私の兄者がこんなに強いはずがない   作:ガタガタ震えて立向う

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・投げ捨てたシリアスを拾ってきたら腐ってた
・便りになる雲長さんマジ千里行(誤字
・魔改造一刀さんとか素敵やん
・こまけぇこたぁいいんだよ!



一刀くんと趣味に走った作者

 

「……玄徳、桃香」

 

 穏やかな川。故郷の川と比べると石の少ない川淵に一刀は居た。

 

「……雲長、愛紗」

 

 義兄弟たちの名を一人一人呼びながら、一刀は小さな小さな小石たちを積み上げていく。

 

「……翼徳、鈴々」

 

 突然見も知らぬ土地に放り出され、行く当ての無かった一刀を拾い、あまつさえ対等な兄弟として扱ってくれた彼等。その優しさを、強さを、今でも覚えている。

 

「……みんな死んじゃったな」

 

 そんな彼等も、今はもう居ない。例え万民に讃えられる英雄でも死からは逃れられない。義兄弟たちだけでは無い。長い乱世の中で、一人また一人と仲間は、敵は、死んでいった。

 

「一刀様。こちらでしたか」

「……星彩か」

 

 声をかけられ振り向けば、翼徳の娘である星彩が居た。睨んでいるのかと思われるほど鋭利な印象を与える顔立ちだが、この娘がちゃんと自分を慕ってくれている事を一刀は知っている。

 外見は父である翼徳にはまったく似ていない。どちらかと言えば母方の親戚である夏侯淵――秋蘭に似ている。もっともその秋蘭も既にこの世には居ないのだが。

 

「魏軍が迫っています。こちらの指揮は一刀様に任せると姜維殿が」

「まったく、仮にも兄弟子に容赦ないなあいつも。こっちはそろそろ隠居したいってのに」

 

 愚痴る一刀に星彩は何も言わず表情も変えない。しかしそれが常であるため、一刀も気にしなかった。

 

「すぐに行く。先に兵たちをまとめておいてくれ」

「はい」

 

 一つだけ返事をして去っていく星彩。いっそ無愛想とすら言えるそれは誰に似たのやらと、一刀は心の中で溜息をついた。

 

「さて、正念場だな」

 

 言いながら、一刀はそばにあった得物を手に取る。彼の身の丈を越えるほどの長さの偃月刀。それを軽々と一刀は振る。

 

「……雲長。愛紗。俺に力を貸してくれ」

 

 亡き義兄と義姉に向けて呟くと、一刀は踵を返し戦場へと向かった。

 

 

 魏との戦い。一刀は本隊と別れ山間の谷間を進んでいた。遠回りにはなるが、上手くいけば魏軍の背後を取る事の出来る進路だ。

 

「よし、このまま進むぞ」

 

 兵が少数ということもあり、進軍はスムーズに進んでいた。

 

「甘いな」

 

 しかし行程も残り半分という所で、一刀たちの行く手を阻む者が現れた。

 

「……おまえは」

「ふん、やはり伏兵を忍ばせていたか。しかしこの程度の策、英才と誉れ高きこの鍾士季の前では児戯に等しい」

 

 鍾会。魏軍の中でも性格はともかく能力は随一の男がそこに居た。組んだ右手の指先を向けて、得意げな笑みを浮かべている。

 

「チッ、面倒なのが出てきたな」

「ほ、北郷様!?」

「おまえ達は下がってろ。ここは俺がやる」

「良いだろう。前時代の英雄の残照……この私が吹き消してやる!」

 

 一刀が進み出るのに合わせるように、鍾会の背後に幾本かの剣が浮かび上がる。

 

「ハァッ!」

「フンッ!」

 

 振り下ろされた鍾会の腕に導かれるように飛来する飛翔剣。それを一刀は偃月刀を振るい全て弾いていく。

 

「ッ……何てやり辛い間合だ。まったく魏軍の連中、非常識に磨きがかかってる」

 

 目の前の鍾会の浮遊する剣も非常識だが、今の魏の主力の将たちときたら、ドリルだの巨大削岩機だのガトリングだの時代を先取りしまくった武器の宝庫だ。

 もっとも削岩機の使い手は蜀に寝返ったのだが。

 

「どうした? 近付く事もできないか?」

 

 攻めあぐねる一刀に、鍾会が嘲笑を向ける。そんな鍾会に一刀はニヤリと笑い返すと、背に手を伸ばしすぐさま前に突き出した。

 

「隙あり!」

「何ィッ!?」

 

 抜き打ちのように放たれたのは一筋の光線。凄まじい速さで放たれたそれは剣群の合間を突きぬけ、鍾会の体を見事に撃ちぬく。

 吹き飛ばされる鍾会。それを見て一刀は手にした羽扇で顔を扇ぎながら言った。

 

「ビームは軍師の嗜みってな。一騎打ちだって読み合いは大事だぜ、おぼっちゃん」

「おの……れェっ!」

「チッ、浅かったか」

 

 ダメージはあっただろう、しかし打ち倒すには足りなかった。憤怒の形相で起き上がった鍾会に、一刀は羽扇をしまい偃月刀を構えなおす。

 

「生きては返さん! 必殺、飛翔千剣!」

 

 鍾会が叫ぶや否や、彼の背後に無数の剣が浮かび上がり一刀目がけて飛来する。

 正に剣の雨。その死の群から逃れる事など不可能に近い。

 

「……」

 

 だが一刀は逃げなかった。怯む様子も無く、ただ静かに自らを殺す剣郡を見つめている。

 

 ――あと十年も鍛錬を続ければ良い将になりそうだ。

 

「……愛紗」

 

 ――十年経ったよ。

 

「……唸れ! 天空の刃!」

 

 それは関羽の、軍神の技。赤い閃光となった一撃は飛翔剣を打ち落とし、衝撃波が残りの飛翔剣全てを吹き飛ばしていく。

 

「ば、馬鹿な!?」

 

 驚愕の声は鍾会のもの。仮にも必殺を謳った己の技が破られたのだ。その驚きはどれほどのものか。

 

「今だ!」

「なっ!?」

 

 一刀が叫ぶとほぼ同時、谷の上から巨大な岩が次々と落下してくる。

 

「落石計だと!?」

 

 雨あられと落ちてくる岩の群は、まるで先の剣の雨のお返しだと言わんばかりに絶え間なく降り注いでくる。体勢を立て直し、即座に退いた鍾会だったが、落石が収まるときには自らが嵌められた事を屈辱と共に理解した。

 

「我が計成れりってな」

 

 人の身の丈を遥かに越える岩石は、積み重なり谷間の道を完全に塞いでいた。越える事、ましてや排除する事などどれほどの時間と労力がかかるか、考えるまでも無いだろう。

 

「よし、おまえたち撤収だ!」

『応』

「待て! 逃げるのかこの臆病者!」

 

 岩の壁の向こうから聞こえてくる鍾会の罵倒。それに一刀は見えないと分かっていながら、ニヤリと笑って言う。

 

「ああ逃げる。おまえさんも早く『逃げた』方が良いんじゃないか? 俺たちは戻れば拠点はすぐそこだが、おまえたちは戻ってまた別のルートで進軍しなきゃならないだろ」

「ッ……それが狙いか」

 

 一刀の部隊は伏兵などではなかった。むしろ伏兵を警戒し進んできた部隊に無駄足を踏ませるための囮だったのだ。

 今から鍾会が戦線に復帰しようにも、一刀たちが戦線に戻る倍以上の時間がかかることだろう。

 

「おのれ……おのれおのれおのれおのれおのれ! この屈辱、必ず晴らさせてもらうぞ!北郷一刀!」

 

 憤怒に燃える鍾会。その鍾会の怨嗟の声を背に、一刀は本隊と合流すべく走り出した。

 

 

「……という夢を見たんだ」

 

 とある部屋の一室。珍しく目覚めが悪く義姉たちに叩き起こされた一刀は、びっくりするぐらい真顔で話を終えた。

 

「……」

「……」

 

 対する桃香と愛紗。何も言わず一刀の肩を同時に叩く。

 

「すまん一刀。いつも遠慮無しにおまえを叩きのめしすぎたな」

「疲れてるんだね一刀くん。今日は政務手伝わなくて良いから、ちゃんと休んでね」

「いや夢だから!? 別に頭がどうにかなったわけじゃないから!? そんな慈愛に満ちた目で見ないでくれませんかね、お姉様方!?」

 

 北郷一刀。果たして彼がビームを撃てるようになる日は来るのだろうか。

 

「要点はそこじゃ無ぇ!?」

「誰に何を言ってるの一刀くん」

「やはり疲れているのだな」

 

 本気で心配そうに見てくる義姉たちに、一刀は本気で泣きそうになった。

 

 

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