姫松高校麻雀部監督代行播磨拳児   作:箱女

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66 もくようび

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 時計の短針が指すのは4と5のちょうど真ん中で、長針はきれいに真下を向いている。西の空がゆっくりと色を変え始めたそのころに、真瀬由子は革のスクールバッグを肩に提げて廊下を歩いていた。ゲームセンターのUFOキャッチャーで取れそうな、小さなサイズのピンク色のぬいぐるみが由子の歩くリズムに合わせて揺れる。歩調は緩く、なにか緊急の要件があるようには見受けられない。しかし目指す場所は決まっているようで、決して無目的というわけでもないようだ。

 

 単純に時間的なこともあって廊下は静かだった。いま校内に残っているのは部活に精を出している生徒か、あるいはどこか静かな場所で勉強している生徒くらいだろう。聞こえる声は空気の壁にこそぎ落とされた運動部のものだけだ。夕暮れの廊下というシチュエーションはどこか物憂い。

 

 目的の教室にある程度近づいて、そこにまだ明かりが点いていることに由子は気が付いた。消し忘れなのかもしれない。または教室に誰かが残っている可能性も捨てきれないが、こんな時間まで残る意味などあるのだろうか。いくつかの疑問とともに一歩ずつ近づいて、由子は3-2の教室の戸を滑らせた。目に入ったのは学校の机と椅子が驚くほど似合わない男だった。

 

 「あれ、播磨? 部のほうは、って今日は木曜だっけ」

 

 

―――――

 

 

 

 荷物をすっかりいつもの席に置いてしまって、由子は何かの作業に打ち込む拳児を遠慮なくじろじろと眺め始めた。右手にはペンが握られて、机には真っ白なルーズリーフが一枚置かれている。さすがに様子だけで何をしているのかを当てるのは難しそうだ。あまりにも幅が広すぎる。どうせ気兼ねするような間柄ではないのだ、わからなければ聞けばいいか、と由子は考えた。

 

 「ねえ、何してるの?」

 

 「オウ、赤阪サンに言われてよ、新チームの候補考えてんだ。順番含めてな」

 

 視線を机の上に落としたままで返事をする。仮に顔を相手のほうへ向けたところでサングラスをしているのだから目が合っているかどうかはわからない。麻雀部員やクラスメイトたちはその辺りのことをもはや気にしない。それに、麻雀を別にしてと注釈はつくが、同時にいくつものことを同時にこなせるほど器用ではないのだろうと由子は思っている。これは普段の生活ぶりを見ていればよくわかる。むしろこれでよく裏プロなんてやってこられたものだと感心するほどだ。

 

 由子は少しのあいだ黙って拳児の作業の様子を眺めていたが一向に進まないようだった。実際のところ姫松には麻雀部員がかなり多くいる上に、実力者も相当数いる。そこから五人を選抜してチームを組めというのも簡単な話ではないのだ。たとえば漫がそうであったように部内戦の成績だけでは決められないといった特別な場合も存在する。順番や組み合わせによる相性など、考えるべきことはそれこそ山のようにある。宿題をいつもらったかにもよるが、詰まってしまうのも無理はないと言えるだろう。

 

 「これって提出期限とかあるの?」

 

 「そんなに急ぎじゃねえ。さっき赤阪サンに捕まって言われたばっかだしな」

 

 拳児の返事を聞いた由子にはささやかなやさしさと、ちょっとしたイタズラ心が生まれていた。行き詰まっているときに頑張っても成果が得られることはあまり多くはない。気を晴らすというか逸らしてあげることが大事な場面もたしかに存在するのだ。

 

 「ところで聞いていい?」

 

 「ナンだ」

 

 「どうしてわざわざ教室に残って?」

 

 自分の席に座っている拳児を姿を見た瞬間に頭に浮かんだ疑問を由子は投げかけた。今日は部活も休みなのだから家に持って帰ってゆっくりと考えるほうがどちらかといえば一般的ではないだろうか。たしかに拳児に一般的という物差しを当てたところであまり意味がないことは由子も知るところだが、単純に話のタネという側面もあった。

 

 「考えんだったら早いほうがいいだろ、俺はこういうの時間かかるしよ」

 

 「あ、家遠かったの。知らなかったのよー」

 

 「いや近え。ただどうにも家だと鉛筆握る気にならなくてよ」

 

 なるほど拳児が家でペンを走らせている姿は想像しにくいと由子は納得した。しかしそれ以前にこうやって教室で頭を悩ませている段階でミスマッチの感があるということに本人は気付いているのだろうか。

 

 コチコチと時計が鳴らす音をBGMに二人の時間は続く。椅子の背もたれを肘掛けにしてすっかり横を向いている由子と机の上に片肘をついて頭を抱える拳児の姿は、奇妙な対比にも見えた。まだ夕日と呼べるほどの位置にはない太陽は、由子が廊下にいたときと比べればすこしだけ動いたようだった。

 

 さすがの拳児も考え通しで疲れたのか、別のことに思考を回したようだった。

 

 「つーかよ、オメーなんでこんなとこいんだ」

 

 「ん、ちょっと忘れ物しちゃって」

 

 「家から取りに来たんかよ」

 

 「まさか! 図書室で自習してたのよー」

 

 手を口にやって目を細めて笑う。まさか、と言われたところで拳児は由子の住んでいる場所など知らないからどれほどの冗談になっているのかもわからない。反応だけを見ているとどうやら出来としては上々のものであるらしい。しかしここから話を広げる技術もつもりもない拳児は、素直に前期期末テストが終わったばかりのこの時期に勉強しなければならない理由にぴんと来たようで、足りない言葉でその理由に思い至ったことを告げた。

 

 「……ああ、勉強しなきゃなんねえのか」

 

 「そ、受験生はなかなか忙しいの」

 

 拳児と一対一で話せば大抵はこのような感じになる。楽しく盛り上がっているというわけではないが、居づらさを感じない限りは成功と捉えるべきだ。二人の座っている位置は黒板からは最も遠いいちばん後ろの席なのだが、不思議とチョークの匂いが届いてくる。ほんのり甘く、しかし思いきりは吸い込みたくないような匂い。とくに深呼吸をするような場面ではないためあまり気にするようなことでもないのだが、他に気にかかるようなこともないせいでなんとなく由子の意識に上ってきた。

 

 忙しい、という言葉とともにいたずらっぽく笑った由子の顔を見て、拳児もふと浮かんだ疑問を口にしてみることにした。もちろん忙しいとは言ってもまだ十月にもなっていないし、それ以前にこんなところで拳児と話をしている時点で本格的な追い込みの時期にないことは明らかである。

 

 「なあ真瀬、オメーはプロに行かねーのか」

 

 「……はあ」

 

 これ見よがしに大きなため息をつく。心なしかインターハイが終わってから由子の対応に遠慮がなくなってきているように拳児には感じられていた。

 

 「あのね、そうそう簡単にプロなんて言葉は口にできないの」

 

 「オ、オウ」

 

 「あなたも覚えてるでしょ? 個人戦の洋榎のあの試合」

 

 個人戦といえば愛宕洋榎の出た試合だけでもいくつかあったが、“あの試合” と呼ばれるものだけは当該試合を見ていた人間にはそれだけで通じるような激戦であった。それが決勝戦でないことだけが悔やまれたのだが、組み合わせ自体はドリームマッチとさえ称されるほどの面子が揃っていたのである。たまたま会場に来ていた拳児ですら思わず見入ってしまうほどの一局だった。

 

 「あのときの洋榎レベルの才能の塊がふつうに数えられるくらいにいるのよー?」

 

 「…………」

 

 「それも()()()()()()()()()、ね」

 

 わかりやすく強調したい部分の言葉をわずかに間を空けながら声に出す。由子からすればこんなことはいまさら拳児に言うまでもないことだ。彼女たちの意識の上では、拳児は磨かれた才能側の人間なのだから。ある意味では先ほどの拳児の言葉は残酷なものであったのかもしれない。彼が裏プロであるということは、もはや公然の秘密の扱いを受けているほどなのだ。勘違いから生まれた一方的な受け取り方であるにせよ、そんな人間の発言が軽いものであるはずがない。だからといって由子は決して暗くはならなかった。そういう集団でずっと過ごしてきたのだ、持っているものの違いに苦悩する時期などとうに乗り越えている。

 

 「そんななかで一際輝くだなんて口が裂けても言えないのよー」

 

 どこか自分の言葉が上滑りしたように由子が感じたのは、麻雀界に関わる情勢をまったく知らないという拳児の設定に付き合ったからかもしれない。本当のことを言えば拳児がなにも知らないのは設定でも何でもなく事実であるのだが、このタイミングでそれを言ったところで誰も信じてはくれないだろう。しつこいようだがインターハイ団体優勝校の監督が、実は最近やっと初心者の域に入り始めたと言ったところで冗談にすら受け取ってもらえないだろう。見方を変えれば拳児は自分で自身の立場を固めるような動きを選んできている。自業自得とまでは言えないが、現在の状況を受け入れなければならないことくらいは理解して然るべきだろう。

 

 「そういえば播磨、あなた進路調査票には何を書いたの?」

 

 「ナンだいきなり」

 

 「だってせっかく進路の話になったし」

 

 もともと自身の会話能力に自負があるわけではないが、拳児は真瀬由子を相手に会話の主導権を取ることはできないことを確信した。話をしていて感じるのは同年代を相手にしているときのものではなく、年上を相手にしているときのそれだ。すくなくとも拳児の人生のクラスメイトのなかにこういった印象を与えるような人物はいなかった。

 

 さて以前に洋榎と漫にも聞かれて断ったこの内容だが、どうも相手と状況を考えるに逃げられそうもないような感じが既にあった。それが拳児の思い込みである可能性はたしかにある。それでも無駄な抵抗はやめろという自身の内側からの声に拳児は逆らえなかった。

 

 「……アメリカ」

 

 「へ?」

 

 万人が同じように反応するだろうように、由子も間の抜けた返しをするしかなかった。今しがた投げかけた質問は進路調査票に何を記入したか、だ。一般的には志望大学や就職希望が書かれるべきで、一種例外的な拳児は監督とでも書いておけばいい箇所だ。由子の呆けた返事を聞き逃したと取ったのか、拳児がふたたび同国の名前を呟いた。これで聞き間違いの線は消えた。ごく短い間にあれこれと考えを巡らせた由子の頭にひとつの解答が導かれた。

 

 「ぶふっ、いや、それ、んふふふ」

 

 途端に由子が堪えきれずに噴き出した。当然ながら拳児の事情など姫松にいる誰もが知らない。であれば拳児の選択肢の中にアメリカなんぞが入ってくる理由は存在しないも同然である。というよりその段階に至る前に進路調査票に国名を書くバカがどこにいるだろう。それは進路ではなくただの行き先だ。それらのことを考慮に入れれば、きっと由子は拳児が調査票にボケをかましたのだと思ったのに違いない。

 

 「お、おい」

 

 「あっははは! ふ、ふふっ、播磨、そ、それボケとしては、ふふ、三流以下なのよー」

 

 事態は予想されたものよりもひどいようだった。どうも状況を総合してみると、播磨拳児が進路調査票を使って突然にボケたこと、そしてその出来があまりにも酷いものであったことが由子の笑いのツボを刺激したらしい。たしかに年がら年中不機嫌そうな顔を当たり前のものとしている男がいきなり笑いを取りに来ようとしたら、そしてそのネタがあまり理解されない系統のものであれば大ハマリする人が出ても不思議ではないだろう。もちろんだが拳児にボケたつもりなどかけらもない。しかしそう誤認されるだけの状況はじゅうぶんに作り上げられていると言えた。なにせ拳児の進路など彼女たちからすれば麻雀部の監督に決まっているのだから、真面目に書くだけ無駄といえば無駄なのだ。

 

 ひいひいと呼吸を整えている由子の横で拳児の機嫌が明らかに斜めを向いた。自分から話すような内容ではないものの、想い人のいるところへ行くことを笑われてしまえばそうなるのも当然だろう。見た目と立ち位置のせいで忘れられがちだが、拳児はまだ高校三年生である。というかそこらの高校三年生の男子より純情でさえあるのだ。

 

 

 「さっきはたしかに笑いすぎやったって。私が悪かったのよー、ごめんね?」

 

 「チッ、気にしてねえよ」

 

 かたやちらっと思い出しては継続的に笑い続け、もう一方はご機嫌ななめのふたりが隣に並んで座っているというなんともヘンテコな空間は、意外なことに維持され続けていた。あるいは席について考え事をしているという建前で抜けられないのかもしれないし、あるいはまったく関係のない別の理由があるのかもしれない。ただひとつだけはっきりしているのは、どちらも席を立つつもりがないということだけだ。

 

 もう謝ることができるくらいに状態を戻した由子は、おかしさから来るものとは別種の微笑みを浮かべて思案をしているようだった。

 

 「ねえ播磨、なにかお話して」

 

 「あァ? ナンで俺がそんなことを」

 

 「だって考えてみたらあなたとこうやって話をしたことないんだもの」

 

 ある程度は拳児もそうなるように動いてきたのだから由子の導いた結論は自然なものだ。半年も同じ集団で過ごしてきて、それもかなり近い立ち位置にあって個人的な話を一度もしたことがないというのも不健康な話ではないだろうか。

 

 「別に面白い話なんざねえぞ」

 

 「構わないのよー。ね、なにか最近変わったこととかなかった?」

 

 もうすっかり話し込む前提の運び方で、拳児のチームのことを考える時間をまるごと持っていくつもりであるらしい。本人も急ぎではないと言っている以上、口をさしはさむような場面ではないが、それでも簡単に誘いに乗ってしまっているあたりには今後に不安が残る。

 

 なにか変わったこと、と言われて拳児の頭に浮かぶのはここのところの生活すべてだ。だいたい家出をしたら経験のない麻雀部の監督になっていたなどという事態は、この世の変なことランキングを並べたとしてなかなかの上位に入るだろう出来事だ。その辺りのことを言ってしまってもいいのだが、いくら拳児とはいえそれが話題に沿っていないことくらいはわかっている。ただそれを除いたところで彼の身に起こった奇妙なことなど枚挙に暇がないほどなのだから始末に負えない。

 

 「……珍しいことと言やあこないだダヴァンのやつから電話があったな」

 

 「メグちゃん? たしかにそれは意外かも。どんな話したの?」

 

 「よくは覚えてねーけど十月のいつだったかの予定聞かれたな」

 

 電話があったのは大星淡によるあの播磨拳児プレゼント問題を生んだインタビューが放送された日の夜である。何を疑うでもなく拳児はこれらを独立した事象だと捉えており、背後に控える因果関係についてなどかけらも考えは及んでいない。拳児からすればあのインタビューを生で見ていたわけではないからか、それとメグからの電話が同日のことであることに気付けない。しかしながら姫松側で両方にきちんと関わっているのは拳児だけである。仮に当事者である拳児を除いて姫松にその因果関係について想像を働かせることができる人物がいるとすれば、条件的には二年生のふたり以外にはあり得ない。

 

 「ま、そんな先の予定はわかんねーっつったけどな」

 

 「ていうかあなたいつの間にメグちゃんの携帯番号聞いたの?」

 

 「あ? 聞いてねーよ、つーかアイツなんで俺の番号知ってんだ?」

 

 「えっ、大丈夫なのそれ」

 

 拳児の特徴の一つとして、“電話を取る際に相手の名前を確認しない” というものがある。着信があったときにしっかりと携帯の画面を確認していれば、実は辻垣内智葉の携帯から電話がかかってきていたことがわかっていたのである。臨海女子では意外と携帯の奪取が日常化しているのだが、そんなことを他校の人間が知るわけもない。つまり別に拳児の電話番号は流出してはいないし、拳児の記憶が吹き飛んだわけでもない。心配するなというほうが難しい案件だが、何も知らない彼らに打てる手はなかった。実際には着信履歴を確認すればいいだけの話だが、このとき由子はすくなくとも冷静ではなかったために簡単な採るべき行動を選べなかったのである。

 

 二つ三つとまばたきをして、由子は拳児の携帯番号流出疑惑についてはいったん置いておくことにした。それはいま考えたところでどうしようもないからだ。

 

 「えっと、結局メグちゃんは何の用やったんやろね」

 

 「さァな、合宿とかの誘いだったんじゃねーの? 夏はウチが勝ったしな」

 

 学生の身分でもあるが間違いなく監督でもあるため、そういった相談が拳児に来ていても決しておかしくはないのである。無論だが麻雀部において拳児にそういった裁量権はなく、仮に拳児に話を持ってこられた場合には郁乃と相談することが前もって本人たちのあいだで約束されている。しかし部員たちはそんなことなど当然知らない。だから由子であろうが恭子であろうが拳児のこの言葉に疑いを持つことができないのだ。これは拳児の権威をできる限り保つための情報統制であって、それ以外の効果についてはとくに考慮されてはいないことを原因としている。

 

 窓の外を覗いてみれば、サッカー部員たちの影がだんだんと伸び始めていた。短針はあと少しで5に届きそうなところまで進んでいる。もう夕方と呼んでも差し支えのない時間だ。廊下からは相変わらず物音ひとつしてこない。この教室ひとつだけが世界から切り離されているような感覚さえあった。

 

 「そういえば、なんだけど」

 

 「オウ」

 

 「あなた再来週に文化祭あるの知ってるわよね?」

 

 「体育祭前からそれでうるさかったからな、それくれーは知ってるぜ」

 

 どこか得意げに拳児が返す。

 

 「うちのクラスが何をやるかは?」

 

 わかりやすくぴくりと反応して、言葉が詰まる。スムーズに言葉が出てこない時点で知らないと言っているようなものなのに、素直に言わないのはある種の申し訳なさでも感じているのだろうか。普段はろくに気も利かないくせに、こういう勘所だけはピンポイントに押さえてくる。たとえば麻雀部員たちが拳児に対する評価を決めきれないのはこういう部分があるからだ。

 

 由子はいつもより長く鼻から空気を押し出した。表情はどちらともつかない。

 

 「ま、準備の協力くらいはきちんとしたほうがいいと思うのよー」

 

 「面倒くせえったらねえぜ」

 

 「……聞かなかったことにしてあげる」

 

 そう言うと由子は席を立って椅子を戻し、カバンを肩に掛けた。どうやら拳児の気付かない間に忘れ物はカバンに入れていたらしい。ねずみ色のカーディガンと胸元の緩く留められたリボンはもう見慣れたものだが、なぜか惰性のようなものは感じない。由子はゆるく微笑んで、拳児の手元を指さした。

 

 「じゃ、もう帰るけど、それ頑張ってね」

 

 よくよく思い出してみれば秋以降の団体メンバーを考えるためにこの教室に残っていたのだが、ルーズリーフは真っ白だ。急ぎというわけではないから肩を落とす必要はないが、結果としては見事に時間を持っていかれたかたちだ。手をひらひら振って教室を出て行った由子を見送って、拳児はもう少しこの場に残ることを決めた。

 

 

 

 

 

 

 


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