狂った道化師を拾った話。   作:親友気取り。

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PC大不調(死)の為、執筆苦にございます。
水曜更新を守っていく事に代わりはありませんが、短い、誤字が目立つ等が続く場合はご容赦ください。たすけて。


道化なし、少し寂しか

 祭りまであと数日。

 久し振りにリゴレーヌのいない朝は静かだ。

 ちょっと前までこれが日常で平穏だったというのに、なんだかこれはこれで寂しい。

 ……寂しい気がしているのは自分でも意外だ。

 

 朝起きて一人で支度を整え、ギルドに顔を出して、依頼をこなして金を得る。

 いつまでも続くと思っていたその変わらないだろう日常が変わったのは間違いなくリゴレーヌのせいだ。

 以前であればこうも人と関わるなんてしなかったのに、今では誰かと話すことが普通になったのだから。

 

「全く……」

 

 椅子を傾けて静寂を楽しむ。

 妻を守りきれず、娘の視線に怯え、後ろ指に耐えきれなかった日が遠い。今ならパーティを組めるかとすら思える。

 

 だがまぁ、思うだけなら楽だ。

 そうして調子に乗って実際に組んでも数日で解散だろう。

 

 裏で人をどう思ってるのか分からない奴、媚びへつらっておこぼれを狙う奴、あるいは仲間と主張することで守って貰おうとする奴……はいないか。俺が守れないという事は町中に広まったのだし。

 とにかく考え出したらキリのないそれら邪念悪意に思考を巡らせたところで、付き合いが億劫になって終わりだ。

 

「情けない奴だぜ、全く」

 

 以前から俺が人の裏を気にしてるかといえばそうでもなく、きっかけはやはり妻を先立たせてからだ。

 当時は俺と妻と、当時はまだ冒険者だったギルマスと鍛冶屋に戻ったクラリスの父で4人のパーティを組んでいた。

 

 全てのきっかけであるスタンピートの後に町では当然ながらあちこちで人手不足が起き、以前からいずれはと目指していたギルマスは空いたその席にそのまま座り、クラリスの父は装備を修理して回っていたらそのまま鍛冶屋になっていた。

 そしてその中で俺はというと、剣ひとつで生きてきたらしく唯一冒険者を続けた。それしかなかったから。

 事実上の解散の為に新しくパーティを組めば、陰口はすぐ耳に入った。

 一挙一動揚げ足とられて騒ぎ立てられ、あることないこと噂話が聞こえる。

 そうなれば、例え表面は心配してくれるような珍しい気の真っ直ぐな奴がいたとしても突っぱねてしまうだろう?

 

「その点、リゴレーヌはな……」

 

 あいつも人間であることに変わりはなく、色々考えてるし思考や言葉に裏は確かにある。しかしそれは悪い方へではない。

 その場での嘘も言う事はあるが後でネタバラシをするし、人を陥れようとか騙してやろうとか諸々の邪悪を理由とした事は一切ない。

 根っからの道化師としていかに人を楽しませたり、あるいは人間関係を舞台に置き換えた公演のスケジュールを滞らせたりしないよう円滑に進め場を取り持つ司会として動いている。

 

 宮廷道化師のように仲介をしているとは思ったが、父のそれを見てそうするのだと学んでいたのなら納得だ。

 その父に裏切られて所属する国から追われた過去があって尚、拒絶された自分の才能を捨て憎む事なく人の為に使おうとは驚きを隠せないが。

 もし放浪の末にサーカスを見つけ道化師の真理に到達しなかったら、あるいは今まで見せた奇術のその力を復讐の為に全力で使っていたらどうなっていたことやら。

 

 あの話に演出以外の過度な誇張はなさそうだし、俺の臆病なんてちっぽけなものに思えてしまう。

 自分の娘ほどの歳の奴に……歳は余計か。年齢が高けりゃ偉いって訳でもない。実力が全て。未だに年齢は不明なままだけれど。

 冒険者としての最低年齢の14から始めてもニコルとそう離れてないし、行ってギリギリ16くらいか?

 

 ともかくとして人生を全て道化師に捧げているリゴレーヌは、それ故に悪意がないあいつは傍に置いて苦がない。

 むしろいないと静かで寂しがってしまうほどに、いつの間にか俺の方からも依存してしまっていたらしい。

 持ちつ持たれつという訳ではないが、拾って助けてやったつもりが助けられてるな。

 

「なぁ、リゴレーヌ」

「ふむふむ。しかとて()の道化振る舞い悪評取られず好評ばんざい!」

「ぶっ!?」

 

 げほっ! げほっ!

 急に出てくるんじゃねえ、おま、いつの間にそこに座ってた!?

 

「お呼びでない? 呼ばれない? そのはずなし!」

「いやいつの間に来たんだよ」

 

 出現していたリゴレーヌは俺の反対側の席に座り首を傾げている。

 ちゃんと答えてはくれないが、まあいつもの瞬間移動だろうな。どうせ視界を外した時にそこへ来たに違いない。

 今日はアイーダと一緒じゃなかったのか。

 

「んむう。道化師それは必要あらればシュビビンマン。呼ばれた故に? そう! 御師様優先それが弟子!」

 

 両手を挙げて、身体ごとテーブルに投げ出して顔をこちらに向ける。

 寂しがって無意識に呼んでしまったなんて恥ずかしいのでぐいっと顔面を押しやってそっぽを向くと、ふひひと笑い声がした。

 当然リゴレーヌだが、やけに楽しげだ。

 

「なんだよ」

「にしし、だって御師様ほっと一息。戯れよしなに人寂し? 道化の公演楽しみあらればリゴレーヌ!」

「ほっとけ。それよりアイーダはどうした。置いてきたのか?」

「いえいえいえいえ? ニコルが剣技を教えて貰いと以前の練習場! いつもいつでも合流可能! 御師様も、アイーダ姉ねえ話して話す?」

「いやいい。あの剣はおっかないからな」

 

 ほんの勘違いで斬られたらたまったんじゃない。

 現場であった時や昨日もそうだが、斬って確かめるを地でいく奴だし。

 

 ……待て、これニコルまずいのでは?

 

「アイーダって、剣の達人だよな?」

「うむ! 我ら一座にてその神速の剣に勝るものおらず、無から発するその落雷の如し一閃はしかし雷鳴なくただ通り抜ける光の如し!」

「居合い斬りだよなそれ。ちゃんと止められるよな」

「しかと目に止めまばたき厳禁! 並んでたくさん人工竹林? タネはなし! しかと見よ、目を離さず!」

「おい聞いてるか?」

 

 リゴレーヌは華々しい語りでアイーダの功績というか演目を挙げるが、そのどれもで敵に見立てた竹が斬り伏せられてる。

 いくら音だけで相手の位置を判別できる剣の達人アイーダでも、ニコルと戦ったらついうっかりしてしまうんじゃなかろうか。

 仮に模擬刀を使ってくれてたとしても、あの速度で叩かれたら細身のニコルなら真っ二つになりそうだ。

 仕方ない。

 

「暇だし様子を見に行くか」

「はいなー!」

 

 元気良く玄関へ走っていく。

 そうだな、瞬間移動する距離でもないよな。

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