███:長谷川千雨は最後の竜の血脈である。   作:庭師代行

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第2章『竜の血脈(ドヴァーキン)の日常』
第27話【料理】


 長谷川千雨の朝は早い。学費のために毎朝3時半に起床して新聞配達のアルバイトをこなしている明日菜ほどではないが、それでも日が昇る前後の時間には起床している。

 時を司る竜神(アカトシュ)の手によってスカイリムに連れ去られる前は午前7時過ぎまで寝ていることも多かったが、今の千雨は2時間以上早起きしていた。

 

目が覚めたか、ドラゴンボーンよ

「ああ、おはよう……はぁ、コイツの声もすっかり聞き慣れちまったな」

 

 脳内に響く独特な声でモラに話しかけられた千雨はため息をつきながら部屋着を脱ぐと、白色のリボンで髪を結ってポリエステル製の黒いトレーニングウェアに着替えた。

 そのまま洗面所に行って歯を磨いた千雨は、冷蔵庫から紙パックに入った牛乳を取り出してコップに注ぎながら机の上に置かれている電子時計に目をやる。

 

 電子時計に表示されている日付は5月18日の金曜日──計画停電があった日から1か月以上経過していた。

 計画停電の翌日に多額の金銭を近右衛門から受け取った千雨は、この1か月で様々な行動を起こしていた。

 

「それで、そのパソコンの調子はどうなんだ?」

今までとは比べ物にならないほど快適だ。処理能力もそうだが、記憶装置の容量が格段に増えたのが大きい

 

 モラは1週間ほど前から連日連夜、千雨が警備員のバイトの報酬や宝石の売却代金を切り崩して用意した業務用冷蔵庫並みの大きさのワークステーションで情報収集に(いそ)しんでいる。

 

 モラが酷使しているワークステーションは去年、量子力学研究会と生物工学研究会が茶々丸に搭載する予定の電子頭脳を作成するために【量子コンピューター】や塩基配列を利用した【大容量記憶装置(DNAストレージ)】などの技術を投入してロボット工学研究会と共同開発した試作機である。

 

 試しに作ったはいいが現在は小型化に成功している上、処理能力が麻帆良大学に設置されているスーパーコンピューターより優れているわけでもない。

 しかし解体して処分するのももったいないので、持て余して倉庫で眠っていた品である。

 

 使われていないとはいえ計り知れない価値があるのだが、千雨は(チャオ)と口裏を合わせて特殊なAI(電子精霊)の運用テストに使用すると称して買い取ったのだ。

 

 当然だが安い買い物ではなかった。千雨はワークステーションを購入する際に、それぞれの研究室に合計で一千万円以上の額を支払っている。

 処理能力だけではなく、保存可能容量も確実に世界で一番の容量(1エクサバイト(100万テラバイト))なので破格な値段ではあるが、手持ちが心許(こころもと)なくなった千雨が米ドルを日本円に両替したのは記憶に新しい。

 

 ちなみに2000年時点(現在から1年前)での全世界で生成、消費されるデータの総量は6.2エクサバイト(620万テラバイト)だと言われている。

 2020年時点では59ゼタバイト(590億テラバイト)まで膨れ上がっているため、重要な情報に絞ったとしてもハルメアス・モラが知識を収集するには途方もない量の記憶装置が必要となるだろう。

 

 その点はハルメアス・モラも理解しているはずであるが、何らかの手段を用意するつもりなのだろう。

 地球で集めた情報を保存するために、動物や人間の脳が浮かんでいるガラス張りの培養槽(バイオコンピューター)自身の領域(アポクリファ)に並べたハルメアス・モラがほくそ笑んでいる光景が脳裏をよぎった千雨は思わず身震いしてしまった。

 

「……ちょっと留守にするが、勝手に他の奴と接触したりすんなよ」

重々承知している。今日も配下の電子精霊を()けておけばよいのだな?

「計測だけなら普通の電子精霊で十分だしな。それじゃあ行ってくるぜ」

 

 若干マッドな気質がありそうな(チャオ)とハルメアス・モラを会わせたら危ないと判断した千雨は、彼女には電子精霊を使役しているとしか教えていない。

 超は「()()()千雨サンは電子精霊を使うのカ」と小声で呟いていたが、インベントリを見せたときほど驚いてはいなかった。

 

 まるで最初から知っていたような口ぶりだったが、千雨はプログラミングやネットワーク技術を独学で学んでいると(チャオ)に伝えているため、そこから連想したのだろうと深くは気にしなかった。

 

 牛乳を飲み終えた千雨はモラに命令してノートパソコンに簡単な意思疎通ができる中位電子精霊を憑けさせると、足早に訓練場にしている森林へと向かうのだった。

 

 

 

 学生寮と学校の中間地点付近に立つ世界樹のほど近くにある森林へと向かった千雨は日課となっている瞬動術の訓練を終えると、そのままの足で近右衛門から借り受けている土地へと移動した。

 

 舗装されていないが車一台程度なら通れる幅の道を進んだ先に千雨が借りた土地はあった。

 交通の便は良くないが悪くもない。5分ほど歩けば森林を抜けられる程度の距離なので、さほど不便はしないだろう。

 

 この1か月の間に地盤調査(ボーリング)を済ませており、上下水道や電気も()()()()()()()()()()ため延長工事は既に終わっている。

 さすがにネット環境は整っていなかったので企業向けの光ファイバー敷設工事を依頼したが、その工事もつい先日完了した。

 

 現在はシャッター付きのプレハブ倉庫を用意して、家を建てるための資材を集めていた。

 内装に使う細々(こまごま)とした材料はともかく、家の建築に必要な大量の木材、石材、コンクリートなどを一気に運ぼうとするとインベントリの重量制限を超えてしまう。

 

 そのため千雨は前日に限界までインベントリに詰め込んだ資材を、翌日の朝に倉庫の中に設置したチェストに収納する生活を繰り返していた。

 昨日届いたばかりの内装用の物品をインベントリから取り出して片付けた千雨は、倉庫のシャッターを降ろして鍵を閉めるとその場を後にした。

 

 時間に余裕があるので森の中を流れている小川に沿()った道を急がずに歩いて帰っていると、千雨は見慣れた緑髪の人物が紙袋を両手で抱えながら川の対岸を歩いている姿を見つけた。

 

「おはようございます、千雨さん」

「おはよう、茶々丸。こんな早朝から買い出しか?」

「マスターが急にクロワッサンを食べたいとおっしゃったので……」

「エヴァがこんな時間から起きてるのは珍しいな」

 

 千雨が貸している付呪装備のおかげで使える魔力が無制限になったとはいえ、肉体的には見た目相応の力しかないのでエヴァンジェリンが朝に弱いのは治っていない。

 そもそも朝に弱いのは本人の生来(せいらい)の体質的な問題なので、仮に呪いが解けたとしても寝起きが悪いのは治らないだろう。

 

 そして千雨と茶々丸が出会ったのは偶然ではない。千雨が借りた土地は住所でいうと『埼玉県麻帆良市桜ヶ丘4丁目29番地2号』となる。

 千雨が近右衛門から借りた土地はエヴァンジェリンのログハウスから川を挟んだ向かい側にあるのだ。

 

 家が建った後も土日や長期休暇はともかく平日は寮に帰って寝るつもりだが、エヴァンジェリンや茶々丸と顔を合わせる機会は増えるだろうと千雨は予想していた。

 

「せっかくですので朝食を食べていかれますか?」

「誘ってもらって悪いけど、今日は木乃香と弁当を作る約束をしてるんだ」

「そうですか。朝食に誘って血を吸わせろとマスターがおっしゃっていたのですが、これでは目標を達成できないですね」

「修行の対価に吸わせてやってんのに、まだ吸い足りねーのかよ。あのサボり魔」

 

 4月末にラテン語と古典ギリシア語の基礎を覚えた千雨は、エヴァンジェリンの気が向いたときに魔法を教えてもらっている。

 それから2週間ほどの期間で千雨は『魔法の射手(サギタ・マギカ)』という基礎的な攻撃魔法と杖に乗って飛行する魔法、認識阻害の魔法、建築系の魔法を習得している。

 

 特にダイオラマ魔法球の内部で使われている周囲の魔素を利用して建造物や物品の劣化を防止する魔法は優先的に覚えようとしていた。

 一般的な魔法と比べると術式の規模が大きいため習得するのに少しだけ手間取ったが、無事に家を建て始めるまでに習得できた。

 

 インベントリに入れた物品は時間が経過しないので劣化しないのだが、建造物やチェストは時間の経過を回避する(すべ)がない。

 千雨の物理法則を逸脱した加工技術は鍛冶や錬金術、付呪などには発揮されるが、それ以外の分野は常識の範囲内に収まっているのだ。

 

「それじゃ、また後で学校でな」

「はい、それでは失礼します」

 

 千雨を監視する役目を律儀にこなすつもりがなくなったのか、最近のエヴァンジェリンは学校に来ても屋上でサボっていることが多い。

 登校地獄の呪いって登校さえしてたら授業態度は関係ないのかと思いながら、千雨は軽く手を振って茶々丸に別れを告げるとその場を後にした。

 

 

 

 寮に戻った千雨は一旦自室で制服に着替えると、明日菜と木乃香の部屋に向かった。

 連日というわけではないが、千雨は木乃香と共に弁当を作って学校に持っていくことが多い。

 

 千雨が通っている中学校は二千人以上の生徒が在籍しているマンモス校である。

 当然ながら学食は長蛇の列ができる上、購買部でパンや弁当を買うのも一苦労だ。

 

 もちろん千雨ほどの隠密術の達人なら、人の合間を縫って誰にも気が付かれずに列の順番を無視することは簡単だ。

 しかし千雨は、わざわざ自分から嫌いな人混みに飛び込んでまで昼食を買いに行こうとは思えなかった。

 

 自炊するにも夕食はザジや図書館探検部のメンバーと食堂で食べることが多く、朝食は簡単に済ませているので機会がない。

 そもそも千雨が覚えている【料理】のレパートリーはタムリエル大陸の物に偏っているため、日本の一般的な料理は簡単な物しか作れない。

 

 一時期はコンビニかスーパーの弁当で済ませようとしていたのだが、木乃香が明日菜と刹那の弁当を作るついでに用意しようかと提案したのだ。

 教室では千雨の右隣に座っている丸顔の少女──四葉五月(よつばさつき)には劣るが、木乃香も十分に料理上手である。

 

 木乃香は大した手間じゃないと言っていたが、弁当箱に詰める作業などで負担がかかると思った千雨は自主的に料理の手伝いをしているのだ。

 

「千雨ちゃん、あっという間に上達したなー」

「つっても、ちょっとしたアレンジ以外はレシピ通りにしか作れねーし、せめて残り物の材料で料理できるようにならねーとな」

 

 千雨は包丁さばきや手際はいいのだが、自分で食材の組み合わせを考えられるほどには手慣れていない。

 暗殺者ギルド(闇の一党)の任務で帝国の皇帝を毒殺するために成り代わった【美食家】と呼ばれていた料理人は偉大だったんだなと千雨は実感したのだった。

 

 ちなみに千雨は闇の一党に所属している吸血鬼の少女(バベット)から懇願(こんがん)されたのに加えて、関係ない人物の殺しに乗り気ではなかったので、美食家は殺さずに監禁して全てが終わった後は解放している。

 毒を仕込んだ料理を食べたのは皇帝本人ではなく影武者だったため、美食家は皇帝の専属料理人の任を解かれているが処刑されずに現在も料理人として活動しているようだ。

 

「せっちゃんも料理手伝(てつど)うてみる?」

「いえ、私が手伝ったらお嬢様と千雨さんのお邪魔になるので……」

「もしかして、緊張しすぎてまな板を包丁で真っ二つにしたのを気にしてんのか?」

「あれはびっくりしたなぁ」

「あ、あのときは、つい手が滑って神鳴流(しんめいりゅう)が出てしまったんです」

「神鳴流って手が滑って出るもんなのか……」

 

 幸いにも木製のまな板を両断しただけで天板までは傷つけなかったが、遅れてやってきた千雨が真っ二つになったまな板を持って泣きそうな顔で木乃香に謝り倒している刹那を見たときは困惑してしまった。

 それ以降、刹那は木乃香や千雨が料理している様子を遠目に眺めている時間が増えて、手伝うときも洗い物や切り分けた料理を弁当箱に詰めるなどの包丁を使わない作業しか行っていない。

 

「ウチは気にしとらんから一緒に料理しよーやー」

「どこぞのゴリラみたいに食材を握りつぶさないだけマシだろ」

「千雨ちゃーん? それは誰のことを言ってるのかしらねー?」

 

 間が悪いのか千雨がゴリラの話題を出した瞬間、玄関の扉が開き新聞配達のアルバイトを終えた明日菜が帰ってきてしまった。

 バッチリと千雨の発言を聞いていた明日菜は微笑みながら柔らかな口調で喋っているものの目が笑っていない。

 

「力入れすぎて大根を粉々にした奴がゴリラじゃなかったら誰がゴリラになるんだよ」

「うっ……ほ、ほら、千雨ちゃんだってリンゴぐらい潰せるでしょ?」

「勝手に人を仲間にしようとすんな」

 

 つい先日、タカミチのために弁当を作りたいと申し出て木乃香に料理を教わっていた際、明日菜は力を入れすぎて大根を潰してしまっている。

 千雨は日常的に握力も鍛えているが、運動部に入っておらずトレーニングもしていないのに異様に高い明日菜の身体能力には驚かされてばかりだ。

 

 なお、リンゴは握りつぶすには最低でも60キログラム程度の握力が必要とされているので、千雨なら『気』を使わずとも簡単に砕けるだろう。

 それはそれとして同類(ゴリラ)扱いされるのは嫌なので、千雨は明日菜の質問を冷たくあしらった。

 

 その後、木乃香の押しに負けた刹那と先日のリベンジに明日菜がやってきてキッチンが手狭になったので、千雨はリビングに撤退して完成した料理を弁当箱に詰める作業を始めた。

 キッチンから聞こえる喧騒(けんそう)に耳を傾けながら、千雨は平穏な日常を噛みしめるのだった。

 

 

 

 何事もなく授業を終えた千雨は放課後に木乃香と夕映、のどか、そして新しい図書館探検部のメンバーを連れて図書館島に向かっていた。

 

「ウチ、せっちゃんと一緒に図書館島に潜れるなんて夢にも思わんかったなー」

「私としては不純な動機で入部してしまって申し訳ないです……本当に、このかお嬢様が潜らない日は参加しないという条件で良かったのですか?」

「ハルナとのどかも構わないって言ってたんだし遠慮しなくていいだろ。ハルナなんて締め切りが近づいたら一切参加しなくなるしな」

「千雨さんだけ逃げたのは忘れてないですよ」

「……私には理解できない世界ですー」

「悪いな、こっちも色々と部活を掛け持ちしてて忙しかったんだよ」

 

 恨めしげに睨んでくる夕映と遠い目をしているのどかには悪かったと思っているが、千雨が忙しかったのは本当である。

 

 ハルナは締め切りが近づかないと筆が乗らない性格なので、月の後半は昼食も食べずに教室でGペンを走らせている。

 のどかと夕映も同室なので、先月末は締め切りを落としそうになったハルナに簡単な作業を手伝わされていた。

 

 千雨はお人好しだが放課後は隙間なく予定を詰め込んでいたので、ハルナに呼び止められる前にさっさと逃げていたのだ。

 

 幸いにも二人は適性がなかったのか、腐海(BL)には堕ちなかったようだ。

 千雨はボーイズラブ(BL)というジャンルを毛嫌いしているわけではないが、好んでいるわけでもないので出来れば関わりたくなかった。

 

 この1か月で図書館島の地下1階を制覇した千雨たちは、今週から地下2階に足を伸ばしている。

 今年の春に入った新入部員の中ではペースが一番速いようで、先月末には図書館探検部の定例会で表彰された。

 

 対抗意識を燃やして無謀な探索をされては困るので賞品は出なかったが、順調に行けば来年には地下4階に潜る許可が降りるかもしれないと顧問の教師から伝えられている。

 功名心(こうみょうしん)に駆られて急ごうとする人物はいないので、千雨たちは今後もじっくりと自分たちのペースで探索を続けるだろう。

 

 

 

 2時間ほどかけて図書館島の地下を探索した千雨たちは寮に戻ると、木乃香と刹那を除いた面々で食堂に集まって夕食を食べていた。

 ハルナも原稿が一段落ついたのか部屋から出てきて、ちゃっかりと会話に混ざっている。

 

 この顔ぶれに加えて、週に2~3回の割合でザジがひっそりと千雨の隣に座っていることもある。

 夕食を食べた後は曲芸手品部のサーカス団に帰っているため、寮の部屋は(ほとん)ど使っていない。

 友人と呼ぶには希薄な関係かもしれないが、千雨はこういう距離感も悪くないと思っている。

 

 夕食を終えた千雨は大浴場で体を洗った後、寮の部屋に戻って『ちうのホームページ』の更新作業に取り掛かった。

 拠点が完成していないため、現在は家具などの木工品の作成過程を写真で撮って掲載している。

 

 土木建築研究会のツテで木工技術研究会にも参加している千雨は、研究室の作業スペースを借りてスカイリム地方独自の技術を生かした木工製品を作って売っている。

 評判は上々で宝石の売却代金と比べると微々たるものだが千雨の収入源の一部となっている。

 

 着実にアクセス数は増えているが、オタク系コンテンツより日曜大工の解説のほうが伸びているという不思議な状況になっていた。

 家具作成の個人依頼まで来ているが、さすがに作業スペースで『過程の省略』を使うわけにはいかないので、家を建てるまでは保留している。

 

 オフラインの作業には『過程の省略』を利用できるので一瞬でサイトの更新を終わらせた千雨は、インベントリから分厚いハードカバーの日記帳を取り出すと今日一日の出来事を記し始めた。

 ホームページでも日記は書いているが、個人を特定されないようにある程度ぼかした内容しか残していない。

 

 千雨が日記をつけているのは相棒の傭兵(テルドリン・セロ)から勧められたからだ。

 最初は自分の考えを纏めるために書かされているのかと千雨は思っていた。

 

 しかし本当の理由は別にある。セロは千雨が『アカトシュの加護(███&███)』を使いすぎて、()()()()()()()()()()分からなくならないように日記という形で過去の記録をつけさせたのだ。

 今の所、千雨は記憶が混濁するほどに『アカトシュの加護(███&███)』を多用した経験は片手で数えられる程度しかないが、保険を兼ねて今でも続けている。

 

 日記を書き終えた千雨は日が変わる直前まで瞑想をして、言葉(スゥーム)の意味を心に満たし、より深く言葉(スゥーム)を理解するための修行を始めた。

 日が変わる直前に瞑想を終えた千雨は【秘密の召使い】を呼び出してセロからの手紙を受け取り、代わりにこちらの状況を記した手紙を預けた。

 

 連絡が途絶えたり緊急事態が発生したときは()()()()()()つもりでいるが、手紙には現時点ではエルフの組織(サルモール)に目立った動きもなく平穏そのものだと書かれていた。

 千雨は自分と並び立つ実力者であるセロの心配はしていないが、自分がいない間に顔なじみたちに何かあったら夢見が悪いとは思っている。

 

 手紙の内容に安心した千雨がベッドに横になって目を閉じると一瞬で眠りに落ちた。

 敵意を持った人物が探知範囲内に現れないかぎり、一度(ひとたび)眠った千雨はあらかじめ決めていた時間まで目を覚まさないだろう。




幻の美食家生存ルート用語解説

【量子コンピューター】
従来のコンピューターとは違い、重ね合わせや量子もつれといった量子力学的な現象を(もち)いて計算するコンピューター。
2022年時点では一概に従来の方式より優れているというわけではないが、この世界では既に実用化に成功しているようだ。

【DNAストレージ】
デジタルデータを圧縮してDNAコードに変換した物を元に物理的なデオキシリボ核酸(DNA)を生成することで膨大な量のデータを保存する技術。
理論上は1平方インチあたり1エクサバイト(100万テラバイト)ものデータを保存できるとされている。
2022年時点では実用化の目処はついていない。DNAに直接書き込む技術ではないが、麻帆良の技術はどうなっているんだ。

【バイオコンピューター】
人間の脳の動きを半導体や生体分子で作成した生体素子(バイオチップ)で再現したコンピューターのこと。
SF映画のように培養液に脳味噌を浮かべた物ではないぞ。

【料理】
寒冷地のためか、スカイリム地方はスープなどの汁物や焼いただけの肉料理が多い。
Googlepox氏のMOD『Google's ESO Provisioning』によってESOで登場する料理も追加されている。
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