狂った道化師を拾った話。   作:親友気取り。

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ビッグ剣。

 ギルマスに昨日の顛末、リゴレーヌとアイーダの証言、俺の主観を伝えておいた。

 備えておいて損はないと念押しをしておいたので大丈夫だろう。ギルマスも隙あらば酒を飲むが馬鹿ではない。

 

「アイーダにもう少し聞いて置きたかったが、本人は会いたくないと言ってるし」

「寂しき寂しリゴレーヌ。アイーダ姉とはまた手を取って、暖炉を囲んで語らいたりぞや。やぞかたもう」

「無理強いするな」

「むむむ。御師様肩入れ姉ねえ庇い、何か後ろめたさありたり? りたありたさ!」

「本人の意思を尊重してるだけだ」

 

 単純に、俺も昔似た事があって逃げ出した事があるってだけだ。

 ひとり生き残ってしまった者へ向けられる感情と言葉がいかに辛いかは分かる。

 また偶然会ってしまった場合には仕方ないが、今はいい。

 本音としてはやはり色々聞いておきたいが。

 

「そいさっさよいよい? したりやなりきてそそいのややや」

「何言ってんだお前」

「言葉に意味などありません。内に秘めたり感情大事、御師様言葉にごまかし混じり」

「お前の喋りよりは分かりやすいとは思うがな」

「あれままれあれれまれあれ」

 

 以前はリズムに乗せて喋っていたが、今日はより一層訳が分からん。

 ノリで口ずさんでいるようにも思えるが何か意味があるのだろうか。

 

「ふ、ふふふふふ。御師様困惑言葉を返し、言葉に意味などありまして?」

 

 ……言葉に意味などないとか言ってたな。

 

「などあり意味ありに言葉ばばばば、言葉を返し困惑御師様ままさささまま、んふふー!」

「いや本当に意味ないのかよそれ」

 

 

 

 

 

 

「来たぞ」

「来ましたなりぞよクラリス来たよ、こちら道化師リゴレーヌ!」

「いらっしゃーい」

 

 合言葉も適当に奥の部屋へ案内される。

 リゴレーヌを連れてきた事に歓迎ムードを出してくれているが、以前に来た時は苦手意識を持ってなかったか? 

 嫌ならわざわざ手紙を出さないか。

 

「確かに前はリゴちゃんに振り回されたけど、あの子……ニコちゃんに悪い子じゃないって聞いてさ」

「少なくても悪人じゃないのは確かだな。言ってることは意味不明だが」

「それでもいいでしょー。ね、リゴちゃん」

「リゴちゃんなる者このリゴレーヌ? なんと可愛いあだ名なりぞて気に入りもーし!」

「んー! リゴちゃん可愛い!」

「お前、そんなキャラだったか?」

「おっさんに愛想は振り向かないの」

 

 誰がおっさんだ。誰が。

 

「で、もっかい聞くけどほんとに浮気はしてないよね?」

「もっかい言うが、人聞きの悪いことを言うな」

 

 昔からの付き合いだから許してはいるが、これを言うのがもしニコルだったらキレてるぞ。

 

「マックスって本当にニコちゃんに厳しいよねー」

「お前らの仲が良いってが驚きだよ」

「そりゃあ……あ、リゴちゃんその剣危ないから置いてね。というかよく持てるね」

「おや、おやおやおやおや?」

 

 目を離した隙にリゴレーヌがバカでかい剣を持とうとしてた。

 なんだあれ。俺でも持つのは難しいぞ。

 

「持てまし持てます巨大な大剣。驚きましょうか? びっくりでしょう!」

「びっくりしたよー」

「諦めろクラリス」

「まだ何も言ってないよ!?」

 

 振り回せるんだったらいつもの身軽さと合わさって途轍もない戦力になるんじゃないか? 

 問題は、道化師の舞台に関連付けないと扱えないだろうということだが。

 

「リゴちゃん力持ちだねぇ」

「本当に会話以外の能力は高いんだよなこいつ」

「使えるなら安く譲るよ? 邪魔だしいらないし」

「何で作ったんだよそんなの」

「知らないよ。趣味じゃない?」

 

 そんなものを店に置くな。

 それと、持ち帰った所で床が抜けそうだしいらん。

 

「それで今日はどうしたの?」

「俺の装備の手入れと、リゴレーヌに新しい武器を頼みたい」

 

 持ってきていた装備の一式を渡す。

 仕事となればクラリスも流石に真面目になるので、職人モードに入ってしまえば静かだ。

 ……そんな真面目な顔を覗き込む道化師様はもう少し静かにしてくれないだろうか。

 

「マックスはともかくリゴちゃんも? ってうわ、リゴちゃんのやつ刃こぼれ酷くてぼろっぼろ」

「相手の攻撃を未だに一撃も食らってない代わりにそれだ。盾もついでに頼む」

「注文の多いお客さんめ。サーベルはこれもう引き取っちゃっていい?」

「代わりにダガーを用意してくれ。」

 

 自分の装備は自分で金を出さなければいけないと思っているのか、ちらちらとリゴレーヌが目線を向けている。

 

「必要経費だ」

「それは助かりありがと御師様! 時満ち足る時なればお返ししますよ道化師稼ぎ!」

「別に金に困ってる訳じゃないし返さんでもいいぞ」

「いえいえこれはけじめにありて、流石に道化師礼儀をわきまえ。えまきわををを礼儀を流石に道化師ありてて」

「本当にわきまえてるのか?」

 

 別に気にしてないし、その裏のなさがリゴレーヌらしくて俺は気に入ってるんだがな。

 今更どうしろとも言わない。

 というか直せるものならやってみろって感じだ。

 

「仲良いねー。やっぱりマックスは丸くなったよ」

「やっぱりってなんだ」

「御師様最初と比べて表情和らぎ時々笑い、道化の勝ちに傾きかちかち傾き」

「さっすがリゴちゃん! ベ……ニコルの認めるだけあるぅ!」

 

 なんか今言いかけなかったか?

 誰と間違えたんだか。

 

「ぶー。マックスだって噛むことあるじゃんか、ギルマスから垂れ込みはあるんだぞ」

「なんで焦ってんだお前」

「ふ、ふふふふふ。滑舌大事はリゴレーヌ、舞台台詞は噛みまめん」

「早速噛んでんじゃねえか」

 

 わざとだろうが突っ込みを入れて止めないとな。

 行動は読めないが事前に止めるようにはなってきたぞ。

 

「信用ありか無しか分かりませんがなどうでしょう? これは身の降り致し方あるまし、しかししかとて道化にしてしょうがなき」

「リゴちゃんはまず喋りからしてよくわかんないよねー。噛んでるのかそういう言葉遊びなのか」

「まぁそうだが、だからといって普通に喋ってもむしろ気持ち悪いんだよな」

「このへんてこな喋りがアイデンティティーだよね」

「やろうと思えば普通に喋れましことですよ? なりとて、やりませんだけですことなり」

 

 できてねぇし。

 アイーダの生存を報告した時は素に戻ってた気がするが、あれは短い文だったから普通に見えていただけか。

 以前は辛いことがあって狂ったのかと思っていたけれど最近はこれが素だと認識している。

 尤も、こいつの人生自体が色々あったようで狂いまくってるみたいだが。

 

「よし。それはさておきこの程度なら明後日くらいに仕上がりかな。それまで替えの物いる?」

「明後日なら別にいいか。いざとなれば予備の剣もあるし」

「あれですか、どでか剣!」

「ちげぇよ」

 

 普通に使わなくなったやつだよ。

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