DDLを最後にドルフロ二次から手を引くと言ったな、あれは多分嘘だ。
緊急システムスキャン──98、99、100%。
スキャン終了。
各駆動系統:異常なし
神経系統:異常なし
動力残量:11%
推定稼働可能時間:15時間36分(セーフモードを前提)
オペレーション『
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【WARNING】
マスターキーによる認証を受けていません。起動を続行しますか?
→YES
NO
システムを『自律行動』にシフト。以降、認証を受けるまで一部機能を凍結します。
【WARNING】
探査可能範囲内に敵性反応複数。起動を続行しますか?
→YES
NO
不要タスクを削除、56の破損ファイルの修復作業を放棄。これにより、起動までのプロセスが47%短縮されました
以降、敵性対象の殲滅の確認及び正規の認証を受けるまで修復作業は再開されません
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システムチェック:
状況への対応を優先し、IOP社製戦術人形『M27IAR』を非推奨モードで起動します。
「……んっ……」
そして、『私』は
……知らない天井だ。私は首を傾げ、突然の状況に首を捻りながら体を起こ──待て。待て、待って。
私の腕はこんな細かったか? 私の髪ってこんな色でこんな長さだったっけ? 服もこんなひらひらした女みたいな服じゃなくて普通の寝巻だったはずだけど……。
しかも気が付くと、『私』はいつものベッドじゃなくて見慣れぬ手術台と思しき何かに寝かされていた。
なんだここ、どこだここ。
ペタペタと体を触ってみるとどうやら思ったよりも大分ちゃんとした服を着ているようで、がっちりした布の手触りが返ってきた。
上体を起こして、きょろきょろと辺りを見回す。
……ざっと設備などを見た感じだと、どうも研究室の類っぽいなここ?
そして、何とも言えない表情を浮かべながら『私』は思わずポツリ。
「……うぇえ……? 何があった……私……?」
我ながらクッソ情けない声が口から出る。
って声高っ!? なんだこれ、これじゃまるで
……っていうか、一人称だって『私』じゃなくて『俺』だった! 一体何がどうなってるの!?
「……っ、か、鏡! 鏡ないのかここ!?」
てて立ち上がり──どうやらここは何かの建物らしい──鏡を探して駆けまわる。
程なくして、恐らく元はトイレだったであろう小さなスペースに古ぼけた大鏡を見つけた。あちこち曇っていたり傷ついていたりと散々だけど、辛うじて自分の姿は確認できる。
そこに映っていたのは……。
──すらっとした長身。
──後ろで長いポニーにまとめられた白銀の髪。
──頭にのっかった黒字に赤いラインの入ったベレー帽的なもの。
──右が緑で左が紫のオッドアイと、それを覆う黒縁の眼鏡。
──首に巻かれた黒いチョーカー。
──青色ベースのどこかの特殊部隊ですかと言いたくなるような服。
──それを内側からゆさっと持ち上げる大きな胸。
「──────ぴゃっ?」
──そして、そんな見た目の自分を見て、呆けた声をあげる私。
……ありのまま今起こっている事を話そうか
『私は自宅のベッドで寝ていたと思ったら、いつの間にか見知らぬ場所で綺麗な女の子になっていた』……うん、なにを言っているのかわからないと思うが、私も何をされたのかわからない。催眠術だとか明晰夢だとかそんなチャチなもんじゃあ断じてない、もっと恐ろしいものの片鱗を味わったよ。というか現在進行形で味わってるよ。
……いやいや落ち着こう、そうだまだ慌てるような時間じゃない……たぶん。
うん、とりあえず状況の整理から始めるとしようか。自分へ向けて自己紹介だ。
ええと、私は『M27IAR』ということになっている……ん、じゃないかな。一応。なんか右の手首に巻かれたネームタグっぽいのにはそう書いてるし。っていうかそれ以外に自分の事が何一つ思い出せないどうなってる。
「あっ、あー、あー。……一応ちゃんと声は出るな……。違和感凄いけど」
他にも体を動かしたりいろいろ試してみたが、特に身体のどこかがおかしいみたいな感じはしなかった。強いて言うなら胸が重い。
そんな訳で、ひとまず私はこの場所の探索を行うことにした。何をするにしても、まず情報と物資がないと話にならない。先立つものは大事です。
しばらく施設の中を歩き回っていると、何やら書類らしきものが古ぼけた机に投げ置かれているのを発見。それを拾い上げ、ペラペラと流し読みしてみる。
表紙にはでかでかと『新型戦術人形開発設計書』と書かれていた。戦術人形ってのがそもそもなんじゃらほいという感じだが、これもしかして私の謎ボディの事か? こんなでっぱいボディで戦術すんの? 馬鹿じゃないの??
……という私見はさておきざっと読んでみたところ、どうやら
・日々、鉄血工造の攻勢は激化しているため、新型の戦術人形の開発は急務である
・実績を鑑み、比較的高い評価を得ているHK型のアサルトライフルの開発を決定
・開発対象には分隊支援火器としてAR及びMGを兼任可能な『M27IAR』をピックアップ
・マシンガンとアサルトライフルの相互互換プログラムの開発に難航。やはり二つの銃種のプログラムをひとまとめにするのは困難のようだ
・鉄血工造によって襲撃を受けた。研究員及び設備に多大な損害。これ以上の研究続行は不可能と判断し本研究所を放棄、以降『M27IAR』は破壊されたものとみなす
とのことだった。……聞きたいことはいろいろあるが、とりあえず捨てるんなら後始末までしっかりしてほしい。どこの誰かは知らんが過去の遺物が無関係の一般市民巻き込んで見事に大復活してますよちょっと。どうしてくれんの。
実銃のカタログ情報や整備の仕方以外に特に有用そうな情報もなかったので、読み終えた書類の束を適当に放り捨てて施設の探索を再開。
そうして見つけたのは、古ぼけた装備類(ミリタリー感凄い)、妙に量の多い弾薬と食料(レーションって本当に四角いんだね)、大量の箱型バッテリー(普通に重い)、インクが滲んだ古新聞(2060年だってさ。冗談だろ?)、ついでにハンドガン(IARもそうだけどやっぱりエアガンとは比較にならない重さ)とやたらゴツいコンバットナイフ(切れ味よさそう)。正直な話装備に関してはほぼ諦めていたけど、結果は上々といったところ。
ちなみにだが、この『古ぼけた装備類』に関しては中々興味深い物を発見した。
たぶん外骨格……なのかな? 雑に折りたたまれた状態で放置されていたが、展開しようとするとそれがとんでもない力で状態をキープしているというのが分かる。
「ふんぬぬぬ……!! かったいなこれ!?」
なんとかしてそれを広げると、より外見の外骨格らしさが増した。それにしてもこの着る奴の事なんざ知ったこっちゃねぇそんな事より性能だと言わんばかりのスプリングの強さ。多分純正だったらもうちょっと常識的なスプリング使ってるんじゃないの、これ? 純製品がどんなのかは知らないけど、分かりやすく改造されたっぽい痕跡があちこちに見えるし絶対よからぬ改造した結果だろこれ。
……着てみるか。不安要素しかないけど、まあこれだけトンデモなパーツ使ってるなら、着れれば相当な機動力の向上が見込めるはずだ。
「えーっと……ここを通して? でいいのかな? それで、ここにロック引っ掛けてこう着込むように……アッやっば間違えた痛い痛い痛い! 待って待って折れる折れる外れない誰か助けてわっだふぁーっ!?」
どうやらやり方を間違えたらしく、気が付けば私の体はヨガか何かと見まがうようなエキセントリックなポーズで拘束されていた。すごい痛い。体がギチギチ言ってる。待って助けて折れる折れる。
こんな情けない死に方なんぞしてたまるかと死ぬ気で外骨格と格闘することしばし、ようやく抜け出すことに成功。なんだこれ、外骨格じゃなくて拷問器具じゃないか。見た目に騙された。
「はあ、危なかった……」
危うくスポーン地点でゲームオーバーする所だった。全く笑えない。
私は最初に寝ていた手術台っぽい台に腰かけ、そのままごろんと寝っ転がって明かりのついていない天井を眺める。
「……これからどうすればいいんだ……?」
もう何がなんだかわけがわからない。寝て起きたら40年も未来の世界に飛ばされてるし、なんか鉄血とかいう人類の脅威が世界を跳梁闊歩するゲームみたいな世界観になってるし、挙句の果てに女の子になってるし。マジで何なんだ。
「……ええい、悩んでいても仕方ない! この手の奴は籠城するのが一番よくない、乞食にもそう書いてあった! 多分!」
近くの壁に立てかけてあった実銃を掴み、書類に書いてあった実銃のデータをもとに見よう見まねで簡単なメンテナンスと弾薬の装填を行う。銃を持ち、バックパックを背負った私は歩き始める。
そして、正面玄関を力任せに蹴破り、──太陽の光に目を細めながら、大きな声で宣言した。
「──逝くぞオラァ!!」
そうだ、私は(たぶん)戦術人形『M27IAR』。ちょっとした手違いで過去からやってきた一般人。
さあ、長い旅を始めよう。いつ終わるとも知れない、でも終わってくれないと困る、長い長い旅を。
なんとしてでもこの性癖丸出しボディを作りやがった責任者をぶん殴り、元の世界に戻るために。
<リメイク前との相違点>
・同じく更新を諦めたCM901の方とある程度統合したためTS転生要素が追加
・ちょっと特殊タグ増やした
・物資が少しだけ潤沢になった
・キチガイと世界線を分離(最重要事項)