Champion Time
「■■■■■■■■■■■■」
「ユウリとホップの仲は良かったわよ。ホップと私がくっついたのだって、ホップを助手にしたときは考えてもいなかったなー。完全に恋愛対象外だったわ。あはは。あ、もちろん、今はホップとはラブラブよ」
「■■■■■■■」
「え?知ってるって?あ、そう。
ま、だから、このときがあるのが、あなたが生まれてきてくれたのは奇跡みたいなものよ。
ほんの些細なきっかけで、こういかなかったんじゃないかな」
「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■」
「いってらっしゃい。ユウリを助けてあげて。正直複雑なところもあるんだけど、ステキな彼女ができることもついでに祈ってあげる」
母の言葉を、ユウリから敗北を突き付けられる中で、ホープは思い出していた。
傍らには、ザシアンが『くちたけん』を放りだして倒れている。
「お疲れ様。ザシアンを連れてきてくれて助かったよ。『くちたけん』はあった方がいいからね」
背後には、意気投合し、自分をユウリの前に連れてきたマサルが頭を抱えてうずくまっていた。威勢よくここまで来たのに、ユウリのムゲンダイナを前にした途端、頭が痛いと寝込んでいる。
(なにしに来たんだ、このおっさん)
ムゲン団のスパイ。仮病。ユウリを前に怖気づいたチキン。疑惑と罵倒が心をよぎるが、今はそれどころではない。
「『くちたけん』で何をするんだ?!」
「こうするの。これがあれば、今すぐにでも始められる。本当に、助かったわ」
ユウリが従えるムゲンダイナは、『くちたたて』を身にまとい、ザマゼンタのような姿になっていた。
ユウリは巨大なムゲンダイナの胸部分を抱きしめるようにして胸のコアに、拾い上げた『くちたけん』を近づけた。
「キュァァァアアアア!」
「苦しい思いをさせてごめんね、ムゲンダイナ。もう少しだけがんばって」
異物感にムゲンダイナがうめき声をあげ、ユウリは落ち着かせようと抱きしめる。
コアが激しく明滅し、『くちたけん』が取り込まれる。安定した球体だったコアは、まるで剣にまとわりつくような螺旋状となり、胸の中を巡る不定形となる。
「……『くちたたて』は、ムゲンダイナがこの星にやってきた隕石に含まれる金属と高純度に製錬された『ねがいぼし』から作られていたよ。ダイマックスバンドと構造が近い、ムゲンダイナを制御・強化するためのオーパーツだったんだ。
どういうわけか、ザシアン、ザマゼンタに渡って、ムゲンダイナの封印に使われたみたいだけどね。これが本来の用途だよ」
通常時、ムゲンダイナの力は安定していた。制御しようとするならば、その安定を崩さなければいけない。
コアに差し込まれた『くちたけん』は安定に循環していたエネルギーを乱し溢れさせ、体を覆う『くちたたて』がエネルギーを閉じ込め制御する。ムゲンダイナの全身がコアになり、出力は以前の比ではないほど強化されている。
侵入者を知らせる警報が鳴った。
ここはムゲン団の本部の時計塔の内部に設けられた儀式場。おそらくホープが残した痕跡を辿ってきたのだろう。
「どうやら邪魔者も続々とご到着みたい。悠長にする暇はなさそうね。いくよ、ムゲンダイナ。『ムゲンダイマックス』」
極大のダイマックスの光が、全身がコアと化したムゲンダイナから迸る。
時計塔を構成するレンガに仕込まれていた『ねがいぼし』と共振し、時計塔の全てが妖しげな赤い光に染まっていく。
壁が発光するせいで、時計塔の内部から時計が透けた。
ボーン、ボーン、ボーン……。
裏側から見える時計の針は逆回転する。逆巻いた時計の針はちょうど午前0時を指し、鐘が鳴り響いた。
「じゃあね、ホープ。もう会うことはないと思う。最後だから言うけれど、あなたの瞳が嫌いだったわ」
「ちょっと待てよ……っ」
「待てない。お客様がきたもの」
ドアを蹴破って、ダンテ、続いて続々と仲間のジムリーダーも続く。
「ユウリがムゲン団の総帥だったとはな。まったく、後見していた身として反省するしかないぜ。……そろそろその座を返してもらおうか、チャンピオン」
「お生憎様、ダンデさん。残念ながら私のチャンピオンタイムはまだまだ続くよ。……ムゲンダイナ」
冷たく熱い呼び声に、咆哮が応える。
時計塔の壁を壊しながら、手に杭を穿たれた鎧を付けた手のような姿、ムゲンダイマックスしたムゲンダイナが光の中より現出した。
蹂躙が始まった。