・髭の劉備が好きだけど、桃香と絡ませるなら若劉備の方がいいかもしれないと気付く
・真面目に「恋姫準拠の妹がいたら」と考察を始めると物語が破綻するジレンマ
・こまけぇこたぁいいんだよ!←結論
劉玄徳。後に蜀漢の皇帝となる彼が、若くは筵売りをして生計を立てていたのは有名な話である。
むしろ筵売りが本業だったと思われがちだが、彼の父や祖父はれっきとした役人である。
漢王室の末裔が自称なわけないじゃないですか(棒
「わー、やっぱりお兄ちゃん筵編むの早いね。……私が遅いだけかな?」
そしてその妹、劉桃香も稼ぎの足しになればと筵編みを手伝っていたが、兄の成果と比べてしまい少し凹んでいた。
「何を言う。桃香が遅いのは、筵を丁寧に編んでいるからだろう。その証拠に私の筵より桃香の筵の方がきめ細やかで丈夫だ。これなら買った客も喜んでくれるだろう」
「え……そ、そうかな?」
兄に誉められ、桃香は照れたように笑う。
「よし、それではできた筵を売りにいくとしよう」
「うん!」
筵を背負い立ち上がる玄徳に、桃香も自分が編んだ筵を背負い後に続く。
そして街中の人通りの多い場所で売り始めたのだが、意外というか当然というか、二人の回りには客が大量に集まっていた。
……主に男が。
「そこのお兄さん! 筵買いませんか!?」
「お兄さんてのは俺のことかい? 上手いね嬢ちゃん」
桃香に声をかけられ、いい歳こいて顔をだらしなく緩めるおっさんどもと、飢えた獣のような目を向ける若い男たち。
それも仕方ない。桃香は誰が見ても美しいと評する美少女である。
着ているものはみすぼらしいが、それすらもちゃんと着飾ればどれだけ光るのだろうかと、妙な期待を抱かせる小道具と化している。
そんなわけで、筵を売る桃香の周りには下心満載な男が蟻のように集まっていた。
「なあ嬢ちゃん。なんならここにある筵全部買ってやるからよ。代わりに俺と……」
桃香のゆるい雰囲気を感じとり、欲望まみれの要求をしようとした男だったが、桃香の後ろにいつの間にか居た青年と目が合い硬直した。
「……」
睨んでた。すっごい睨んでた。
仁の人なはずの劉玄徳が、殺気混じりというか殺意しかない目で睨んでいた。
カリスマ以外は並な人と思われがちな劉玄徳。
しかし彼は袁紹を初めとした有力者に前線指揮官としてそれなりに買われ、何よりあの曹操に「世に英雄は君と余だけだ」と言わせたほどの傑物なのだ。
その眼力。さながら推理モードのウサ美ちゃんの如し。
睨まれた男は性犯罪を暴かれたクマ吉くんのように、変態と言う名の紳士から賢者へとジョブチェンジするしかない。
「……お兄ちゃん、ちょっとあっち行ってて」
「何故だ桃香!?」
「男の人が来るたびに威嚇してちゃ商売にならないから」
そしてそんな兄をシッシと犬でも追い払うように遠ざける桃香。
過保護な兄貴に慣れると妹はクールになるものらしい。
単にうざがってるだけとか言ってはいけない。
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「へー、じゃあ玄徳は昔から桃香には過保護だったんだな」
「過保護なんてもんじゃないよ。私が歳が近い男の子と話してるだけで剣抜きそうになるんだもん」
劉備兄妹の昔話を聞いて、一刀は何故か感心した様子で言う。
「まあ玄徳の気持ちもわかるかな。桃香けっこう抜けてるし」
「あー、酷い一刀くん。でももう少しお兄ちゃんには落ち着いてほしいかな。これじゃあ私好きな人ができても結婚すらできないよ」
ため息をつく桃香に一刀はまさかそこまでと言いかけたが、桃香絡みで暴走する玄徳なら「はじめましてお兄さん」「こちらこそはじめまして死ねぇ!」とかやりそうだと思い直す。
「大丈夫だって、要は玄徳も認めるような男を捕まえれば良いんだから」
「そんな人いるかなぁ?」
「いるいる。それにどうしても駄目で桃香が嫁ぎ遅れたら、俺がお婿さんになるさ」
「もう、お姉ちゃんをからかっちゃ駄目だよ一刀くん!」
そんなやり取りの翌日。
「おっ、そんなとこで立ちんぼで何やってんだ愛紗の姉者?」
「む、翼徳か。いや、暇ができたので一刀に稽古をつけてやろうと思ったのだが」
そう言いながら愛紗が視線を向けたさ先には、一刀と玄徳が居た。
ただし玄徳は仁を夕日の彼方に放り捨てたような修羅の顔で双剣を振り回し、一刀は涙目というか完全に泣きながら刀でそれを防いでいる。
「珍しく玄徳様が稽古をつけてくださってるようでな。止めるのも悪いと思い見ているのだが」
「むしろ止めないと一刀の兄者殺されねえか?」
劉玄徳。仁の人だが妹絡みではたまに仁をぶっちぎるみんなのお兄ちゃんである。