エチエチブルーファンタジー(嘘)   作:風鈴花山

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エチッ!

「カトルってさ──エッチだよね」

「は?」

 

 こいつは何を言っているんだ?

 カトルがまず思ったのはそれだった。

 

「いやさ、カトルの羽織っているマントからたまに見える背中が綺麗でさ、なんていうかその、良い具合にチラリズムを刺激してエロいんだよね」

「ついに頭がおかしくなりましたか?一回頭を打って死んでみたらどうです?次の人生でまともな頭に生まれ変わることを祈っていますよ」

「なんか当たり強くない?」

 

 しまいには解説まで始める青年をみてカトルはついて行く人を間違えたのかという考えがよぎった。

 

 目の前の青年はとある騎空団の団長を務めており、カトルはその騎空団に所属はしていないが団長である青年と少し前に一悶着ありその結果、騎空団のお手伝いという名目で居座ることとなった。

 自身の所属する騎空団の頭目には何も言っていないが、まあ大丈夫だろう。

 

 そんなこんなで共に旅を続けていたわけだが先ほどの青年の言葉だ。ついに頭がおかしくなったか?(2回目)

 

「……悪い、知り合いの騎空団がまた女の子を仲間にしたっていう話を人づて聞いたから気がおかしくなってた」

「醜い嫉妬ですね」

 

 顔を伏せ謝罪する青年を一蹴するカトル。なおも顔を上げない青年にカトルがため息をつきながら声をかける。

 

「それで、何があったのですか」

「そうなんだよ聞いてくれよ!」

 

 傷心していた青年だがカトルの言葉を聞き、待ってましたと言わんばかりの変わり身をみせる青年。そのあまりにも速い変わり身を見て少し苛つくが、適当に話を聞いてどこかへ行ったほうが良いと考え話を聞く。

 

「さっきさ、かわいい女の子を見つけたから騎空団に誘おうと声をかけたんだけどさ、おれの顔を見るなり一目散に逃げたんだよ!酷いと思わないか!?おれの顔そんなに酷いか?結構整ってる方だと思ってたんだけど…」

「耳元で大声を出さないでくださいうるさいです。どうせ鼻息を荒くしながら話しかけたのでしょう?そもそもあなた、全空の女性の間で指名手配されていることを知らないんですか?」

「え、何それ知らない」

 

 カトルの言った事実に青年は呆然とした様子でそんな物は知らないと返す。

 

「何でだ?おれはこんなにも女の子が好きだというのに」

「あなたの好みはともかくこの騎空団のあり方に問題があるのでは?」

 

 そう、カトルの言ったように青年が全空の女性から指名手配されているのは青年が率いる騎空団そのものに問題がある。

 

『エチエチファンタジー団』

 

 それが青年の率いる騎空団の名前だ。

 騎空団の立ち上げ理由は「かわいい女の子とエッチがしたいから」だそうだ。名前に関しては分かりやすい方が良い、という理由でこのような名前になったらしい。

 

 青年の素行に特別問題があるわけではないが、どこからか騎空団の立ち上げ理由が漏れてそれが噂になり、人から人へ伝わる内に噂に尾ひれがついていき、最終的に全空の女性の間で指名手配されるまでとなってしまった。

 青年が100%悪いわけでは無いがそもそも自分の願望を曝け出さなければこのような事態にはなっていなかったからやっぱり青年が悪い。

 

 現状を思い返しカトルは頭を痛めるが、青年に再び問いかける。

 

「心当たりは?」

「???」

「ああそうですか、どうやらあなたとはここまでのようです。今までお世話になりました」

「ごめんなさいぃ!ちょっとした出来心だったんです!本音を包み隠さないおれかっこいいとか思ったんです!すいませんでしたぁ!」

「やっぱり頭おかしいだろテメェ」

 

 青年の言った言葉に呆れたカトルはついて行く人を間違えたと思った。

 

 

 

 

 とある島のとあるところで一人の女性が民間人に聞き込みを行っていた。

 

「この辺りで『エチエチファンタジー団』の団長を見かけたという通報がありましたがあなたは見かけていませんか?」

「あ、はい!さっきまで『エチエチファンタジー団』の団長がこの通りを歩いていましたよ!」

 

 聞き込みを行っているのは栗色の髪に青眼の女性だ。フリル袖のトップスに黒いビスチェタイプのインナーとショートパンツにニーハイソックス、赤茶色の革靴を履いている。

 

 秩序の騎空団、第四騎空挺団船長、リーシャ。

 

 それが彼女の持つ肩書きと名前だ。

 そんな彼女がこの島にいるのは、ある任務が終わり本拠地のあるアマルティア島へ帰還する最中に、この島から通報があり、調査するため立ち寄ったわけである。

 

「あの人、かわいい女の子を見かけると鼻息を荒くして自分の方に親指を向けて『どう?』って言って回ってたんですよ!」

「なるほど、そうでしたか。男はその後何処に向かったかわかりますか?」

「ああそれならあっちの方に」

 

 リーシャの質問に答えていた女性はある方向へと指を向ける。

 

「わかりました。ご協力感謝します」

 

 調査に協力してくれた女性に礼を言いその場を後にするリーシャ。

 その足取りは速く、先ほどの女性から教えてもらった場所、船着場へと向かう。

 

(この島には船着場が二つある。一つは私達の騎空挺を止めてある西側。もう一つは例の騎空団が船を止めてあると思われる東側。西側の船着場から東側の船着場までは距離がある。となると船に残してある団員を連れていくのは得策では無い。時間がかかりすぎる。彼らは二つの部隊に分けて、一つはあの男に声をかけられた女性への聞き込みとケアを頼みましょう。もう一つはそのまま船に乗って東側まで回ってもらいましょう)

 

 聞き込みを行った情報をまとめ、作戦を練るリーシャ。年若い彼女だがその作戦を練る姿は船団長を預かる立場としてふさわしいものだろう。

 

(私と共に民間人へ聞き込みを行っている団員を集め、すぐに東側の船着場へ向かう。そして騎空挺で向かわせた部隊と挟み撃ちにする。この島で必ずあの男を捕まえる)

 

 決意を固めるリーシャの脳裏には現在捜している男の姿が浮かんでいる。

 

 悪逆非道、女の敵である『エチエチファンタジー団』団長。

 甘いマスクを利用して女性を籠絡し、陵辱の限りを尽くす。らしい。

 

 らしいというのはリーシャ自身、人から聞いた話でしか知らないからだ。しかし彼については様々な噂がある。

 

 曰く、変態の化身。曰く、拉致監禁など日常茶飯事。曰く、女を騙すことにおいては神算鬼謀。曰く、星晶獣すら彼を恐れている。曰く、変態堕天使と闇の取引を交わしている……。

 

 これはまだ一部に過ぎないが少し挙げただけでも彼の異常性が分かる。噂の真偽は分からないが、火のない所に煙は立たない。実際に噂に近いことはやっているはずだとリーシャは考えている。

 

 それにリーシャが彼に対して明確に敵意を向けているのには理由がある。

 

 リーシャの尊敬する人物。秩序の騎空団、第四騎空挺“元”船団長。そして現在はリーシャを支える船団長補佐であるモニカの一言が原因である。

 

『その、だな…酒場で共に酒を飲んでいた男性に……胸を、もまれた』

 

 リーシャ、怒髪衝天。

 

 話を聞くと、その日モニカは多くの仕事をこなしいつもより疲れていたそうだ。これは酒でも飲まないとやってられないなぁ!?と考えたモニカは仕事を終え、酒場に向かった。しかし、向かった酒場は既に満席で相席でしか飲めないという。

いつもならここで諦めて帰っていたがこの日は違った。モニカは相席でもいいと言い、店員に席を案内された。

 

案内された席では既に青年が飲んでおり、酔いつぶれていた。その様子を傍目にモニカも酒を飲み始めるが、いつの間にか青年は体を起こし愚痴を言い始めた。女の子に振られただの、自分には魅力が無いだの、自分は一生独り身だの、少年は泣きながらそのようなことを口にしていた。

 

モニカはその様子を見て不憫に思ったのか、青年を励ました。

自分も同じだ、周りが結婚していくなか相手すらいない、辛い、など言って少年に一人ではないと励ました。

 

酒は進み、それでも口は動きを止めず、いつの間にか愚痴から談笑へと変わりそして──胸をもまれていた。

 

我に返り急いで席を立ち、金を払い店を出て、先ほどの言葉だ。

 

顔を赤らめながら言うモニカをリーシャは思わずかわいいと思うが、モニカをそんなふうにした男に怒りを覚える。モニカは酒と雰囲気に流された自分が悪いと言っていたが実際のところどうなのかはリーシャには分からない。

モニカを騙そうとした悪い男であれば公然猥褻罪として捕まえるが、もしも良い男であれば──。

 

男について調査を進めるとその正体は世間を騒がせている『エチエチファンタジー団』の団長だと言うことが分かった。

 

それからは男の目撃情報が入ると自らその地へ行き、その男を捕まえようと行動していた。

全ては尊敬するモニカにセクハラした罪を償わせるため。

空の秩序を守るため。

リーシャは男を必ず捕まえると誓った。

 

しかし、男を見つけたところで確実に捕まえられる保証がないというのも事実である。実際、男は騎空団立ち上げから現在に至るまで誰にも捕まっていないのである。それが力によるものか悪運が強いのかは不明だが並以上の力は有しているだろう。

それに、団員も少数ながらもそれぞれが一癖も二癖もあり、突出した能力の持ち主という噂もある。

 

「厄介ですね……」

 

リーシャは先のことを不安がる言葉を吐くが、その顔は先を見据えた歴戦の騎空士の表情であった。

 

 

 

 

 島の東側の船着場。そこには一隻の騎空挺と青年とカトルがいた。

そこで青年とカトルは自分たちが搭乗している騎空挺に物資を搬入していた。

 

「くっそー、なんでこんな雑用を団長であるおれがやらなきゃいけねーんだよ。普通は団員が率先して『団長、ぼくたちに任せてください!』って言いに来る場面だろ」

「人望がないんですね(笑)」

 

 カトルの嘲笑を聞き、最後の物資を運び終わった青年の体が止まる。

 

「ぷっつーん。あーあ、言っちゃいけねえこと言っちまったなぁ。実はこの間からおまえの性格を矯正してやろうかと思ってたとこなんだよ」

「奇遇ですね。ぼくもあなたの残念な頭を治してあげたいと思ってたんですよ」

「……」

「……」

 

 一瞬の静寂。そしてお互いに自分の得物を抜き──。

 

「くたばれカトルぅ!!」

「このド低脳がっ!!」

 

 青年は一本の剣を。カトルは一対の短剣を構え衝突する。

 その瞬間。

 

「そこまでです!あなた方は既に包囲されています!おとなしく投降してください!」

 

 突如現れた少女の言葉に二人は動きを止め、声のした方へ視線を向ける。

 そこには一人の少女と統一された衣服を身にまとった者達が十数人で青年達を囲うようにして睨み付けていた。

 

「と、投降?おれたち悪い事したっけ」

「ぼくが先ほど言った事をもう忘れたんですか?あとおれたちじゃないです。一緒にしないでください」

「は!?あれ冗談じゃ無かったのかよ!いや、本当だったとしてもまさか捕まるまでなんて…」

「こんな馬鹿なことで捕まるなんてぼくも思ってませんでしたよ。しかしあの服を見てください」

「服…?」

「あの制服は秩序の騎空団です。となると少し厄介です。このまま逃げても追跡が来るでしょう。それに彼女は”あなた方は包囲されている”、と言っていました。まだ見えませんがおそらく、騎空挺がやって来て島からの脱出も困難になるでしょう」

「となるとさっさとなんとかしてこの場は見逃してもらうように説得するしか無いのか…」

 

 先ほどまで剣呑とした雰囲気だった二人はすぐにこの場をどう乗り切るか考えることに切り替えた。

 

 その様子を見て投降するように言った少女、リーシャは静かに歯噛みする。

 

(戦闘態勢からすぐに状況把握、そしてこの数の差を見るやこの場をどうしのぐかに切り替える…やはり厄介ですね。それに()()()()()()()()()()()()

 

 リーシャは直前のことを思い出す。

 

 リーシャ達、秩序の騎空団は『エチエチファンタジー団』の団長を拘束するためリーシャの指揮の下、東の船着場へと向かった。

 目標の騎空団はすぐに見つかった。まずは様子を伺うため物陰に隠れ、身を潜めた。リーシャの視線の先には二人の男がおり、一人はヒューマン、もう一人はエルーンの青年だった。

 事前情報からヒューマンの青年が件の団長と言うことが分かった。すぐさま二人を囲おうと団員達に指示を出す。

 

(どうやら騎空挺に物資を運んでいるようですね。こちらとしては好都合です。今のうちに包囲網を展開しすぐに突撃──いや、搬入しているのならそれを利用する。彼らが最も気を弛めるのは物資を運び終わったその瞬間!その隙に突入し一気に取り押さえる)

 

 リーシャは冷静にそう判断し、彼らが物資を運び終わるのを静かに待つ。しばらくの間、息を潜めヒューマンの青年が最後の物資を運び終えた。

 

──今!

 

 リーシャ達は物陰から飛び出そうとするがその動きは嫌でも止められた。

 

 ヒューマンの青年が突如、()()()()()()()()()()

 

(ばれた!?)

 

 続けてエルーンの青年も殺気を放ち始め二人は得物を抜く。

 まずい、と思ったリーシャはすぐに二人の前へ飛び出した。

 

「そこまでです!あなた方は既に包囲されています!おとなしく投降してください!」

 

 そして、今に至る。

 二人の動きに注意しながらリーシャは策を考える。

 

(数はこちらの方が上。だからおとなしく投降すればこちらも武器を向けない。そういう風に脅してみましたが、どうやらおとなしく投降はしなくても自分から進んで戦いはしないみたいですね。ということは今の殺気はカマをかけられた。自分たちが追われる身だと知っているからいるかもしれない追跡者に向かって殺気を放った。私達はまんまとそれに引っかかったわけですか……)

 

 リーシャはそう判断するとエルーンの男を注視する。

 

(団員が尖っているとは聞いていましたが、あの少年が羽織っているマントはまさか十天衆?十天衆が彼の騎空団に手を貸しているということですか?でもそれが本当なら彼の騎空団がこれまで誰にも捕まらなかったというのもうなずける)

 

「あなたが『エチエチファンタジー団』団長、そしてエルーンの方は十天衆のカトルで間違いありませんね?」

「あ、はい。そうですけど…なに、カトルって十天衆だったの?」

「逆に今まで何だと思ってたんですか。十天衆のマントを羽織ってるじゃ無いですか」

「コスプレかなぁって。意外と可愛いとこあるじゃんと思ってた」

「……あなたとは後でお話しする必要がありますね」

 

 リーシャは二人の会話までは聞き取れなかったが本人だと、そう言ったのは確認できたため聞きたいことをいくつか質問する。

 

「団長さん。あなたについて様々な噂が飛び交っています。それについて何か言いたいことはありますか?」

「噂って……ああ、あれ?本当なわけ無いじゃん!だからここは見逃してつかぁさい!あと指名手配も取り下げてください!」

「指名手配については正式に出ている訳ではありませんので知りませんが、そうですか。噂はまったくの嘘だと、そう言うのですね?」

「ああそうだよ!だからここは穏便に」

「モニカ、と言う名前に心当たりは?」

「──あ」

 

 リーシャの口から出たモニカという名前に青年の動きが固まる。そこへカトルが驚いたように声をかける。

 

「あなた、まさか女性に手を出したんですか?」

「出したっつーか、いやあれはノーカン……でも逃げられたし……雰囲気は良かったからやっぱりノーカンに……」

 

 モニカという名前を耳にしてから明らかに動揺し始めた青年の様子にリーシャがため息をつく。

 

「やはり、噂は本当のようですね。私達はできる限り武力行使で拘束はしたくありません。ですからここはおとなしく投降してください。後で話を聞きますから」

「やだよ!これ冤罪じゃねえの!?」

「冤罪であれば謝罪します。ですからここは投降を」

 

 引く様子を見せないリーシャに青年はどうしたものかと頭を悩ませる。青年はカトルに助けを求めるように視線を向けるが、カトルは何かを考え込んでいてこちらを見ていない。

 しかしカトルは何かを思い出したかのように青年の方へ向くと、現状を一変させる事を言い放った。

 

「あなた、噂についてはあながち嘘では無いのでは?」

「え?」

「ほら、幼い女の子を騎空挺に拉致監禁しているじゃないですか。ぼくたちには一切口を利きませんが、人形とはよく話しているあの子」

「あ……」

 

 カトルの言葉に信じられないような者を見る目で青年を見るリーシャ。拳をわなわなと震わせ、そして──開戦の火ぶたを切る。

 

「全員突撃!『エチエチファンタジー団』団長とその団員、そして十天衆・カトルの身柄を拘束してください!」

 

 リーシャの号令に武器を構え、一斉に動き出す秩序の騎空団たち。青年とカトルもその様子を見てすぐに武器を構える。

 

「カトルお前何してくれてんの!?てかあの女の子だって拉致監禁に入んないでしょ!」

「あなたがどう言おうと端から見ればただの誘拐犯ですよ」

「くっそー!なんでこうなるんだよ!」

「元はと言えばあなたの所為でしょう…まあこの場は僕に任せてください。考えがあります。あなたは出航の準備を」

「え、任せても良いの?でもこの人数はさすがに……」

「考えがあると言ったでしょう。それに──十天衆の力をあまり舐めないで下さい」

「……そうか、わかった。じゃあここは頼んだぞ!」

 

 青年はカトルに背を向け騎空挺へ乗り込む。その直後にリーシャの剣がカトルに迫るがそれを一本の短剣で難なく受け止める。

 

「この人数差を一人で覆すつもりですか」

「秩序の騎空団、あなた方も十天衆の力を見くびりすぎです」

 

 カトルはそう言うとリーシャをはじき飛ばし、そのまま手に持つ一対の短剣を振るう。その斬撃が秩序の騎空団を襲い、後退させる。

 

「くっ!」

 

 リーシャもカトルから放たれた斬撃を受けるが自身が持つ剣でなんとか受け流す。

 カトルを睨み付け再び斬りかかろうとするが──。

 

「なっ──」

 

 斬りかかろうとしたリーシャが突如膝から崩れ落ち、地面に膝をつく。それは先ほどの斬撃を受けた他の団員も同じようで、突然の変化に団員達に隙が生じる。

 

(これは、“グラビティ”!)

「隙だらけですよ」

 

 カトルは先ほどの斬撃を受けていない、まだ立っている団員を狙い、短剣の柄で殴り沈めていく。

 

「ぐはっ!」

「っ!立っている者は先ほどの攻撃を受けた者の援護をお願いします!私は彼を抑えます!」

 

 リーシャは団員達に指示を出して、力を振り絞り再びカトルに斬りかかる。しかしその動きは先ほどよりも遅く、カトルに届く前に短剣に防がれた。

 

「どうしました?動きが鈍いですよ」

「くっ、この……!」

 

 リーシャは剣を振るうがその悉くが短剣によって阻まれる。

 

「先ほどあなたが質問していたのでこちらからも少し良いですか?」

「っ、なんですか」

 

 このままでは埒があかないと思ったのかカトルの話を聞くリーシャ。その返答を聞きカトルはリーシャにしか聞こえないように小さな声で質問する。

 

「どうしてあの人を捕らえようとするんですか?」

「なにを言いたいのですか」

「秩序の騎空団は噂だけで、罪のない者を捕らえるのですか?」

「それは……」

 

 カトルの言葉に少し覇気が小さくなるリーシャ。その姿を見てカトルは内心でほくそ笑む。

 

(かかりましたね。ですがまだもう一押し)

 

「でも、あなたが子供を拉致監禁しているって言っていたじゃ無いですか!」

「あれは言葉の綾ですよ。それに──()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

「なっ──」

 

 カトルの言葉に息をのむリーシャ。カトルはそれを好機とみたのか続けて言う。

 

「そもそもおかしいを思わなかったのですか?あの人が噂の火消しを行わないことに。噂の中には誹謗中傷のものまで入っています。普通なら噂の元を特定するなりあなた方秩序の騎空団に相談するでしょう」

「っ、それは、そうですけど……」

 

 リーシャにも心当たりはあるのか言葉に詰まる。

 

「裏があるんですよ。我々十天衆が動くほどの()()()

 

(全くの嘘ですけどね)

 

 堂々と嘘をつくか取る。しかしリーシャは既にカトルに惑わされ、その言葉を信じてしまっている。

 

 なぜカトルがこんなことをしているのかというと秩序の騎空団にはあの男がいるからだ。

 

秩序の騎空団団長にして七曜の騎士が一人、青の騎士、ヴァルフリート。

 

(あの男がこんなことで動くとは思えませんが、念のために手を打っておく必要がある。こちらには何か大きな理由があり、現状を甘んじていると思わせれば良い。そうすることで秩序の騎空団も迂闊に動くことは無くなるでしょう)

 

(確かに、いろいろ不審に思うところはあった。異様なほどの噂、そして普通ならばつけないであろう常軌を逸した騎空団名。何よりその団長がモニカさんに近づいたという事実。何か狙いがあった?モニカさんも彼については詮索するなと言っていた。モニカさんのあの発言は何かの暗号だった?つまり、何か裏がある?)

 

 全くそんなことは無いのだが、カトルの思惑通り無い裏を読むリーシャ。狙い通りリーシャを思考誘導することが出来たことを悟ったカトルはリーシャに提案する。

 

「ここはお互いに引きませんか?こちらはあまり目立ちたくない。あなた方も余計な騒動は起こしたくない。利害が一致していると思いますが」

 

 カトルの提案にリーシャは逡巡する。当たりを見渡すと団員達は半数以上が倒れており、リーシャを含め立っている者達も限界に近かった。

 一瞬で人数差を覆したという事実。このまま戦闘を続けたところで勝ち目は無く、自分たちの騎空挺も間に合わないと判断する。

 

 リーシャは己にふがいなさ、そしてモニカの意図を読み取れなかった失態に悔しそうにしながらも、カトルの提案を飲もうとする。

 

「わかりました。ここは我々も引きましょう。しかしあなたの言葉を全て信じた訳では──」

 

 そこまで言って、その言葉は騎空挺から聞こえてくる会話によって遮られた。

 

「ばっかお前が出たらややこしくなるって!」

「止めないでくれエロイドス。俺のパトスを信じろ」

「信じられるかっての!良いから早く、あっ!」

 

 青年と誰かもう一人、男性の会話。騎空挺から出ようとする男を青年は止めようとするが、男は騎空挺から飛び出し、カトルとリーシャの間に割って入る。

 

(この方は一体…?)

「──新しい世界を作っていたんだ」

「なにを…」

「この世界は残酷だ。俺達を追い立て、切り裂き、嬲り続ける」

 

 突如現れたギターを持った男、“アオイドス”の登場にカトルは面倒な奴が来たと顔をゆがめ、リーシャはアオイドスの言葉を訝しげに聞く。

 

「でも、俺は最高の気分さ。だってそうだろ?苦痛、絶望、孤独が糧となり……俺を何度でも舞台に立たせるんだ!」

「カトル!出航の準備は出来たからアオイドスを回収してとっとと島から出るぞ!」

「わかりました。アオイドスさん、早く騎空挺に──」

 

「俺と世界を滅ぼさないか?」

「世界を、滅ぼす……!?」

 

 アオイドスの発した言葉にリーシャは顔を驚愕に染め、カトルは舌打ちをする。

 

「行きますよ」

「待ってくれ!彼女にまだヘイブンして」

「いいから来いクソ野郎!」

 

 アオイドスのこの場を離れないという意思を聞きカトルは感情を爆発させ、アオイドスの首根っこをつかみ瞬く間に騎空挺へと乗り込む。

 

「ま、待って下さい!」

「先ほどの言葉、忘れないで下さいね」

「こうなって仕方ない。またどこかの島でGIGを行う。それまでは君のヘイブンは、君が見つけるといい」

「てめえはもう黙ってろ!団長さん、船を出して下さい!」

「了解!騎空挺、フロンティア号出航!目的地は遠くのどっか!」

 

 青年のふざけたかけ声と共に騎空挺、フロンティア号が動き出す。空へ出る手段を持たないリーシャ達はその姿を眺めることが出来ず、秩序の騎空団の騎空挺が到着する頃には既に青年達の姿は見えなくなっていた。

 

「リーシャ船長、遅くなり申し訳ありません」

「いえ、こちらまで距離があったので仕方ありません。それよりも……」

 

 リーシャはギターを持った男の不可解な言葉を思い出す。

 

(新しい世界を作り、世界を壊す?どこかの島でぎぐ?を行うというのも気になります。ヘイブンというのもきっと何かの暗号でしょう)

「これよりアマルティア島へ帰還します。各自、準備をお願いします」

(表だって行動すると彼らを刺激して何か起こすかもしれない。幸いカトルさんの話は私にしか聞こえてないようですし、この件は私が秘密裏に動いた方がいいでしょう。団員達に伝えて情報が錯綜するのは望ましくないですし。あとはモニカさんにあの件についてもう一度問いただす必要がありますね)

 

 アマルティア島へ帰還するため動き始める秩序の騎空団。

 アマルティア島へ帰還し、リーシャが頭を悩ませることになるのだった。

 

 

 

 

「本当に面倒なところで出てきましたねあなたは」

「ここしばらく作曲部屋に篭もってたもんなぁ」

「それよりもエロイドス。新しい曲を作ったんだ。早速GIGに向けて練習しようじゃないか」

「おれは子の船の舵取ってるから手を離せられねえよ。見て分かれ。後、その呼び方は止めてくれ」

「そうか、ぶっつけ本番がエロイドスのポリシーだったな。わかった。共に次のGIGで観客をヘイブンさせよう」

「おい話を……行っちまった」

「で、何処に行くんです?」

「そうだなぁ。とりあえずじいさんを探すか」

「そういえばあの人と自称デザイナーの変態、何処に行ったんですか」

「じいさんは『海釣りしてくる』とだけ書かれた書き置きがあったからたぶんアウギュステだと思う。あいつは知らん」

「……僕が言うのもあれですけどよくこれで騎空団として成り立っていますね」

「そりゃおれには人望があるからな」

「まだ根に持っているんですか……」

「そういやあの時、秩序の子となんか話してなかったか?」

「誤解を解いておいただけですよ。追いかけてくることは無いでしょう」

「まじか、サンキュー。そんじゃとりあえずアウギュステに行ってじいさんを探すか」

 

 

 とある島で起こった、悪名高い『エチエチファンタジー団』と空の秩序を守る『秩序の騎空団』の騒動。それは大きな騒ぎにはならず、静かに決着を迎える。

 

 それぞれが目的の島へと向かい、その地で再び騒動を起こすのは待て別のお話。




グラブル復帰記念に。
短くするつもりが長くなってしまった。
キャラの口調がおかしかったり、設定の矛盾があれば教えて下さい。

あと、カトルはエロい。
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