M249SAW。
私が助けた彼女は、自身の事をそう称した。……ええと、ミニミだっけかの別名、いや正式名称だっけか? なんかそんな感じの銃の名前だった気がする。
……つまりあれか。薄々気づいてはいたけど、持ってる銃の名前がイコールでその人形の名前って訳か。
「はあ……M249ね……」
「そう。ちょっと眠くて寝てたんだけどね……助かったよ……ふぁあ、もう一回寝ていい?」
「あんなことを経験しておいてまだ寝るの!?」
驚愕ですよ、肝が据わりすぎてるというかなんというか。
っていうか味方いないんですか味方。まさかマシンガン一人でこんなところに来たって感じじゃないよね? ……いや人のこと言えないわ。なんてこった。
問いかけると、どうやら仲間はいるらしい。寝てる間に置いて行かれたらしいけど。……それって仲間っていうのかなぁ……?
「……で、貴方は誰? 敵ではなさそうだけど」
「え、それ今聞く? 聞いちゃう?」
話によると戦闘の真っただ中らしいのに、戦場のど真ん中で会った相手に敵か味方か聞くとは……なんというか、うん。
あれだな、別にこの人特段肝が据わってるとかそういうわけじゃないな。
ただ単に危機感が薄すぎるだけか。
「……まあ、聞かれたからには答えましょう。聞いて驚け、遺憾ながら私こそがなんか知らない間に作られて知らない間に放棄されてた試作戦術人形、その名もM27IARである! ……たぶん!」
「……ふーん」
いやリアクション薄いな。変に格好つけて名乗った私が馬鹿みたいじゃないか。
これじゃ自己紹介が事故紹介だ――そんな下らないことを考えて勝手に落胆する私をよそに、彼女――M249は私の体をじろじろと見ながら言った。
「……416っぽいけど、あちこち違う……本物の416だったらこんなフレンドリーじゃないだろうし……」
「いるんだ、416」
「いるよ……何かにつけて完璧主義者のヒステリックが」
うわぁ会いたくねぇ。
素晴らしいことに、今の簡潔な紹介の中には安心できそうな要素が一つたりとも入っていなかった。
ええと、416ってたしか科学力が世界一な某ドイツがアメリカの銃をリメイク……リファイン? した銃だった気がする。
……なんとなくそんな性格で作られる経緯は読めた。
「……まあ、お近づきになりたくない人種であることは確かだね」
「そうだね……私もだけどG11とかはいっつも尻を蹴っ飛ばされてるよ……」
なんかしれっと知らない名前が出て来たが、まあそういう銃もあるんだろうということで無理やり納得する。なんだよG11って、機動戦士かよ。あれはG-3だったけど。
「……で、私達どうするの? 多分動かないとろくなことにならないと思うけど」
「慌てない慌てない……一休み一休み……」
「どこの一休さんだ」
しっかりしろ戦術人形。どうなってるんだ現代人よりもよっぽど人間らしいじゃんか。プログラムには感情なんて不要なんじゃないんですか。
そうこうしている間にも寝落ちしてしまいそうなM249の頭をひっぱたき、恨みがましい視線を向けてくる彼女の襟首を引っ掴んで部屋から引きずり出した。この手の類はこっちが強硬手段に出ないと基本的に何もしないからな、否が応でも働いてもらうぞ。
「ほら、仕事よ仕事。働けオラ」
「うわぁ……416が増えた……」
「人をそんなヒステリックと同じカテゴリに入れるんじゃない。っていうか本物だったら威嚇射撃してでも働かせるでしょ」
「……確かに」
嘘だろおい、過激すぎるだろいくら何でも。ますます関わりたくなくなった。
心の中の『絶対に関わってはいけない人リスト』の中に例の鉄血連中と自身の推定同系機が並んで記録されているという地獄絵図に頭を悩ませつつ、私は腕をあげてM249を無理やり立たせる。
「ほら立ちなさい、せっかくの弾数を生かせマシンガン」
「屋内戦だっていうのになんて無茶を……」
ぶちぶちと文句を言いながらも、私が歩くと付いてくる。流石に孤立するのはもう懲りたらしい。
相変わらずどこからともなくバカスカと銃声が聞こえてくる。だが、ちょっとずつ音源が近くなってきてるような気がした。
「そろそろかな……」
銃を持っているのとは反対の手を背中側にまわして適当に動かし、止まることを指示する。ルールも何もあったもんじゃない粗雑なハンドサインだが、どうやら意図はくみ取ってくれたようだ。背後で聞こえていた足音が止む。
……目の前にあるのは、多分この建造物の中心部と思われる部屋。周囲を探索してみたがここの部屋だけが異常にスペースを広くとられていて、なおかつこの中から銃声が聞こえてきている。
「……ここだ」
扉に手をかける。
どうやらカギはかかっていないようで、手を付いた際に少しだけ扉が動いた。
私は背後にちらりと視線を向けて、
「準備は?」
「眠い……」
「大丈夫そうだね。3,2,1で突入するよ」
「えっ、ちょっと――」
「3,2,1――今ッ!!」
相方の返事を待たず、勢いよく扉を開く。
その先に広がっていたのは、恐らく倉庫と思しき一室。あちこちに大型のラックがあるところを見ると、恐らくこの施設はもともと何かの集積場か何かだったのではないかと感じられる。
さらに見えたのは、アサルトライフルやサブマシンガンを持った5人の少女たち。
そして――そんな彼女たちに向けて遅いかかる黒髪の麗人。その手にはごつい大剣が握られて――大剣!!!???
「
意図せず口から母国語(銃)がこぼれる。
そして、このタイミングで便利メガネがまたポップアップの警告をたたき出した。
【警告】敵性ハイエンド『処刑人』を確認
【推定物量】一
【脅威度判定】高:単騎撃滅不可
【対策】即時離脱、のち友軍に援護を要請
「処刑人、ね。覚えてたら覚えておくわ」
「なんだ、獲物がまた増えたか! こいつはいい、今回はそこそこ楽しめそうじゃねぇか!!」
「ドーモ、処刑人=サン、M27IARです――では死ねッ!!」
「わあ始めた、この考え無し! やっぱり違う、全然416と似てない!」
銃口を向け、迷うことなく発砲する。
それを背後から見たM249もまた、文句を言いながらマシンガンを構えて発砲を始めた。
たかが2人とはいえ、流石にマシンガンの混ざった物量は無視できなかったらしい。麗人――処刑人はバックステップでこちらから一気に距離をとった。
撤退する気か? ……いや、これは違う!
「チッ、流石に単騎でマシンガン相手はきついか――なんていうと思ったかグリフィンのスクラップが!!」
バンッ!! と下半身のバネを最大限に生かし、こちらへ向けて勢いよく跳んできた。そして、手に持った大剣を振りかぶり――!
「させるか!!」
「おっと、こっちを無視してもらっちゃ困るな」
今度は横殴りの銃撃を受け、向かって右側へと吹き飛ばされていった。
派手に銃弾を食らって地面へとなぎ倒される処刑人。その隙に、私達の元へと件の少女たちが合流する。
そして、中でも眼帯をした一番背の高い少女がこちらに手を差し伸べながら言った。
「危ないところだったな、大丈夫だったか416? お前がアイツら以外と一緒に行動するなんて珍しいな」
「いえ人違いです、私そんなヒステリック完璧主義者じゃありません」
「いやその見た目とその服装で416じゃないは無理が……待て、なんか少し見ない間に背が高くなったか? あとそんな眼鏡してなかっただろ」
「だーかーらぁ! 人違いなの! ノット416! アイアムM27IAR! オーケイ!?」
「お、おう……」
そんな困惑したようなリアクション返されても本当に人違いだから困るんだよ。マジで。
後ろで射撃をやめてガチャガチャとリロードしていたM249が「似たようなもんじゃないかな……」と呟いていたが、これはばっちり聞こえているのであとでどつく。
「とにかく! こっち事情と出自は後で話すから、今はアイツの撃退! 協力するわよ!」
「あ、ああ。分かった……」
見れば、処刑人はガラガラと瓦礫の山を押しのけながら再び立ち上がろうとしていた。
その顔には殺意の笑顔が浮かんでいる。
「オイオイオイ……やってくれるじゃねぇかこの野郎……もうスクラップじゃ済まさねぇぞクソ共がッ!!!」
「は!? こっちのセリフだが!? こっちはいきなりこんな世紀末世界に連れ込まれて辟易してんのよ、せめて散り際で私を興じさせろクソ野郎――!!」
「……言動からして本当に人違いっぽいな……」
呆れたような声が聞こえてくるが、知ったこっちゃない。
自身も引き金を引いて怒りのフルオート射撃をかましながら、後ろにいるであろう一時の相棒に怒鳴りつける。
「M249! もっかい制圧射撃開始! 当てなくていい、とにかく掃射で逃げ場所潰せ!! マシンガンってのはそれが仕事でしょ!!」
「マシンガン使いが荒い……」
愚痴が聞こえてくるが、一応従う気はあるらしい。次の瞬間には連続した重低音と共に大量の銃弾が吐き出され始めた。
此方に突貫しようとした矢先に大量の銃弾に出迎えられ、たまらず処刑人が腕で顔を庇う。
「畜生が――テメェッ!?」
「ハァイ、調子いい? ――私は終始最悪の気分よッ!!!」
銃を持っているのとは反対側の手で腰に差していたナイフを抜く。そして引き金を引いたまま突撃し、目の前まで攻め込む。カキンッ! という甲高い音と共に弾切れで発砲が止まるが、今はどうでもいい。
「馬鹿が、死にに来てくれるたぁ丁度いい、テメェから死ね――」
「――そっちが死ね!!」
ナイフを持っている方の腕を大きく振りかぶる。
同時に向こうも被弾覚悟で大剣を振りかぶるが、それが私の狙いだ!
大剣が振り下ろされるのと同時、私はナイフを振るう。
そして――
「なっ!? ンな馬鹿な!!」
「うまくいったさぁ死ねクソ野郎!!」
ガキン!! という音と共に、大剣の刃先があらぬ方向へと逸れる――
ぶっつけ本番で試してみたが、超人的な動体視力と身体能力のおかげで割かしうまくいった。
そして、体勢の崩れた処刑人へと再びナイフを振りかぶる。
「テメェ、次は殺す――」
「――覚えてたら殺し返してあげるわ。じゃあな!!」
そして、全力で心臓へと振り下ろす。
何か硬い物を砕く感触と共に、そのまま処刑人は崩れ落ちた。
同時、背後の銃声が止む。……というか、最後の方音だけ聞こえて弾が全然飛んでこなかったんだけども。
「そりゃそうだ、そいつ途中からめんどくさくなったのか全く関係ない方向に撃ってたぞ」
「……覚悟の準備をしておきなさい」
「ふええ……416が増えた……」
そんな事を話している私達の耳に、バタバタバタと騒がしい音が届く。
元居た世界でも嫌と言うほど聞いてきた、ヘリのローター音だ。
「お、来た来た」
「なんでまたヘリ?」
「迎えだよ。ここから歩いて帰るのは流石にきついからな。バッテリーも食料も持たん」
「私起きてから1週間くらい歩き通しだったんだけど」
「よく途中でぶっ倒れなかったな……??」
まあともあれ。
ヘリには私達も乗せてくれるそうなので、これでようやく私も現地人とコンタクトがとれるというわけだ。
責任者とっ捕まえてぶん殴って手早く元の世界に帰ろう。放置しちゃってるソシャゲの続きやりてえんだよ私は。
そんな事を思いながら、私は割と厳重に拘束された状態でヘリへと積み込まれるのだった。なんかさっきの5人組は申し訳なさそうな顔をしているが、私は状況がつかめない。
……これ、もしかしなくてもモルモット√ですか?