狂った道化師を拾った話。   作:親友気取り。

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カーテンコール!

「ふむー。ふふっふ」

「どうした?」

「ようやく終焉世界の終わり、世界の果て故あいさつ悩み。えんでぃんぐ!」

 

 数年が経ち、あれ以来姿を見せないアイーダの飼っていたニワトリも老いた頃。

 どういう訳か背丈も全く成長していないリゴレーヌが朝から唐突によく分からない事を言った。

 よくわからない事を言うのはいつもの事なのでスルーするが、ベリテットと年齢が変わらないのになぜこいつは成長が止まっているんだ。成長期はどこへ行った。

 

「それは()の姿時経たず。一週間!」

 

 前にも時間を巻き戻してたしまぁいっか。

 

「むー。そろそろネタ切れ御飽き飽き。新ネタ開発吾にできること……」

 

 リゴレーヌがいつもの落ち着きのなさから一転して紙に何かを書き始めたので静かになる。

 

 

 ──ジャコモ事件から年数も経ち、周囲の様子は大きく変わった。

 ベリテットはギルマスの(余計な)手回しによって俺の正式な弟子となり、指導を付けた結果、センスもあるしすぐに冒険者として立派に成長を遂げた。

 今や親友のエンリカと組んで簡単な依頼をこなし、ひとり立ちしている。エンリカの方は魔法使いとして知識役になっているらしくバランスはいい。

 

 だから以前のように俺一人の時間が増える……と思ったんだが。

 

「……ん? 吾に御用? 何かYOU!」

 

 変なポーズを決めながら小首を傾げる道化師を見てため息。

 こいつはいつまで弟子になっているんだ? 後輩のベリテットは既に旅の前準備すら始めているというのに。

 

「だって何故ゆえお答えしましょう、吾の名は道化師リゴレーヌっ。変わらぬ日常お届けするのがお仕事仕事の大仕事!」

「頼むからちょっとは成長してくれ」

 

 背丈とか子供のままだぞ。

 

「その辺お許し年数経たず。現実干渉その不利点、このリゴレーヌにも予想外!」

 

 まさか、不老にでもなったのか? こいつ。

 ついに人間の枠を外れてしまったか……。

 

「いえいえいえいえ! リゴレーヌは人に変わらずここにおり!」

 

 いやだって、ねぇ? 

 

「アイーダ姉!」

 

 おらんやろ。

 って思ったんだが……。

 

「リゴレーヌはいつもと変わりませんよ」

「ほら!」

 

 いつの間にか席に着いてる!? 

 数年越しに現れたその姿は以前のメイド服に変わりはないが、杖を持っていない点だけ異なる。

 そういえばアイーダも神出鬼没だった。

 

「どうして、という顔をしていますね」

「あ、ああ。まぁ……」

「私が死んだというハッキリとした描写がなかったので、と申しますか」

 

 何の話だ? 

 横目にリゴレーヌを見ている辺り何かしたんだろうが……。

 というか、ジャコモの手先だって話はどうなったんだ? 

 

「その辺りはリゴレーヌが詳しいですよ。彼女はここに至るまで、地の文どころか裏の設定まで覗いて立ち回りましたから」

 

 そうなのか? 

 道化師は帽子をふらふらさせながらメイドに抱き着いている。

 

「どうなんだリゴレーヌ」

「今は平穏世界は平和、アイーダ姉ねもお疲れさまさま」

「ありがとうございます」

 

 うーん。話が全く分からん。

 

「あー……」

 

 珍しく道化師が言葉に詰まった。

 

「どうした?」

「そのー、ですね? これで憂いもなく終わりなんですけどー」

「けど?」

「締め方が思いつかないと言いますかー……」

 

 急にまともな口調になったかと思えば、やはり言ってることは分からん。

 アイーダに助けを求めるように目線を向ければ肩を竦められた。

 

「道化師リゴレーヌの得意とする役目は幕間や場繋ぎ、あるいは宮廷道化師風に進言です。締めは座長が行うのですから」

 

 なぜ俺を見る。

 俺は別に座長でも何でもないぞ。

 

「でもでもあるいは主人公!」

 

 どうしろってんだ。

 てかその前に、何を締めろと言うのか。

 そしてまともな口調になれるならずっとそれでいてくれないか。

 

 意味不明なのに疲れて椅子にもたれかかり、色々あったなと思い返す。

 何もかもリゴレーヌを拾ってから起こった事だ。

 

「父さん!」

 

 ベリテットが帰ってきた。今度はどうしたっていうんだ。

 

「あ、リゴレーヌもいた! ……って、アイーダさんお久しぶりです!」

 

 慌ただしいけどどうした。

 今更何か発表かなんかあるとすれば心当たりはない。

 

「ギルドに見に来てくださいよ! ボク、おっきな魔物倒したんですよ!?」

「あー、うん……」

 

 それ、そんなにいう事か……? 

 

「凄いおっきな魔物ですよ、建物位の! 運ぶの大変だったんですから!」

 

 それはどちらかというと倒した云々より、付近にそのレベルの魔物がいた事に驚きなんだが。

 というか、センスがあるとはいえ成長し過ぎでは? 

 一応褒めてはおくが、このまま旅に出すと何するかわかんないな……。

 

 リゴレーヌも着いていくらか大丈夫、とは思えど。

 いざという時は何とかしてくれと目線で指示を出したら頷いてくれた。

 

「旅、ですか?」

 

 アイーダはいなかったし聞いてなかったんだろう。ベリテットがそのうち旅に出るという事を教えておく。

 

「アイーダもリゴレーヌと一緒にどうだ?」

「……いいえ。もう十分に働きましたから」

 

 そうか。まぁ無理強いはしない。

 

「姉ねはお休み? 杖なしおっけー仕方なし!」

 

 盲目の身で旅は辛かろう。

 またしばらくの沈黙。リゴレーヌがアイーダに甘える音だけが響く。

 

 

「……って、なんでみんな静かなんですか?」

 

 再びのんびりとした時間が流れようとして、ベリテットが声を上げた。

 そういわれたって特に話題もないし。

 というか騒いでたのはベリテットだけだし。

 

「もうっ。かわいいひとり娘が帰ってきたっていうのに……」

 

 かわいいひとり娘であることは間違いないが、最近ちょっと生意気だから意地悪したくなるんだよな。

 ……俺も気持ち悪いおっさんになったか……。

 

「んー、んー……」

「な、なに? どうしたの?」

 

 リゴレーヌがベリテットを見る。

 

「締めなくてよき?」

「何の話?」

「俺も知らん」

 

 さっきから何かを終わらせたがってるんだよ。

 

「この物語もようやく終わり、されど旅立ち未来の指標! 舞台はまだ見ぬ新天地!」

 

 あ、締めるのか? リゴレーヌ自ら締めるのか? 

 俺はよく分からんからやってくれるなら別にいいけど。

 

「ベリー! ギルマスが話聞きたいってー!」

「あ。すぐ行くよエンリカーっ!」

 

 慌ただしくベリテットが家を出ていく。

 アイーダはいつの間にか席を立ち、メイド服らしくお茶の準備を始めていた。

 

 椅子の上で高らかに何かを宣言するリゴレーヌだけにスポットが当たり、それの目の前にいる俺はどうしろというのだろう。

 とりあえず拍手を送っておく。

 

 なんだか話からして、この地での物語は終わったので次は旅の話をする、といった感じだ。

 何となくそんな感じだろうと言う予感というか天啓というか、なんかそんな感じする。

 

「そうか、終わりか」

「はいなはいはいいはなはな! そうです終わりの物語! 続きはあれど続きなく!」

 

 道化師の帽子を投げて、俺に被せた。

 

 

「またいずれ、ではまた!」




これにて完結です。ありがとうございました。

何となくで書き、何となく供養に投稿し、そこそこウケたので続け、ここまで来れました。
プロットも何もなく文章の練習として週一投稿を続け、リゴレーヌの喋りに振り回されたりリゴレーヌの喋りが現実に影響を及ぼしたりしましたが私は元気です。

では、またどこかで。
さようなら、さようなら。
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