・転載にあたりキャラを分かりやすくするため、地の文内のキャラ名称は字で統一しようと思ったけど五分で飽きた
・ちょこっと加筆していきます
・こまけぇこたぁいいんだよ!
趙雲兄妹。趙子龍と趙星は「常山の昇り竜」とまで言われた将であったが、今後の己の行く末に苦悩していた。
子龍は考える。
(公孫賛殿も白蓮殿も、決して暗愚な方ではない。しかしこの乱世において、世を正し導くほどの器ではない。
新たな主君を求めるべきか。いや、しかし星は白蓮殿を気に入っている様子。果たして今までのように共に来てくれるだろうか)
星は考える。
(公孫賛殿は地味で白蓮殿は普通。弄り甲斐があるのは確かだが、今一キャラが弱い。そろそろ兄上に別の主君を探すよう提案すべきだろうか。
しかし公孫賛殿はともかく、白蓮殿は兄上をいろんな意味で気に入っている様子。泣きつかれたらお優しい兄上のことだから、ほだされて白蓮殿を突き放せないやもしれん)
美男美女。そう言って差し支えない兄妹だが、頭の中身は残念なくらいすれ違っていた。
(誰か別の……反董卓連合でお見かけした劉備殿。民を守り、癒し、導くあのお二方は正に仁のお心の持ち主。私たちの槍を捧げるに相応しい方々に違いない!)
(劉備殿のところの関愛紗殿は弄り甲斐がありそうでしたな。玄徳殿は私などのからかいは受け流しそうだが、それだけ大器ということ。
弄りやすい上司と器の大きい上司。もしや理想の職場なのでは!?)
そしてすれ違っていたはずの思考は、何故か同じ位置に着地した。
腐っても双子かそれともただの偶然か。ともあれ公孫賛の下を去ることを決めた二人であった。
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「兄上。趙雲たちのことなんだが、いつまでも客将にしとくのは惜しいと思うんだ」
「おまえもそう思うか白蓮。しかしあやつらいくら勧誘しても頷かんのだ」
妹の言葉に、公孫賛は眉間にしわを寄せながら答える。
趙雲兄妹。その武は大陸でも屈指のものであることは疑いようがなく、兵の指揮もなんなくこなす。
味方であることは幸い以外の何ものでもなく、是非とも正式に仕えてもらいたいのは当然であった。
「今までより高い役職を与えるとか」
「釣られるようなやつらか?」
「しかし私たちには他に誠意の見せ方がない。私たちの本気を知れば、星はともかく子龍は考えるのでは」
「なるほど。確かに妹はともかく兄は誠意に弱いな」
白蓮の提案に、公孫賛も多少無茶をしてでも趙雲を引き入れようかと考え始める。
ちなみに二人の中で微妙に星に対する評価が低いのは、日頃の行いのせいだろう。
なまじ兄の子龍が品行方正なせいで、妹の星の良い性格が際立っている。
「公孫賛殿。少しお話が」
「おお、趙雲。丁度良いところに」
「何かご用命でしたか?」
「いや、それは後で良い。それで、話とは?」
「はい。星と相談して決めたのですが」
「そろそろおいとまして旅に出ようかと」
白蓮は石になった。
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「行かないでくれ〜」
突然の退職宣言から数分後。
石化していた白蓮は何とか立ち直ると、目の幅涙を流しながら子龍にすがり付いていた。
さながら男に捨てられそうな女のようだが、実際白蓮は子龍に好意を抱いており、いきなりの別離にかなりパニクっていたりする。
「あの……白蓮殿、お手をお離しください」
「嫌だ〜。旅に出ないと約束しないと離さないからな〜」
武に優れ、優しく思いやりがあり、美男子でありながら嫌みな様子はなく、行動は紳士。
三國志で部下にしたい男ナンバーワン(作者の独断と偏見による)は伊達ではない。
もう婿にしてでも引き止める。むしろ嫁になるから行かないでというくらい白蓮はパニクっていた。
「あー、子龍。この際去るのは構わんが、せめて白蓮を連れていってはくれんか?」
「!? 兄上……」
白蓮は驚き、涙を浮かべたまま公孫賛を振り返った。
人の上に立つ者として、決して許されない思い。それを兄は汲み取り、後押ししてくれるというのだ。
白蓮は普通の私の兄だけあって地味だなぁと思っていたことを心の中で謝罪する。
「……ふむ。白蓮殿が兄上に嫁ぐとなれば、私は義妹となるわけですな」
しかし星から放たれた言葉に、公孫賛兄妹は再び石化した。
「……う……ううっ!?」
「な、悩むな白蓮! わしもあんな義妹は嫌だが、子龍のためにも打ち破れ!」
「し、しかし。しかしーっ!?」
「さて、今のうちに行きましょう兄上」
「……良いのだろうか」
良くない。
しかし妹に甘い子龍は、星に手を引かれて素直に公孫賛兄妹の下を去るのだった。
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「いやー、本当助かったよ玄徳」
反董卓連合が解散してからしばらく後。当面の大敵の居なくなった大陸は群雄割拠の時代に突入し、各地で戦いが続いていた。
そして公孫賛と白蓮も、袁本初と袁麗羽率いる袁家との戦いになったわけだが、圧倒的な兵力、国力の差はいかんともしがたく、抵抗むなしく敗走する。その後落ち延び頼ったのが、かつての学友であり親友でもある劉備兄妹だった。
「気にしないでくれ白蓮殿。かつてまだ義勇軍を率いていた頃、あなたと公孫賛殿にはとても世話になった。恩を返せたと思えば、私も嬉しい」
「相変わらず良い奴だな玄徳は。さすがあのお人好しな桃香の兄……」
「キャアッ!?」
「ハッ! ご無事ですか桃香様?」
言いながら白蓮が視線を向けた所で、桃香がタイミングよく溝に足をとられ、体勢を崩したのを子竜に支えられる。
「あ、ありがとう子竜さん。ごめんね、私ったら鈍くて」
「お気になさらず。怪我も無く何よりです」
そして手を取り合ったまま顔を赤らめ見上げる桃香と、紳士スマイルで見下ろす子竜。
リア充爆発しろ。そんな兵たちの声が聞こえてきそうな光景だった。
「……ホントトウカハイイヤツダヨナ」
「……」
目からハイライトが無くなりカタコトで話始める白蓮。
その殺気に間近で晒された玄徳は、汗を滝のように流しながら、ただ無言で時が過ぎるのを待つしかなかった。