・子供世代が出ても親世代(特に恋姫勢)の年齢とかつっこんだらあかんのです
・そろそろ前書きを読み飛ばす人が出てくるだろうから言う、ぬるぽ
健安13年。漢の丞相曹操は荊州へと兵を送る。
その数は十万を越える大軍であり、対する劉備は交戦を避け南へと逃走。
しかし曹操は劉備を見逃さず、劉備は自らを慕う民を見捨てられなかったこともあり、長坂にて曹操軍に追い付かれてしまう。
世に言う長坂の戦いの始まりであった。
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「阿斗様が取り残された!?」
曹操軍からの逃亡の最中、侍女から劉備の子である阿斗が逃げ遅れたと聞かされ、子龍は叫び声をあげた。
「星! 阿斗様を救出に向かうぞ!」
「承知! 曹操軍よりも早く見つけ出しませぬと」
主君の子を救うため、子龍と星は敵中をたった二人で駆け抜ける。
(略)
そしてついに取り残された阿斗を見つけ出した。
「ああ、ご無事で良かった。星。阿斗様を頼む」
「さあ阿斗様。お母上ほど抱かれ心地はよくないでしょうが、この星がお守りいたしますぞ」
星が阿斗を抱き抱えるのを確認し、子龍は敵を蹴散らしながら駆け抜ける。
「邪魔だ!」
「阿斗様には指一本触れさせぬぞ!」
「あれは張飛殿たち!?」
「おう! 無事か子龍、星!?」
「ここは任せて早く逃げるのだ!」
「かたじけない!」
「阿斗様は必ずお守りいたします!」
「よし、劉備様たちが見えてきた」
「もう大丈夫ですぞ阿斗様」
張飛兄妹の足止めもあり、無事劉備たちに追い付く趙雲兄妹。
しかし阿斗を抱いた玄徳は、どこか浮かない顔をしていた。
「……この子一人のために、大事な将を失うところであった」
「玄徳様……?」
「こんな子など見たくもない!」
「玄徳様!?」
「お兄ちゃん!?」
激昂し、我が子を地面へと投げ捨てる玄徳。
あまりの事態に悲鳴をあげる子龍と桃香。
「確保ー!!」
「!?」
そして見事なヘッドスライディングで阿斗をキャッチする星。
その早すぎる対応に、子龍たちはもちろん阿斗を投げ捨てた当人である玄徳もすっごいビックリする。
「……」
「せ、星?」
無言で立ち上がる星。玄徳の奇行と星の奇行という珍しいコラボレーションに誰も動けない。
「……玄徳様」
「な、何だ?」
星から立ち上る気迫に、玄徳は不味いことをしたかと今更ながらに後悔する。
「この子をいらないと言うなら、私がもらっても構いませぬな?」
「……は?」
「ならば私がお育てするというかもう私の子として扱い挙げ句に成人したら私が名付け親になっても構いませぬな!?」
「い、いや待て。落ち着け星!?」
目を輝かせて言う星に、さしもの玄徳も戸惑う。というかドン引きしている。
「……子龍さん。星ちゃんどうしたの?」
「……恐らく阿斗様を抱いている内に、庇護欲や母性がわいたのでは?」
このせいで後の蜀の皇帝が史実以上に趙雲(妹)になついたりするのだが、今は関係ない。
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「曹操様! 何者かが我が軍の最中を引き裂いております!」
「何者だ?」
大軍の中をたった二人で駆け抜ける将。
「あれは趙雲兄妹か」
「無謀だけれど、それをやって抜ける武力と胆力は見事ね」
その姿を認め、曹操兄妹は感嘆の声を漏らす。
「……欲しいな」
「……欲しいわね」
「……無理だからな」
ああ、またこの兄妹の悪い癖が出た。
そう思いながら夏候惇は一応言うだけ言っておく。
「我が将兵に告ぐ。あやつらを捕らえるのだ!」
「殺しては駄目。生かして捕らえるのよ!」
「無理だと言っているだろうが!?」
無理難題を言う二人に、夏候惇が魂のつっこみをいれる。
しかし上司にやれと言われたら、無理だと思ってもやらなければならないのが大人の悲しい事情である。
結果趙雲兄妹のような猛者を殺すならともかく生け捕りにできるはずがなく、まんまと逃走を許すのだった。
「惜しいな。あれほどの将そうは居るまい」
「まったく、元譲がやる気を出さないから」
「おまえら死んだ兵士に詫びてこい」
夏候元譲。
例え主の無理難題に忠誠が下がりまくっても裏切らないナイスガイである。
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長坂からしばらく後。
「阿斗さ……いえ、申し訳ありません劉禅様」
「構わぬ。子竜は幼き私にとってもう一人の父のようなものだった。子竜の前では私はいつでも阿斗のままだ」
幼名を呼んでしまった子竜に、劉禅は気にした様子もなく穏やかな笑顔を向ける。
「思えば私という個人を見てくれたのは、子竜たちだけだったのかもしれない。大人たちは何時だって、私を劉玄徳の息子としてしか見なかった」
「劉禅様……」
世間で言われているほど、劉禅は暗愚ではないと子竜は思っている。しかしその気性は、決して乱世に向いたものではない。
せめて劉禅が玄徳の後を継ぐ前に乱世を終わらせることができれば。そう思い子竜は決意を新たにする。
「阿斗さまー、お腹はすいておりませぬか? 肉まんを買ってきましたぞ」
そしてそんな子竜の決意を空回りさせるような、能天気な妹の声が聞こえてくる。
「星。劉禅様とお呼びしないか」
「ああ、構わぬ子竜。先程も言ったであろう。私は二人の前ではいつまでも阿斗だ」
相変わらずな妹に眉をひそめる子竜だったが、劉禅は先程と同じように微笑んで言う。
「星。すまないが今はお腹は減っておらぬのだ」
「そうでしたか。……ならば何か飲み物を!」
「おお、それは良い。話をしていたせいか、喉がカラカラだ」
「お任せあれ」
「星……」
すぐさま飲み物を取りに行く星に、子竜はため息しかでない。
長坂での一件以来、星は劉禅をいたく気にしているが、いくらなんでも甘やかしすぎだ。このままでは劉禅に良くない影響を与えるのではと、子竜は主と妹の関係に悩む。
「……行ったか、まったく子離れできぬ母のようで困ったものだ」
「……」
そう思っていたら、意外にうんざりした様子で劉禅が言った。
暗愚では無いが腹は黒いのかもしれない。そう子竜が確信し始めた瞬間であった。