放浪孤独のIARさん「もっど!」   作:りおんぬ

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全5話くらいでの完結を目指してます。


3rd 戦場要塞サングヴィス

さて、人生初の激戦(?)を経てから早数日。私は完璧だという謎の苛立ちが止められないIARさんです。これは一体全体どうした事か。

いや完璧だろうと無理でしょあれは。もしかしたら身体面での『私』は完璧かもしれないけど精神面での私は完璧ではないし、何より私は私だけでは完璧たり得ない。あくまで分隊支援火器なので当然支援対象が必要な訳です。

さて、閑話休題(話がそれました)

 

「……で、結局何なのこれ」

 

私の目の前にそびえたつのは、半開きの状態で放置された年季を感じさせるゴッツい両開きの鉄扉。この時点で、ここがただの建築物ではないという予感をひしひしと感じさせる。

そしてその奥、スポーン地点もとい廃施設で拾ったドットサイトの貧弱な倍率を限界まで酷使してようやく見えるか見えないかの所にそびえたっているのは、窓の数からして最低でも10階建て以上はあるであろう廃墟。これまた近未来ディストピア感が凄いな。

これだけ大きいと探索の手間もすごそうだし、流石に脳死で突入するのはすごく躊躇われる。

 

「えーっと……」

 

そして何より恐ろしいのが、こうしている合間にもその施設の方から断続的に銃声が聞こえてくるという点。

要するに中で何かが戦ってるってことだよねこれ? その中に突っ込もうとしてる訳でしょ私?

馬鹿じゃねぇの。

 

「……どうしよう」

 

あいはぶのーあいでぃあ。

中でドンパチしてるのが味方……とは言わないまでもとりあえず敵じゃないなら御の字なんだけど、普通に考えてその可能性は限りなく低い。っていうかあの書類に書いてあった戦術人形ってのがどんな扱いされてるのかがだいぶ不透明だからなあ……なんか分かりやすく女の子の姿だし、『そういう』用途にも扱われる可能性ってのがそこまで想像に難くない。

……どうしたものか。

その場でしばらく考えて、私は結論を出す。

 

「行くも難し留まるも難し……だったら、行って状態を動かしたほうがまだマシ、かな?」

 

そう考え、私は扉の隙間を通り抜けて中に入り込むのだった。

──ちなみに、これは私のあずかり知らぬ、というか気付かなかった点だが。

扉の真ん中あたりにあった長方形の突起、錆にまみれたプレートと思しき物にはかろうじて読めなくもない文字でこう書かれていた──『E■地区 ■型■■集積■』。

 

■ ■ ■

 

「ハロー。……ハロー? こんばんはー?」

 

夕日が赤く照らす建物の中をおっかなびっくり歩いていく。

相変わらず銃声は元気に聞こえてくるが、しかしさっきまでと比べて明らかに頻度が下がっている。誰と誰がやりあってるかは知らないが、決着の時が近いということだろう。

まあ全く関与してない私としては知ったことではないので、最低限の警戒を保ちながら探索を続行する。なんかいい感じの装備とか物資とかないかな。こんなオンボロじゃない高性能のアタッチメントか美味しいごはんが欲しい。うん。

そんな事を思った、その時。

 

──カサリ。

 

「っ!!!???」

 

私の近くから聞こえてきた、明らかに『ナニカ』の意思を感じる物音。えっなに嘘でしょやだやめて怖い怖い。

眩い夕日に赤く染め上げられた視界で辺りを見回すと、割と近くにあった部屋の扉──これまた年季と重厚感を感じさせる両開きの木製扉で、経年劣化によるものなのかあちこちささくれだったり腐りかけているような形跡が見受けられる──が半開きになっているのを発見。

そして、さっきの物音もどうやらこの辺りから聞こえてきているっぽい。

……マジかぁ……。

 

「……っ」

 

ゴクリとつばを飲み込み、恐る恐る扉に近づく。

そして、意を決して足に力を込めた。

 

「──開けろ!! デトロイト市警だ!!」

 

そんな風に大声をあげながら、力任せに扉を蹴破る。素早く中に入り込み、部屋の奥へと構えた銃の照準を向けた。

そして、そこに広がっていた光景とは……。

 

──さて、突然ですがここで問題です。以下の条件から導き出される答えを求めなさい。

 

・扉が半開きで中の伺えなかった部屋

・そこから聞こえた謎の物音

 

・室内一面に張り巡らされた蜘蛛の巣(new!)

・犠牲者の成れの果てと思しきいくつかの人間大の繭の塊(new!)

・キチキチと大アゴを鳴らす推定1mサイズの蜘蛛型生命体(new!)

 

「……きっ、」

 

はい、もうお分かりですね? 正解はー、こちらっ!

 

「きゃああああああああああああああああっ!!?」

 

絶叫しながら銃口を突き付け、迷うことなく連射連射連射。

図体はデカかったが耐久度に関してはそうでもなかったらしく、哀れ大蜘蛛は最初の一発でヘッドショットされ沈黙。しかし当時の私はそんなこと知る由もなく、弾倉一個分を空にするまで撃ち続けた。当然、30発しか入らない弾倉はあっという間にスッカラカン。

私はあまりのストレスに、弾切れになったことに気付かず半泣きでトリガーを何度も引いて絶叫。

 

「なんでっ、なんで、なんでなんでなんでなんでなんで!! なんで弾が出ないのっ、銃ってのは弾を撃つための道具じゃないのッ!!?」

 

そのまま錯乱状態で泣き喚くこと数分。

ようやく弾の出ない原因に気付き、私は先ほどまでの恐怖とはまた違う理由で人知れず涙するのだった。っていうか盛大に弾薬の無駄遣いしちゃったどうしよう。多少の余裕はあるとはいえこの浪費はデカいぞ……。

 

「そ、そうだ、落ち着け……落ち着くんだ私……」

 

ええと、こういう時どうすれば落ち着くんだっけ?

掌に人って3回書いてそれを飲み込む……いや違うな、プレゼンテーションとかで緊張した時の奴だそれ。

なんだったっけかな…………あ、そうだ思い出した。素数を数えるんだったな。

 

「ええと、素数が一つ……素数が二つ……素数が三つ……」

 

──落ち着いたぁ。

なんかやり方を盛大に間違えてる気がするけどまあいいや。実際落ち着いたんだから問題なし。

私はため息をつき、そして大蜘蛛の血と肉ですっかりドロドロになってしまった室内の検分を開始。なんかいい物があればいいけど。

……見た感じ、ここは応接室かなんかだったのかな? 背の低い椅子とテーブル、でっかい置時計と本棚が置かれている。多分そこそこ高値だったのであろうそれらの調度品は、けれど残念なことに蜘蛛糸に包まれて台無しになっていた。

 

(……なんかいいのないかなぁ。でも見た感じなさそうだなぁ……)

 

そして、そこには割とあきらめムードを漂わせながら部屋の中を漁る物欲丸出しの不審者が一人。ええ、もちろんそれは私です。

しかし案の定というかなんというか、どれだけ探し回ってもめぼしい物は何も見つからず。いよいよ最終手段として私はいくつかある繭を引っ張り出すことに。一体何が入ってるんでしょうかね。

 

「よっこいせっと……思ったより軽いなこれ」

 

ナイフを取り出し、一つ目の繭に切り込みを入れる。あれっ、結構硬い。

ギコギコとおおよそナイフで出してはいけない音を出しながら格闘することしばし。ようやく、中身が見れるほどに切り込みが広がった。

 

「よし、何が出るかな~……?」

 

……例のメカ女子系エネミーの残骸とばっちり目が合った。でも見たことないタイプだな……誰だこれ。

困った時の便利メガネを指先でコツコツ叩いてみると、レンズの左上にこんな表記が飛び出してきた。

 

□ □ □

 

『DRAGOON』

鉄血の上級戦闘ダミー。

小型二足歩行兵器と連装機関銃を備え、火力・射程・機動力のいずれをとっても甘く見てはならない存在。鉄血の戦場理論においては『陣地急襲』の役割を果たしている。

人型ユニット単騎でも戦闘が可能だということは意外と知られていない。

 

□ □ □

 

ほう、なるほどなるほど。

……っていうかこれ、つまり()()()()()()だよね? 見た感じ今までの見てきた奴等──鉄血なる組織の下っ端メカらしい。全く。便利メガネ様様だ──と比べて見た目的に肉付きがいいタイプだし、あとなんか見て分かるくらいお腹が()()()()()()()()()()……そういうことだよね??

おおこわ、やっぱり殺しといてよかったアイツ。

ちなみに他の繭もおおむね似たり寄ったりで──一個だけ鉄血の下っ端じゃなくて生身の人間の死体が入った繭があった。こみ上げる吐き気と嫌悪感とその他諸々に耐えながら合掌──、特にめぼしい物もなく、残すはあと一つ。

 

「さーさー、どうせ何も出ないだろうけどこれも手早くバラしちゃいましょうねぇ」

 

そんな事を呟きながら繭に手を掛ける。……なんかこれだけ妙に重いな?

疑問に思いながらも手に持ったナイフをぶっ刺し、力任せに降ろしていく。

すると、今までのものとは明らかに違う硬い感触があった。

 

「うん??」

 

ナイフを抜き、繭に出来た切れ目を少し広げてみる。

──中からずるりと一本の腕が飛び出してきた。

 

「ギャーッ!?」

 

悲鳴を上げてひっくり返る。

中から伸びてきた腕は床をペタペタ触ったかと思うと、一旦繭の中に引っ込む。

そして、今度は両腕がメリメリと切れ目を押し広げながら姿を現した。

突然の恐怖体験に震える私を他所に、バガンッ!! とおおよそ比較的柔らかい感触の物体が発してはいけない破砕音が響き、繭が真っ二つに割れた。

そして、中から一人の少女がその姿を現す。

 

「ふわぁ、よく寝た……あれ。あれ? ここどこ?」

「あ、あばばばばばば……」

 

肩を抱えて震える私の前で、彼女──水色の髪をした少女は、私の方を見てこう言うのだった。

 

「……誰?」

「いや壮絶にこっちのセリフなんだけど!?」

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