学戦都市アスタリスク 凍氷の皇帝、歌姫と魔女の絆   作:夕凪の桜

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暑いけどエアコンつけすぎたら寒い…………


束の間の平穏

朝の訓練が終わり、三人で久しぶりに一緒に食事をとる。楽しげに朝食をとる二人を見ながら灰は思う。

 

(二人の笑顔を守る為にも頑張らなくちゃな………)

 

朝の訓練を思い出すとより一層そう思えたのだ。

朝、シルヴィアも帰ってきていることだし少しいつもより多めの星辰量を暴走させてみることにしたのだ。霊峰の師匠たち曰く、ごく稀に自分の体内から溢れ出る星辰量が大気中の万応素に干渉してそのまま『世界という概念』そのものに干渉することがあるらしい。それは少し先の未来を見通す事があるのだとか。

 

あの光景…………あちこちで火の手があがるアスタリスク、警備隊、各校の序列上位者が全力を尽くして皆を守ろうとしている光景。そして、ヘルガ隊長以下数名の精鋭で敵の本拠地を強襲、激しい激戦の末にヘルガ隊長と灰のみが生き残るが灰は大怪我を負っているというそこでその未来は途切れた。

 

そのあとは予想がつく。治療院に運ばれ入院、たとえ助かったとしても意識が回復するかもわからないそんな危険な状況。それはこの二人を悲しませることになる。

 

(未来はあらかじめ設定されたものではない。自ら切り開いて作るものだ。その手で守りたいものがあるなら、その為の道を切り開く。師匠たちはそう言ってたな……)

 

灰は運命を自ら切り開くだけの力を持っている。あとは灰自身の覚悟次第だ。

 

 

そのまま朝食を食べ終わると各々制服に着替えて家を出る。シルヴィアは一旦クインヴェールの自分の寮の部屋で着替える必要があるため、いつもの自分の制服ではなく変装のための制服を着ている。

 

そういえば星導館は入学式の次の日から2日間にわたり序列戦がある。新入生に自分たちの学園の序列上位者の実力を体感させるためらしい。また、新入生の中で序列上位者、特に『冒頭の十二人』に挑戦したい人たちには挑戦権が与えられる。1日目は在校生のみによる序列戦が行われ、その時に自分がもし挑戦するなら誰を選ぶかを考えるのだ。

そして、一位は毎年最も挑戦者が多い。この時に敗れ去る人もいたらしい。

 

朝、クローディアから連絡があった。昼休みに序列戦についての打ち合わせがあるのだとか。

昼になり、灰は生徒会室に入る。するとそこには奥のテーブルに座っているクローディア一人しかいなかった。

 

「会長、序列戦のことについて何か話があるって聞いたけど、新入生達を驚かしすぎないでくれよ」

 

この金髪の生徒会長はいつも悪巧みしてるから新入生達が腰を抜かさないか心配だ。

 

「あら〜?そんなことはありませんよ?ただちょっとした私なりの歓迎です♪」

 

ほら言った。この人のちょっとしたって言うのは心臓に悪いから止めた方が良いのかもしれないが、灰はこの企みに加担することにした。昨日の事がよっぽどストレスになったのだろう。

 

「よし!その歓迎とやらに僕も全力で協力させてもらうよ」

 

その言葉を聞いたクローディアは腹黒い笑みを浮かべる。

腹黒生徒会長と心の中で言おうとすると、その腹黒い笑みが威圧的になったので考えるのをやめる。

 

「それでは詳細を詰めましょうか」

 

クローディア曰く、今日は序列戦には出ないらしい。グランドスラムを達成した最強の星脈世代の力は未だ健在か、そんなシナリオらしい。

さすがに三ヶ月程度じゃ力は衰えないと思ったが、人間三ヶ月あれば変わるしそんなものなんだろう。

2日目はちゃんと序列戦に参加する。そこで新入生の中の希望者が灰に挑むらしい。予想だと十数人らしい。

それ以外にも軽い打ち合わせをしていた頃、ちょうど昼休みの残り五分を告げる予鈴がなったので急いで教室に戻ろうとする灰の背中にクローディアから声がかかる。

 

「あと、そうでした。序列戦の開幕の挨拶お願いしますね。私は2日とも試合がありますので」

 

閉まりかけの扉の隙間からそんな言葉が飛んできた。

クローディアから何回か生徒会の仕事を手伝わされた事があり灰は知っていた。この生徒会室の扉は一度閉じる動作をするとその間は上げる動作は受け付けてくれないのだ。次は移動教室でほとんど時間のない灰は扉が閉まるのを待ちもう一度開けるほどの余裕はない。

つまり、クローディアからの頼まれごとを半ば了承したことになる。

 

「はぁー、やられた。ただで帰してくれる訳ないわな……会長、やってくれたじゃないか………って、こんなことしてる場合じゃない。ユリスに小言を言われるのは慣れてるけど、矢吹にまで言われる訳にはいかないからな」

 

矢吹に言われるとなんか、ムカつくのだ………わかる人はいるはず………

 

 

慌てて教室に戻り移動教室に必要なものを持って行く。灰がついたのはチャイムが鳴るのと同時刻だった。案の定ユリスと矢吹に小言を言われた。矢吹許さん。

 

 

結局ろくに開幕の挨拶をろくに考えられないまま時間だけが過ぎ序列戦が始まってしまった。

最初に生徒会長が挨拶をするのが恒例となっている。

 

だが、今回は生徒会長ではなく、灰が挨拶をすることになっており、ステージ上に用意された仮設の壇上にあるマイクに向かってゲートから出てきた灰はゆっくりとしかし堂々と歩いていく。

 

「みなさん、こんにちは。ここに立つのが生徒会長ではなく僕で驚いている人もいると思います」

 

新入生の中でクローディアが生徒会長であることを知らない人は灰が生徒会長であると思っていたのか驚いているだろう。現に驚きを隠せていない新入生がここからちらほら見える。

 

「この中には僕のことを知っている人もいるかと思いますが、改めて自己紹介しましょう。星導館学園序列1位、『刀雷』こと鳴神灰です」

 

ここで何も知らなかった新入生がざわめく。何せ灰はグランドスラムを達成した伝説の人物なのだ。そのような人物を同じ学園とはいえ初日から肉眼で見れるとは思わなかったのだろう。

 

その後は当たり障りもないことを10分ぐらい話したところで新入生達は飽きてくるかもしれないと思い話を終わらせる。

 

「さて、ここで長々と話しすぎると後ろの序列戦が今日の分が終わらなくなってしまうので一旦終わりにしましょうか。あなた達が目標とする背中をしっかり見るといいですよ。無駄にはならないはずです。明日の君たちからの挑戦、楽しみに待っています」

 

 

その言葉で開幕の挨拶を締めくくると壇上から降りてゲートへ去っていく。その背中には新入生からの惜しみのない拍手が送られた。

新入生達の大半はこの不敗の背中を追うことになる。その不敗伝説に現実を突きつけられ諦めるかそれとも挫けず努力するか、二択の選択肢が彼らには与えられることになる。

 

 

ステージから退出した灰はそのままスタジアム内の生徒会専用ルームに向かう。

中にはクローディアが序列戦の準備のため対戦相手のデータを見ていたが気にせずソファーに横になる。

 

「お疲れ様でした。大勢の前で話すのは初めてだと記憶しているのですが、流石ですね」

 

対戦相手のデータの確認が終わったのか灰に話しかけてくる。序列3位たるクローディアは油断することなく格下と序列戦を行い今まで序列3位担ってからはその座を維持している。

 

「星武祭の優勝した時に大勢の観客に見られながらの表彰に比べればどうってことないさ」

 

灰はあの時の緊張を思い出す。鳳凰星武祭の時はもちろん緊張したが、王竜星武祭の時はそれよりも緊張した。グランドスラム、それは灰が思っていた以上に偉大なることだったのだ。

 

「そんなことを言えるのは貴方ぐらいですよ。ですが、そのおかげで新入生の方々も大いに盛り上がっているようなので、明日さらに盛り上げてくれることを期待していますよ」

 

やんわりとプレッシャーをかけてくるクローディア。だから灰は仕返しとばかりにこう言った。

 

「『パン=ドラ』を使わないからって足下掬われるなよ」

「ご心配にはおよびません。これでも近接戦は得意な方ですから」

 

未来視の能力がある『パン=ドラ』を抜きにしてもクローディアの近接戦の技術はかなりのものだ。もともと心配すらしていない。

 

 

クローディアの試合だが、序列23位の相手を完封していた。未来視を必要としない圧倒的な勝利であった。

 

 

ちなみにこの後家に帰るとシルヴィアとオーフェリアの二人に序列戦の開幕の挨拶でめちゃくちゃいじられた………

普段見ない姿だから新鮮だったらしい………

 




学戦都市アスタリスク 凍氷の皇帝、歌姫と魔女の絆をお読みくださりありがとうございます。夕凪の桜です。

色々と書きたい事があるのですが、まず最初に一つ。

自分の学校の方でオンライン授業が始まるらしく、毎日投稿が厳しくなるかもしれません。
楽しみにしてくださっている方々、本当に申し訳御座いません。
出来る限り毎日投稿は続けたいのですが、さすがに勉強をサボるわけにもいかず…………



さて!暗い話はここまで!
明るい話をしましょう!

昨日のアスタリスクのSSの中で先週と今週だけののUAのランキングを見たら自分の作品が二番目でした!!!
本当にびっくりして、スマホを二度見して確認するほどでした。

これからも頑張っていきたいと思いますので応援していただけたら幸いです。


最後に、誤字やご指摘があれば遠慮なくお願いします。
感想も匿名で書けますので、一言二言だけでも残していってもらえたら幸いです。
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それではまた次の話で
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