「キングダム~烈人伝~」最速将軍RTA   作:螺鈿

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 函谷関防衛戦当日……やってきました咸陽。何度目だ咸陽。

 レズちゃん隊は全軍を率いての行軍です。中央から主要な軍として強制招集を受けて軍編制を終えると暗転スキップで移動できます。やったぜ。

 

【はえー】

「すっごい」

「大きい」

「だわさ」

 

 巨大な関門、函谷関を見上げて皆でボケーっとしてるムービーが終わると強制イベントで今回の上官がやって来ます。

 

 一応捕捉しておくと今回の戦では1番は麃公、次点で蒙武、騰の軍に入るのがベストです。基本ランダムですが事前に伝手があると希望が叶いやすいです。まぁ正直蒙驚などの壁の上部隊じゃなきゃどこでも良いです。なので本来ノンケの伝手を使うつもりだったのですが、ノンケはケツの穴が小さいので前回でオコでしたね。なので多分友好度が高そうな騰の軍に希望を出していたのですが……

 

「コッコッコ」

 

【コケコッコ】

 

 やったぜ! 迎えに来てくれたのは天下の大将軍である騰。やっぱノンケとは違うな(尊敬の眼差し)

 

「久しぶりだな。随分出世しているようでなによりだ」

 

【ありがとうございます】

 

「今回は私の軍に入ってもらう。頼りにしている」

 

 上官と所属する軍が決まったことでチャート選びが終わりました。この後はそのまま軍議パートへ移行します。とはいっても大まかな動きは強制で決められているので、始まった軍議をサラッと流している間にチャートの説明を行っていきたいと思います。

 

 基本的に函谷関は前半、中盤、終盤の3パートの見所で構成されていると思って構いません。前半は初日、または初日以降数日の激戦。中盤は前半が終わって消耗戦からの本命の激戦日までの間。終盤はそれ以降の間道攻めです。

 戦の流れやプレイヤーの動き次第で幾らでも展開が変わりますが、基本的にはこの大まかな流れは変わらないので3つの激戦を軸にチャートを組みます。この3つのチャンスの中で各国の中枢の大将軍の首を一つ、もしくは幹部級の将軍を4~5個取ることができれば将軍への昇格は間違いなしといっていいでしょう。これがチャート目標です。

 

 しかしながら首を取ればはい終わりという訳ではなく、しっかりと戦の決着まで操作させられる上、場合によっては普通に大王が戦死したり咸陽が落とされたりするので無駄な行動や展開を控え、かつ臨んだ戦況に動かすプレイが必要です。……まぁ別に大王が死のうが咸陽が落とされようが秦国の勝利という観点でみればプレイ上問題はないんですが(暗い目)

 

 まま、とりあえず走者の大一番であり過去最大の難所であることには間違いありません。ケツの穴締めて参りましょう(気合を入れるという意)

 

「カクカク」

「シカジカ」

 

【んまぁ…んまぁ…んにゃぴ】

 

 お、ボタン連打してたら軍議が終わりそうですね。どうせ騰軍は蒙武の露払いで楚の第1軍と交戦というのは確定なので適当にハイハイ言っとけばいいです(適当)

 

「それと玲守5千人将」

 

【んまぁ……ハハッ!】

 

「不足している1500の兵は精兵を送っておいてやる。その分の活躍は期待しているぞ」

 

【お任せ下さい!】

 

「話を聞いてない故、勝手に場所を決めさせてもらったが構わないな?」

 

【ア、ハイ】

 

 これはラッキーですね。補充分の徴収兵1500が騰の融通で精兵化しました。多分好感度の問題ですかね。やっぱりノンケを選ばないで良かった、私の判断は正しかったんだな、柔軟な判断による幸運……まぁた最速に近づいてしまいましたよ(HM特有の急なテンション)

 あ、あと配置場所は何処でも良いです。何処でもやることは変わらないので。

 

「それでは各自持ち場につけ! 健闘を祈る」

 

『ハハッ!』

 

 

 

 そんな感じで合戦です。なんか目の前ではドンドコ太鼓の音が響きながら楚軍が戦闘準備で展開していますが無視で良いです。その間にレズちゃんも演説を行い……なんだ貴様は!(驚愕)

 

「やぁ、玲守ちゃん」

 

【蒙恬様】

 

「いきなり亡国の危機か。大変な戦になってしまったね」

 

【そうですね】

 

「……うん。玲守ちゃんが色々考えた結果の行動なのは分かるし俺も立場があるから、あぁせざるは得なかったけど……俺は今でも君と戦友のつもりだし困ったら個人的にでも助けたいと思っているよ」

 

【ありがとうございます。本当にあれだけお世話になっていたのに申し訳ありません】

 

「フフッ。実際驚いたけどね、俺はまだ君と縁が切れた覚えはないんだよ。君はどうかな?」

 

【蒙恬様は恩人です。天の旅が終わった後に恩を返す機会があればそうしたいと思っています】

 

「そうだね……この戦いに勝ってまた一緒に食事でもしようね」

 

【はい】

 

 まぁーたノンケか。これだから嫌なんですよ大した中身のない話をするノンケってやつは。まぁね、どうせコイツはこの後パパパッとイって、終わりなのでこの様に適当に相手してあげればいいです(適当)

 

 ノンケを見送るとまた小イベント。先程の様にこの大一番に関わりのあったキャラとの会話です。あ、次は賁ちゃまですね。……「フン」っていって去りました。やっぱパパが大好きな奴はよく分かってる。私は感動しました(好感度の問題で塩対応)

 

 その後は干央軍長と、共に先鋒を務める者として友好を深めました。やっぱ軍長と名がつく男はカッコいいな! あと録鳴未がなんか「ちゃんと軍学書読んだか?」と絡んできましたが、適当に某ディスカバリーのインタビューシリーズザ・フェチ3における女の子との感想を聞かれた偉大な先輩の様な反応を返しておきましょう(んにゃぴ感)

 

 

 

 それでは両軍共に展開が終わり、ドンドコドンの人が大気をビリビリさせている間に私も演説です! いつも通り皆の士気をガッバガバにさせちゃいましょう(魅力値の判定)

 

【大秦国の息子よ! 我が同胞よ! 諸君らの目の中に、恐れが見える。恐れは私とて同じだ】

 

 小ネタになりますが演説による判定は最初の一文で成否の判定が分かります。最初の声が通った際に兵士の顔がこちらを向けば成功です。あ、成功ですね。まぁどちらにせよ演説は始めたら最後までやらなければいけないのですが。

 

【いつの日か、天に見捨てられ、友を捨て、あらゆる絆が断たれる日がくるかもしれぬ。だが、今日ではない!】

 

 しかしこの決戦までにビックリするほど魅力値が上がりましたね。私が戦闘スキルに自信ニキなので経験値をひたすらブッ込みましたが、魅力値単体なら終盤でも通用するんじゃないんでしょうか。

 

【虎狼の日は来たり! 盾が砕かれ、秦国の時代が終わるかもしれぬ。だが、今日ではない!】

 

 成功は分かりましたが、この魅力値だと一体どれだけ士気が上がるんでしょうね。楽しみだぁ……

 

【今日こそが戦う日だ! 天と皆の大切に思うものすべてに賭けて、恐れず戦え! 我が強者ども!!】

 

『ウ、ウォオオオオオオオッ!!!!』

 

 ヒエッ。隊が覚醒しよった。しかも波及して騰の軍全体が士気向上しました。……たまげたなぁ(たまげた)

 そんな感じでドンドコおじさんの演説をガン無視して高まった(意味深)軍全体で突貫です。ほれいくどー!

 

【突撃ィーッ!!】

 

 

 さて始まりました合従軍戦第1幕。

 覚醒した我が軍は数の上では劣勢であるにも関わらず、まるで物理エンジンによる検証の様にオーク……じゃなかった敵軍の兵士を薙ぎ倒していきます。ここは私も先頭に立って味方を鼓舞しながらひたすらブンドドしましょう。

 

【えい、やぁ!】

 

「す、すごい勢いだ!」

「このまま敵軍全部蹴散らしちまうんじゃないか!?」

「いけぇ! 進めぇ!! このまま連中をぶっ潰すぞぉ!」

 

 あーいいですね。戦闘ボイスがデフォルトなので気が抜けますが実に良い感じです。少しの間こんな感じなのでその間にチャートの説明をしましょうね(下画面に詳細記載)

 

 函谷関では基本的に第1陣をスキッポ出来る蒙武軍が良いと素人さんは思いがちです。しかし若干の不安定要素こそありますが、上手くやれば騰軍の方がタァイムを短縮できます。

 理由としましては第1軍の将軍である臨武君を初日で取りきれない可能性が意外と多いからです。確率的には少数ですが、臨武君を討てなかった場合そのまま二日目以降に持ち越したりしてタァイムロスが激しくなるので、確実性をとるなら第1陣戦の時間をロスしてでも騰軍に参加するのはアリです。

 

 なので今回のチャートでは確実に臨武君を初日で、かつ迅速に始末しましょう。そのためにはまず戦場で暴れて目立つことが必要です。あ、そーれ(ブーンドドド)

 

【良い足回りだ。天の要求に素直に答えてくれる。……良い感じだぜ、えーだぶ!】

 

 なお今回はなぜか魏戦で獲得し、そのまま肥やしになっていた戦車が直っていたので使っています。いー感じに乗り回せていますね。よくある量産型ですが専用のパーツが沢山出ており扱いやすく、なによりミッドシップ型。私達走者の間ではミスターと呼ばれ愛されております(SC搭載感)

 

 一度スピードに乗った戦車は基本一撃で殺せない敵がいない限りまず失速して止まることはありません。つまり加速した状態で脳筋のレズちゃんが新型狼牙棒を振り回す限り、雑兵相手ならこの通りの戦果になる訳です。

 

【えい、やぁ!】

 

「止めろ! あの戦車を止めろぉおおお!!」

「来るな! 来るなぁああッ!」

「獄千人将を! 盾持ちを連れてこい!!」

 

 あー気持ちいいですね。なぜかそこそこ改造もされていたのでこの私を止めるものは誰もいません(ワンハンドステアリング)。

 さて、良い感じに敵のヘイトがこちらに集まり、ミスターの華やかさと恐怖、そしてひとそえのかわいらしさを演出できたのでここいらで旗を掲げます。

 

【旗を掲げろ! 天に届くように!!】

 

『オオッ!!!』

 

 旗を掲げると更に士気が有頂天。覚醒状態で周囲の敵がみるみる減っていきます。 

 騰軍プレイの良い所は翌日以降のダメコンもここでコントロールできるところですね。減らせる内に減らしといた方が有利に進むのは常識的に囚われれば当然です(有頂天すぎる語彙力)

 

 そんな感じで旗をうぽしていると飛んでくる矢。おいィ!? お前なに急に乱入してきてる訳? とんでもない奴だな(感心) 忍者か?

 

「チッ! 勘の良いヤツ!」

 

 予定通り来ましたね。白麗とかいうどう考えても可愛い女の子の名前なのに普通に男な詐欺なヤツです。しかも妙に美形にしようとするあたり個人的にも気に食いません。例えるならなで〇こという名で男だった時のような、私の可愛いローラ〇ーラの様な……いやローラはそれがいいんだ(確信)。え、分かり辛い? 話がそれてる? ……知りませんね(性癖)

 

【野尾田! 野尾田は何処だ!?】 

 

「はいィッ! ここに!」

 

【任せる。アイツを殺せ。私は他に回る】

 

「ファッ?!」

 

【邪慰安、拗央! よろしくッ!】

 

「了解、盾役は任しとけ野尾!」

「分かりました! 上手くやれますよ、隊長!」

 

 頼んだぞのび太(ビキィッ)。この為にお前をスナイパー特化にしたんだ。スペック的にも今の白麗と狙撃合戦が出来るはずだ(勝てるとは言ってない)。

 ……上手くかみ合いましたね、戦場を挟んでの狙撃合戦となりました。はい、この時点で勝ち確です。しかも隊の覚醒で恐らく過去最速のタイムでの狙撃合戦です。実は初日のタイムの一番のラスボスはこの卑怯な忍者……ではなく狙撃野郎なのでした。ですがのび太が勝とうが負けようが、こうなったらもう最速タァイムは頂きですね。ありがとうございました(ぺこり)

 

 そんなことをしていると横から歓声が。これはアレですね、イヤらしい(覗き見)

 

「偶にはいいだろ? 二人がかりというのも」

「鱗坊……」

 

 どうやら向こうの戦場で二人がかりの迫真!(見せられないよ!)が始まりました。まるで一転攻勢したNSOKに大して役に立たない白いのが参戦した時の様です。ヒエーッ、とても子供には見せられない光景ですね。流石R指定のあるゲーム。きっと王騎軍ではアレが良くある光景なんですね。やっぱ六大将軍っていうのはそっち方面にも寛容なんだなぁ(興奮)

 

 

 

 さて、二人掛りの一騎討ち(矛盾ではない)で余りにもイヤらしい雄叫びを上げて太っといものを突きあってる3人の声を聴きながら後は全体的に勝戦処理という名のダウンヒルを行っていきます(誤字ではない)。千人将などの目立った相手を通りざまに『ブォンッ』するかそのままひき逃げアタックをかましてれば圧勝のリザルトを貰えますね。まぁ完勝の感想(激ウマギャグ)やなぜ臨武君をそのまま獲りにいかないのかなどの解説は次回に持ち越すとして、しばし倍速して終戦したらバイバイキンです。はいヌーヌヌーヌヌヌヌヌヌー(エンディング曲)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 予想外の戦況だった。5千人隊だろうか。覚醒とも言うべき士気の下、突出して出てきた彼等に我が楚軍が蹴散らされ、その士気に煽られた後続も異様な迫力で崩れた我々に襲い掛かって来た。

 

「先頭のあの戦車が隊長だ! 止めろ! 止めればそれで終わりだろうがッ!!」

 

 数の有利があった故か。決して敵を侮っていたつもりはないが、それでも亡国の危機にある者の闘志を甘くみていたのだろう。先頭の戦車に乗った隊長らしき人物が凄まじい武力で楚軍を切り裂き、後ろの者達がその穴を広げていく。最初にあった数の有利は最初の突撃でほぼ同数、いやそれ以下になってしまったかもしれない。

 

「馬鹿野郎ッ! 怖気づくんじゃねぇ! 何度こんな戦いやってきたんだお前等ッ!?」

 

 先程から項翼が落ちていく味方の士気を止めようと奮戦しているがそれも難しいだろう。遠目から見てもあの隊長の力は尋常ではない。アレに対峙すれば恐怖に身を固めてしまうのも止むを得ないだろう。歴戦とも言える経歴を持つオレ達だが、アレの相手は俺か、翼か、もしくは臨武君でもない限り無理だ。

 

「畜生、好き勝手やりやがって!! 麗ッ! 俺が行く、援護を頼む!」

 

「待て! もう少しでこちらの射程に入る。そうしたらそこで食い止めてくれ!」

 

「分かったよ! ならそっちの騎兵貸せ! 項翼隊、白麗隊! いつものヤツ行くぞ、準備しろ!!」

 

 慣れた連携で準備をする。その間にも敵が止まる気配はなく、縦横無尽にこちらの陣を荒らしている。もう少し、もう少しで射程に入る。そうしたら一射で終わらせる。そして混乱した敵に翼が突撃して終わりだ。後は臨武君と共にこちらが敵を駆逐する。今は少しだけの耐える時。

 

 そうして自らの心を射撃の為に落ちつかせる。そして改めて射るべき敵を見る。

 凄まじい敵だ。所作から見て女だろうがとてもそうは思えない豪腕だ。目の前に立つ男が偉丈夫でもまるで意に介さず吹き飛ばしている。だが何よりも凄いのは……

 

【旗を掲げろ!】

 

「旗だ! 鵬の旗だ!! は、はは旗!旗!! はははははは旗たたた!!!」

「隊長に続け! 続いて殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ!!」

「天は病まない、天は笑わない天は天はてんはてんはてんてんてんはてんし」

 

 あの士気だ。まるで元からそういう生き物であるかのように、血走りすぎて真っ赤に光る赤い目で足を止めない兵士たち。戦術などではない。目の前を行く隊長に縋りつくように動くその群れは、致命傷を負ってもまるで意に介さずその命を全うしようとする。体に数十もの矢を喰らった先兵は嗤って剣を向けながら倒れ込み、片腕を失った兵士は敵兵を掴むと地に倒して自分毎騎馬の下敷きになる。挙句は旗を上げろと命じられた兵士は首を撥ねられても尚立って旗を上へと掲げていた。

 

 そんな異様な敵の士気に怯えを持った我々を敵の中でも精鋭とも言うべき者達が更に切り込んでいく。恐らく此処に来る前に一戦した連中だろう。只でさえ強敵だったのに、こんな状態でまともに相手できるはずがない。掲げた「鵬」の旗が更に敵軍全体に勢いを与えた。軍は最早半壊以上の状態だがまだ立て直せる。所詮相手の士気はあの隊長由来のものだ。オレの働きでアレを討てば、まだ十分にこちらにも勝ち目がある。

 

「麗ッ!」

 

「分かってる」

 

 体に圧し掛かる重圧を集中力に変え、弓を引く。ゆっくりと、焦らず、いつも通りの引きだ。最初の狙撃は隠密性が全てだ。戦場の強者は殺意を感じ取る。だからギリギリまで殺意を隠し、その全てを鏃に隠してその時が来るのをじっくりと待つ。

 

 知らず汗が垂れるが決して目は閉じない。集中力が限界に達したと感じた時、周囲から音が消える。目の前の景色には自分と的だけ。それでも戦場では一瞬の時間、引き延ばされた時間の中で慣れ親しんだ風景。なぜか相手は動く戦車そのままに武器を下ろして空を見上げている。討てる。そう確信した時、相手がこちらを振り向いた。

 

 目が合った。微笑んでいた。いつの間にか射っていた。

 

「チッ! 勘の良いヤツ!」

 

 風景が元に戻った時、相手はまだ動いていた。偶々目が向いた方向に俺を見つけたのか、一瞬でこちらの殺意を感じとったのか、瞬時に武器で矢を弾いた。

 

「行け! 翼!! 白麗隊、援護射用意!!」

 

「ハッハ! お前のケツ拭きはやってやるよ!!」

 

 あの射撃を避ける相手だ。もうまともには当たらないだろう。翼との乱戦の中での狙撃の機を待つ。そう考えて隊に指示を出すために後ろに振り向いた。

 

「援護射! 撃ッ!?」

 

 その瞬間、顔を横切る風。

 

「白麗様!!」

 

「ッ!? 大丈夫だ。敵にも狙撃手がいるな」

 

 射線から敵の場所を予想する。敵も同じく台車を連れていたので直ぐに分かった。そして恐らく曲射だったのだろう。外れて地面に刺さった矢を見て驚く。

 

「弩であの距離を狙ったのか。面白い。盾兵前へ! お前達は翼の援護射を続けろ!!」

 

『ハッ』

 

 台車の自分専用の盾兵を前に出す。敵も同じく大柄の男を上げた。お互い豆粒程の大きさしか見えていないがその動き、その息吹はよく分かる。お互いに分かっている。……良い狙撃手だ。コイツは危険で、コイツを倒せない限り俺も仕事が出来ないだろう。

 

「さて、オレが中華十弓であることを示すとするか」

 

 また飛んできた矢。普通の弓矢より短いそれは弩のそれだ。高い高度、また曲射。射線はきっちりと私の体に突き刺さるものだ。高い精度で飛んできたそれを盾兵が止める。上手く殺意を隠してはいるが、流石に方向が分かっており来ると分かっている矢を見落とす程こちらの兵は甘くはない。

 

 お返しと言わんばかりにこちらも矢を放つ。限界まで引き絞った弓は戦場の空気を貫くように飛び……敵の持つ盾に突き刺さった。

 盾兵を吹き飛ばすつもりで重さを持たせた矢だったが、踏みとどまるとは相手も良い盾兵を連れていると感心した。

 

『邪慰安ッ!』

『大丈夫だ! クソ、何発も止めらんねぇぞ! 先に盾か俺の体がイカレちまう!!』

 

「フフ。それでは勝ち目がないぞ。分かっている筈だ、お前なら」

 

 この状況下で呟いた言葉に反応したのか盾兵の一人が私を見る。

 

「来るぞ」

 

 すると今までとは違い弓のそれが飛んできた。先までとは違う真っ直ぐに近い軌道。しかし……精度は劣るか?

 

「よし、止めたぞ!」

 

 しっかりと止めた盾兵から身を出し、矢を撃つ。また止められたが手応えを感じた。恐らく敵の盾兵に傷をつけられただろう。

 

 今ので確信した。敵は良い腕だ。この距離では弩で仕留めきれないと感じて弓に切り替えた。その判断は正しく、そしてある事実を両者に突きつけた。

 

「3連だ」

 

 3射撃つ。今度は盾兵に刺さった感覚。しかし倒れないか。では次だ。

 

『邪慰安!!』

『馬鹿野郎……身を出すんじゃねぇ』

 

 敵が撃ってきた矢を防ぐ。また撃つ。防がれる。防ぐ、撃つ……極限の緊張感の中、均衡は崩れつつあった。

 

『無理だ…勝てない、勝てないよ……』

『寝言言ってんじゃねぇぞ! 寝てんのか馬鹿野尾田!』

『威力も精度も相手が全部上なんだ! 勝てる訳ない!』

『隊長はやれっつったんだ! なら出来る! オレ様が守ってやってるんだぞ!!』

『でも、でも……た、盾兵の代わりをッ』

『んな暇があるか! 代わりなんて出した途端殺されるぞ!!』

 

 盾兵が崩れれば一瞬で決着は着く。互いに替えの隙なんて見逃さないだろう。そして弓であるならば威力、速射の速度、精度、全てが自分が上であると確信はついていた。

 

「楽しかったがな。終わりだ」

 

『う、うぐっ……』

『邪慰安ッ!』

 

 ギリギリで保つ敵の盾兵。しかし相手の矢が崩れ始めた。盾兵は親しい者だったのか? 失望だな。滅多にない狙撃戦、これほど高揚したものは初めてだったが、終わりはこんなものかと思った。

 

「お前、良い狙撃手の条件を知っているか?」

 

「は、はぁ」

 

 弱くなった敵の矢に軽口を叩けるようになった味方の兵。この盾兵も付き合いが長いオレの側近だ。全幅の信頼を預けている。だが……

 

「臆病なまでに慎重で、そして冷血であることだ。例え身内が死んでも憎しみで弓を取るものは向いていない」

 

 そうだ。だから当たる。そして……

 

「だがこの瞬間はたまらんな。獲物の生き死にを決めるこの瞬間は……まるで神になったかの様だ」

 

 オレの言葉に肩を竦める兵士。肩越しにちらりと戦況を見ると臨武君の下に格のありそうなものが二人辿り着いている。状況を見るに一騎討ちになりそうだ。チッ、あの義兄は血が余り過ぎているのが問題だ。

 目を戻し、敵を見据える。次の渾身の一射であの盾兵を完全に崩し、その次の一射で弓兵を仕留める。その後は臨武君と戦っている二人、そしてまだ射程にいるあの暴走戦車を仕留める。計5射。それで戦況を変える快感とは……やはり狙撃手とは良いものだ。

 

「時間をかけすぎたな。だがお前はこれで終わりだ」

 

 楽しませてくれた敵に敬意を表しながら速射の2射の心を整える。今まで速射の間に相手は何も出来ていなかった。技術はオレの方が圧倒的なのだろう。計画を決めて心を静まらせて、射つ。……1射。盾兵を完全に仕留めた。すかさず2射ッ!?

 

『邪慰安たちばかりにやらせるか! すり抜けて投げろ拗央隊!! 当たらなくてもいい、気を逸らすんだ!!』

 

「白麗様! 投槍です!」

 

 2射目を邪魔される。こちらの盾兵は投槍の対処へ。肌に突き刺さる何かを感じた瞬間、オレは弓を番えながら台座から飛んだ。

 すぐさま通りすぎる矢。この隙を逃すはずがないと相手の腕を信頼しての行動だった。

 

「残念だったな。場数が違う」

 

 撃ち切った相手を空中から射る。完全に当たったと感じた。達成感を感じる……違和感も。

 

「カハッ」

 

 体に突き刺さる小さな矢。最初に見た弩の矢だった。

 

「そうか…速射が出来るのはお前もか……」

 

 弓を射った後、すぐさま装填した弩に持ち替えて撃ったのだろう。多分あの弓兵は弩の方が得意なのだろうな。構えて撃つ。その動作を2度行った癖に大した精度だ。2射目の弩など、碌に狙いをつける時間はなかったろうに。

 お互いに相手の技量を信頼した故のこの戦い。十弓としては恥ずかしくないだろう。そういう相手だった。

 

「白麗様!」

 

 当たったのは1矢だが当たり所が悪かったのか、血が止まらず力が抜けていく。マズイ、このままでは……

 

「くそ、この槍使いッ!」

「このヒラヒラもだ!!」

「止めろ! これ以上は戦線が崩壊するぞ!!」

 

 傷で指示を出すことしか出来なくなり、手練れを相手になんとか退く。目の前の手練れであろう相手にはそうするしかなかった。

 

 そうして退いたオレは援護が出来ず、狙撃手としてのオレの視界の中で臨武君は討たれた。王騎軍の残党の将二人を相手にしても臨武君は優勢を保っていたが、均衡を崩したのは臨武君の背中に突如刺さった1つの矢。オレにも突き刺さったあの弩の矢だった。生きていたのか。確かに急所に当てたと感じたが、一矢を撃つ力は残っていたのだろう。

 狙撃手の一矢が戦況を変える。何度も自分の手で行い、目にしてきた光景を自分たちがやられる側として味あわされた。言葉にできるものでない苦渋だ。

 

 臨武君を欠いたオレ達が戦いきれるはずもなく、戦線が崩壊したら後はあっという間だった。あの化物戦車も健在で、オレと翼は失意で指揮も出せなくなった参謀たちを叱咤しながらなんとか敗走の形を整えた。その後に倒れたのだろう。それからの記憶はない。

 

 

 

 気が付けばオレは義兄の遺体の前だった。同じく生き延びた仲間と項翼と共に臨武君を見送った。こうなってしまった責任はオレのせいにある。臨武君を、義兄を守り切れなかった。そんな風に嘆くオレを項翼が殴り飛ばした。

 

「馬鹿野郎! 明日以降で臨武君の仇をとるんだよ! オレとお前で!!」

 

 怪我人にはキツイ一撃だった。自分のあの戦車の部隊と交戦して怪我をしているだろうに。

 

「あぁ、そうだな。仇をとろう」

 

 だが勝てるだろうか。オレ達ではない、楚軍全体がだ。

 初日、楚軍の第1軍の大将が討たれ、軍も甚大な被害を一方的に被るという大盤狂わせ。臨武君をやったのは王騎軍の人間だが、戦の中心にあったのは間違いなくあの「鵬」の旗の部隊だ。

 

「嫌な予感がする」

 

 臨武君の仇は王騎軍の筈なのに、あの鵬の旗の女が頭から離れない。

 

 手練れの狙撃手の危険性を知るが故にオレはあの勝負を優先した。間違っていたとは思わない。それだけの腕を持った相手で、実際に臨武君を殺したのはあの一矢だった。だが……

 

「オレは……間違ってしまったのか?」

 

 何がなんでも討ち取らなければいけなかった。オレの一矢で何か大きな過ちをしてしまったような……そんな考えが消えなかった。 

 

 

 

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