狂った道化師を拾った話。   作:親友気取り。

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久しぶりの供養です


武器屋の娘、クラリス。

 朝食を食べながら今日の予定を考える。

 馴らしにまた魔物討伐には赴くとして、リゴレーヌの武器をどうするか。

 ナイフ投げの腕は確かに良いんだろうが、それを活かせる性格をしてないのが致命的になる。

 俺の二つ名として広まっている通り、俺は安定を取った戦い方を好んで行っているため不安定なリゴレーヌは正直合わない。

 だったら盾でも持たせて道化師というジョブの役回りの通りヘイトを集める役目を任せたいが……。

 

「何か不備でも質問を? まさか追い出す追い出された!」

「そういう訳じゃない。前にも言ったが俺達のメインは魔物討伐だ。お前をどう戦わせようかと思ってな」

「ふーむ。戦いです、戦いでした。流れて終わるのが流れです。そう、流れ」

「何の話だ?」

「演技とは経って流れて終わるのです。川は止まらずなるように流れるしかないのですです」

「意味が分からん」

「あれま。あれまれま、あまれあれれま、あれま」

 

 焼き魚にナイフを刺して宙に放りそのまま口へ。

 喉に刺さるんじゃないかと心配になるが、こいつの場合は剣でも飲み込めそうだ。

 言ったらやるだろうし言わないが。

 というか、そのナイフはいつの間にか大量に増やしてた投げナイフの一つだろう。返してくれ。

 

「そうだった御師様の持ち物。してリゴレーヌはこれからどうしましょう? 貰った銅貨を投げましょう!」

「その前にどうやって増やしたんだ? また手品か」

 

 返却されたナイフは合計して20本にもなっていた。

 使い捨ての消耗品だから別に多いに越したことは無いが、どうやったんだか。

 

「奇術の一つです、ほいっとやって目にも止まらぬジャグリング。ぱっとやります」

 

 一本手に取って、右手から左手へ投げると既に増えていた。

 まだ動体視力には自信があるのだが、全くタネが分からない。二枚のトランプをずらすようにするりと増えてる。

 

「やっぱ魔法だよなぁ」

「行き過ぎた技術は魔法とも呼ばれ蔑み? いいえ誉め言葉です。でした。なぜなら! ぜならぜら!」

「見分けがつかない程うまい、と」

「流石御師様理解力!」

「原理は分かってないがな」

 

 無意識に魔法を使ってるとしか思えないが、リゴレーヌの言葉だと技術らしい。

 これはこういうものとして考えていかないとやはり駄目だな。

 

「さて、飯も食ったし行くぞ」

「公演です? よし」

「ちげぇよ。武器を見に行くんだよ。一応冒険者だからお前の手に合った物を買うぞ」

「そうでした今は冒険者。なんの冒険でしょう? そう人生は冒険なのです」

「語るじゃないか」

 

 ぶつかったり転んだりするんじゃないかと心配になるふらふらとした歩き方のリゴレーヌを引き連れて、大通りから少しそれた所にあるこじんまりとした工房に入る。

 特に看板も出してないがここでいい。

 扉を開けると背の低い、ドワーフの娘が出迎えた。

 

「マックスじゃん、久しぶり」

「ようクラリス。相変わらずしけた店だな」

「挨拶だねぇ」

「お前が合言葉だっつって言わせてるんだろうが」

「はいはい」

 

 顔なじみだし合言葉もいらないだろうに。

 奥の部屋へ通されると、ここまで黙ってついてきていたリゴレーヌが飾られている武器や防具の数々に目を輝かせ騒ぎ始めた。

 工房は別にあり、そこで作った物の中で選ばれた品質の良い物がここで売られている。

 高ランクの冒険者の中でも信頼できる連中同士でこの場所と合言葉を伝え合う為、弟子を連れてくる事はないんだがリゴレーヌなら平気だろう。

 といっても、店番をしているクラリスはリゴレーヌの事を知らないので怪訝そうな顔をしているが。

 

「この子は?」

「名前はリゴレーヌ。国から弟子を取れって言われたから拾ってきた」

「拾ったぁ? 悪い子じゃないんだろうけど、この子大丈夫なの?」

「ある意味大丈夫じゃないが、まあ言いふらしたりはしないだろ」

「ホントに?」

「だったらリゴレーヌとちょっと話して見ろよ。わかるから」

 

 勝手に商品を触ってはいけないと分かっているのものの危険意識が低いのか、剣先に顔をものすごく近づけていたリゴレーヌに話しかける。

 

「ねえ、君はどこから来たの?」

「どこからでしょうか? リゴレーヌはいつも旅の途中だったのです。いえ今も旅の途中? 旅は道づれ」

「……そっか。この武器を使いたいってのはあるかな」

「この前はナイフを投げましたよ。ひとつをふたつ、ふたつをよっつ。ほほいと増やして投げました。ぱちぱち」

「ナイフかぁ。でもそれってメインじゃないよね」

「メイン? 主はそう! リゴレーヌは道化師です。道化は楽しみ楽しいですよ! 楽しんで!」

「えっと、武器の話をしたいんだけど」

「武器? リゴレーヌの武器はこの身体! しかし今は衣装もない。芸には自信がありますりありましますが」

「あー、うん……」

 

 大げさに頭を下げたリゴレーヌを見て、クラリスが諦めて戻ってきた。

 

「な、大丈夫だろ」

「ある意味大丈夫じゃないけど。よくこんなの拾ってきたね……」

「……ま、な」

 

 拾った直後に後悔もしたが、下手な弟子よりかはマシだ。

 確かに会話が成立しない事が多々あるが、行動に裏がないから安心できる。

 俺が仲間を欲せずソロで動いたいたのはそういった人の裏面が怖くてだったのだが、リゴレーヌなら。

 

「まさか、あのマックスとあろうお方がこの子の身体目当てに浮気? 本人がぼけぼけだからって」

「人聞きの悪いことを言うな。さっさとあいつにお似合いの武器を見繕ってやってくれ」

「さっきのやり取り聞いてたよね。無理だよ」

「それを何とかするのがこの店だろ?」

「無茶ぶりって知ってる?」

「しけた店だな」

「出禁にするよ」

「それは困るな」

 

 リゴレーヌのおふざけがうつったな。

 おふざけの元凶である道化師様の首根っこを捕まえる。

 

「おやや御師様。何か御用です? でした。まあ!」

「お前は身軽だし相手の攻撃を避けるのも得意だろうが、あえて受け止めて隙を作る事も必要だ」

「ほうほう?」

 

 なんか分かってなさそうだな。

 

「避ける一辺倒じゃ客は飽きるから偶には防御を織り込む。どうだ」

「お客さんを飽きさせるなんて! 流石御師様指摘力……」

「回避と防御、その二つの選択肢があれば負傷も減るだろうし“お客さん”も喜ぶ」

 

 俺の言うお客さんは魔物の事だし、喜ぶと言うのも相手への煽りだ。

 ……リゴレーヌより、よっぽど俺の方が裏があって嫌な奴だな。

 

「じゃあリゴレーヌちゃんは軽装備ね、任せて!」

 

 クラリスがリゴレーヌの手を引いて防具の置いてある一角へ連れて行った。

 サイズの調整と種類の選択は任せていいだろう。

 近くに置いてあった椅子に腰かけ、傍から見て仲良く見える2人の背中を眺める。

 会話が噛み合っているようには見えないがまあ問題ないだろう。

 

「いや問題だらけだよ!? マックスちょっと見てないで来てよ!」

「御師様! 光る物は? 光らせてよい? 光る腕輪!」

「そんなの無いよ!」

 

 ……クラリスに任せておけば大丈夫だろう。

 

「見捨てないでよ!」

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