36
タイムとは才能の別名と冷たく嘯く。そうかもしれない。だが、タイムには挫折(試走)がひっそりと寄り添うことを知るがいい。なるほど、忠告のつもりか? フッ、騙されはしない。走者は走者を知る。出せ! 出して見せろ!! タイム(最速)の全てを!! もう一度言う。タイムが全てだ。結果の全てが其処にある。完走確率250億分の1(大げさ)、神走者の名に値するものはそれ程に少ない…………そんな感じのRTAはーじめーるよー!
「続いて第2功! 三大天廉頗の四天王、稀代の軍師玄峰の首をあげ、更にもう一人豪将介子坊を撃退せしめた功績を持って爵位昇級、さらに所有している領土周辺の土地と権利を与え、金2千と宝物十点を与える! そして……玲鵬隊 玲守を4千人将とする!!」
「玲鵬隊 玲守。大儀であった」
「ありがたく……(チッ)」
はい、そんな感じで論功行賞でしたー。……チッ、分かっていたとはいえ4千人将どまりでしたね。まぁ仕方ありません。本来千人将単位の昇格だけでも大きな戦で大手柄を立てでもしなければ本編主人公のあったかホモでさえ数年がかりでした。これも全てあのハートの伝道師とそこいらの武神より強かった爺(フ〇ム産)が悪いんや……
「おぉ! あの若さで4千人将と!」
「趙との戦でも行賞を受け取っておったな……ふつくしい……」
「おい、気のせいか? 今舌打ちしなかったか……?」
あーイライラするぜぇ……思う通りにチャートが進まねぇのはよぉ(涙目)。とりあえずこの苛つきを原作と違い第3功になったなんか黒塗りの高級車に乗っていそうなTNOK…じゃなくてお頭へぶつけましょう。擦れ違いざまに全力で見下しつつドヤリます。……露骨に目を逸らされました、シャイボーイだね(断言)
そんな訳で論功行賞後の宴も適当に過ごして終わりです。ここでは何か話しかけられそうになったらダッシュで移動して話を中断させ会話を発生させないようにしましょう。RTAの基本ですね。特にイベントを起こしたくない時に必須です。まぁ様々なゲームで良く見られる光景ですよね(オープンワールド感)
「失礼、此度の英雄である玲す…」
小技ですが話中カットする際は都の粋な料理で調子を上げる為、両手に出来るだけ料理を確保して食べながら移動します。なんか今この国のトップオブトップ(お飾り)がいた気がしたけど関係ありません。もうこのRTAは最終盤です。人間関係の好感度とか将来とかどうでもいいです(投槍)
「おい、てめぇオレ達のお頭になんか文句でもあんのか? あぁ!?」
今まで人に迷惑をかけた覚えなぞありませんがこのように好感度の問題で無理矢理絡んでくる輩もいます。こういう時は筋力値を使った判定で良いです。無理矢理逃げましょう(迫真)
はい、筋力値の問題で勝利しました。一発です、やったぜ。
「雷土があっさり手放すの初めてみたな」
「意外と少女には紳士なのですか?」
「アホ言え。掴んだ腕が折られるかと思ったぜ……」
今回の戦の経験値ですが、とりあえずいつもみたいに筋力重視と魅力値で振りました。この先はもう5千人将のチャート修正以外は函谷関が待っているのでね。あとはまぁ……不本意とはいえ伝説級の経験値が入ったのでレズちゃんの頭を改善します。これはチャート修正に必要って思うので…なんとなく……うん、後で説明します。
そんな訳で前回の戦のリザルトを確認しつつ経験値の振り分け、アイテムの整理や清算の準備を行いながら宴を華麗に誰とも喋らず過ごします。傍から見たら無心で料理を食べながら、話しかけられると全力で逃げ、カクカク動いて止まってを繰り返してますが仕様です、問題ありません。この世界の人間も多分気にしてないでしょう(適当)
【おーばーず……おーばーず……】
「はっはっは。あの御仁、気になっていたのだが今は話しかけない方が良いみたいだな」
「丞相にまでなんたる無体を……」
あ、でもお祝いに来てくれたこういう時マメで気が利くダンディーな御髭のおじ様で軍長とかいうカッコいい役職を持つ干央軍長(となぜか来た録鳴未)だけは対応しました(祝い品目的)。けど祝い品持っててもノンケの方は話が長いのでカット推奨です(ペッ)。以上、RTAで最後の宴終了です。
そんなこんなで翌日、オート帰還もできますがここでは都に留まります。そうです、買い物です。多分これがこのRTA最後の都となるでしょう。それではいつも通りスライディング移動と戒めの十字架跳び(夏色ハイスクル感)を行いながらやることをやってしまいましょう。
えーまず質屋ですね。宝物ガチャを開きましょう……あ、今回は全部金目のものですね。じゃあ全部金に換えます(キャッシュ感)。
論功で4千人将止まりだったのならまた賄賂を贈ればよいのでは?と思う方もいるでしょう。しかしプレイ済みの方なら分かると思いますがこのゲーム、千人将からは昇級に必要な功績や賄賂が指数関数的に上がっていきます。4千人将から5千人将となると体感ですが今回の宝物全ぶっ込みと有り金の殆どが必要なレベルですね。それだと函谷関に重大な支障が出て頭が死ぬのでやりません(白目)
……はい、換金終わりました。前回の戦で手に入れた余計な雑貨もまとめて売ります。……うわぁ、財布がパンパン(興奮)。やっぱ略奪はやめらんねぇわ。これやる為に僕は戦やってます(闇落ち)
【環銭どばー】
えーそれではキャッシュが沢山手に入ったのでまた武具や軍馬を仕入れに行きます。5千人将になるのはこの後の修正プレイで確定として、函谷関戦では自らの部隊の数は最低でも1500必要です。ただ1500は最低限の数字なのでやはり安定をとるには2000は欲しいですね。レズちゃんの魅力値が高く、前回の戦の後生き残りがついてきたりと兵の募集に問題がないので多分達成はできます。なのでその数を目安にして補給を進めましょう。
あ、武具は地元の鍛冶屋を酷使して安くできる所は節約しましょうね。
ついでに今回は武具屋によります。流石は本ゲーム最大クラスの都の武具屋。干将(笑)・莫邪(失笑)になる程の武具も普通に置いてます(買えるとは言ってない)
えーここで忘れていましたが最高品質の布やなんやらを使って装備品の作成を頼みましょう。後はアレですね、狼牙棒。正直今のトラペゾ八陵錘だけでも戦えなくもないんですが、武器破壊は乱数なのでふとした瞬間にガバが来たりします。なので念には念をいれて作っておきましょう(チキンハート)
という訳で前回どこぞの伝説級からドロップした素材「折れた龍旗」を使って武具作成します。
【狼牙棒・龍を手に入れたぞ】
見た目あの爺が使っていた旗に無理矢理鉄塊を張り付けた感じの微妙な見た目の派生武器ですが、値段以上に性能は良いです。なんなら頑張れば終盤まで使えるんじゃないかな? 一応これでも値段は前買った狼牙棒に毛が生えた位です(白目)
これ以上の派生が無い武器なので成長性や拡張性がない代わりに当社比では安いです(モン〇ン感)。こういうのって何処に需要があるのかと思ってたのですが多分こういうRTAとか向けなんですね! わたし、感動しました(違う)
そんなこんなでついでに布の服なんかのインナーもグレードアップしました。防御力の上がり幅以上に魅力度に補正がかかります。なんか心なしかレズちゃんも芋の村からやってきた芋娘からメイクイーン産のポテト娘になった気がしますね。
んじゃ次はお馬さん……んん!?
「なんだ、嬢ちゃん。コイツが気になるのかい?」
ハゲ頭を光らせながら(アトリエ感)武器屋のオヤジが特別割引品を見せてきました。一定以上の買い物をすると出すことのある買い物イベですね。今回は……
「世宗式44口径6連弩 南楚の新型だ。射程が長く静音に優れ、使う者が使えば弾も見えねぇ。素材に異国の木材と職人の技術を使ってるから殆ど出回ってねぇんだぜ。……どうだい?」
サウスブルーのニューモデルですね。買います、のび太に持たせます。
「まいど」
ええもん買うたわ! 高い買い物ですがのび太にはこれでバシバシスナイプを決めてもらいましょう。余裕があれば小隊長クラスの者には割と強化した武器や防具を与えるのはありです。お土産として買っていきましょう。カレクック?散りゆく友に未練などないね(逸らし目)
最後に馬ですが騎兵隊は前回の通り500を維持できれば問題ありません。ここで足りない分を買い足しておきますが、イケメンの部隊は練度が高い為少しお高いものを買います。財布に余裕があるのでここは安定をとって600にしておきました。
最後に馬房の拡張や兵舎の拡張などの発注を済ませたら帰ります。これで都も見納めですね。次に来るときは戦が終わり、将軍を拝した時でしょう(断言)
それではその時まで、おさらば!!
【おさらば!】
画面暗転したら帰ってきました我が領地! 久々だな(意味深)! 元気だったかホモ野郎共(歓喜)!!
「隊長~邪慰安が僕と部下たちをイジメるよぉ。助けてぇ」
「ご、誤解ですぜ。この新しい兵舎のいい部屋は精鋭部隊であるオレ達が使うんだ。分かってくれるな心の友よ」
「悪いな野尾田。この営舎はお前の分だけないんだ」
相変わらずだな! ポリガマスも程ほどにな!! あ、のび太はお土産に弩あるで!これで元気だすんやで! ガハハハハ!!
「野尾…お前のものは俺のも……」
【やめーや】
「新しく入隊した便器男『ベンキマン』です」
「茶袋男『ティーパックマン』です」
「加奈陀男『カナディアンマン』だ」
ガッハッハ! 助けに来てくれたけどお前等かい! コレ絶対新章の導入のかませ扱いで死ぬわって感じの奴等だな(具体的)
【玲守です。励んで下さい】
『ハッ!!』
そんな感じで前回の戦以降で加入した新兵と新小隊長達との挨拶をかわしながら内政を進めていきます。
「うむ、無事帰還してなによりよ。戦での活躍、ここにまで及んでおりますぞ。それで玲守殿、此度はどうなさりますか?」
爺! 久々じゃねぇかコノヤロウ!! お前開き直って酒蔵拡張しやがったな! 畜生俺も呑み切りしたかった!!
「ゴ、ゴホン! 最初の酒を卸しましたが中々好評でしたぞ。そ、それで次はどうなさいますか?」
まずは超兄貴のそれぞれの店舗の拡張ですね、ほらよ戦から連れて来たキャスト(奴隷)や、勿論男やで。オウ、ヨツンヴァインになるんだよ! ワンワン鳴いてみろよこの野郎!!(興奮)
「そんなことでいいんですか?」
「ワン(迫真)ワン(迫真)」
「ぎもちいい……」
す、すげぇ人材が来たぜ……これは我が超兄貴のアイドルですね間違いない(確信)
さて、次ですが恐らく大きな施策はこれが最後となるでしょう。大手アイドル事務所と化した我が領地に来る人を増やす為、街道の整備と拡張に手を入れます。流通は全ての基本。大がかりで金も飛んでいくので簡単に手をかけられませんが、ここでは大金はたいて行いましょう。
「承知した。加えて街道の治安維持に練兵を兼ねて派遣、雇った人夫に安心して金を落として貰おうということですな!」
そういうことですわ! 雇った人間に払った金がホモを通じて懐に戻る! これぞホモによるホモの円環の理……やっぱホモは凄いんだなぁと私は思いました(感想)
「ではその為に必要な宿や飲食店もこちらで用意させましょう。街道の整備が終わればそのまま観光に使えるとよいですな」
インバウンドに必要なのは治安って偉い人が言ってた。あと大人な施設。間違いない(確信)
函谷関まであと1年ちょい。近場の街道を整備してぇ……まぁ計画はこんな感じですね。ここまでが私の施策チャートです。ここからの収穫は全て兵の人数を増やしたり、武具を融通して戦力を増大させましょう。この収支と支出バランスが多分本RTAでは最適だと思います(振りではない)
「玲守どうした」
【お土産!】
「やったー北方の酒だ! 流石玲守、大好き!!」
【ええんやで】
「わ、私達にも……わぁ、立派な鎧だわいな!? 有難うございます! ね、黒ちゃん」
「ン!」
【ええんやで】
あとはイケメンたちにお土産配って機嫌をとります。一定以上の小隊長や幹部たちは厚遇してあげましょう。函谷関は長期戦ですので脱落されては困ります。そもそも支給されたデフォの鎧だけとか酷いと思いません? カレクック? 知らんがな(すっとぼけ)
そんな感じで最後の施策は終わりですね。これでこの町のハッテン場の発展(激ウマギャグ)も終わりです。あ、それと経験値振りも終わって、レズちゃんの成長もこれ以降はないと思います。なので今回は最後にレズちゃんの装備とステータスを表示して終わります。まぁこのゲームをプレイしていない人の為に私なりの注釈を入れながら説明したいと思います。ではでは
武具
狼牙棒・龍
八陵錘(改良済)
最高級の戦衣
上級将校の鎧一式
鍋の蓋
あ、鍋の蓋捨て忘れとったわ。まぁええやろメガトンコインじゃあるまいし(本当)。次にステです。
筋力 ドンドコドン汗明より少し下
武力 主人公たちと同じくらい
知力 尾平と同じくらい
魅力 準大将軍級
うーん。筋力・武力は想定通りですがはまさかここまで魅力値が上がるとは……(困惑)
まぁ武神や伝説級なんかがありましたからね。敵のアルテリオス算を抜ける筋力と雑魚狩りに便利な程度の技や武力があれば十分でしたが、魅力値の暴力のお陰でこれまでのどの試走より兵力が充実してます。なんだかんだで圧倒的にタイムも最速です。勝ったな。ガハハハハハハ……
はい、そんな訳で次回は今まで目を逸らしてきた5千人将になりにちょっとしたプランBを実施します。ここまでで稼いだタイムの余裕を使い如何にロスを最小限にできるかですね……
それじゃあ皆さんバイバイキン!
「顔を上げよ、廉頗」
魏国。王とその大勢の臣下の前で頭を地に着ける。三大天という看板など関係ない。それだけのことをしてしまったのだから。
「許されざる大失態。魏王の命とあれば今ここでこの首落とすことにも文句はない」
「何を言う……そちが魏の為に粉骨砕身してくれたこと、儂には分かっている。分かっているとも廉頗」
「ふ、ふざけるな! 貴様あれだけの大言壮語を吐いておきながら!!」
「元から勝つ気が無かったのではないか!?」
「何が廉頗四天王だ!役立たずどもめ!! 貴様の部下毎まとめて首を晒してくれる!」
王の言葉に露骨に不満を示す臣下たち。そうであろうとも、それが当然の反応だ。彼等に非はない。不満など元からあっただろう。散々自国の兵を殺し尽くした相手でも、それでも受け入れたのは護国の為だ。誰もが不満を持っていただろう。それでも託してくれた王と、彼等に応えたかった。
先の言葉、心の内に一切の偽りはなかった。しかしせめて部下たちの命だけは救いたい。彼等を黙らせ、その上で示しをつけるために帯剣してきた。この場で自刎するために。
「……それでは示しがつかぬでしょう。この首ここで捧げましょう。それを持って由として頂きたい。部下たちに非はない。魏兵たちも良く戦ってくれた」
後から指示に従わなかったのでは等という風聞を封じ込めるため、魏兵に責を負わせない様に釘を刺す。そして自分の部下にも同じく、責は将である廉頗だけが負うように。
王の側近であろう若い軍師を始め、そのことに気付いた数人を確認すると剣を抜いて首に当てる。これで後は大丈夫であろう。
「やめよ! ……やめよ廉頗。それに皆も、儂の言葉を聞け!」
この王らしからぬ覇気が場に満ちた。
「ここにいる者は儂の父の時から仕える者も多いであろう。その皆に聞きたい。儂の叔父である信陵君を追放した後、後悔した者はどれだけいた?」
信陵君。我が祖国である趙だけでなく、魏、楚……虎狼の国であった秦国を止め、それ以外のあらゆる国を救った時代の英雄。共に戦ったこともある。あの男こそ一国に収まりきれない、中華を股にかけた本物の英雄だった。
「あの時、信陵君を信じ秦国を滅ぼしていれば! そう考えなかったものはこの場におるか!?」
そして一国に収まらない英雄の末路はいつだって同じだ。その強大すぎる力を恐れた王による不信。……共感する処はあるが、王が実兄な分、あ奴はまだマシな方だったろう。歴史を見れば王もギリギリまでよく耐えた方だ。出来れば秦を滅ぼすまで耐えて欲しかったが。
「儂は! 父と同じ愚を犯したくないのだ!! 皆もあの時代を見ていたならば分かるであろう!!」
王の言葉に押し黙る臣下たち。意外だった。この王にここまでの器があるとは。恩義だけで従ってきた自分の見る目の無さ。この年になって恥を感じた。
ここで首を落とすのはこの方に対する侮辱になる。そう感じた廉頗は剣を下げる。しかし鞘には納めない。まだそれには早い。ここからの展開に想像を超えた王の器に期待を持って待つ。
「しかし……ならばせめて追放を! このままでは民にも収まりがつきませぬ!」
「そうです! それに敗戦の将にはそれなりの処置が掟です!」
そうだそうだと声が続く。実際山陽はでかい。拠点として余りにも重大な地を落とした責をなかったことにはできまい。ここらが落し所か。
「ならぬ!! まだ分からぬのか! 廉頗が敗れたということは、秦にかの三大天以上の脅威が生まれたということだ! しかも山陽を狙ってくる程の昭王以上の野心を持った輩が!」
「し、昭王以上の…」
「まだ戦える力を魏が保てているのは廉頗のお陰だ! 魏兵たちは皆そう言っている! 余は魏王であるぞ! 知らぬと思ったか、侮るな!! この期に及んでその廉頗を放遂して、国が守れるのか!?」
思っていた以上の言葉だ。身に余る程の。
この王に仕えてみたかった、廉頗はそう感じた。恩義だけでない。心からの忠誠を誓いたかった。それができれば祖国への未練を断ち切り、例え趙が相手でも思う存分矛が振れただろう。あの小僧から聞いた、舞い戻った怪鳥の様に。
この無念の感情こそを良しとして、廉頗は剣を納めた。祖国を捨て、放浪した自分には十分すぎると満足して。
「……確かに、相手が白起ならば魏兵が帰ることなどできなかった」
「だ、だが我ら誇り高い魏兵ならば……」
「6大将軍のおらぬ秦国などには……」
魏王の覇気と言葉に小さくなる周囲の声。正しいのは魏王だ。秦の脅威に対し、国防の力を削ぐことは愚策だ。だがこれはそういう問題ではない。魏という国の面子と誇りの問題なのだ。それを一度は自分を受け入れる為に捻じ曲げた。二度この王にそれをさせるのは心苦しい。
王の面子を考え、自ら追放という形をとる。それを口にするつもりだった。
「それに……敗戦の責任はもうとられた。白亀西の手によって」
その言葉に廉頗も固まった。
一度は人質になったが和睦によって直ぐに解放された総大将 白亀西。総大将であるにも関わらず人前で涙を流しながら地面に頭をつけ、自らに詫びるあの男を、廉頗は苦笑しながらも嫌いではなかった。総大将向けではないが、実に魏の将らしい、筋がある生真面目な男であると。
王が懐から書を取り出す。端が黒ずんでいる。乾いた血の色だ。
『此度の敗戦、廉頗将軍及びその配下に一切の責はなし。全て自分の不甲斐なさによるものである。廉頗将軍とその配下は命を賭して魏国の為に戦い、忠誠を示してくれた。これよりの魏の苦境にその力は必須であるとこの首を持って示す』
都に着き次第、書をしたためて自刎した。そう明かされた。
「馬鹿者め…生真面目が過ぎる……」
静まり返る中、廉頗が漏らす。他には誰も口を開かなかった。戦が分からぬ文官でも、国を守るために戦った男が残した面子を汚すことはできなかった。
「廉頗! これより貴様とその配下はその全てを魏に尽くして貰う! その血の一滴まで戦場で流せ! よいか!?」
「ハッ!!」
それは正しく王と忠臣の姿であり、この瞬間廉頗が真実魏の将となったことを誰もが知った。魏国は山陽を失う代わりにかつての黄金の魂を取り戻した怪物を手に入れたのだ。そして臣下たちはその男の姿を見ることでかつての狂乱の時代を思い出し、再び訪れる秦の脅威を前に一丸となるのであった。
「フッ。まさかこちらの王が中々の器量の持ち主だったとは。これならばあいつ等を解き放つあの策、受け入れてもらえるかもしれないな」
目の前の光景を前にほくそ笑む若い男。廉頗が先程目に留めた男は笑う。
「三大天とその部下を魏が手に入れた。それでもこれからの主役は未来のある俺だ。それは間違いない」
一先ず、これからの為に舞い戻った三大天に酒を持って伺うとしよう。魏に光が射すのを感じた男の足取りは軽かった。新時代の英雄と呼ぶべき力を持つ若者を歓迎した廉頗に酔い潰されるまでは。