認可したギレン総帥の失点である。遅かれ早かれ、MS-09の性能データは流出したであろう。改良型や新型の投入、あるいは戦術の更新で充分挽回可能と考えていた。
「マ・クベ中将が提唱した『統合整備計画』によりツイマッド社からMS-09のモノコックフレーム提供を受け、グラナダ重工では新型MSの開発が進んでおります。YMS-10『ドワッジ』と名付けられた新型は遂に開発に成功したビームサーベルを装備しています。これでジムに白兵戦で遅れを取ることはなくなるでしょう」別の参謀が回答した。
開戦前より各社のMS開発計画を統合すべし、という『統合整備計画』は軍需企業を含む関係各所の「総論賛成各論反対」に遭って頓挫しようとしていたが、開戦と思わぬ敗北により総帥府の強い意向が働き推進が決まった。ツイマッド社はMS-09ドムのモノコックフレームを始めとする開発資料一式をジオニック、MIP、グラナダ重工などMSメーカーに公開し、ジオニックもビームライフル、ビームサーベルといった新型装備の開発データを公開した。これで、ジオンのMS開発速度は加速していき各社様々なMSの試作を行っている。
YMS-10『ドワッジ』もその一つで、MS-09ドムの全体的な性能向上型である。ドム同様にビームバズーカを装備していたが、エネルギー・コンデンサの性能向上により小型化され取り回しと装弾数は向上していた。しかも、白兵戦装備としてジオニックが試作していたビームサーベルを装備している。最も、ビームの刃を形成するIフィールドの保持が難しく電熱カッターのような見た目だったが。スラスターは『天王星』ロケットのような重い推進材ではなく、従来どおり液体ヘリウムを用いる熱核ロケットを装備している。月の鉱山で算出する割高なヘリウムを消費するためのマーケティング上の措置であったが、整備性が向上したので試験部隊の評価は高かった。
「MS-09ドムもビームに対応するため軽量化を行い、炉の出力と推力を強化した改良型が近々試験飛行を行います。次の戦いには間に合いませんが、その次には投入できるでしょう」と別の参謀が報告する。ツイマッドもMS-09の改良に全力を注いでいた。具体的には手足の装甲材を肉抜きして軽量化を行い、融合炉の出力を1,340kWに強化、腰のスカート部を延長してロケットを増設し合計推力は96トンに及ぶ。開発ナンバーはMS-09Rを与えられていた。白兵戦装備も長い棒で扱いにくい割に出力の低いヒートサーベルから、出力増強型の両刃のヒートホークに変更されている。斧の柄はザクの使用していた物より長く、白兵戦時の間合いはあまり変わっていない。しかしながら、軽量化の反面、装甲は薄くなったため実体弾に弱くなり経験不足の若年兵には扱いにくいのでは、という意見もあった。MS-06Rリック・ザクと同様に熟練兵向けの機体となりそうだったが、技術本部は制御ソフトの改良でこの問題を乗り切ってみせる、と大見得を切っているそうだ。
「装備の強化は進んでいるようだが、連邦のソロモン侵攻には間に合わぬな。ビッター、ドムの生産を待つ方が良いか?」キシリアは腹心のノイエン・ビッター少将にドムの生産が軌道に乗るまで次の作戦、攻勢防御を延期するか、と問うた。
ビッターは「それでは戦機を失うでしょう。現状のMS-06G、MS-07、MS-08で我が『アフリカ』旅団は戦い抜く覚悟であります」と回答した。
「ただし、攻勢に出る際の目標はアンマンに一本化させていただきたい。月面条約で戦略的に価値の無くなったマスドライバーしかないエアーズよりチタン鉱山やAE.の工場など戦略目標の多いアンマンへの攻勢こそグラナダ防衛に寄与するでしょう。それに『ヒルドルブ』戦車大隊を狙った砲撃もアンマンから行われたようですしな」とビッターはアンマン市への目標の一本化を主張した。
「よかろう。ただし、エアーズの連邦軍に後ろから襲われぬよう用心せよ」とキシリアはビッターの献策を採用した。
「我が『アジア』旅団は例の砲撃が怖くてアンマンには近寄れません。せめてエアーズの連邦軍の目を引くくらいはやって見せるつもりですが」ユーリ・ケラーネ准将は彼にしては気弱な台詞を吐く。ソンネン少佐発案による改良計画でマゼラ・アタック月面戦車は主砲を車体に固定装備した駆逐戦車に改造し、砲塔マゼラ・トップは局地専用の戦闘攻撃機に改造されたが、所詮は核融合炉を持たない車両であり侵攻作戦時のような砲撃を再度受ければ今度こそ旅団は壊滅的な打撃を受けるだろう。
その点、アフリカ旅団の主力であるMSはその機動性から中隊規模で分散し攻勢時に集結する、という運用により砲撃を回避できるのでは、と考えられていた。
「しかし、補給物資を積んだ段列が狙われる可能性は大いにあります。敵のNTによる観測と砲撃管制を阻害する手立てが欲しいところです」ビッターは腕を組んで考え込んでいる。
「フラナガン機関には新しいNTパイロットを要求しているのだが、まだ乗せる機体が出来ておらぬ、と言を左右にするばかりでな…」突撃機動軍はフラナガン機関を支援していたが、キシリア個人も自分の財布から財政支援をしていた。それこそMAの1機も建造できる額をだ。
「確か、脳波を増幅するサイコウェーブ通信機は既にあるのでしたな。それなら例の『壺』にでもその通信機を載せ、NTを乗せてサイコウェーブを大出力で発振すれば敵の探知と砲撃観測を阻害できるのではないでしょうか」ビッターは独自の情報網でフラナガン機関がサイコウェーブ通信機の開発に成功していたことを知っていた。「機関の本命は遠隔砲台が運用可能な機体でしょうが、間に合わぬ秘密兵器より明日役に立つ兵器こそ必要なのです」少将は部下達を例の反則じみた砲撃から守るためNTによるバラージ・ジャミングを提案した。バラージ・ジャミング(広帯域雑音妨害 )とは敵のレーダーが使用すると思われる周波数帯に対して、広く投網をかけるようにして妨害電波を発する電子戦の手法である。これのNT版を『壺』ルナ・タンクによって実現しようというのである。「確か、グラナダでスカウトされたNT候補生がいたはずですな。かなりの能力の持ち主とか。彼女にやって貰いましょう」ケラーネ准将もビッターのアイデアを支持した。
「よかろう。クスコ・アル候補生を少尉任官させ実戦投入する。機関から通信機を取り寄せルナ・タンクへ搭載しよう。準備を急げ!」キシリアは矢継ぎ早に指令を発した。こうしてクスコ・アルの実戦デビューは本人もフラナガン博士も知らないところで決定されたのである。
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===== 南米 ギニア高地
地球連邦軍総司令部ジャブローの上に乗っている形の高地は全て連邦の国有地であり、自然保護区を兼ねる公園以外は連邦軍の演習地となっていた。中には人工の砂漠や揚陸戦用の人工湖まである。その広大な演習地の一角、ヨーロッパ風の町並みが再現された演習場をMSの集団が歩いていた。
一見すると特徴的なモノアイから『ザク』に見えるが、細部が異なっていた。胸にはRX-78やRGM-79のようなダクトが見える。背負っているランドセルも大型の物で左右のふくらはぎにはスラスターユニットが装着されていた。要するに『Ζガンダム』劇中の『ハイザック』なのである。
「折角の自由ジオン専用機だって言うから乗ってみりゃ…。こりゃ、ザクとジムの合いの子じゃないか」シーマ・ガラハウ少佐は嘆息したが、彼女の脇を進む小隊員は「お頭、こりゃあ中々にいい機体ですぜ。ジムよりモーターのトルクが大きいみたいで」と満更でもないようだ。このMSは動力系に流体パルスシステムとIフィールドモーターを併用していたハイザックと異なり、全てIフィールドモーターに統一されている。戦後MS-06の生産ラインを接収し、それを活用する必要に迫られた『Ζ』当時の連邦軍とIフィールドモーターを大量生産しているこの世界の連邦軍の事情の違いもあった。
このMSに関しては資材司令部のヘボン准将が「RGM-79があるのですから何も専用機を与える必要はありますまい」と開発を大反対した経緯があった。連邦軍全体の兵站を見る立場の准将に取ってはMSの種類が増えるのは悪夢に他ならない。いくら部品を共用していても同じ生産ラインを流せる訳ではないからだ。一方で連邦軍の最新鋭装備を自由ジオン軍に渡せない、という政治的な事情もあり、AE.製のモーターを使うためRGM-79の生産に比較的影響を与えづらい、と統合参謀本部は判断し、量産に踏み切った。その裏にはG.C.の「ハイザック作りたい」という思惑があったのだが。
「FZM-01『リニア・ザク』の性能はどうかね?」シーマ機に通信が入る。この声は確かマリオ・レナートとかいう技術士官だったはずだ。双子の弟とよく似た顔の下の弟も一緒に勤務しているので、紛らわしい。
「あぁ、レナート大尉、手下共は中々いい機体だって言ってるよ。アタシには正直まだ分からないけど、MS-06よりは高性能ってことは確かさね」シーマは率直な感想を述べた。
「完全モーター駆動だからな。RGM-79Gに勝る運動性を持ってると両方設計した者として受け合うよ。コイツは機体制御ソフトがかなり優秀でね。お陰でGMのAIを少しいじるだけで移植できた。同じAE.のモーター積んでるRGC-78A 『ガンキャノンⅡ』は勿論大幅に上回ってる。まぁ、ガンキャノンⅡはAE.のV作戦から外されたスタッフが急ごしらえした機体だからな。勝って当たり前だが」
マリオ・レナートだけでなく弟達もとかく他人の仕事を腐す癖があり、シーマは内心嫌っていた。自由ジオン軍専用MS『FZM-01』の設計者として引き合わされた時も自由ジオン軍の軍規についておgdgd能書きをたれていたが、シーマがリビルド・ザク、Re:ザクでRGM-79G相手に演習で勝って見せると途端に態度が変わり、弟達と突貫工事でこのリニア・ザクを仕上げたのだった。資材司令部とやらが配備に反対したそうだが、この男かなりの政治力を持つらしく参謀本部に生産と配備を決定させたそうだ。シーマは彼らの評価を「クソ兄弟」から「性格は悪いが腕は立つエンジニア共」に変更した。
「今度はホバーを試して貰えないかな。地上での実働データは今のうちしか取れんからね」レナートの注文に「あいよ。ホバー中こけないで欲しいもんさね」シーマは障害物のある地形でのホバー機動に不安があったが、熱核ジェット/ロケットエンジンは機体を軽々と持ち上げ障害物の上をリニア・ザクは滑るように通り越していった。
「へぇ。こいつは中々いい機体じゃないか」高速で流れていく景色を見ながらシーマはにやりとしていた。
シーマが機体を降りるとレナート兄弟の横に一人女の子がにやにや顔で立っていた。
「そこの子はアンタ等の姪っ子かなんかかい?これって新型機だろ?親戚の子に見せてもいいもんなのかねぇ」シーマは自由ジオン軍の軍規を腐したレナート兄弟に嫌味を言った。
「彼女の名はメイ・カーウィン。14歳だが非常に優れたエンジニアだ。自由ジオン軍の軍属としてリニア・ザクの開発を手伝って貰ったのさ。さっき兄貴が話した機体の制御ソフトを書いたのも彼女だ。お陰でこちらはRGM-79のAIをほぼそのまま移植できたって訳さ」双子の片割れフリオが紹介する。そういえば女の子はジオンの軍服らしき服を着てる。
「はじめまして、シーマ・ガラハウ少佐。メイ・カーウィンよ。アルテイシアお姉様から貴女達を手伝うよう言われたから協力するわ。このFZM-01は鹵獲されたMS-09ドムを大いに参考にさせて貰ったから性能は期待していいわよ」とスカートを少し持ち上げ挨拶するメイを見て(カーウィン家といや、ダイクン派の大物だったね。この子もお貴族様って訳だ)と胡乱な目で見ている。メイは「私個人の政治信条はアルテイシア様と同じ『人間に貴賤はない』よ。貴女も私を『メイ』と呼んでもいいわ。私は左官の貴女を尊重して『シーマ少佐』と呼ぶから」と胸を張っている。
シーマは内心で肩をすくめながら「今後ともよろしく、メイ・カーウィンさん。後でウチの整備兵に会わせるんでこいつのことを色々教えておくれよ」腰を折ってメイの顔まで顔を下げて頼み込んだ。「私を小さい子扱いしないでよ!」と憤慨するメイに「だって、アンタ実際小さいじゃないかい」と扇で口を隠して笑うシーマ。「んもう!成長期だからすぐ大きくなってみせるからね!」とメイ。マリオは(天才だが、まだまだ子供だな。果たして前線勤務に耐えられるものか…)と危惧したが、メイと年の近い末の弟セリオは「メイは本物の天才ですよ、シーマ少佐。ドムの制御ソフトをちょっと見ただけですぐにバグを発見したんです!彼女が書き直したソフトをシミュレーターで動かしたら機体の性能が5%も向上したんですよ!」と興奮しながらメイの才能を讃えていた。「やだぁ、セリオったら。もっと言って」とメイは照れながらもっと自分を称賛するよう要求した。
(なんだか調子狂っちまうね…)シーマはこの小さな天才エンジニアをどう扱ったらいいか考えていた。子供のような振る舞いだが、リニア・ザクの性能は本物だ。その開発にひとかたならぬ貢献をしたというのだから技術者としては天才級なのだろう。マリオによれば、彼女が兄弟の前に初めて現れた際に姫様、アルテイシア・ダイクンの推薦状を見せられたという。ジオン共和国のトップの推薦では無碍に扱う訳にもいかず、試しにドムの制御ソフトの解析をさせたらセリオの言うようにたちまちソフトのバグを発見し、書き換えたソフトによって機体性能の改善を見た。レナート兄弟は即、開発中のリニア・ザクの制御系を彼女に任せた。(天才なのは確かだろうけど、血なまぐさい前線に置くのはねぇ…。姫様もそこまではこの子に望んじゃいないさ)シーマは引き続き彼女には技術畑で活躍してもらおうと決めた。
「ミス・メイは私らと一緒に宇宙に上がってもらうけど、鎮守府に居てもらってリニア・ザクの改良をしてもらうよ。あいにくと自由ジオン軍は貧乏だからね、サイズ違いのノーマルスーツは在庫がなくってねぇ…」肩をすくめるシーマ。「えぇ!?艦に乗れないのぉ?」とメイは抗議するが、アルテイシアから「シーマ・ガラハウ少佐の指示には全面的に従うように。聞けぬ、というなら貴女の軍隊勤務は認めません」と言われていたため渋々従うことにした。一方で(宇宙に上がっちゃえば艦に潜り込んじゃえばいいしね…)と密航を目論むメイ・カーウィンだった。
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私の目の前にはコンスコン少将がいる。あ、ゴップです。今はジオン共和国の幹部達と連邦軍に投降し、自由ジオン軍への参加を表明したコンスコン少将との顔合わせに同席したのだ。
万が一、喧嘩になったら即止められるだけの貫目が必要、とオクスナーに言われこうして同席しているのだが、ジオン共和国の外交委員カイザス・M・バイヤーはコンスコンに抱きつかんばかりの歓迎ぶりであった。険悪な雰囲気だったら、なんか気の利いたことを言って場を和ませようと思っていたのだが、残念だ。他の幹部達もコンスコンと彼の幕僚を歓迎しているようだ。
だが、ただ一人セイラさん、アルテイシア・ダイクンだけが難しい顔をしている。
「コンスコン提督、ひとつ確認したいのですが、自由ジオン軍参加にあたって艦隊の人員全員に意思を確認しましたか?私は意思に反してジオン公国と戦わされる者がいるのは我慢がなりません」とセイラさん。コンスコン少将はさも当然のように「公国に弓を引くのを良しとしない者は既に艦を降りております。連邦軍から捕虜収容所の待遇に関して説明がありましたので、収容所に送られるのが嫌で志願した者はおらんと思っております。皆、ろくな偵察情報も無しに無謀な作戦を立てたジオン宇宙攻撃軍司令部に憤りを覚えいるのです」と強制されて戦う者はいない、と言い切った。オクスナーによれば艦隊の人員8割が自由ジオンに参加するという。欠員は捕虜の中から志願者を募る。MS隊はシーマ中隊を中心に編成されるだろう。
コンスコン艦隊は巡戦1隻と軽巡洋艦2隻、さらに以前の戦いで鹵獲された初期型ムサイ級を改装した航空巡(MS16機運用可能)が2隻、駆逐艦はペリー級を12隻供与し分艦隊相当の戦力となった。
セイラさんは納得したのか「わかりました。あなた達の自由ジオン軍参加を共和国代表として歓迎します」と表情を和らげず言った。降伏していきなり寝返ったコンスコンを根っこのとこでは信用していないんだろうなぁ。
コンスコンは満面の笑みで「アルテイシア様、我々は貴女様のジオン帰還のその日まで戦い続けることをお約束します!」と意気込みを語っている。
セイラさんは真顔のままで「私は共和国の当面の代表で、ジオンの女王になる気などありません。提督にはジオンの共和化のため戦って頂きたいのです」と自分はジオン
彼女の言っていることが理解できたコンスコンは一瞬期待を裏切られた、という顔になったがすぐに表情を戻し「共和国の復興、承りました。その日まで微力を尽くす覚悟であります!」と胸を張った。この人も苦労するなぁ。ま、アルテイシア・ソム・ダイクンをジオンの女王にする、と言った分かりやすい方針のほうが部下達も張り切るだろうけど。セイラさんの意思表明を聞き、同席してる幕僚長とおぼしき人物はなんか微妙な表情をしてる。「思ってたのと違う」とでも思っているのだろうか。幕僚長はそれでも今更止める訳にもいかず覚悟を決めた顔になった。おそらくだけど。艦隊に戻ったらコンスコンと口裏合わせて「姫様をジオンへ帰還させるのが任務」的なことを言うだろうなぁ。共和国復興はあくまで連邦向けの建前、とかなんとか言うんだろうな。
私の予想は斜め上方向に外れ、巡戦『レッドバイカウントⅡ』には女神の衣装をまとったアルテイシアが剣を掲げた姿と「共和国復興!」とスローガンを大書したマーキングが描かれてしまった。
これ、セイラさんが見たらまた表情曇るぞ。
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==== サイド7 ドック・ベイ
停泊中の強襲揚陸艦ホワイトベースにGW02ガウォーク12機が輸送車に乗せられ搬入されている。第13独立戦闘団にもGW-02が配備されたのである。RXシリーズの足代わりといえるGWを配備したことは統合参謀本部は13独戦をソロモン攻略に投入する、という意思の表れと言えた。既に司令部はホワイトベース(WB)のCICの一角を間借りし、ダグザ達警備隊も13独戦の陸戦隊として乗艦していた。アムロ達搭乗員もWBに機体ごと引っ越している。
「よぉ、13独戦の司令部ってどこ?」カイに大尉の階級章を付けた士官が声をかけてきた。軍服の襟を緩め軍帽を斜めに被り何かヤクザな雰囲気を漂わせた男だ。
「今日赴任するガウォーク部隊の人かい?だったらCICに行きなよ。近道は水兵さんに聞いてくれ。俺らまだこのフネに慣れてなくてさ」とカイ。男の雰囲気から階級を気にしない口調が許されるだろうと思ったのだ。大尉はにやりと笑って「お前さん、こないだの戦いで大活躍した搭乗員だろ?俺ら13独戦の専属運転手になったんでヨロシクな」と手を振って去っていった。
「スレッガー・ロウ大尉以下12名、第13独立戦闘団に着任いたしました」色気のある敬礼をしたスレッガーに団長チャーリー中佐は答礼し「13独戦にようこそ。ここは色々と文化が違うんで大尉と飛行中隊の皆にはそれを尊重してほしい」と握手を求めた。スレッガーは力強く握手しながら(見た目を裏切らないマッチョだな。すげえ握力だ)とチャーリーの筋力にいささか驚いたようだった。
「文化の違い、でありますか?」搭乗員は部隊毎に風習が違う、というのは連邦軍ではよくあることだった。例えば全員揃いの入れ墨を入れる、などである。「あぁ、13独戦ではファーストネームに階級で呼び合う。君ならロウ大尉じゃなくてスレッガー大尉といった具合だな。他にも色々あるが、おいおい分かっていくだろう。だが、最初にひとつ言っておく。この部隊で『ミュータント』は禁句だ。発言した者は厳しく罰する」微笑みを浮かべながら物騒なことを言う眼の前の佐官にスレッガーは(参謀本部直属の部隊を任されるだけあって迫力があるねぇ…)と思いながら「はっ!『ミュータント』はタブー、中隊員にも徹底させます!」と敬礼しつつ復唱した。
「彼らはGW-02を駆る飛行中隊だ。こちらのスレッガー・ロウ大尉が指揮する」チャーリーの紹介でスレッガー以下12名が敬礼する。
ウィリー達士官搭乗員やジョブ達元から軍人だったメンバーは様になった答礼をするが、アムロ達やゲーツのような軍人になって日の浅い者はあまり様にならない答礼になった。
ミライ、ミユとノエルのオペレーター陣、レヴァンとシェリーナ姉妹達特務士官達も答礼している。
スレッガーは(『ミュータント』は禁句って、こいつらのことだったか!裏アプリにもSNSにも一切情報が上がらない連中、参謀本部の本当の隠し玉だ…)頭を剃ったというより元から生えてなさそうな男とホラー映画に出てきそうな双子を見てこの部隊が単なる新型MSの実験部隊でないことが分かった。自分と部下がその一味になってしまったことも。
(ツァリアーノ大佐、恨みますぜ。俺らはエライとこに送られちまった)スレッガーは13独戦にスレッガーの飛行中隊を推薦したツァリアーノ大佐を恨んだ。一名、レビル将軍の推薦で偵察飛行隊の搭乗員が追加されたが。(艦に女がいるから転属願いを出さなかったポールはうまいことやりがった)艦隊に残った部下を今更羨ましがってもしょうがない。
スレッガーは表向きニヤケ顔をしながら、自分と中隊のサバイバルについて必死で考えていた。リュウ准尉が「みんな意外とちっこいなぁ。ちゃんと飯食ってるか?」と呑気に10代の搭乗員と語り合ってるのを見ると少しだけ苛ついたが。
GW飛行中隊は早速演習に駆り出され、練度をチャーリーとウィリー、レヴァンとかいう特務士官にチェックされることになった。GWは運動性でMSに叶わない、が連邦軍の常識だったので、対抗演習は行わない。飛行隊とMS隊の連携手順を確認、というのが目的の演習である。
「俺が運ぶのはアムロ・レイ准尉で良かったかな?部隊のトップエースの運転手を出来るとは光栄だ」スレッガーはMS中隊最強、1人で第4小隊を編成しているアムロのRX-78-2を自分のGW-02の背中に設置されたMS用足場に乗せて飛んでいる。
「ところでアムロ准尉、ロデオはお好きかな?いっちょやってみないかね?」スレッガーは挑発するような口調でガウォークロデオを提案する。ガウォークが取る無茶な機動に振り落とさなれないか勝負しようと言うのだ。アムロは「僕もスラスターと手を使っていいなら、やりますよ」と答えた。「よっしゃ!いくぜ!!」スレッガーは自機『スタリオン』のスラスターを全開にした直後、手足を動かし姿勢制御バーニアを全力噴射して急旋回をかける。背中のガンダムはバランスを保つような姿勢を取ったが次の瞬間驚くべきことに腰に装備していた鎖付きの棘付き金属球、ハンマーを繰り出した。金属球にはバーニアが仕込まれており、独自の推力ベクトルを発生させる。さらにガンダムはハンマーをぶんぶん振り回すので、さらにそのベクトルが変化していく。
「な、なんだ!?ベクトルが制御できねぇ!」スタリオンは姿勢を乱してしまっていた。AIによる制御もガンダムがふたつめのハンマーを繰り出すとベクトルがさらに複雑化し、手に負えなくなって来た。「降参!降参だよ、アムロ准尉。いや、キミって凄いねぇ~」スレッガーが負けを認めるとガンダムもハンマーを振り回すのを止め、スレッガーは機体の制御を取り戻した。
「すいませんでした。大丈夫ですか?」アムロは勝ち誇るでもなくスレッガーの心配をしている。「安酒を飲んだ次の日みたいな気分だな。まだ准尉には分からん例えだったかハハハ」スレッガーは冗談を言って照れ笑いしている。
「ツァリアーノ大佐の元お抱え運転手もやるじゃないの。もっともアムロには叶わなかったけどな」ウィリーは自分が勝ったかのようにドヤ顔をしている。
「凄いなぁ、あの白いの…。あれってお前さんの同級生だったって子かい?」リュウ・ホセイ准尉は背中に載せた試作4号機ハヤト機に接触回線で語りかける。ハヤトは「あれが、アムロ・レイですよ。僕の目標です」と熱のこもった目で白い機体を見つめている。「じゃあ、お前さんもロデオやってみるかい?」リュウがからかうような口調で勝負を持ちかけると「中隊全機、俺様のマネは禁止だ。整備にどやされるのは俺一人で充分だからな」とスレッガーから通信が入る。おそらくは飛行中隊全員が背中に載せたMSに勝負を持ちかけていたのだろう。「りょーかい」と気乗りがしない返事が返ってきた。「隊長が駄目だってさ。お前さんの実力見たかったんだけどな」リュウも残念そうだ。「いや、僕じゃ秒で振り落とされますよ。買いかぶらないでください」とハヤト。アムロへの対抗心で何回も痛い目にあってきた経験がハヤトを謙虚にしていた。
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==== ソロモン要塞
重巡ファルメルと軽巡2隻の戦隊は何度か連邦の哨戒線を迂回しつつソロモンへ入港した。
戦隊長シャア少佐はサイド7での戦闘詳報を提出するため司令部へ直行し、オリヴァー・マイ大尉は隣に停泊している戦艦グワバンから搬入される新型機の試作機搬入に立ち会っていた。
「重モビルスーツだ。書類ではジオニックの開発らしいけど…」手元のタブレットを見ながら輸送車に乗せられ搬入されるMSを眺めていると「これぞ、シャア少佐の新しい愛機『MS-14 ゲルググ』だよ!マイ大尉!」突然背後から声をかけられビクッ!となるマイ。振り返ると満面の笑みを浮かべた技術本部長アルベルト・シャハト少将が立っていた。
「MS-14? 09から随分と形式番号が飛んでますが…」マイが当然とも言える疑問を口にするとシャハトは「ゲルググは14に決まっとるだろう」とさも当然といった顔で返した。
「はぁ、決まってるのならしょうがないですね」マイはMS-10から13まで何か機体があるのだろう、と思い詮索は避けた。
「それで、このMS-14の性能なのですが、書類ではちょっと信じがたい数字が並んでますね。ジェネレーター出力は1,490kW、スラスター合計推力に至っては178.5トンもありますよ、これ。モビルアーマー並です。装甲はチタンとセラミックの複合装甲なのはMS-06Sと一緒ですが、本体重量が45トンというのはちょっと信じがたいですね」目の前の重MSがMS-06Sと大して変わらない重量、というのは少し納得がいかない。「それに関してはMS-09のフレームが優秀だったから、と言える。このYMS-14はツイマッドから提供されたドムのフレームを原型に開発が進んだのだよ。今までのMS-06フレームでは内部容量の関係で出来なかった機構が追加されたり、シャア少佐の戦闘スタイルに合わせて手足の装甲と構造材をAMBAC機動に支障をきたさない程度に軽量化している。これが本体重量45トンの種明かしだ。ハイレッグ少尉に何度か飛行試験をして貰ったが、やはり少佐に乗って頂かないとこいつの性能を十全には発揮できんだろう」とシャハトはシャアにMS-14を披露するのが待ち遠しくてたまらない、という顔になる。
そんな会話をしているマイとシャハトの元へ司令部から帰ったシャアがノーマルスーツ姿で飛んできた。
「これが、私の新しい機体ですか…」シャアはおそらくMS-09ドムの改造型を渡されるのだろう、と思っていたようで眼前の重MSに驚いたようだ。
「少佐、これが機体のスペックです」とタブレットを渡すマイに「オリヴァー、私は先程中佐になった」とシャア。マイより先にシャハトが「これはこれは、昇進おめでとうございます!」と大声を上げてシャアの昇進を祝った。シャアは「有難うございます少将。で、MS-14ですが、実際に乗ってみないと信じがたい性能ですな」と、手元のタブレットを見て口笛を吹きかねないテンションになった。MS-14ゲルググの桁外れのスペックに心を奪われたようだ。
「ええ!是非ともお試しください!今日は主任設計者のアルレット・アルマージュ技師も伴って来ておりますので、不都合な箇所があればこの場にて改修いたしますぞ!」シャハトの安請け合いにマイは大丈夫かなぁ、という顔になったが、シャハトの傍らの少女、アルマージュ技師の「本部長はこう申しておりますが、この場で出来ること、出来ないことが当然ございます」という台詞に設計者まで熱に浮かされていないのが分かり一安心したような顔になった。
ファルメルの格納庫に搬入され、整備ベッドに設置された赤いMS-14に推進材が補充される。シャアは胴体のコックピットめがけて飛び、シャハトからうやうやしく手渡されたキーのボタンを押すと丸いハッチが開いた。シャアが操縦席に収まると目の前にモニター群が降りてきた。
「この機体、ジオニック製だったか、ザクと操作系があまり変わらんな。ツイマッド製のドムでは慣れに時間が必要と思っていたところだ」と独白するシャアに「仰る通り、このMS-14は『統合整備計画』により操作系がMS-06と高い互換性を持っております」とシャハト。(あのモノクル、いい仕事をするが、能書きが多いのには閉口するな…)と思うシャアだった。
アルマージュ技師が「中佐、武装ラックの一番上、ビームライフルとシールド裏にあるビームサーベルの作動テストも合わせてお願いします。実のところ、メーカーから直送されて来たのでテストしてないんです!」との通信に「了解。私がいの一番に試射できるとは光栄だ」と機嫌よく答えるシャア。ジオン全軍待望のビームライフルが試射できるのでだいぶ盛り上がっているようだ。
(実のとこ、ジオニックのエリオット・レム少佐がテストしてからこっちに送ってるだろうな)とアルマージュは思っていたが、折角本部長が入れあげてるシャア中佐が機嫌がいいので黙っていた。
赤いMS-14ゲルググはソロモン近くの暗礁宙域にやってきた。ここで運動性を含めた試験飛行を行うつもりだった。
「とりあえず、あれを狙ってみるか」ソロモン近くを漂うデブリ、質量爆弾の成れの果て、に置かれたMS-06の残骸を狙うシャア。引き金を絞るとコックピットにビームライフルの発射音が響く、もちろん合成音である。ビームはデブリに置かれたザクの胴体を撃ち抜き、後ろのデブリに命中した。シャアは仮面の下でにやりと笑い「中々にいい発射音だな。威力も申し分ない」と通信を送る。
「了解。次はビームサーベルを試してください」MS-14のビームサーベルは劇中のような両刃のナギナタではなかった。前世で自分の機体をナギナタで破損させてしまったシャハトの「強い意向」が働き通常タイプのビームサーベルになった。形としてはむしろギャンのサーベルに近い。ギャンのものよりだいぶ小ぶりになってはいるが。
「では、やってみるか」シャアは中身を抜かれたザクの残骸に近づくとビームサーベルを発振し、袈裟懸けに斬った。ザクの胴体は肩から斜めに両断される。
「ビームサーベル、これはいいな。あの『二本角』にもこれなら遅れは取るまい」シャアは苦い敗北を思い出しがらもこの重MSならいい勝負になるのではないか、と思っていた。
連邦もあの『白い二本角』に改良を施しているだろうから楽な勝負にはならない、という確信はあったが。
その時、コックピットのモニターがMSの接近を表示した。
「ブラウン、来たか。どうだ、模擬戦をやってみるか?」肩を赤く塗ったMS-09に声をかけるシャア。ブラウンは「私では完全に力不足ですが、中佐の機体に不具合が有ってはいけません。謹んでお相手仕ります」とビームバズーカを掲げて模擬戦の相手を務める、と言う。
「身内相手では新型機の実力は分かりませんわ!」突如、女の声が通信に割り込んだ。「誰だ?私は忙しいのだがな…」折角の性能テストを邪魔されたシャアが険を含んだ声色で誰何する。
「カーラ・ミッチャムと申します。以後、私の『ザク・イモータル』と共にお見知りおきを…」と女は自己紹介した。
「あぁ、あの負傷兵を直接ザクに繋げた狂人か。で、ご自慢のザク・イモータルとやらが私の相手を務めてくれるのかね?」例のMADな機体の噂は聞いていたこともあり、MS-14ゲルググの性能を測るのにちょうどいい相手と思い少し機嫌を直したシャアがミッチャムを挑発する。
「中佐、一手ご指南願いします」という少年兵の声と共にシャア達のいる宙域に黄色と黒の縞、というカラーリングのバーニアと火器を特盛りにしたザクが接近してきた。
「貴様、ダリル・ローレンツ少尉だったか、では一手頼もう」シャアは台詞が終わる前にスラスターを全開にし、黄色いザクへ向かって飛んだ。直線ではなく、回避機動を織り交ぜた螺旋を描いて、である。赤い螺旋の中から演習モードのビームが煌めく。ダリルは「さすが、速い!」と赤い重MSの機動性に舌を巻きながらも各所のバーニアを吹かし紙一重でビームを躱す。
「ほう、見掛け倒しではなさそうだな…」シャアはザク・イモータルの機動性に驚いたようだった。
黄色と黒のザクは背後に隠されていた隠し腕を展開し突撃銃やバズーカを発射する。勿論こちらも演習用のペイント弾である。普段なら照準レーザーを使って命中判定をするのだが、ミッチャムが「『赤い彗星』にペンキぶっかける、とか面白そうじゃない?」と言ってペイント弾を装填していた。
「弾道はよく知っている。当たらんよ!」シャアは派手にバーニアを吹かして銃弾とロケット弾を回避する。ザク・イモータルの武装はMS-06Sのそれと大差ない。数だけは3倍だったが。
ドム用のビームバズーカはこの日はビームジェネレーターの調子が悪く持ってきていなかった。突撃銃の弾幕は赤い重MSを追いかけるが、それを振り切ってMS-14はデブリ群をすり抜け黄色いザクにビームを放つ。
「ぐっ!!」ザク・イモータルの突撃銃を握らせた隠し腕にビームが命中し作動不能になる。ザク・イモータルも膨大と言える推力を誇っていたが、いかんせん機体が重い。見かけよりずっと軽いと思われるMS-14の機動性にやや遅れをとるようになった。次にバズーカを握らせた隠し腕にビームが当たり作動不能になる。ダリルは使えなくなった火器を投げ捨て少しでも機体を軽くする。
(ザクと一体化した僕に敵はいない、と思っていたのに…)ソロモンに配備されつつあったMS-09ドムすら演習では歯牙にもかけなかったザク・イモータルが赤い重MSを追いきれない。
「スローモーションになるんじゃなかったか!」ダリルは機体に呼びかけるが、データを蓄積していたザクやドムと違い全く未知のMSはザク・イモータルのシステムで機動を予測できず、実際の機動をダリルの脳に送っている。シャアの操縦するMS-14はダリルの主観ではMS-06RやMS-09の何倍もの速さに映る。
「中々面白い機体だ。パイロットもよく機体を動かしている。だが!」MS-14は一気に間合いを詰め、シールド裏のビームサーベルを抜くと黄色いザク・イモータルに斬りかかった。
「させるか!」ダリルは左手に握ったヒートホークで受ける。IHヒーターと同じ原理で刃を発熱させるヒートホークは強い磁場を帯びているためビームサーベルと防げる、とジオン軍では言われていた。確かに一瞬ビームサーベルと切り結んだが、次の瞬間、シャアはビームの刃を切り、また次の瞬間またビームサーベルを発振させた。たちまちザク・イモータルの機体システムは左腕が斬り落とされた、という診断がなされ作動不能になった。ダリルは右手に握ったバズーカをゼロ距離で発射するが、モニターから赤い重MSの姿が消えた。
「!!」ダリルは全身のセンサーを総動員して赤いMSを探す。MS-14はザク・イモータルの下に機動していたようでビームが背部のスラスターを貫いた。
機体システムは熱核ロケットの爆発で機体が爆散した、と診断を下した。「参りました」ダリル・ローレンツ少尉はザクの右手を上げた。バズーカは既に手放している。
「少尉、そのザクはいい機体だな。ビーム兵器を使えたら私のMS-14でも危うかったかもしれん」シャアは珍しく他人を褒める。設計者のミッチャム博士はともかく、操縦者のダリルを評価したようだ。ダリル自身はビームバズーカを使っていたら、シャアのMSをバズーカの照準に捉えようと機動してビームライフルの餌食になっただろう、と思った。と、いうより機体システムのシミュレーション結果を脳が読み取った。
「ダリル、負けちゃったわね!でも、あのMS-14ゲルググのデータは取れたから次の『ドム・イモータル』はもっと強くなるわよ!」カーラから通信が入った。
(次はドムになるのか…)ダリルは腕がない両肩をすくめたくなった。
41話をお送りしました。
今回から「環境によって見え方が違うので行揃えの改行は良くない」という感想を頂いたので改行を減らしました。読みやすくなったでしょうか?
今回は「ジオン脅威の技術力、続々と開発されるMS」といった感じでお送りしました。
連邦もハイザックもどきを作ってますが。
シャア専用ゲルググはゲルググJのスペックを流用してます。
0080のMSってやたら推力が大きいんで化け物スペックMSにもってこいですね。
クスコ・アルの実戦投入が決まり、彼女は再び月に行くことに。電子戦ならぬ脳波戦をどう書いたものか、と思案中であります。
シャハトはシャアにMS-14ゲルググを献上しました。
ダリル君のザク・イモータルは新型の噛ませになってしまいましたが、次の『不死のドム』が控えてますので。
また、「閃光のハサウェイ」を見に行ったんですが、MSの市街戦のむごさに昔のゲームブックにあった「MSを3機も投入すれば街は壊滅する」という記述を思い出しました。
AFVのように歩兵を支援する、というのも難しそうで、Twitterで話題になったマンハンター・ジェガンの銃座に防盾がない、というのも銃手が撃たれればジェガンが全力でダバオの街を破壊するから出来ない、という解釈に至りました。
キルケー部隊も平気で街にビームやミサイル撃ち込んでましたし。
連邦ひどいですね。