== ==月面 エアーズ市からおよそ100km地点
連邦軍の一兵卒となった『ホワイトフォース』の少年達はマルセラ・スペンサー少尉の指揮でエアーズから100km離れたこの地点まで行軍訓練を行っていた。「そこ!遅れてるぞ。グズグズするな!」「列を乱すな!」といちいち
前を行くハラダ一等兵が「お前、よくあんなのにいちいち返事してんなぁ。あの女、俺達に嫌がらせしてんだぞ」とスペンサー少尉に聞かれぬよう「お肌のふれあい通信」で話しかけてきた。
「この程度でめげてちゃ軍の思惑通りじゃないですか。それって悔しいですよ」と13歳の少年は意地を見せているのだと言う。
「そこ!私語は禁止だ」たちまちスペンサーから叱責が飛ぶ。2人は首をすくめてMSを歩かせた。もっとも、彼らの乗るBM-02には首が無かったが。
「だいぶ見栄えが良くなったんじゃないですか」カレン・ジョシュワ曹長は少年達の行軍に一定の評価を与えた。「ごっこから軍隊らしきモノになった、っていう程度ね」マルセラ少尉は相変わらず採点が辛い。「私が訓練兵の時よりずっとましですよ。クレーターに足引っ掛けて将棋倒しになったりしてましたし」クレア・ヒースロー軍曹が過去の失敗談を明かした。
「隊長!」後方を指揮車輌の月面装甲車でついてきていたオペレーターのエレン・ロシュフィル伍長が緊迫した口調で呼びかけてきた。「どうしたのエレン?まさか敵!?」
ここは近くに鉱山やマスドライバー、都市もない。50km先に古い観測基地があるだけのただの月面である。戦略上は勿論戦術上も何の意味もない地点だった。
「かなり先ですが、大型のタイヤらしい振動をキャッチしました!その後方に無限軌道の振動が続いてます。タイヤはかなり早い、時速100km近い速度です!無限軌道は数が多く大隊規模とAIは推定しています!」エレンは振動センサーが捉えた敵の存在を報告した。マニュアル通り、既にエアーズ市の方向へ向け最大出力で救難信号を発している。
「タイヤ?MSの駆動音のじゃないの?」マルセラはてっきり敵はMSでうさぎ跳びで接近してくると想定していたので敵の正体がはっきりしない。「タイヤ付き」と言われるMSモドキの車輌も時速100kmは出せないはずだ。
「そんなことより、子供達を避難させないと!」カレンの具申にマルセラは思考を切り替え、「総員、回れ右!エアーズ市に向けうさぎ跳びで帰還する。スラスターの噴射も許可する。一刻も早く現地点を離脱しろ!」と命じた。「敵でありますか!?」副官のナイアス・ヒュー准尉が緊張した口調で尋ねる。「こちらを補足してるようで近づいてくる速度がかなり速い。きちんと陣形を組んで行動してる。お前達の敵う相手じゃない。だから逃げる」マルセラは簡潔に説明し、撤退を指揮した。
以前のホワイトフォースなら敵の迎撃を主張する者もいただろうが、マルセラの一切の抗弁を許さない態度に諦めたのか言われたことを即実行するようになっていた。
(でも、これって敵をエアーズに呼び込むことにならないのかな…)コナンは自分達の街が奇襲されるのでは、と気が気ではなかったが、「坊や達、こっちは防犯ブザーを慣らしてエアーズに向かってる。プロの兵隊がおっつけ現れるから心配しなくていいさ」ジョシュワ曹長の落ち着いた口調で冷静になれた。(そうだ。団長達が来れば『タイヤ付き』なんかイチコロだよ)コナンは敵をタイヤ駆動の『ギガン』だと思っていた。火力は侮れないが所詮はMSモドキ、距離を詰めれば『ニューディサイズ』が装備するGMの敵ではない。
マルセラはGMを装備した自分達本部小隊を殿に撤退の指揮を取っていた。(なんで、こんな何もない所を走ってるんだ?しかも、存在を隠すつもりもない。敵の狙いは何だ?)彼女には敵の意図が分からなかった。タイヤ駆動の車輌がこの速度で走れば盛大にレゴリスを捲き上げ、じきに目視が可能となるだろう。もし、これが陽動だとしたらジオンの攻勢はかなりの規模だろう。なにせ一個大隊を陽動に使うのだ。本隊は連隊ないし、旅団規模かもしれない。開戦時にエアーズを襲った戦車旅団だろうか。
「性懲りもなく!」開戦時の長距離砲撃で大打撃を与えたはずなのに、再度故郷を襲うジオン軍に怒りを隠せないマルセラだった。「何度でもぶちのめしてやるわ!」
今は新型のGMがあり、ブレイブ・コッド少佐率いる906MS戦闘団『ニューディサイズ』が常駐している。重砲、対地ミサイルも配備されているし、エアーズは街の規模の割に重武装の要塞都市といえる陣容になっていた。グラナダのジオン突撃機動軍から鉱山とAE.の大規模な工場があるアンマン市の盾の役割を担っているのだ。
スラスターを全開で噴射しながら月面をジャンプして行くBM-02ベムを視界の片隅に置きながらも彼女の目は後方のまだ目視できない敵に向けられていた。
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デメジエール・ソンネン少佐は「前方約50km地点にいるらしい大隊規模のMS部隊らしき反応」に頭を悩ませていた。「MSと正面から撃ち合えば『マゼラツヴァイ』でもただじゃ済まんぞ…」大隊の主力はマゼラアタック月面戦車をグラナダ工廠で改造したPVN.43『マゼラツヴァイ』戦車に更新されていた。マゼラトップの代わりに旋回式の砲塔を搭載している。主砲は引き続き175mm無反動砲だが、飛行しない砲塔は装甲が段違いに厚い。ジャンプしてくるMSとの戦闘を考慮して主砲の仰角も大きく取ることができる。ただ、装甲は連邦が実用化しているビームライフルを防ぐ程ではなくMSが使うバズーカ、大口径ロケット弾をも同様である。要するに月面の拠点に砲撃し、制圧する能力は持っているが、MS相手には分が悪い、という代物である。現在の戦車第一大隊『ヒルドルブ』はこれを80両保有していた。この他にHT-12『ギガン』MS駆逐戦車を40両、デル率いるMS-06G月面用ザク中隊18機を保有している。ソンネンは相変わらずギガンに乗っていたが、『HT-12C』という前面にフレームとモーター内蔵のタイヤが付いた改良型だ。最高速度は100km/hに向上したが、ソンネン的にはモーターが4つに増えたことによるトルクの向上、発進加速がいいのが気に入っていた。
「少佐麾下のMS中隊をお貸しいただければ、我ら特戦隊が殲滅してみせましょう」ソンネンの耳に若い男の声が飛び込んできた。突撃機動軍から派遣されてきた『グラナダ特戦隊』隊長、マレット・サンギーヌ大尉の声である。サンギーヌ大尉が大隊に参加しているのは旅団長のケラーネ准将直々に「指揮してるのは俺の弟みたいなヤツだ、大隊長の指揮ぶり見せて勉強させてやりたい」と頭を下げられたからだ。ソンネンは(貴族の坊っちゃんか…。ま、旅団長みたいな型破りなのもいるしな)と最初は軽く考えていたが、この大尉は正しく「貴族的」で傲慢な男だった。操縦技量は見るものがあったが、戦術眼がない。それにMS操縦適性の無いソンネンを見下しているようで、早々にデル少尉指揮するMS中隊の指揮権を寄越せ、と「具申」してきた。即座に却下したが。流石に子供の頃からの兄貴分ケラーネ旅団長には頭が上がらないようだったが、その分他人には横柄だった。何より愛機ギガンを「MSのできそこない」と陰で腐すのが気に入らない。
さらに特戦隊は悪名高き『
「サンギーヌ大尉、ひとつ威力偵察をやってくれんか」ソンネンは頭痛の種を一時的に切り離すことに決めた。サンギーヌは「了解!敵の規模によっては殲滅して見せましょう」と返事し、「それは却下だ。大隊の姿を敵に見せないと陽動にならんだろうが。旅団長からは貴官に戦術教育をしてくれ、と頼まれてる。ここは俺に従ってくれ」とソンネンは下手に出た。「確かにそうですな。では、我が隊の威力を敵に見せつけるに留めましょう」とセントールオプションを装備したMS-08とMS-07M月面用グフ、MS-06G月面用ザクの合計18機はバギーモードに変形し、高速で遠ざかって行く。ソンネンは「死なんでくれよ、サンギーヌ大尉…」と呟いた。「マゼラトップを特戦隊との通信用に打ち上げてみてはどうでしょうか?」デルの具申に「それだ!マゼラトップ発進!」とソンネンは直ちに砲塔を改造した戦闘攻撃機の発進を命じた。「これで、まずいことになりそうなら後退を命じることができる…」あの貴族的な大尉が言うことを聞いてくれれば、だが。
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マルセラ少尉の指揮するホワイトフォースはスラスタージャンプとうさぎ跳びを繰り返しながら、エアーズへ全速力で後退していた。とはいえ、行軍訓練の訓練コースになってるだけあって地形が悪い箇所がいくつもあり、後方の敵機はじりじりと近づきつつあった。「は~い、みんな、慌てず騒がず急いでね~」クレア・ヒースロー軍曹が子供達を励ます。「推進材が切れかかってる機体があります…」ナイアス・ヒュー准尉が深刻な口調で不吉な報告を入れた。「なんだと!?まだ余裕があるはずだが?」マルセラは内心の動揺を隠しながらナイアスに問うた。「推進材の充填を点検していなかった者が3人、スラスターを吹かし過ぎたのが4人、置いていくしかありません。自分も残ります」と副官は自分を含め8人を置いてゆけ、と言う。「バカを言うな!私は部下を見捨てない。お前も含めてだ、准尉。総員、あのクレーターを防御陣地とする!エレンは引き続きコンラッド基地との通信を確保して」マルセラはエレンの乗る装甲車を持ち上げると前方の大きなクレーターへと飛んだ。敵がギガンとかいう出来損ないなら、クレーターの斜面を利用した戦術は有効なはずだ。
ホワイトフォース総勢40機がクレーターに陣取ったと同時に「あと、15分、いや10分粘れ!!全速力でそちらに向かってるぞ!!」というブレイブ・コッド少佐の胴間声が響いた。
「団長殿が、教官殿が助けに来る…」子供達に安堵する空気が流れる。「気を抜くなバカモノ共!迫ってくる敵の練度なら貴様らなぞ10分保たすのも綱渡りだぞ!」マルセラは大隊に活を入れた。(あぁ、やっぱ素敵だなぁマルセラ隊長…)コナン・スティールは毅然とした女性将校のGMを熱っぽい目で見つめている。初恋であった。
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==== サイド7
強襲揚陸艦『ホワイトベース』はサイド7を出港準備が慌ただしく行われていた。「空間戦拡張パッケージ」を適用したRX-78-2 SEPはV作戦R&Dセンターの総力を挙げた急ピッチの開発で出港に間に合った。
「新しい機体はお気に召したかしらアムロ准尉?」マチルダ中尉の質問にアムロは「はい。これいいですよ。認可して頂きありがとうございます」と頭を下げた。
「私は貴方のプロジェクトを認可する立場じゃないわ。チャーリー中佐が認可したプロジェクトをどうやって実現できるか頭を振り絞るのが私の仕事。主計士官の腕の見せどころだったけど、お父様、テム・レイ博士が根回ししてたみたいでこちらの要求は気持ち悪いくらいあっさり通ったわ。貴方のお父様って大した方よ。技術者としてだけじゃなく、組織人としても学ぶ所が多いわね」とアムロの父を褒め称えるマチルダ。
「へぇ、父ってそんな凄い人だったんですね。ガンダムの出来ばえから技術者としては凄いと思ってましたが、何かと奇行が目立つ人だったので…」とプライベートのエキセントリックな父とマチルダの言うRX-78 SEPに必要な資材を魔法のように用意してくれた父が重ならない。「この機体のデータでMS中隊は強くなるわ。78SEPのデータを利用したAIのアップデートが完了して、中隊全機の空間戦での機動力が8%向上したの。元々がGMとは隔絶した性能だから、ルナ2に行ったら他の隊の面々は驚くでしょうね」とちょっとドヤ顔で語るマチルダ。
SEPの飛行データを生かした戦闘機動プラグラムにより、RX-78、RX-79各機の性能が向上してた。特に高機動機に乗る第3小隊の面々はスラスターの噴射速度やAMBAC機動の精度向上に歓声を上げた。イオ・フレミング中尉はテム・レイに酒を奢ろうとしたが、「礼ならアトキンソン中佐に言ってくれ。彼がSEPのデータを各機へ適用してくれたんだ」と機体のソフトウェア全般を統括してるダニー・アトキンソン中佐の功績だと言う。「それでも、博士の作った機体のデータがあればこそです。一杯奢らせてください」と食い下がるイオに「君と差しで飲むのはなぁ」とテム。「じゃあ、スシ行きましょ、スシ。アムロ君も一緒に」とイオ。出向前最後の夜に息子と食事に行ける、という提案にテムも乗り気になった。アムロはマチルダから聞いていた父の根回しの中身を知りたくて素直にスシ屋に同行した。テンションが上ったテムはサケを飲み過ぎてイオの肩を借りて官舎に帰った。
「アムロ、君のお父さんは愉快な人だ。78乗りとして参考になる話も聞けたしな」とテムを褒めるイオにアムロは「父は調子に乗るところがあって心配です。R&Dセンターで何かやらかさないかと…」アムロは昔テムが同僚と不倫関係にあった、という噂を聞いていた。母が家を出ていった理由はそれなのかもしれない。母が出ていっても変わらなかった父がまた同じ過ちを繰り返さないか心配だった。なにせアナハイムの女性エンジニアは美人揃いだ。
「大人ってのは分かっててもやらかしちまうモンだが、親父さんとはコミュニケーションを取ったほうがいい。俺の親父は死んじまったからもうケンカもできやしねぇ…」イオのしみじみとした口調にアムロは「そうなのかもしれませんね」と答えた。すると向こうからダンクとウモンを連れたジョブ・ジョンがやって来て「イオたいちょー!俺達抜きでスシ行ったそうじゃないスか!俺らはコーネリアス少尉の奢りでバーガーっスよ。外の高いとこでしたけど」と小隊長に抗議した。「お前らは遠慮無しに味わいもせずバカバカ食うだろうが。だから連れてかなかったんだよ」とイオ。口をとがらして文句を言うジョブ達を見てアムロは少し笑った。
その翌朝、ホワイトベースはサラミス4隻と無人型リ・ガードを艦底に搭載したペリー級12隻を引き連れサイド7を出港した。
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==== ペンタ
どうも、ゴップです。今、私は軌道ステーション『ペンタ』にいる。ソロモン攻略に出発する第一、第五艦隊を見送りに来たんですよ。
「いやぁ、バーミンガム改めルイジアナ級はでかいねぇ」宇宙戦艦バーミンガムはジオン側の転生者対策で「大艦巨砲主義の遺物」と思わせるため『バーミンガム』という艦名のまま建造され、竣工直前に艦名が変更された。情報戦の意味もあるが、実際は転生者、特に第三艦隊所属の者達が「縁起が悪い」と活発に運動した成果だ。ネームシップである一番艦は『ルイジアナ』、二番艦『ニューハンプシャー』、三番艦『サンダラー』、四番艦『ムサシ』、五番艦『オハイオ』が各艦隊の旗艦として就役していた。
傍らに立つシロッコ少尉が「しかし、艦隊旗艦専用艦であるルイジアナ級に直掩MSとは蛇足の極みですな」と批評を述べたので、私は「艦長としては自分の命令で動かせる直掩機は有り難いんだよ」と言っておいた。合理主義者の彼らしい物言いだと思うが、理屈だけでは動かないのが人間の組織というものなんでねぇ。
バスク大尉が「もうすぐ第一艦隊旗艦『ルイジアナ』が最接近します」と報告する。グレーに塗られた巨艦があちこちから光らせながらペンタの展望台に近づいてきた。ルイジアナ級は「00083」劇中のバーミンガムの腹にMS格納庫を付けた形をしている。実際に後付けで格納庫を設けたので取って付けた感がある。まぁ、連邦の艦艇はウッディをはじめとする転生者の原作知識で100年先まで使えるように各部がユニット化されてて改良が容易になっているんだけどね。なにせサラミス級は「Vガンダム」の時代でも現役だしねぇ。艦の側面にあった砲塔が無くなり、基部である箇所は内部にIフィールドジェネレーターが内蔵されているのでムサイ級の主砲やMS-09のビームバズーカ程度は直撃を防ぐことが可能だ。グワジン級の520mmメガ粒子砲を被弾しても被害を軽減できる。
バスクが「ルイジアナに何かメッセージを送られますか?」と言うので「既に参謀本部からメッセージを送ってるからね。私が今さらなんか言ってもしゃしゃり出てるみたいなんで止めとくよ」と返事した。「ルイジアナ、いえ、第一艦隊全艦から発光信号!『ワレラ、カナラズヤ、ソロモンヲコウリャクセン』」とバスク。なんというか、こういう演出が似合う人でもあるんだよなぁ、レビル大将。「自分が言うのもなんですが、いささか演出過剰ですかな」とシロッコ。言わんでいいことを言うのでまたバスクに睨まれてる。「まぁ、連合艦隊の士気を上げる方便なんだろう」と私。
少し経って第五艦隊旗艦『オハイオ』が見えてきた。「オハイオからは『ツギハ、ソロモンデマミエン』と信号が」バスクが報告する。搭乗員気質のベーダー中将はエンタープライズ級空母を旗艦にしたかったらしいが、幕僚達の説得と言うか懇願で戦艦オハイオを旗艦にすることしたそうだ。まぁ、空母は真っ先に敵MS、MAの目標にされるからね。第五艦隊は第三艦隊とトレードする形でエンタープライズ級空母を1隻増やしている。代わりにマクロス級砲艦を1隻手放した訳だ。
30分程の間を置いてエルラン中将が指揮する第四艦隊が見えてきた。第四は連合艦隊に加わっていない。彼らの任務はソロモン要塞への揚陸だからだ。第一、第五の連合艦隊が制宙権、宇宙優勢を取った後に揚陸艦を要塞に突入させる。その為に第四艦隊は揚陸艦を数十隻編入している。揚陸艦は重装甲の要塞戦用MSと重装甲宇宙艇、装甲宇宙服を着込んだ海兵隊をその腹に仕込んでいる。
要塞専用MSってのはぶっちゃけて言うとジム・ストライカーです。第四艦隊から要求仕様が出された形で技術本部が突貫工事で仕上げた機体、という触れ込みだが、実のところRGM-79完成時から用意されていた。まぁ、GMバリエーションは膨大だからねぇ、一々開発するより正解を最初から用意しとく方が早い。GMスナイパーカスタムは『RGM-79S スーパーGM』として既に正式採用され、各艦隊に配備されている。転生者の劇中知識で『ADVANCE OF Z』のGMスナイパーⅢみたいな外見とそれに近い高性能機ですが。近接支援用にガンキャノンⅡの重装甲型も載せていた。制式番号はRGC-78B。要塞の内部という閉鎖空間では火薬式の実弾は侮れない威力を持っている。特に気密され空気がある空間では砲弾の爆発による衝撃波を発生させるからなおさらだ。
第四艦隊旗艦『ムサシ』が最接近してきた。エルラン中将:佐藤さんは日本語で『ヤマダサン、イッテキマス』と発光信号を展望台にいる私に送ってきた。私は手を上げてそれに答え、バスクとシロッコを怪訝な顔にさせた。
「まさか(元日本人の)私が『宇宙戦艦ムサシ』を旗艦にするとはなぁ」ジャン・エルラン中将が呟くと艦長の大佐が「ヤマトは何度もリメイクされ人気がありますから」と答えた。「あぁ、私も何作か見たが中々面白かった記憶がある」Ⅰ回目と2回目の転生いずれストーリーが少しづつ違うリメイク版があり興味を覚えた。もしかしてたら自分の運命も変わるのかと。
「まぁ、波動砲はありませんが、480mmメガ粒子砲を10門持ってますから。グワジン級と1対1でも勝てますよ」とドヤ顔をする艦長。エルランは「我々の任務はエロモン要塞への揚陸だ。主砲はその際の火力支援に用いるべきだな。それにソロモンに『グワラン』以外のグワジン級がいたとしても全部連合艦隊が沈めるだろうさ。なにせ501を筆頭に歴戦の艦載機部隊が揃ってる。MSが主力となった今、メガ粒子砲の口径や門数を誇っても仕方がないな」とにべもない。艦長は少し気まずそうな顔になり、「ペンタに最接近」と報告した。エルランは提督席に備えられたタブレットで発光信号の入力アプリを立ち上げ”YAMADASAN,ITTEKIMASU”と入力した。山田さん:ゴップは分かってくれたようで展望台で手を上げて答えてくれた。エルランはその姿をタブレットで拡大しながら「よしんば次の戦場で私が倒れても、あの方がいる。組織もある以上、流血の宇宙世紀は避けられよう…」と独りごちた。
艦隊はペンタを離れていく。彼らはソロモン最近傍のサイド4宙域で第二、第三艦隊と集結し、宇宙要塞ソロモンへと進撃する。
艦隊の後ろをついて行く艦艇群がある。艦の型やサイズもまちまちのフネだ。数だけは多い。
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==== 空母『エンデバー』
ユーグ・クーロ大尉は上官である第604MS戦闘団の指揮官ハインツ・ベア少佐から「貴様が次の団長だ。俺は腰をやっちまってMSから降りにゃならん。次はオハイオの艦隊司令部で航空幕僚だ。まぁ、MSを降りたロートル向けの仕事だな」と気軽な口調で言われ、面食らった。「ちょっと待ってください。ベア団長が腰を痛めたなんて今聞きましたよ。それに団長人事の内示もなにも受けておりません」「そりゃ、部下の前で『腰が痛い』とか言えんだろ、不安にさせちゃならん。それに俺もツァリーノ大佐からいきなり団長をやれ、と言われたからな。貴様も俺を除けば団最年長なんだから覚悟しとくべきだった」ベアはしれっと言った。「大隊規模、しかも最精鋭と言ってもいい戦力を指揮する人間をそんな簡単に決めていいのですか?」とクーロ。「ツァリーノ大佐と相談した。大佐もやはり貴様が適任だと言ってたぞ」とベア。クーロは呆れたが、「このままゴネていてもはじまりませんね。いいでしょう、少佐の後任を謹んでお受けします」「おぅ、頑張れ!辞令は少佐昇進の辞令と一緒に航海中に渡す」とベアはクーロの背中をばんばん叩いて激励した。
「君は今回の人事のこと知ってんだろ?」ユーグは恋人であるマオ・リャン大尉にそう切り出した。マオは604戦闘団幕僚の一員でもあった。「まぁ、オハイオのツァリーノ大佐と暗号回線で話すベア少佐の後ろに立ってからね」とマオ。「俺に一言あってもいいだろうに…」ユーグがぼやくと「私が軍務とプライベートを分けて考えられる女なの知ってるでしょうが」とマオは眉をひそめてこう返す。その顔をあらためて(美しい…)と思ってしまうユーグだったが、「なぁ、俺って強く出られたら断れない人間だと思われてないかな」と恋人に相談する。「え?アナタはとうにそう考えてると思ってた」とマオ。(俺はそんな押しが弱く見えるかな)と思うユーグではあったが、「勤務が開けたら俺の部屋でシャンパンを開けよう。ささやかな昇任祝いさ」とマオを自分の部屋に誘った。「そうね、私秘蔵のチーズ持っていくわ」とマオ。「まさかあの腐ったトーフじゃないよな?アレ臭くてたまらん」とユーグ。「人の故郷の味を失礼ねぇ。心配しなくてもいいわ。フランス製のカマンベールチーズよ」とマオはまた眉をひそめて返す。その顔を(やはり、美しい…)と思うユーグだった。
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==== サイド3 ズムシティ 総帥府ビル
「よく帰ってきてた。シャリア・ブル大尉」ギレン・ザビは木星から最重要資源であるヘリウム3を運搬してきた木星船団の司令官と謁見していた。
「しかも、途中火星に立ち寄り採掘された資源を回収して来てくれた。中には月では産出しない重金属が含まれている。今回もたらされたタングステンにより徹甲弾の威力が向上しよう。ソロモンのドズルは喜ぶであろうな」
火星は宇宙世紀0040からテラフォーミングが始まり、赤道をぐるっと回るように氷の小惑星をいくつも落として無理やり水たまり、湖を作った。小惑星激突の衝撃で火山が活性化、その熱が水温を安定させた。その人工湖で藻類を栽培し、酸素を増やし、気温を安定させることに成功した。
UC.0050前後からは入植が始まった。最初の入植者達は冒険心にあふれた探検家やテラフォーミンされた環境を調査する科学者であったが、第二弾以降の移民団はコロニーの独立運動をしていた反連邦活動家達が流刑者として送り込まれてきた。彼らは主に鉱山労働者として働き、慣れぬ環境や重労働で寿命をすり減らし平均寿命は50歳前後という酷い有様だった、
受刑者達は当然のようにジオン・ズム・ダイクンの思想に共鳴した。ある面ではジオンの跡を継いだギレンは「人道支援」の美名のもと彼らに医療支援と食料支援を行い、受刑者達が作る火星自治政府は掘り出した資源の何割かを密輸出することでこれに応えた。
今回も木星星団の来訪に合わせて各種重金属を満載したヘヴィリフターを何十基も打ち上げ、船団はこれを回収すると医療物資とヘリウム3を載せたカプセルを投下した。今回の密貿易では最近火星でも産出するようになった、重金属類が手に入った。船団は航海中工場船で手に入れたタングステンを加工し、砲弾を生産し始めた。生産された炭化タングステン製の徹甲弾は快速輸送船で既にソロモンへ送られた。その他のクロムやニッケルも戦争遂行に重用な資源であり、サイド3の工廠や民間工場は突然湧いたかのようなような原料に昼夜を問わずフル稼働している。
「お褒めに預かり光栄ですが、船団の皆の献身的な働きと火星自治政府の協力があったればこそです」シャリア・ブルは謙遜している。「君の次の任務だが、君はフラナガン機関の訓練生達を訓練し、部隊を編成し、君が編成したニュータイプ部隊の実戦指揮官となることだ」ギレンは荒唐無稽とも言える命令に目を白黒させるシャリア・ブルを面白そうに見ている、
「私は勘が多少鋭い、とう程度で巷間言われるような超能力は無いと思っておりますが…」困惑するシャリア・ブルにギレンは「君のことは君以上に知っている。航海中に実施されたテストに君は見事合格を果たした。君はニュータイプだ。しかも、部隊を指揮できる将校のな。公国は大いに君に期待をしているのだ」ギレンは立ち上がり直立不動のシャリアの肩に手を置いてこう言った。
「総帥の大いなるお考えは私ごとき小人にはわかりません。ですが、わかるよう努めてまいります」要するにギレンの命を受け、ニュータイプ部隊の指揮を引き受ける、と言っているのである。
「よかろう。実のところ君が赴くフラナガン機関は突撃機動軍、いやキシリア・ザビ少将の影響力が強い所だ。君には手駒として別の研究所で養成されたパイロット候補生を率いていもらう。
公国の明日を担う若者達だ。彼らもよろしく指導を頼む」とギレン。強化人間イングリッドシリーズの量産が軌道に乗り、出撃が可能となったのだ。
(ニュータイプというのはほぼ全員が若者ばかりだ。うまくやっていけるだろうか…)心配するシャリア・ブルだが、彼とてまだ20代後半なのであった。
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==== ズムシティ 首都防衛大隊駐屯地
ザクが並んでいる。だが、隊列とよべる代物ではなく、思い思いの場所に駐機しているという有様だった。型番も現用のMS-06Fが多いが、実戦を経験しているのか薄汚れた物が多い。
ザクの足元に寝転ぶ搭乗員達は四肢のどこかや片目が無い。これまでの激戦で身体の一部を失った傷痍兵達である。もう、祖国への奉公は終わった、と言いたげに傷痍兵達の士気は最低であった。煙草を吸いながら昼寝をきめこんでいる兵達を建物の中から眺めてる者達がいた。
「有り体に言うと、ここは戦える組織じゃないですね」ユーリー・コーベル中尉は従兵のセリダ・ミルウェイ一等兵の淹れたコーヒーを片手に彼の上官に感想を述べた。「全員やる気が失せている。廃兵が集められたパレード用の部隊、というのが彼らの認識でしょう。この認識を変えるにはかなりの荒療治が必要ですよ」ユーリー・コーベルは元プロサッカー選手である。サイド3の強豪「オクラント・レプス」のストライカーでチームをギャラクシーリーグで優勝させ地球圏一のチームにした原動力である。既に国民的英雄となっていた彼だったが、開戦でリーグは中止、チームメイトの中にも志願して前線に赴く者が増えユーリーもチーム経営陣の「強い勧め」で軍に志願することになった。だが、ギレン・ザビ総帥はユーリーが前線で戦死した場合国内に厭戦気分が広がるのを危惧し、ほぼお飾りとされている首都防衛大隊に配属したのだった。
その彼の上司ガルマ・ザビ大佐は「それはいかんな。この私が演説をしてみよう」と屈託のない笑顔を浮かべている。ユーリは内心で(このお坊ちゃんは何を言ってるんだ)と思ったがザビ家の一員を怒らせたくなかったので「そうですね、ガルマ大佐の演説を聞けば士気も上がるかもしれません」と調子を合わせていた。すると右目に眼帯をした男が部屋に入ってきた。
「おぉ、ムンゾリーグの得点王のお出ましではないか。マリン少尉、訓練は順調かね?」ガルマは眼帯の男に問うたが、男は首を振り「いけません。士気は最低、練度はバラバラ。今は出来のいい義肢があるんで理論上は健常者と同じことができる筈が、兵達には負け犬根性が染み付いてます。俺達は国に貸しがある、楽ちんなこの部隊配属は借りを返して貰ってるだけだって認識ですな」クラウデン・マリン少尉も元サッカー選手にして元監督である。ユーリが育成組織にいた頃チームの監督をしていたこともありユーリからは父のように慕われていた。現役時代はオクラント・レプスで国内リーグ得点王となった男であった。ガルマは兄ドズルが試合中継に熱中してマリンが得点をあげる度に興奮して家具を壊していたのを憶えていた。彼も30代後半ながら軍に志願し、月面の戦闘で片目を失い首都防衛大隊に送られた。国民の中にはかってのリーグ得点王を憶えている者もまだ多い。むざむざ戦死させるのは得策でない、という突撃機動軍司令キシリア・ザビ少将の判断である。
「やはり、私が出ないと駄目なようだな。エリーズ少尉、演説の準備はできているね?」ガルマの秘書官エリーズ少尉は「はい、ガルマ様。MS-07Gの前に演説台とマイクを用意してございます」と頭を下げながら優雅な仕草で駐機姿勢を取ったガルマ専用グフの前の演説台を示した。「結構。では、行こうかコーベル、マリン」とガルマは張り切っている。ユーリとクラウデンは顔を見合わせた。
豪華な金縁の装飾をされた専用グフの前に設けられた演台に大隊長ガルマ大佐が上がるのを見てダベったり昼寝をしていた兵も集合し、整列した。御曹司の怒りをかってこの楽な部隊を追い出されるのは嫌なようだ。
「首都防衛大隊の諸君!私は大隊長ガルマ・ザビ大佐だ。諸君らの多くは身体を一部を失ったことで公国への忠義は果たした、と考えているようだ。だが、諸君らの戦友達は今も次の戦いに備え訓練に励んでいる。次の戦場となるソロモン要塞防衛は激戦となるだろう。我が兄、ドズル・ザビ中将が遅れを取るとは思えんが、戦場に『まさか』はあり得ることだ。ソロモンと同時にア・バオア・クーを攻撃し、この公国本土を直撃するだけの戦力が連邦にはある。一個艦隊程度の戦力であっても月面条約を無視し、公国32基のコロニーを攻撃するとしたら?それを阻止するのが首都防衛師団であり、我が大隊である!祖国の盾、最後の一枚が我らなのだ!歌え諸君!『MS兵の唄』を!『ロケット轟き加速する ~』ガルマは地球の古い軍歌を替え歌にしたジオンの軍歌を歌い始めた。『ジオンがために死ぬるこそ我らの最たる誉れなり!』歌うのだ!『~貫く敵弾。眠れよスーツ、我が墓標~』」踵を踏み鳴らし「MS兵の唄」を大声で歌うガルマ。実のところ彼はかなり歌が上手かった。屋敷でキャラオを歌うとその美声にデギンは目を細めドズルは上機嫌で囃し立て、気難しいギレンやキシリアでさえ、まんざらではない顔になったものだ。
兵達はいきなり大隊長が歌い出すのに最初面食らっていたが、ハイテンションで「歌え!」と何度も命ぜられ何人かが歌い出し、遂には大隊の隊員全員が踵を踏み鳴らしての大合唱となった。
熱狂的といえるこの状況にユーリーは慣れぬながらも声を張り上げながら(この人、実は凄いのでは…)と思った。傍らのクラウデンは涙を流しながら歌っている。(監督は革命世代だったからこういうのに弱いんだよな…)ジオン共和国が成立し、事実上の独立を成し遂げた時代に青春期を送った世代は「革命世代」と言われている。隠れダイクン派が多く、親衛隊から潜在的な反体制勢力と思われている世代でもある。
「御唱和ありがとう諸君。私は確信した。諸君らは断じて廃兵などではない!たとえ兄ギレンがそう呼ぼうと私は反論する!君達にはまだ公国に尽くす気概と力を持っていることを堂々と主張しよう!」ガルマは実際にギレンの前で啖呵を切る自信は無かったが、そのギレンが「できないことでも自信たっぷりにできると言い切ることが演説のコツだ」と言っていたのでそれに倣うことにした。
兵達は歓声を上げ腕を突き上げ「ジーク・ジオン!」「ガルマ様バンザイ!」と叫んでいる。
「ありがとう諸君。だが、訓練は楽ではないぞ。実戦部隊や親衛隊から訓練教官を招き、猛特訓を行う。さらにカーラ・ミッチャム博士が『イモータル計画』を通じて集めたデータでアップデートされた君達の義肢は健常者だった頃に勝るポテンシャルを発揮するようになるだろう。さすれば、この首都防衛大隊は一騎当千のジオン軍最精鋭となる!」ガルマは腕を突き上げ熱弁する。兵達も両腕を捧げた少年兵の話は噂で知っており、その桁外れの強さの噂も聞いていた。そのように自分達もなれるかもしれない。こう思うと兵達の自己評価はみるみる上がっていた。
「大佐!早速訓練を!」「俺達はまだやれるってとこをお見せします!」口々に訓練の開始を求める声にガルマは「ありがとう!では、早速訓練といこう。まずは諸君らの実力を図ろう。
ユーリー・コーベル中尉!君の専用機に乗り給え!」ユーリーはノーマルスーツも着ないまま、軍服姿で自身の専用ザクに搭乗した。そのザクはシールドが外され、スパイクアーマーも右肩に付いているという異相のMSである。カラーリングは所属チーム、オクラント・レプスのユニフォームを模したものだ。
十倍の大きさのサッカー選手、という出で立ちのザクに兵達は(虚仮威しだ。所詮は素人だな…)と思いながら、ガルマから指名された腕自慢3名がザクに乗り込み、ユーリ機に相対した。
「はじめ!」ガルマの号令でユーリーの左右逆のザクと3機のザクがスラスターを吹かし突進する。駐屯地に突風が吹き荒れる。4機とも銃は装備せずヒートホークのみを手に持たせている。
「俺はアンタのファンだが、叩き切らせて貰うぜぇ!」ザクが1機抜け駆けしてユーリー機に迫る。だが、ユーリーはくるりと機体の向きを変えると今度は地面を蹴って後ろに下がる。
この一連の動きを傍目には一瞬で行ったように見え、突進してきたザクはユーリ機を見失っている。「消えた!?」その次の瞬間機体を衝撃が襲い「撃墜だ。軍曹」というユーリーの声がコックピットに響いた。「やるじゃないないか!ユーリー・コーベル!!」ガルマは踊りだしそうなテンションで喜んでいる。
「プロのアスリート相手に不用意に突っ込むバカがいるか…」残りのザクは実戦経験が豊富なのか慎重だった。2機でユーリ機を包囲するような動きを見せ、いつでも同時に襲いかかれる態勢を取った。ユーリーは包囲されるに任せ、微動だにしない。じりじりと包囲の輪をせばめる2機のザク。正面の機体が動いたと同時にユーリー機はダッシュする。目前のザクがヒート・ホークを振り上げると、スライディングしてこれを避け、すれ違いざまに脇腹を斬っていった。
「そんな態勢でこれが躱せるか!」ユーリの背後を取っていたザクが襲いかかる。ユーリはしゃがみ込みの態勢から左足を軸に回転し、右脚をザクのスネに叩きつけた。たまらず転倒するザク。ユーリーはヒートホークを突きつけた。「そこまで!」ガルマの一声で模擬戦は終了した。兵達は「プロパガンダ要員じゃなかったのか…」「実戦経験など無かったはずなのに…」とざわざわしている。
クラウデンは「MSに乗せても生身の時と同じ動きができるとはな」と教え子の実力に誇らしげだった。「マリン少尉、アンタの教え子は大したモンだ」と同じく年長の将校が感心した口調でユーリーの実力を称賛した。「実のところ、俺も奴の実力は意外だった。どうせマスコミ対策の広報要員だと思ってたからな。ただ、真面目な男なんでそれをよしとせずにMSの操縦を磨いていたんだろう。俺はそれが誇らしい」とクランデンはユーリーのその努力こそが誇らしかった。
「やるじゃないか、ユーリー!!」ガルマはユーリーの両手を取りぶんぶん上下させた。抱きつくのは兵が見ているのでしなかったが。「君にはMS中隊を指揮して貰おう!栄えある首都防衛大隊、第一MS中隊の中隊長だ!頭にブレードアンテナを付け給え!」ガルマはユーリーの肩に手を置き、整列する兵達に見せつけるようにユーリーの中隊長就任を告げた。
場の雰囲気に飲まれたのか、普段はテンションが低いユーリーもきりっとした顔で「はっ!任務に粉骨砕身したします!」とピシッとした敬礼を行った。ガルマは答礼しながら「馴染みのクラウデン・マリン少尉を副管に付ける。隊員も君が選んでいい。従兵のミルウェイ一等兵も連れて行っていいぞ」ここらは声を潜め「もう、セリダとはいい仲なのかね?」とユーリーの聞いてきた。「滅相もありません!彼女はただの職場の同僚ですよ」ユーリーは意外な問いに慌てて応えた。
「なら、できるだけ早く仲良くなりたまえ。ぼやぼやしてると総帥府からハニートラップ要員が送り込まれくるぞ。ギレン兄は目立つ部隊にはもれなく送り込んでいる。反乱の芽を逃さないためだ、と言っているが私には余りにも猜疑心が過ぎると思える。この大隊をそんな謀略から守りたいのだ、私は」ガルマの真面目な顔にユーリーは「はい、ミルウェイ一等兵は自分の趣味でなないですが、なるべく早くガールフレンドを作ることにします」と小声で答えた。
「ところで、ジオニックに君専用のグフを発注するつもりだが、何か希望はあるかね。私は君の戦闘スタイルに合わせて軽量化を図ろうと思うんだが…」さっきと打って変わって子供のような目をしてMSの話題を切り出すガルマにユーリーは(少なくともこの人、悪人じゃないよな…)と思うのだった。
関東は地震凄かったですね。44話をお送りしました。
遂に激突するか、ホワイトフォースとソンネン率いるヒルドルブ、という月面ですが、
次回は派手な展開になるかと思います。
外伝作品からマレット・サンギーヌとクロードが登場です。分かりやすいヒールを演じてもらおうと思ってます。
「めぐりあい宇宙」では割愛されたニュータイプ シャリア・ブルも新登場です。
ニュータイプにして常識人、という彼は劇中より頑張って貰うつもりです。
ガルマは遂に自分の部隊を手に入れました。傷痍兵だらけのお飾りと思われてる部隊ですが。
ガルマの歌う「MS兵の唄」はできるだけガイドラインに抵触しないよう気をつけて作詞したつもりですが、問題あれば削除します。
全員で歌うシーンは「バルジ大作戦」そのまんまですが、指揮官が一番ノリノリで歌ってます。
※12/16 屍鬼隊の人数を変更。 13独戦の記述を変更。