学戦都市アスタリスク 凍氷の皇帝、歌姫と魔女の絆   作:夕凪の桜

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剣の重さ

灰がステージから立ち去った後、未だに観客たちは動揺を隠しきれなかった。あの鳴神灰が自分の支配する間合いを食い破られたのだ。序列戦、星武祭、全てにおいて無敗を誇る絶対領域を。そのため灰は出さざる終えなかった、鳴神流抜刀術を。最強の剣術を。かつて数回しか使ったことのない抜刀術を中学一年生の刀藤綺凛に使ったのだ。

そして、人々は刀藤綺凛という少女に注目を集めるだろう。

 

 

(あーあ、やらかしたな。絶対領域を破られるなんて思っても無かったから対応が遅れて抜刀術を使うことになるなんて………情けない)

 

灰は自分の抜刀術をほとんど使わない。過去に公式戦で使ったのは今回を除き、4回のみ。星武祭の決勝戦の三回、そして、王竜星武祭の準決勝の時にのみ使用した。

なぜ、使わないかというと単純に強すぎるからだ。基本スピードが速い灰の剣術がさらに速くなれば誰も太刀打ちできないからだ。

純星煌式武装の中で防御不能と言われる魔剣と同じようなものだ。抜刀術は速すぎて不可視、つまり防御不能ということになる。

 

(はあ、自分に腹が立ってきたよ……トレーニングルームで少し暴れるか)

 

トレーニングルームには自動で動く人形が続々と出てくる訓練があり、その人形を何体倒せるかというものである。

これは上限が1024に設定されている。なぜかというと灰は人形程度ならほぼ永久的に倒せるためクローディアに上限を設けられてしまったのだ。

ここで実は抜け道がある。それは獅鷲星武祭用のモードにすれば人形の上限が3倍となるが、これがばれた時のクローディアが怖いため絶対にやらないことにしているのだ。ただでさえ、色々と無茶なお願いをしている以上、これ以上はさすがに気がひける。

 

開始のボタンを押して人形が続々と出てくるのを正眼に構えた刀で迎え撃つ。

灰に接近した人形は大きさ関係なく吹き飛ばされていく。その速さに人形の供給がだんだんと間に合わなくなり、一瞬人形が居なくなったところで来客通知が来る。トレーニング中は体の動きを感知して通知が表示されないが、体の動きが一定時間無くなると通知が表示されるのだ。

来客、つまり綺凛が来たということなのでトレーニングを中断する。スコアは853、15分程でこれなのでまあ、いつも通りぐらいだろう。

自分から呼んだので待たせるわけにもいかないのですぐに扉を開ける。

 

「お、お邪魔しますです……」

 

おずおずと入ってくる綺凛。試合の時とは違い、小動物のようにオドオドしてる。

 

(シルヴィやフィーアとはまた違う癒しを与えてくれる系の子か。妹系というのかな、これが………)

 

部屋の中を見渡した綺凛だが、灰の後ろを見たとき固まってしまった。

なぜ固まるのかが分からなかったが、灰は自分が今さっきまでやっていたことを思い出して納得する。

頭をかき、自分に呆れる。

 

「……そういえば自動回収機能つけると人形が出てくるのが遅くなるから付けなかったんだっけか」

 

流石にこれは自分でもやりすぎたなと思う。全ての人形が積み重ねられて巨大な二つの山を形成していた。その高さはトレーニングルームの天井に届きそうであった。トレーニングルームの天井は約8メートル、そのため近くで見たら充分巨大な山だ。

 

「ごめん刀藤、自分に腹が立ってたんだ。まあ、気にしないでくれるとありがたいかな」

「は、はい………」

 

急に呼び出されて、そこに行ってみたら意味不明な光景が目の前にあったらさすがに困惑するわな。

 

「あ、あの………!」

 

さすがに空気が重いので、何か話そうかとしたら綺凛が口を開いた。

 

「もし良ければ、トレーニングの続きを見てみたい、です……」

 

最後の方は消えそうなほど小声で話していたが、ちゃんと聞き取れた。

上級生のしかも序列1位に呼び出されて緊張しない方がおかしい。

 

「了解。残りが200もいないからすぐに終わっちゃうかもしれないけどね。一応離れといて、それにその方が見やすいからね」

 

灰は綺凛に自分の手の内を晒したとしても、それは一部に過ぎず、大して変わらないからだ。

 

自動回収機能を使ってわざと出てくるスピードを落とし、一体一体確実に倒していく。さっきまでの灰とは違い、落ち着いて型を一個一個なぞるかの様に丁寧に攻撃する。なぜか、綺凛のためとしか言いようがない。

そして、五分足らずで200弱の人形は全員退場した。

 

(たまには丁寧にやるのもまた新鮮でいいな)

 

刀を納めながら、そんな事を思っていた。基本的1対多数が想定されている鳴神流は一対一の場面用のものといえば基本的なことが多い。そのためこれはいい練習となるのだ。

 

「ありがとうございますです。鳴神先輩の剣、意志のようなものを感じました!あれはなんですか!」

 

やはり、遠目で見たことによりさっきの実戦で感じたことが確信できたらしい。

それに、この子生粋の剣術がオタクだろう。そのためかさっきとは違い、ぐいぐい迫ってくる。

 

「そうだね、意志。間違ってはいないけど、どちらかというと信念に近いかな。自分の信念を刀に乗せる。それに刀は反応する。君も何回か聞いたことがあるんじゃないかな」

 

綺凛は灰に言われたことについて真剣に考えているため灰との距離がものすごく近いことに気づいていない。

 

(そう言えば、あいつもこんな感じだったな)

 

灰の妹、正確には義理の妹となる。その子は綺凛みたいな剣術オタクでいつも灰の訓練を見てはずっと付き纏っていろいろな事を聞いてきた。

 

「はい、聞いたことがあるです。固い信念を持つ人の刀はそれに応えてくれると、実際に見たことはありませんでしたです」

「そういうこと。もし刀藤がさらに強くなりたいなら、まず信念を刀に込めるといい。それがどんなものであれ、応えてくれるはずだよ」

 

信念、灰は何を込めているかというと、当たり前だがシルヴィアとオーフェリアを守り抜くというもの。しかし、深淵には統合企業財体に復讐するという暗いものがあった。誰にも気づかれずにずっと灰の中に存在していた。

 

そして、灰の言葉を聞いた時、灰の顔が予想以上に近かったため、綺凛は慌てるも急にすぎて離れることも出来ずにアタフタする。

その姿はまさしく小動物だ。

 

さして、灰は間違えて妹にいつもやっていたように頭を撫でてしまう。初対面の年下の女の子のだ。

 

(あ………やっばい、間違えた。シルヴィとフィーアにバレたら、というか絶対にバレるだろうな………)

 

そう考えると気持ちがなんとなく沈んでしまう。

あの二人に説教されると決まって二人はいつも以上に甘えてくる。まあ、かわいいから全然いいのだが

 

「はううう………」

 

綺凛が顔を真っ赤にして慌てる。そりゃ、当然のことだろう。

 

 

「あ、ご、ごめん!!つい、義妹にやってる癖で………」

 

少し疲れているのかもしれない、灰はそう思った。普段だったら絶対にやらないようなことをやってしまったのだ。

 

「い、いえ、ただ、慣れてないだけなので………」

 

この時トレーニングルームは謎の空気に包まれて本題が全く進まなかった。

 




学戦都市アスタリスク 凍氷の皇帝、歌姫と魔女の絆をお読みくださりありがとうございます。夕凪の桜です。

毎日更新することに夢中になりすぎて前回、記念すべき10話目を投稿したのにすっかり忘れてました。ほんと、何やってるんでしょうね………
とりあえず!祝!10話突破!!!
ということで、皆様のおかげでモチベーションが維持できて10話目までを滞りなくとうこうすることができました。本当に感謝です!


さて、本編なのですが、もうすこーし綺凛パートが続きます。なぜか終わらない………書いているうちにどんどん書き足して行ったら一話に収まらないという………
自分としてはもっと灰たち3人がもっとイチャコラして欲しいんですけどね………

はい、とりあえずは鳳凰星武祭が終わるまでは毎日できたらなと。あと何話あるんでしょう、このペースだと二十話ぐらいかも………



UA4000越えありがとうございます!!これからも頑張っていくので何卒よろしくお願いします。

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それではまた次の話で
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